「あるべど…」
「アテナ様…」
ナザリックのとある個室でアルベドアテナが向かい合う。
本来ならば支配者と従者という関係の2人だがその目は真剣そのもの。
そして互いの手に持っているのは複数の紙。
「「…………」」
そして互いに示し合わせたかのように手に持っていた紙のうち一枚を裏向きにして机の上に置く。
そして交換をする。
互いに差し出された紙を、まるでガラス細工を扱うかの如く丁重に慎重に手に取り、表面を見る。
「「ごふっ⁉︎」」
そして互いに吐血(したかのように見える)
だがその顔からは極上の幸せを感じさせた。
「「……」」
そして互いに親指をグッと立てる。
「それじゃあ、つぎは」
「はい、7日後、同じ時間で」
「うん、わかった。……あ、そうだ、あるべど」
「はい?どうされましたか?」
「ちょっと、ぼうえいさくを、私なりにつくった、なので、評価をおねがい、できるかな?」
「勿論でございます。何時でもお持ちください」
「ありがと」
そして業務連絡をし、時間をずらして部屋から退出し自分の仕事場へ向かう。
そう、これはアテナとアルベドのみ知る密会。
「さいこう…あるべど、引き込んでよかった…」
「ああ…お美しい…アテナ様も流石としか言えないわ。次は負けないように…」
そう、アインズの写真交換会である。
仕事?サボってるに決まってるだろう
「むふー…」
「乗り心地はどうでござるか?」
「さいこう…」
「それならよかったでござる!」
「……」
「ももんさんも、のりませんか?」
「い、いえ、遠慮しておきます」
「そう…ですか。あ、じゃあナーベ、乗らない?」
「わ、私如きがミア様の…」
「むー…」
森の賢王の背中は控えめに言って最高だった。もっふもふしていて家にあったソファと比べても遜色ない。
えーと、例えるならあれ
人をダメにするソファ
あれに似ていた。
……そういえば久しくお風呂に入ってないなぁ。一度ナザリックに戻ってお風呂に入ろうかな
「あっ!モモンさんご無事でしたか!」
「はい、ご心配をおかけしました皆さん」
森から出るとンフィーレアと漆黒の剣に出迎えられる。そして私を-正確には私が乗っていた森の賢王を-見てみんな固まる。
「あのモモンさん、ミアさん、この魔獣は」
「森の賢王です。皆様が撤退した後に遭遇しましたのでミアさんがねじ伏せました。決して暴れたり皆さんを傷つけたりはしませんのでご安心ください」
「ミアさんが⁉︎」
「なんと…」
「マジかよ⁉︎」
「すごい…」
「さすがですね…」
そんなすごいことしてない…はず。多分きっと。
「殿の仰る通りでござる。この森の賢王、殿と姫に仕え、共に道を歩む所存。皆々様にはご迷惑をおかけしたりはせぬでござるよ」
「こんな
「「え?」」
だけどそんな疑問は漆黒の剣のニニャの発した言葉で何処かに消し飛んだ。
強大?え?魔獣?この子が?
「強大な力と叡智を感じるのである!」
(強大な力⁉︎叡智⁉︎)
(え…どういうこと?可愛いハムスターじゃ…?)
「これだけの偉業を成し遂げるたぁ、ナーベちゃんやミアちゃんを連れ回すだけのことはあるわ!」
「私達だけでは皆殺しにされていましたね。さすが、お見事です!」
「い、いえ…今回はミアさんの功績ですので、私ではなく…」
あの⁉︎なんで私に振るんですか⁉︎
「……ナーベはどう思う?」
「強さは別として力を感じさせる瞳をしていると思います」
「(バカな…)」
「(嘘でしょ…?)」
漆黒の剣だけでなくナーベすらそんな反応をする。
どうしてもそれが信じられず、私から質問を投げかけてみる。
「えーと…みなさん、このこ…可愛いと思う、ですけど…そう思わない、ですか?」
「可愛い⁉︎そんなとんでもない!今もこの強大な圧で倒れてしまいそうです!」
嘘でしょ?
