進撃のバーテックス   作:てんぱまん

1 / 1
300年後の君へ

 

 

その日、人類は思い出した---

 

「入ってくるぞぉっ!!」

 

「早く内側へ!逃げろっ!!」

 

奴らに支配されていた恐怖を---

 

「あああっ!やめてくれ!!いやああああっ!!」

 

「ぎゃあああああ!!!」

 

鳥籠の中に捕らわれていた屈辱を---

 

「........。....壁の中が...地獄に........」

 

「ひなた!なにボッーと突っ立ってる!」

 

「........。」

 

「....おい!!お前が絶望してどうする!........まだ終わったわけじゃない!今すぐ壁を塞いで中に入ってきた奴らを一匹残らず殲滅するんだ!........まだ希望はある!人間はこんなところで負けない!」

 

「........若葉...ちゃん....!」

 

「....ほら、しっかりしろ。団長のお前がこんなんじゃみんな力尽きてしまうぞ。........『人間は、戦い続ける限りまだ負けてない。』戦うのをやめたとき、人は初めて敗北するんだ。」

 

「....!!そうですね...!まだ、負けてない!!」

 

二人の少女は二本のブレードを手に取り、不思議な道具を使って空中を舞う。この先にあるはずの、希望を信じて。

 

------------------------  ------------------------

 

------------------------   ------------------------

  

------------------------  ------------------------

 

三年前...  西暦2017年4月

 

「若葉ちゃ~ん、朝ご飯できましたよ~」

 

「むっ、ありがとうひなた。」

 

いつものように朝から剣術の訓練をしていた乃木若葉に、上里ひなたは明るく声をかける。

 

『いただきます。』

 

今日も二人でごく普通の朝食をとる。若葉とひなたはルームシェアをしていた。ここはとある兵団の寮。二人一組で部屋が振り分けられている。

 

『ごちそうさま。』

 

朝ご飯を食べ終え、ひなたは後片付けを、若葉はテレビでニュースを見ていた。そこでふと、若葉が一言口にする。

 

「........もうあの日から、ちょうど二年が経ったんだな。」

 

その言葉を聞いたとき、洗い物をしていたひなたの手はピタッと止まった。

 

「ええ....。そうですね。」

 

「忘れもしない、あの惨劇は。」

 

若葉はテレビを消し、唐突に刀を手に取って強く握った。

 

「........いつか必ず...奴らに報いを受けさせてやる。憎きバーテックス共に...!!」

 

------------

 

-----

 

--

 

西暦2014年。これはさらに三年前の話。それは突然起こった。夜空に輝く無数の星空から...白く、大きい気味の悪い化け物が降ってきた。その化け物たちは星のごとく大量に現れ、世にいる人間たちを一人残さず食い散らかしていった。

 

 

後にそれは、『バーテックス』と呼ばれるようになる。

 

 

あたりはあっという間に地獄絵図。血肉が飛び散り、無惨な姿となった人間がそこら中に転がった。それらはやがて異臭を放ち、たちまち人間が住めないような土地を作った。....たった一晩で人類は絶滅する........はずだった。なぜか一つだけ狙われなかった場所がある。それは日本、中国・四国地方の「四国」であった。周りを太平洋と瀬戸内海に囲まれたその土地は、なぜだか一匹もバーテックスが現れなかった。人間たちはその情報をどこからか手に入れ、四国へと逃げ込んだ。

もう本土には帰れない...地球はここ以外すべて化け物たちに支配されてしまったのだ。だが安心もつかの間、四国に逃げ込んだ人間たちを追い、バーテックスたちは四国に攻め込み始めた。........が、そのときだった。

 

 

ゴゴゴゴゴゴ................!!!!

 

 

誰しもが目を疑った。とても信じがたい光景だった。海の底からコンクリートで固められたような壁が、四国内を囲うようにして浮き上がってきたのだ。ザッパーンと大きな音をたてながら、50メートルはあろう壁が四国を閉じ込めた。そしてその壁は頑丈に、分厚くできていてまるで人工物のようだった。

 

それからというもの、人類は平和を取り戻した。この壁がある限りあの化け物たちに食われることはない。....だがこのままではいずれ人間はピンチに陥る。ただでさえ四国に逃げ込んできた人で人口が増えているのにこれから増えるとなれば食糧難や住居の入手困難が問題になってくる。そうなれば人間同士の争いが生まれ、潰し合いが始まる。それだけはどうにかして避けなければならない。人間たちは本土の奪還を考え始めた。そして考えていくうちに大きな組織が誕生することになる。

 

