とあるホテルのロビーにて一人の青年がボーイからメモを受け取っていた。
差出人は起きたら居なくなっていた少女からである。
さて、その内容は…
――――――――――――――――――――
親愛なる相棒へ
遊びに行ってきます♪
ヽ(*´∀`*)ノ.+゚
P.S
この顔文字って可愛いね (・´ω`・)
あ、夕飯は日本の周って無いお寿司を食べたいです。
相棒より
――――――――――――――――――――
「………はぁ」
と~っても深い溜息を吐く青年。
本文よりも追伸の方が少しだけ長いことに決してつっこまない。
「お、お客様?」
[ドンッ!!!!!]
「ヒッ!?」
メモを片手に持った青年が苛立ちを発散するかのごとく八つ当たりをする。
タダならぬ様子の青年に恐る恐る声掛けたボーイであったが、恐怖のあまり涙目になっていた。
「…なんでもない。暫くの間、部屋を開ける」
「わ、解りました。行ってらっしゃいませ」
何とか一礼をして職務を果たしたボーイ。
これでもう彼らに関わることはないだろうと安堵の息を漏らすのだが、二人が宿泊している間、何度もこの様な体験をすることになるのだった。
さて、いつの間にか居なくなっていた少女はというと…。
「~♪」
商店街、本屋、スーパー、ゲームセンターと自由気ままにあっちこっちを歩き回っていた。
今はたまたま通りかかった公園にてアイスを売っている車を発見し、購入しているところだ。
「はい。おまちどう様」
「ありがとおじさん♪」
アイスを受け取ったあと、近くの備え付けられたベンチに座り、
「ん、美味しい♪」
小さな舌でアイスをひとなめし、そう感想を漏らすのだった。
「ふざけないで!!!」
「?」
ゆっくりとアイスを堪能していると、大きな声でそう叫ぶのが聞こえそちらに視線を向ける。
20代半ば程の女生と自分と同じくらいの黒髪の男性が言いあいをしているようだ。
少し離れた所に母親らしき女性が転んでいる子供を抱きかかえており、その親子は良く見れば先ほど自分より1つ後ろでとても楽しみに並んでいたのを思いだした。
状況から察するに、買って貰ったことに喜んでいたがふとしたことで転んでしまい、アイスを女性の服につけてしまった。
そして、一方的な状況に見かねた男性が「子供のしたことだから」とでも言い、それが逆に怒りを買って現在に至るといったところだろう。
「ん~………、よし!」
何かを考え付いたのか、少女はベンチから立ち上がり、その騒ぎの方へと歩いて行った。
「だから子供がしたことだから許してやってもいいだろう!!」
「子供だからって何でも許されるわけないじゃない!!」
女生と黒髪の男性の言い争いは白熱し、次第に周囲に人垣が出来ていたが、そのことに二人は気づいていなかった。
このまま平行線の言い争いが続くかと思われたとき、人垣をさけて黄緑色の少女がその中に入っていった。
「っ何よあんた」
「へい、少年!!」
女性の声を無視して転んだ態勢のまま母親に抱きかかえられる子供に声をかける少女。
「うう~」
「転んで痛かったよね? 折角お母さんに買ってもらったアイスも台無しになっちゃって残念だよね?」
「……うん」
「とっても悲しいのはわかるけど、その前にすることがあるでしょ?」
「?」
「ぶつかっちゃったお姉さんに『ごめんなさい』って謝るの。ね」
「……うん。……お姉さん、ぶつかっちゃってごめんなさぁい」
優しく諭すように子供に語る少女。
彼女の言葉に従い、子供は母親から離れて女性に誤った。
「これで許してもらえませんか?」
「誤ったからって…」
「…あんまり騒ぐのも良くないと思いますよ?」
ここになってようやく周囲に人が集まり自分たちを見ているのに気づいた女性。
その視線には「誤ったのなら許してあげればいいのに…」といったモノが含まれているのが見て解る。
「っ…もういいわよ。次から気をつけなさいよ」
「あ、ありがとうございます!!」
分が悪いと判断した女性は母親の礼にも目もくれず足早に立ち去って行った。
「よし、よく出来ました。頑張った子にはアイスをあげよう」
「わ~、ありがとうお姉ちゃん♪」
「味わって食べてね」
「うん!!」
先程まで沈み切っていた子供に輝かしい笑顔が浮かぶ、その顔を見て少女も満足そうな笑顔をした。
「す、すみません。あの、代金を…」
「ああ、いいですよ。僕の食べかけですし、そろそろ移動しようかな~って思ってましたから」
「でしたら、なにかお礼を…」
「いいっていいって。そっちの君も大丈夫?」
「あ、ああ。ありがとな。助かったよ」
「良いってことよ。んじゃ、ここにいると相棒にみつかりそうだから僕はもう行くね~」
「お、おう(相棒?)」
「じゃあにぃ~」
そう言って、少女は足早に走り去っていった。
「……なんか、嵐みたいな子だな」
「おーい、――!!!」
「っと、おせぇーぞ」
さて、少女のいう相棒の青年はというと……。
[ゴウッ]
「ありがとうございました!!」
「……」
勝手に居なくなっていた相棒の少女を探すのをついでに買物をしていた。
左手にいつも持ち歩いているアタッシュケースとは別にもう一つ、レジ袋がある。
その中には先程のコンビニで買った日用品と『○○県お勧めグルメ』や『○○県
寿司集』と書かれた雑誌が入っている。
どうやら、一応少女のリクエストには答えるようだ。
「(…さて、これからどうするか)」
これからどうするかを考える。
①虱潰しに周囲をあたって行く
②写真を片手に聞きこむ。
③ほっとく
①は探すにしても知らない土地に対し心当たりも無く、気ままにあっちこっち出歩く相方を探し出すのは困難だ。
②は正直メンドクサイ。
よって選ぶのは③の“ほっとおく”だ。
遅くなれば腹を空かせてホテルに帰ってくるだろう。
そうと決まればとホテルの方へと足をむけ、歩きはじめた。
「ねぇねぇ、キミかわいいね。オレらと一緒に遊ばな~い?」
「俺ら今ヒマなんだよね~~♪ 楽しいトコ行こうぜ~」
「すみません。人と待ち合わせしていますので………結構です」
「『結構です』だって!」
「かーわい~!」
「そんなのほっとけばいいじゃん♪ なんならその子も一緒でいいからさ」
「…………………」
青年が歩きはじめて暫くすると、少し先の方向に一人の少女を複数の男が囲んでいるのが視える。
会話から察するにナンパをしているのだろう。
女尊男卑の時代になってからこのような光景が見られるのはとても珍しい。
少女は見た目からして高校生くらいだろうか?
