モモンガさんにはメールを送っておいたけど大丈夫かな。
怒ってないかな。
とにかく急げ急げ。
「(やばいやばい。こんな時に限って……なんで最悪のタイミングって重なるんだろう)」
時計を見ると予定の時間まで残り15分程度。ここからパソコンをつけてゲームを起動してログインして、となると予定時間まで10分残るか残らないか。
「(モモンガさん、怒ってないといいんだけど……)」
ゲーム『ユグドラシル』を起動しログインする。
案の定少し時間がかかり余計冷や汗が出る。
「(最後なんだし、色々と写真撮ったりしたかったのにな。それに……モモンガさんにも伝えたいことたくさんあったのに)」
数分経って景色が切り替わる。
そこに広がっていたのは一面雪景色。
間違えようもない私が作った場所。
本当なら吹雪が絶えず吹いている場所な筈なんだけど、ここ暫くは切っている。
「(っと、そんなことはどうでも良いんだ。モモンガさんは……第9階層かな?)」
ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の本拠地、ナザリック地下大墳墓の9階層へとある指輪を使い転移をする。
この指輪を使うのも最後だと思うと、寂しい気持ちになるなぁ……。
〜第九階層〜
「ふざけるなっ!」
「(ビクッ)」
とある事が起き、思わず激情を机にぶつけてしまう。ドカッという音と共に戦闘不可領域を示すバナーが現れる。
それと同時に俺の目の前に転移してきた人が1人いて驚かせてしまった。
「あっアテナさん⁉︎来てくれたんですね!」
「?」
「あっ、そうだった。えーと……『来てくれてありがとうございますアテナさん。あと驚かせちゃってすいません』」
『いえいえ。怒られてもしょうがないですから。今日はずっと一緒にユグドラシルにいるって約束したのに……こんなことになってしまって』
ある事情から彼女に対して会話ではなくチャットを使う。驚いたのは、恐らくだが転移した直後に目の前に拳が振り下ろされたからだろう。気をつけなければ。
『いえ事前に教えてくれていましたから怒ってませんし気にしてませんよ。来てくれて嬉しいです』
『私こそモモンガさんと会えて嬉しいです。他の人……と会う時間がなくなっちゃったのは悲しいですが』
そうチャットを打ち込んだ後にアテナさんの近くに悲しい顔のマークが連打されていた。思わずふふっと笑ってしまったが気づかれていないだろう。
『アテナさんはこの後ずっと?』
『はい。せめて最後の時まではモモンガさんと一緒に、と思ってます』
『ありがとうございます。本当に嬉しいです』
『いえいえ。それでこの後の予定はありますか?』
『ギルド武器持って玉座の間でスクショを撮って最後はゆったり過ごそうかなと』
『お、いいですね。どうせなら私も完全武装しちゃいますか』
『良いですね、やっちゃいましょう』
アテナさんも了承してくれ、ギルド武器を手に取る。俺の横でアテナさんも全身をアテナさんが1から-素材集め及びデザイン、果てには気の遠くなるような周回まで-心身こめて作った
その姿は昔のゲームのキャラクターまんまだとか。
エメラルドのような煌びやかな長髪に金色の瞳、純白のドレスに紅い色を基調とした頭飾りを右側頭部に。
腕と脚はドレスとは対照に純黒の鎧がついていて金色で装飾されている。
盾は蒼を基調とした深い海をイメージしたような円形の盾で『守護神の象徴』という名前の
信じられないかもしれないが、彼女はこれらの所業を、課金勢でも中々出来ない廃人の領域を
これは彼女の体に纏わる問題故、とてもデリケートなのでまた後日話すとして…
『準備できました!』
『では、行きましょう。他のNPCも連れてきて良いんですよ?ほら、アテナさんが作った子達とか』
『そうしたいのは山々ですが、時間無くなっちゃいそうなので。それにあの子達のスクショは沢山あるので大丈夫!』
『わかりました』
アテナさんがビルドした2体の第三階層守護者とその姉妹達。
俺と同じく強さよりもロマンを追い求めたNPC。
『私以外って誰か来たんですか?』
『沢山来てくれましたよ。ぶくぶく茶釜さんにペロロンチーノさん、やまいこさんに。流石に明日も仕事な人ばかりだったのですぐログアウトして行っちゃいましたが』
『いいなぁ、私も会いたかったなぁ』
『タブラさんや女性陣の方々もアテナさんに会いたかったって言ってましたね』
そんな他愛もない話をしながら玉座の間に向かう。
途中で見つけた戦闘メイドのプレアデス姉妹をみてあることを思い浮かびアテナさんにチャットをする。
『アテナさん、プレアデス達も玉座の間に連れて行っても良いですかね?』
『良いと思いますよ。最後ですからやりたい事は全部やっちゃいましょう』
『ありがとうございます』「えーと、なんだっけな。確か…『付き従え』」
コマンドを唱えると執事長の大柄な男のセバス・チャンを筆頭にメイド達が後ろに付き従って歩く。
暫くして玉座の間の大きな扉の前に辿り着く。
アテナさんが扉を開け、俺に向かって軽いお辞儀をして固まる。
一瞬何をしているのか分からず何をすれば良いのか分からなかったがその後のチャットで全てを察した。