「モモンさん」
まさかのカルチャーショック的な出来事に沈んでいるとンフィーレアが声を上げる。
「その魔獣を連れ出した場合、縄張りがなくなってしまいモンスターがカルネ村に襲いかかったりしませんか?」
「どうなんだ?」
「その可能性はあるでござるな。けれど、ここ最近は森の中の情勢も不安定故。某がいても何れは森の外へモンスターが出ていた可能性は高いでござるよ?」
「そんな……。ッ…でしたら、モモンさん!」
その事実に、恐らくはカルネ村と自分の好きな人へ被害が出るかもしれないと不安を抱えていたンフィーレアは何かを決意し顔を上げた。
「僕をあなた達のチームに入れてくれませんか!」
「「は?」」
唐突な提案に思わず声を出してしまったが続けてンフィーレアは言う。
「僕は、エンリとカルネ村を守りたい!僕に、モモンさん達の強さを、カケラでも教えて欲しいんです!薬学に関しては少しは自信がありますし、荷物持ちでも、なんでもやります!だから…お願いします!」
ンフィーレアはそう言って深々と頭を下げる。
「それはつまり、マジック・キャスターとして強くなりたい、と言うことでしょうか?」
「…はい!」
モモンさんの問いにンフィーレアは力強く頷く。その目からは確かな覚悟が読み取れた。
……すごいなぁ。私には出来ないようなことだ。
「ふふ…ははは…。いや、すまない。君の決意を笑った訳ではないんだ。許してくれ。気持ちは充分に理解した、覚えておこう。だが君を私のチームに加えることはできない」
「そう…ですか」
「しかし、この村を守ると言うことに関しては、少しばかり力を貸すとしましょう。もしかしたら君の協力も必要になるかもしれない」
「…っ!はい!喜んで協力させてもらいます!」
「ミアさんも宜しいでしょうか?」
「はい。もちろんですよ。私もできる限り力添えしますね」
「…ッ!ありがとうございます!」
この時のンフィーレアの行為は、私は見習わないとと密かに思った。……私ももっと、行動力を高めるべきかな。
そうすればきっと…
モモンさんを口説き落とせるのでは?
〜日が暮れた頃 エ・ランテル〜
「それでは皆さん、私たちは森の賢王の登録へいきますのでここで」
「はい!モモンさん達のおかげで大収穫でした!報酬に色をつけてお待ちしてますね!」
そうして森の賢王の登録のため冒険者組合へ向かう。……にしてもハムスターに乗るのって、今更ながらすっごい恥ずかしい。モモンさんしれっと乗るの拒否するし《今は存分にお楽しみください》って言ってたけど、モモンさんも恥ずかしいだけでは?
…いや、まさか、そんなことないよねうん。
そうであってください…。
そんなこんなで恥ずかしい思いをしながら森の賢王に揺られていると誰かからメッセージが入る。モモンさんも同じなようで互いに顔を見合わせる。
「…オルトリンデか、どうした」
『アインズ様、アテナ様、聞こえるでしょうか?』
「問題ない」
「ん…わたしも、だいじょうぶ」
『それでは、先日報告した2人、クレマンティーヌ及びカジットについてです。どうやら2人はンフィーレア・バレアレと言う人物を誘拐する為行動を起こしています』
「ふむ」
「…理由は?」
『申し訳ありません。詳しくはわからないのですが【死の螺旋】という儀式、アンデットの大量発生を故意的に起こす為、としかわかっておりません』
「構わない。それでその二人組は?」
『現在、エ・ランテルに侵入しバレアレ店の近くに潜伏しています。御使いを複数体動員すれば捕えることは容易かと。いかがいたしましょう?』
「そうだな…ではオルトリンデよ。その2人は基本自由にさせておけ。だがンフィーレアが店へ戻り次第、店での出来事を逐一私へ報告しろ。恐らくはンフィーレアが店へ帰った時を狙うだろうからな。また、周囲からの介入ができないよう魔法などを使った上で御使いを1人介入させ交戦をさせろ。ンフィーレアは攫われても良いが漆黒の剣は死なせるな」
『畏まりました』
「アテナさんからは何かありますか?」
「んー…そう、ですね。どうせやるなら御使いにはいい勝負をさせて、敢えて負けさせては?そうすれば今回の相手がどれほどのものなのか、漆黒の剣の目線で噂を広めてくれるのと、それを討伐した時、私たちの名声もっと上がる、思います」
「なるほど。聞いていたかオルトリンデ」
『勿論でございます。それでは、手筈通りに行動します』
そうしてメッセージが切れた。さて…ここからどうなるか……。
「……あ」
「どうしました?」
「森の賢王の名前思いつきました」
「…お聞きしても?」
「ハム助、です!」
あれ?なんでモモンさん黙っちゃうの?あのー?
なんで?
結構可愛い名前じゃない?