人類の復興と平和を守るための組織...その名も『大赦』。

 

大赦は四国にあるだけの兵器を使い、壁の上に登って外からバーテックスに攻撃を与えようと試みた。しかし、少し怯むだけで彼らには全く効いてない様子だった。だが壁を利用し始めたことで大赦はあることを発見する。それは、人間が壁の上にいるというのにバーテックスたちは壁に全く近づかないということだった。気になって調べてみたところ、どうやら壁全体はなにやら神聖なもので作られており、そのオーラがバーテックスたちを寄せ付けていないのだという結果が出た。その結果から大赦はひらめき、壁を削って武器を作ってみた。実験を繰り返していくにつれ、ついに人類はバーテックスたちに対抗する手段を開発した。それは『人間の少女がその武器を使ったとき、バーテックスを消滅させることができる』というものだった。

 

------------------------

 

大赦はそれからバーテックスに立ち向かうため、少女たちの育成と兵器作りに尽くした。武器があるだけであっても生身の人間では勝ちようがない。そこで大赦は、すでに戦う予定の候補の中でも精鋭と呼ばれる少女数人を呼び、どのような点を重視すべきか話し合った。

 

「まず、私たちに必要なのは機動力です。人間の走るスピードよりも、敵の動くスピードは遥かに早かった。」

 

「また、敵は宙を浮いています。これでは地上での戦闘においてほとんど勝ち目がありません。」

 

候補である精鋭の二人がそう意見する。彼女らの言うとおりだ。車や飛行機を使うにしても限りがあり、それなりの技術も必要である。ましてや壁外にそんな燃料を調達する余裕などない。そこで陸上での移動は動物を使うことに決めた。戦国時代に戦国大名たちが使っていた、遠征にも向いている『馬』にしたのだ。多少乗りこなすのに訓練が必要だが、馬ならば食料も人間と変わらず燃料を運ぶ分の荷物を減らすことができる上、陸上を早く移動できる。しかし、陸上の移動方法はそれでよくても敵は地に足をついていない。

 

「空中での戦闘を可能、且つ俊敏な動きができる道具の開発をお願いします。」

 

「んな無茶な!」

 

「人間はヘリや飛行機などでしか飛べんだろう!それを使って空中からバーテックスを倒すことは可能だろうが限度があるわけだ。」

 

「だからこそ必要なのです!本土を切り開くための新兵器が!....ここは常識に捕らわれず、頭を柔軟にして考えるべきです!」

 

「なにをお前!勝手に言わせておけばガキの癖に!」

 

「おい!....子どもがあんな化け物に挑むのだぞ!本当なら考えられんことだ!そんなこと死んでも口にするな!彼女らは........幼き者ながらも我ら壁内人類の希望のために戦ってくれる勇敢な戦士たちなのだぞ!!」

 

「........!!....すまない...口がすぎた........。」

 

大赦職員は頭を下げる。

 

「どうか彼の無礼を許してくれ...。我らも行き詰まっておりストレスが溜まっているのだ...。」

 

「いえ、お気になさらないでください。あなた方のお気持ちもわかります。」

 

大人より大人の対応。彼女は周りからの信頼も厚く、実力も候補たちの中では断トツのトップでまさに完璧を極めた人物だった。...彼女の名前は乃木若葉。後に候補たちを引っ張っていく重要人物になる人間だ。

 

------------------------

 

それから数ヶ月後、彼らは一丸となって新兵器の開発を進め、まさに若葉の希望通りの夢のような道具が完成した。その道具が可能にする動きから、それは『立体機動装置』と名付けられた。

 

「........ようやく完成致しました。実験に実験を重ね、もう不備は見られません。」

 

若葉はその道具を手に取り、じっくりと見た。

 

「........うむ。よくやってくれた、開発班。これでようやく反撃の一歩が踏み出せる。立体機動装置を使いこなす為の訓練に移れるな。」

 

「........はい!」

 

それから候補たちは立体機動装置を完全に使えるようになるため、安全に配慮した実習が行われるようになった。その道具はとても危険で、とんでもないスピードで移動するので一歩間違えれば死に至る。立体機動装置はガス管と共に腰に装備するものであり、両手に持つトリガーをひくことで左右から針金がついたアンカーが飛び出し、アンカーを急速に引く力とガスの推進力で風のように空中を移動できるものだ。気を抜けば壁に激突するし、空気抵抗に対抗する力とバランス力がなければ戦闘などままならない。ましてや狭い場所での利用やガス切れも危惧しなくてはならないなど扱いは非常に難しかった。

 