『ギルド長モモンガ様。こちらへ』
『うむ。ご苦労』
そう、RP(ロールプレイ)だ。
アテナさんに先導され唯一ある椅子に座り、アテナさんが直ぐそばに控えるように立つ。
『モモンガ様、
『うむ。其方もナザリックの守護という大役、大義であった。其方のお陰で安泰だったといえるだろう』
『勿体なきお言葉』
アテナさんはナザリック地下大墳墓の守護神(という設定)な為、あくまでもギルド長の俺よりは立場は下(もちろん形式上なだけで上下関係など無いに等しい)。だからこそアテナさんは俺に敬語を使って喋っているし俺は長として接する。
残り3分程度となった事で互いに満足し、お互いに正面を向く。
そこに居たアルベドのキャラ設定を開いて見てしまい、アテナさん共々ドン引きし、最後の一文に『ちなみにビッチである』と書いてあるのを発見し、どうせ最後だからとアテナさんに提案(というか強引に)されて『モモンガを愛している』に変更したりした。
最後に眺めたのは掲げられている旗。
それらは嘗て居たギルドメンバー達を象徴する旗。今までの楽しかったことを思い返し、思わずリアルで涙が出そうだった。
『モモンガさん』
『はい?』
唐突にチャットを打ち込まれる。
『楽しかったですか?』
『ええ、とても楽しかったです。ここは、ここのみんなは、ギルメンのみんなは、俺の宝です。勿論アテナさんも』
『ふふっ、ありがとうございます。私も、とても楽しかったです。悪質プレイヤーに騙されていた私を救ってくれて、ここに招き入れてくれて、耳の聞こえない私をずっと助けてくれて、本当に感謝してるんです。‥‥最後に、1つだけお伝えしたい事があるんですが、良いですか?』
『はい、なんでしょう?』
軽く時間を確認するとサービス終了時間まで残り1分切っていた。
何かあるのなら早く、と思っていたがアテナさんからの言葉はまだ来ない。
残り30秒となったところでアテナさんは俺の真正面に立ち、抱きついてきた。
セクハラ警告が出ると思い焦ったが、そんなものは出なかった。
『大好きです。モモンガさん。人としても、異性としても。私は、貴方と出会えて幸せでした』
突然そんなことを打ち込まれる。
その時の俺の焦りようはとんでもなかった。
もう何が何だかわからず頭がショートした。
が、それ以上の何かが俺の中を支配していた。
いやだって当たり前だろう⁉︎生まれてこの方女性にモテた事ない人間がこう言われたら誰でも頭ショートするって!
『ふふっ。最初で最後の告白、です。モモンガさん、貴方に助けられた日から私は貴方が好きでした。ですがもう叶わない恋なのはわかっています。ですので、これだけはお願いしたいです。
私を、覚えていてくださいね。貴方を愛した1人の女性として』
『アテn……』
言いたいこと、伝えたい事は沢山あったが時間が来てしまったらしく、チャットが強制的に落ちると同時に視界が暗転する。
ずるい、ずるいですよ。自分だけ言いたいこと言うだけ言ってさよならなんて。
返答の時間くらい、くれても良いじゃないですか。
「ん?」
「?」
それから色々と考えていたはずだった。
直ぐにアテナさんの連絡先を探して連絡とって、とか答えとかどうするべきなんだ、とか色々と考えていたのに、いつまで経ってもログアウトされない。
「(なんだ?延期にでもなったのか?とりあえずGMコールを……)」
と、そこでようやく異変に気づいた。
GMコールができない。なんならコンソールすら開かない。
隣をチラッと見てみるとアテナさんも同じようで何回も手を動かしていた。
「アテナさんにチャットで……って、チャットすら出ない。どうすれば良いんだよ⁉︎」
「(ビクゥ!)」
思わず叫んでしまうとアテナさんがびっくりしていた。
「あ、ごめんなさいアテナさん。って、彼女耳が聞こえない……」
「????」
「どうかされましたか、モモンガ様。アテナ様」
ただでさえ何が何だかわからず混乱しているところにさらに追い打ちをかけるように、聞こえるはずのない声が聞こえてきた。
意味がわからない。
何が起こったの。
サービス終了間際に告白するとか言う大迷惑なことをした罰?
にしては手が混みすぎている。
全くコンソールが開けないしログアウトができるのかどうかすら不明だと言うのに、なんの因果か
生まれつき耳の聞こえない私はゲームの中ですら無音の日常だったはず。
それが急に聞こえるようになった。
周りが何かを喋っているのはわかる。
けど言葉として理解ができない。
音を聞いている、と言うよりは耳の中から殴られてる、と言った感覚に近いかもしれない。
「☆×¥*♪3+〒÷^7÷」
「+々<÷々^<*→%÷9〒×$」
ようやく音が響いてくると言う事象に慣れ始めた頃に執事長のセバスプレアデスを連れて何処かへ行く。その際に私に向かって何かを言ったのはわかるが何を言ったのかわからない。
私はとてつもない恐怖のようなものを感じていた。
聞こえる全てのものが意味わからず、私に何かをしようとしているように感じてしまったから。
「○々♪%8^$4<々$?」(アテナ様どうされたのですか?)