「それでは皆さん、薬草を下ろしましょう」
「わかりました!ンフィーレアさんは家の倉庫を空けて来てください。その間に下ろしておきますよ」
「ありがとうございます。……あれ?」
「どうされました?」
ンフィーレアが店へ到着し、玄関を開ける。だが違和感を感じていた。
「あ、いえ。おばあちゃんがいないのと、鍵掛けてないの珍しいなって思いまして」
「おーい!全部下ろし終えたぜ!」
「どこへ運べばいいであるか?」
「あ、少しだけお待ちください。おばあちゃーん?」
ンフィーレアは自身の家だからかあまり警戒せず中へ入る。
「やぁ、おかえりー」
出迎えて来たのは、女の声。
同時に奥の扉から出て来たのは金髪の女。
「その…誰、ですか?」
「お知り合いではないのですか?」
「んふ、お姉さんはね、君を誘拐しに来たんだ〜♪」
「えっ…」
「ンフィーレアさん!下がって!」
突然のことに困惑するンフィーレアと即座に警戒一色になる漆黒の剣。ンフィーレアを守るために前へ出るが女は一歳余裕の笑みを崩さない。
「早く逃げてください!」
「で、でも…」
「外へ逃げれりゃモモンさん達に守ってもらえる可能性がある!早く逃げろ!」
「ニニャ!お前も逃げるのである!」
「そうです!貴族に攫われたお姉さんを助けるのでしょう!」
「お涙頂戴ねぇ〜泣けちゃう〜。でも…逃げられると困っちゃうから」
そうしてスティレットを取り出し、一触即発の雰囲気へ。漆黒の剣の4人は目の前の女が格上であること、死ぬ可能性が限りなく高いことを理解した上で戦う決意をしていた。
「…にしても、遅いなぁ」
女がそう呟いたと同時、扉が開く。
「夜分遅くに失礼します。ポーションを買いに来たのですが…」
そこから現れたのは純白のローブを纏った女性。首からは冒険者の証であるプレート-ミスリルを示す色のもの-が掲げられていた。また、フードを深くかぶっていた為、漆黒の剣は新手かと思いさらに警戒するが誘拐しに来たと言う女は驚愕の表情をしていた。
「は?なんでお前生きてんだ?」
「なぜ、と言われましても」
「お前は殺したはずだ」
「……?……ああ、妹が帰ってこないのはそう言うことですか」
だが2人の会話はどこかですれ違っているのが噛み合っていない。ペテルはそれを見て一か八かと思い口を開いた。
「ミスリルのお方!手を貸して頂きたい!そちらの金髪の女はンフィーレアさんを攫おうとしています!」
「ふむ…承知しました。それでは妹の仇討ちの意味も込めて協力をしましょう」
「ちょっとめんどくさいなぁ〜カジッちゃん?まだなの?」
金髪の女が気怠そうにそう言うと扉がガチャンと閉められる。そこにいたのは痩せこけた顔の杖を持った男。
「遊びすぎだ」
「でぇもぉ、悲鳴が漏れないようにはしてくれたんでしょ?ならこの子達で遊んでもいいんじゃないかなぁ?特にその純白のローブを被った子はねぇ」
一度倒した経験からか金髪の女は余裕の態度を崩さない。
それが仕組まれたことだとは知らずに。
「おぃーっす。変わっていないようで」
「貴女こそ全く変わっていませんね。改めまして今回依頼を受けてくださり…」
「あー要らない要らない。そんな堅っ苦しいの嫌。それよりも、報酬前払いって話だけど、用意してんの?」
「こちらに」
「ほぉー!敢えてふっかけてみたけど正解だったわ!……んで、私が出なきゃいけないほどなの?」
「分かりません。ですが念には念をと言うことで依頼させて頂きました」
「ま、私の喧嘩相手になるならなんでもいいけど」
「もしもの時はこちらに神の遺産がありますのでご安心ください」
「いや別に気にしてないけど。負けそうになったら逃げの一択だし」
「それもお変わりないようで。…それと、一つ貴女に聞いておかねばならないことがあります」
「あーはいはい。分かってるわよ。一応ないとは思うけど
「問題ありません。それで相手に関してですが」
「そのプレイヤー達の名前…国名のようなものね。それは…
アインズ・ウール・ゴウン。
私の知ってる限りだと喧嘩を売ると死ぬまで殺しにくるようなギルド。それだけは念頭に置いておきなさい」
なぜでしょうね
本編より前書きに載せた物語の方が筆が進んだんです
本当になぜだろう(
プロット提供者様に見せたところ
「前書きと序盤の森の賢王とのやりとりに全て持って行かれて本編ちゃんと読んでない」
だそうです
喜んでいいのか悪いのか…w
これからも前書きはアテナと守護者達の何気ない日常を書いていきますので何卒よろしくお願いします
それでは読んでくださりありがとうございます
感想や評価などくださると嬉しいです