飲み屋街の外れの小路、そこに目的の店はある。店の前に相変わらず列ができている光景に少し億劫になりながらも最後尾に並んだ。
今日の私は運が良いようだ、珍しく並んでいる列が短い。これなら20分も待たずに入店できるだろう。
「食券の購入お願いしまーす」
店員の言葉に頷き列から一旦離れ券売機へと向かう。一度来た時は色々と贅沢してしまったので、麺のみ増量するプランで食券を購入する。一度店内に入らなければ券売機がない以上、特性スープの香りが鼻に広がる。うん、私はコレをもう一度食べる為に来たんだ。
列の抜けた場所は空いたままであり、そこに戻る。店員さんに券売機に案内される際に場所を開けておくように言われるからだ。この店、スープが無くなると閉める為に食券を買えるかどうかで本日麺に辿り着けるのかが分かってしまう。マスクで隠した喜びが外に漏れ出しませんように。
さて、店員が食券を回収しに来るまでに決めなければならない事がある。スープの種類だ。この店、ベースとなるスープから派生したガーリック醤油、シュリンプ、豚骨魚介、坦々の4種のスープから選択が可能なのだ。今回は2種のスープを一度に味わえる注文をしているため、選択肢は少なくなる…様に見えてそうではない。逆に2種も選べてしまうのだ。
ガーリック醤油、友達ちゃんと共に初来店したあの日彼女が選択したスープ。確実にその日の対面が無い事を前提条件としたその濃厚なスープは説明し難い逸品だ。
シュリンプ、海老の濃厚な味わいが広がるスープ。匂いも強く、人によっては苦手意識を持ってしまうかもしれない。しかし、このスープにはその濃厚さを更に深くする卓上調味料が存在しているという恐ろしい点がある…
豚骨魚介、魚粉を使用し、豚骨との旨味を混ぜたスープ。シュリンプと並んで旨味の強い濃厚スープであり、浮いた背脂に気を取られてはいけない。食べる際は底の方をかき混ぜるのをお忘れなく。忘れた後にスープ割りすると魚粉に襲われます(1敗)。
坦々、その名の通りの坦々スープ。程良い辛味に挽き肉の旨味広がる私が安心できるスープ。辛い物好きからすれば刺激が足りないとなるやもしれないが私はこれくらいで良い。美味しく食べるならこのくらいが良いのだ。聞こえてますか、白上さん?
前回注文したのは魚粉と坦々。今回はどうしたものか…
視界に入る店員の姿、食券を回収しに来たのだ。早く決めなくてはッ
食券を渡し、今回の選択を伝え残り時間を待つ。おっと、麺は釜揚げでお願いします。スープで身体を冷やすのは少し涼しい今夜だと宜しくなさそうだからね。
待つこと数分、遂に来店の時が来た。案内されたカウンター席へと足を運ぶ。机に置かれたお盆に次々とスープや麺が運ばれてくる。始まるのだ、今夜の優勝が。
「いただきます」
合掌
割り箸を割り、麺を持ち上げる。そう、ここはつけ麺の店。盛られた麺をしっかりと掴み持ち上げ、スープへと軽くつける。そして…
ズゾゾゾゾ、チュルリ…
やはり、コレだ。私にはこの坦々が似合う。程良い辛味が麺と絡み口いっぱいに広がる。麺はしっかりとコシがあり噛み心地が良い。そうだ、こういう麺が食べたかったのだ!
最近博多ラーメンやら中華そばを食べていたから御無沙汰になっていたストレート太麺、店内で茹でられた熱盛仕様のそれは私の心を潤してくれる。美味…
さて、先程は見向きもしなかった麺の上の肉へと目を移す。この肉にも店のこだわりが強く反映されている。鴨肉とローストビーフが数枚、添えられているのだ。何時見ても圧巻だ。この2品が一皿に纏まっている所など、ビュッフェ位だぞ!?ここはつけ麺屋だ!(事実確認)
ちょん、とスープへと少し付けた鴨肉を口に運ぶ。鴨特有の旨味は近年鴨そば位でしか味わってなかったが、これは美味い。辛味も合う、素晴らしい…
煮玉子へと箸を運ぶ。隠れた主役、誰でも安心できる品であるそれはキレイに2つに切られて提供されている。それぞれを2種のスープへダイブさせる。纏うのだ、スープの旨味を!
そんなことをしながら、もう一つのスープへと麺をつけ啜る。口に広がる、海老の旨味と香りは特濃で格別である。ホントに並んで待った事実にその意味を刻み付けてくるのだこの店は!!
ローストビーフも少し付けて、スープを少し掬うように持ち上げ口に運ぶ。海老と牛、本来なら出会わない食材が生み出す食感や味わいは至福の時間を伝えてくる。美味い、美味い…!
「フフフっ…!」
思わずニヤけずにはいられなくなる。一度来た際に後悔したのは唯一つ、麺の量を変更しなかった事だ。つまり、今回は?
しっかりと麺の増量を行っています。その量なんと450g!これだけあってもスープの減りはそんなに多くないかもしれないというスープへの驚愕と自身の麺の消費の速さという真実が私に向かってくる。成程、仕方がない…
さぁ出番だ、卓上調味料!!
塩、胡椒と並ぶ位置に一際目立つ瓶がある。そう、海老の辛味だ。殻ごと砕き使われているであろうそれは麺に乗せても良し、スープに混ぜても良しと途轍も無いプレイバリューを持つ。勿論先ずは麺に乗せて、だ。
パラパラと舞う赤い破片は、まるで鷹の爪の様。溢さないように慎重かつ大胆にスープへと麺を移動し、つけて勢い良く啜る。
ズゾッ、ゾゾゾ!
口の中に入れた瞬間広がる海老の風味は、人を選ぶかもしれないが私には好印象にしか受け取れなかった!!驚愕して一瞬止めてしまったので直ぐに啜ることを再開する。坦々の辛味と海老の辛味、海老の風味が広がり、麺は舌の上で踊っている。咽ないように気を付けながら咀嚼し、飲み込む。
「〜〜〜〜ッ!!!」
旨い!美味い!
だが、まだ終わりではない。私には海老のスープが残っているッ!!
海老のスープへと辛味を入れ、かき混ぜ、更には麺にも乗せる…海老が襲ってくる事に覚悟しつけ汁へ麺をダイブさせ一気に啜る。
「!?」
濃厚だった。その一言で表すには勿体無い程に濃厚だった。『海老が苦手な方はご遠慮下さい』という立て看板を破壊し旨味と風味が襲ってくる。海老だ!海老がいるぞ!口の中に濃厚な海老が、いる!!
「…んくっ」
お冷を流してリセットを図る。ああ、なんて濃厚な…豪華な逸品なのだろう…
最後はスープ割を行いつけ汁達を味わう。海老の濃厚さは最後まで変わらない…坦々の辛さは奪われかけた理性を取り戻すのには十分だった。
「御馳走、様でした」
一言店員へと伝え、軽く会釈しながら店を出る。また来たい、と思いながら帰路に着く。
今夜は、ぐっすり寝れそうだ。
つけ麺を食べたことある?
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あるよ!
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ないなぁ…