「<×%々^・4%♪々<○」(アルベド、アテナさんのことは私がなんとかする。先に階層守護者を集めておいてくれ)
アルベドが何かを話した後にどこかへ消える。
何、何が起こってるの。
こわい。
私が、何をしたって言うの。
「えーと、確か……第一位階の魔法で……あったあった」
未だ怯えてるアテナさんを横目で見ながらとある魔法のスクロールを2つ取り出し、片方をアテナさんの前にそっと、音を極力立てないように置く。
先に自分で使い魔法を発動させる。(その際の発動音でさらにアテナさんが怯えてしまったが)
そして空中に指を走らせる。
『アテナさん、このスクロール覚えてますか?』
それを見た途端にアテナさんの緊張が少し和らいだように見えた。そして少し怯えながらもスクロールをつかってくれる。
なんてことない。『空中に文字を書く』だけの魔法だ。
『ももんがさん、これ、いったいなにが』
未だアテナさんの手は震えていて字も上手く書けていなかった。が、なんとか読み解く。
『俺にもわかりません。アテナさんどうしたんですか?ものすごく怯えてるように見えますが』
『わたし きこえないなのに おとがきこえるんです みんな なにいってるのかわからなくて みみのなかからなぐられてるようなかんかくで すごいこわくて』
震える手で文字を綴っているアテナさんは今にも泣きそうだった。
これは、どうすれば……
『アテナさん。ひとまず提案なのですが俺の魔法でアテナさんの聴覚を封じる、と言うのはどうでしょう。そうすれば音が聞こえるようになったことによる恐怖は少しは和らぐと思います』
本当ならこんなことしたくない。が、これ以上音のある状態にしてしまうとアテナさんが倒れてしまいそうだった。
魔法も直感だが扱えるという自信があったからこその提案だった。
確かに今まで音の無い生活をしていて、それが当たり前になっていたのに、急に意味不明な事態に巻き込まれ、音が鮮明に聞こえるようになると怯えもするだろう。
そんな簡単なことにどうして直ぐ気づけなかったのか
『それと、大丈夫ですよ。ここのみんなアテナさんの味方です。昔みたいに傷つける人なんていません』
『わかり ました。ももんがさん、おねがいします』
『はい。少し不快な感覚があるかもしれませんが我慢をお願いします』
俺が文字を綴り終えるとアテナさんは首を縦に振ってくれる。
できる限り静かにしているからかだいぶアテナさんの怯えは取れてきたように見える。が、まだ油断は禁物だろう。
他に何をすべきかを考えているとアテナさんが再度文字を書く。
『ももんがさん なんで アルベド しゃべってたんですか?』
『俺にもわかりません。ですが他のNPCの反応を見るに、NPCが自我を持った、そう考えるのが妥当だと思います』
『わか りました それと ももんがさんって手話できますか』
『手話、ですか。申し訳ないです。手話はわからないんです』
『だ、だったら わたしのつくったNPCのエミヤをつれてきてもらえませんか。エミヤなら、手話ができるかも』
『ふむ。わかりました。では、魔法をかけますね』
『はい』
コンコン
「モモンガ様、アルベドでございます。入室してもよろしいですか?」
「ッ⁉︎」
「(しまっ)」
突然ドアを叩く音とアルベドの声が聞こえてくる。それによりアテナさんがまた怯えてしまった。
さっきよりは少しマシにはなっていたが、今にも泣きそうなので急いで文字を書く。
『アテナさん、耳を思い切り塞いでください』
それでアテナさんが耳を塞ぐのを確認して扉の向こうにいるアルベドに話しかける。
「すまないが後にしてくれ。要件だけ聞こう」
「ハッ。守護者各位、第六階層へ集まりましたのでそれのご報告に参りました」
「わかった。直ぐに行く。それとその場におそらくだがエミヤも居合わせるのでそれを伝えておいてくれ」
「それはまた何故でしょうか?」
「アテナさんの希望だ。場合によってはアテナさんの横につきっきりになる可能性もある。異論は認めん」
「畏まりました。ではそのように伝えておきます」
足音が扉の向こうから聞こえなくなり、アテナさんの肩を叩く。
一瞬ビクッとなっていたが恐る恐るこっちを向いてくれる。
『失礼しました。では魔法の方をかけますがよろしいですか?』
『はい よろしくおねがいします』
それを確認してから魔法を使う。
「
開いてくださりありがとうございます
n番煎じのオリジナル至高の御方とモモンガさんが転移するお話です
実は前に一度似たような作品を私が読んでいました。
その方はとある事情から物語を書くことをやめてしまっていたんですが最近コンタクトを取ることができました
それから話していて物語のプロットを頂けることになりました。
更新頻度は遅いですがゆっくりと、ひとまずはシャルティア戦を終点として書いていきます
よろしくお願いします