「あの、ホントにやめてください!」
「――チッ!…いいから来いよっ!!」
「っ!?」
頑なに拒む態度に痺れを切らした不良の1人が少女の手首を掴む。
少女は痛みに表情を歪め、
「っ離してください!」
「ぎゃはは! 離せって言われて離すかよぉ!? イイから着いてこいっての!」
[ドンッ!]
青年がその集団とすれ違うまさにその時、青年の肩と不良の肩がぶつかった。
不安定な状態で当てられ1人が体勢を崩す。
「イッテーな!!」
「…悪い」
そう一言口を切り歩き続ける。
その事実上無視に近い態度に不良は青筋を浮かべ、
「オイコラ!! テメェ人にぶつかっといて詫びもなしか!」
[ザザッ]
不良達が取り囲むように散らばる。
もちろん、少女を掴んでた男もだ。
「(…何だ、こいつら)」
いかにも興味なさそうな目で不良達を見る。
肩がぶつかっただけででそこまでするかと思うが…………すでに手遅れだったりする。
「オイオイ、こりゃ骨折れたなー、どうしてくれんの?」
「…あ?」
「おいおいケンちゃん大丈夫かよ~」
「こりゃ慰謝料貰わなきゃなぁ? なぁ?」
「ってことで、さっさと金出せよ!」
一昔前の様なテンプレ文句を言った後、取り囲んでいた不良の1人が青年の肩に手を伸ばそうとする。
が――
「…触るな」
「はっ? …………ゲボッ!?」
[ズムッ!!]
伸ばされた手を払い、呆然としたその隙に腹に拳をめり込ませる。
一瞬、不慮の身体が数センチ浮き、ズルズルと地面へと沈んだ。
「…消えろ」
「て、てめぇ…………!!!」
「よくもケンちゃんを!!」
「やっちまえ!!!」
「「「おう!!!」」」
「…はぁ」
数分後、
「「「「「お、覚えてろよーーーー!!!!!」」」」」
身体中に痣やコブを作った不良一行は、気絶した男を引きつれて逃げ去って行った。
「(……アイツが読んでいた本の捨てセリフが聞けるとはな)」
相方が前に読んでいた漫画のことを思いだす。
あの本は何というタイトルだったかと思考するも、すぐにどうでもいいかと考えなおしその場を去ろうとする。
「あ、あの」
「?」
何も言わずに立ち去ろうとする男に少女が声をかける。
「ありがとうございました!!」
「…別に」
そう呟いたあと、何事も無かったかのように再び歩き始める。
あまりに素っ気ない反応に少女は何か口走ろうと口を開こうとするが、それが彼の耳に届くことはなかった―――。
「……あの人、どこかで……」
それから数日後、IS学園にて入学式が行われ、再開することになることをまだ知らない。
【オマケ】
その日の夕方。
「ねぇ相棒。折角日本の周って無いお寿司に来たのに、何で僕は四つん這いになって相棒はその上に座ってるの?」
「…連れて行くとは言ったが、食わせてやるとは一言も言って無い」
「ひどいっ!? 僕、とっても楽しみにしてたんだよ!!」
「…アー、コノオスシオイシイナー」
「畜生!! 棒読みで黙々と食べてるのが凄い腹立つ!! 僕もお寿司食べたい~!!」
「あ、あの~、お客様。そういうプレイは、その…」
「…あ゛」
「ヒッ!? な、なんでもありません」
周囲からの奇異と脅えと興奮といった視線を一切無視しながら嫌がらせとお仕置きを実行するのであった。
「お寿司~~(泣)」
【後書き】
といいうことで、入学前の出来事でした。
因みにこのあと、暴れそうになった少女を気絶させた青年は一人で黙々とお寿司を堪能。
帰宅後、ホテルで一人グズっていた少女にお持ち帰り用に一人前(一番安いやつ)を差出し、機嫌をとるのだった。
「あ~ん♪ ん~美味しい♪」
「(…安いやつ)」
「ん? 何か言った?」
「…別に」