「いいか同士たち!私たちを守ってくれている壁の欠片から作ったこの武器で!バーテックスを倒すことができる!....これまでの実験から、この武器を使って大部分を傷つけることができれば!不思議な光を放出し、消える!つまりそれで殺したことになるのだ!!」

 

「質問です、若葉さん。それは剣でなくてはならないのですか?」

 

「いや、それぞれの個性にあった武器を使ってくれればいい!飛び道具でもよい!...壁の欠片は、バーテックスの体を浄化する!矢や銃でもヤツらにいくつかぶち込めば倒すことが可能だ!」

 

そのリーダーシップの高さから、若葉は大赦と候補たちを繋ぐ情報役として役立っていた。彼女は候補たちの憧れの的であり、いつしかみんなをまとめる長のような立場になっていた。

 

(みんな日々の訓練のおかげで技術の向上が目まぐるしい...。この壁の中を守る、本土の土地を奪還する『兵士』になるまであと残りわずかだろう。)

 

若葉たち候補は努力を重ね、ついにその時がやって来た。

 

「........ようやくこの日が来たな。」

 

「そうですね。ここで初めてスタートラインに立てた気がします。」

 

「........。そうだな。戦いはこれからだ。」

 

若葉たちは大赦本部に集まり、整列した。まるで軍隊のように鍛えられた彼女らの動きはこの短時間での鍛錬が実を結んでいた証拠だった。候補全員が精鋭。その中でも精鋭中の精鋭が数人一歩前に出てきて並んだ。そして大赦のトップであろう人物が前に出てきて若葉に前に出るように促す。

 

「乃木若葉!今日から、土地の奪還の為の壁外調査と非常事態時の壁内での護衛を任務とする『調査兵団』...総勢47名の団長に命ずる!」

 

そう言って調査兵団の結成を祝う賞状と初代団長としての任命表を若葉に差し出す。彼女らはこの日、壁内人類の盾と希望になる兵士になった。周りから握手の雨が降り注ぐ。しかし、若葉はその二枚をなかなか受け取らなかった。

 

「........大変申し訳ありません。私乃木若葉、調査兵団初代団長の座を辞退したく存じます。」

 

「!?........な、なに....?」

 

大赦職員も候補たちもあまりにも意外な発言に戸惑った。

 

「お前以外に兵士たち全員をまとめることができる優秀な人材はいるのか?」

 

「います。....確かに戦闘の面では私に劣りますが、頭は私と比べものにならないくらいキレる。彼女こそが初代団長にふさわしい!」

 

若葉はそう言い、後ろを振り返る。

 

「上里ひなた!!私はお前を、調査兵団団長に推薦したい!!」

 

「えっ!?私....ですか....!?」

 

若葉の突然の発言。しかし、その自分勝手な意見に反対する者は誰一人としていなかった。なぜならひなたも周りからの信頼が厚く、すべて若葉の言うとおりだったからだ。

 

「で、でも若葉ちゃん!私は...弱い....ですし....。」

 

「....ダメか...?」

 

「!!....や、やります!」

 

幼なじみの若葉の頼みには逆らえないのがひなただった。

 

 

こうして調査兵団初代団長はひなたに決まり、任命式は終了した。

 

「さあ、団長が決まった今、調査兵団のすることはすべて団長が決めていいそうだ。まず何から始めるか。」

 

「そうですね....やはり最初は組織として成り立たせるために役職を決めるべきだと思います。さすがに団長一人で47人全員まとめあげるというのは厳しいですから....。壁外に出た時なんてバラバラになってしまう可能性だってあるかもしれないですし。」

 

「ほう...なるほど。それで?」

 

「五人一組の班を作ります。その中で班長を決め、その五人は常に行動。これで全部で九班できます。」

 

「でも二人ほど余ってしまうな?」

 

「それは私と若葉ちゃんです!若葉ちゃんはみんなと比べてもずば抜けて強いですから、特別な役職について欲しいのです!兵士としての行動や戦闘面の模範となり、私と同等の権力を持つ役職...『兵士長』にします!」

 

「へ、兵士長!?」

 

「さらに!九班すべて私と若葉ちゃんが見るというのもまだ大変ですから、その中から三人ほど『分隊長』を選出します!その分隊長が直接面倒を見る班を一つ作り、その下に二班配置します。分隊長が所属している班は下についている二班のリーダー的な役割を果たします。つまり分隊長は三班(総勢14人)管理し、その分隊長をさらにまとめあげるのが私たちということで!」

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!私が兵士長になることは受け入れよう。だが私ら二人はどうなるんだ?調査兵団は総勢47名だ。私たち二人だけ余ってしまうぞ。それもどうかと思うがな...。」

 

「大丈夫です!いざとなったときは若葉ちゃんが守ってくれるでしょう?」

 

「私任せか...。まあ、当然そうはするがな。でも........守りきれん場合もあるかもしれない...。」

 

「心配しないでください!........私だって今日までの間、何もしてこなかったわけじゃないんですから。」

 

「ひなた....。」

 

「団長としてそれに恥じない戦いができるようにがんばります!」

 

「........ちょっと心配だが....わかった。とりあえずその案で行こう。」

 

「はい!早速なんですが、分隊長については私の中で先に考えていて........」

 

------------------------

 

------------

 

---

 

 

また年月は経ち、2016年の冬のこと。ついに初めての壁外調査が行われることとなった。中国地方と四国を結ぶ四本の大橋。そこだけなぜか出入り口が生成されており、中世の城の門のような造りで開閉できるようになっていた。今回、若葉たちは瀬戸大橋から壁外へと出て岡山県周辺の調査を行う。兵士たちは兵団服を身に纏い、腰には立体機動装置、そして寒さを凌ぐための濃緑色のマントを羽織っている。兵士たちは馬にまたがり、開門を待った。

 

「それでは若葉ちゃん、掛け声は頼みます!」

 

「えっ....私がやるのか...?」

 

「私は大きい声でませんし....こういうのは若葉ちゃんが言った方が志気が上がりますしね!」

 

「....そうか........わかった。それでは、こほん........」

 

若葉は刀を上にあげ、兵士たちに呼びかけた。

 

「同志たちよ!!今ここから人類の反撃が始まる!!私たちの行動は人類の希望となり、糧となるのだ!!今の我々はただ奴らに喰われるだけの貧弱な人間ではない!対抗する手段は見つけ、倒すことができる!...記念すべき初陣として必ず成果をあげるぞ!!!」

 

『オッーーー!!!!』

 

兵士たちは若葉の声に応え、それぞれの持つ武器を掲げた。門がゆっくりと開き、出撃の準備は整った。

 

「今から第一回壁外調査を開始する!!私に続けっー!!」

 

兵士たちは若葉とひなたを筆頭に続々と出発する。橋の向こうにある地獄へ向かって。

 

------------------------

 

------------

 

---

 

それから調査兵団が帰ってきたのは半日後だった。初めての出撃から帰ってきたと情報を手にした住民たちは彼女らを出迎えたが、それはなんともひどいものだった。どうやら初陣は失敗し、大きな損害を出してしまったらしい。ほとんど全員ケガを負っており、食料などを積んだ荷台には戦闘不能になった兵士が横になっている。中には全身に布がかけられている者もいた。

 

そう、反撃どころか返り討ちに遭ったのだ。大失敗した。その状態を見た一般人たちは哀しい目でこちらをみながらひそひそ話している。中にはひどすぎる惨状に目を背く者もいた。

 

(............くそっ....なんでだ........!なんでこんなっ........訓練ではあんなにまとまりがあったのに、ヤツらを前にした途端連携が崩れた........!)

 

若葉は歯を食いしばり、拳を強く握りながら悔しさを表した。

 

「........そのせいで仲間がっ...!!........死に物狂いで鍛錬したのに、私はなんと非力なんだ............!!!」

 

「若葉ちゃん....。」

 

ひなたはそっと横に並び、彼女に囁いた。

 

「........命を失った彼女たちの勇敢な行動は、決して無駄なものではありません。彼女たちのおかけで、何がいけなかったのか、次はどうすればうまくいくのか、作戦を練ることができます。」

 

「........しかし....救えた命だったはずだ!私がすぐに立体機動装置で移動して倒していれば助けられた!!........これでは、死ぬ気で鍛錬した彼女たちの努力は....!!!」

 

「若葉ちゃん....過去のことをとやかく言ってももう変えることはできないんです...。私だって悔しいです。こんなにも仲間を失ったんですから。苦しくて悲しくて、自分は無力だと思い知らされました。本当に私が団長でよかったのかと、帰り道に何度も考えました。私じゃなかったら彼女たちは死なないで済んだのかもしれない....って。........けど、くよくよしてる時間はないんですよ。一度兵士たちのリーダーになると覚悟を決めた以上...その役目を最後まで務めなければなりません。私たちがしっかりしなきゃ、調査兵団はまとまりません。このままトラウマになって戦うことをやめてしまうかもしれない。........私たちはこの壁内の未来を背負ってるんです。戦えるのは........私たちしかいないんですよ...!!」

 

「....!........ひなた...!」

 

この壁外調査で兵士を十数人失った。また、数人ケガと精神状態の治療期間が必要だと判断された。だがそれでもひなたと若葉は前を向く。この壁内の人類のために。

 

---

 

------------

 

------------------------

 

こうして今に至る。冬を越え、春がやってきた。兵士たちの傷もだいぶ癒え、第二回の壁外調査を行うのも頃合いだった。二人は兵団服に袖を通し、部屋を出る。背中には翼のマーク。人間は壁内にいなければ生きられないが、鳥類は空を飛ぶことによって壁内と壁外とを自由に行き来できる。人間もいつの日か自由に壁外へ....。この印にはそんな想いが込められていた。自由を意味する『自由の翼』だ。

 

「今日は分隊長たちと会合だったな。」

 

「はい。第二回壁外調査についての話し合いです。」

 

「....初陣でヤツらの特性はだいたい把握した。熟考したこの作戦ならいけるはずだ。」

 

「そうですね。あとは分隊長たちの同意をとり、兵士たちに覚え込ませて連携をとれれば...。.....彼女たちの心は精神的ショックから仲間を殺された恨みに変わり始めてますから....きっと戦意はこの前よりもあるはずです...!」

 

二人は会議室に到着し、勢いよく扉を開く。しかしそこにいる人数は圧倒的に少なかった。自分たちを合わせ、分隊長、副隊長を合わせて総勢八人いるはずだ。それなのにそこにはまだ三人しかいない。

 

「........っ!おい....もうすぐ会議は始まるんだぞ!なんでこれだけしかいないんだ!」

 

「あっ、ええっ~と........遅れてくるそうです...。なんでも寝坊しちゃったみたいで...。」

 

「全く!せっかくいつも遅れてる私が早起きして、時間通りに来れたと思ったら今日は他の分隊長さんがいないってわけ!?どーゆーことよぉっ!」

 

第二分隊の副隊長、分隊長がそう言う。しっかりものの副隊長とおっちょこちょいで少し抜けてる分隊長。それが第二分隊のトップだ。

 

「........うるさいわね。朝からそんなに大声出さないでちょうだい。...........あ、上里団長、第一分隊長は間もなく参りますのでご心配なく。」

 

スマホを横持ちにして静かにゲームをプレイしている人物がそう言った。こう見えても彼女は第一分隊副隊長。無愛想でいつも無口だが、実力は折り紙付き。第一分隊長のよき右腕である。

 

「あら、元気がいいこと以上にいいことはないと思いますけどねぇ~、第一分隊副隊長さん?」

 

「....元気がいいのとやかましいのとでは全く意味が違うわ。第二分隊の分隊長があなただなんて、下についている人たちはかわいそうね。」

 

「!!........な、なにをっー!言わせておけば!あんたこそ人類のこれからがかかってる会議の直前なのにゲームやってるなんて緊張感なさすぎじゃない!!」

 

「ちょ、ちょっと...!言いすぎですよっ...!」

 

第二分隊副隊長が止めたときには遅かった。その言葉を聞いた彼女はゲームの画面から目を逸らして第二分隊長を睨んだ。

 

「........そんなこと、あなたにだけは言われたくないわよ...!........あぁ、もう...話してるだけで頭がガンガンするわ...。」

 

「ほんっとあんたって失礼ね!」

 

「おいお前らやめんか!なんだ、こんな時期に仲間割れなんて!同じチームだろう!」

 

若葉が一声、渇を入れる。しかしそっぽを向いたまま二人は再び目を合わせることはなかった。

 

(はぁ........全く、朝からこんな悪い空気になろうとは...。この二人は特に仲が悪いからな。最も、こっちの方は........)

 

若葉はチラッとゲームに夢中になっている彼女の方を見る。

 

(彼女は........何を考えているかわからん...。訓練兵時代から私に敵意を向けている気がする...。理由はなんだ?心当たりがない...。なんとかして打ち明けられないだろうか........。)

 

若葉とひなたはとりあえずイスに腰掛けた。

 

「第三分隊は?誰か聞いていないのか?」

 

「あ~、それならさっき副隊長さんが呼びに行きましたよ。寝坊したわけではないそうです。....なにしろ、いる場所は目星がついているそうで...。」

 

「なるほど、ならばいつもの場所だな。直に来るだろう。」

 

若葉はそう言い、腕を組んだ。

 

(全く........兵士を引っ張る隊長たちがこんなのでいいのか...?緊張感が...なさすぎる........。)

 

(第二話に続く)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。