人間種のギルドに騙されて(なお本人は気づいていなかった)ナザリックに単独出撃させられていた所を見回りに来たモモンガに助けられた事からギルドに加入した。
なおその後アテナを騙していたギルドは消滅したとかなんとか。
掲示板では骸骨とバードマンと純白の騎士が何故かスレッドに多く上がったという。
忠誠の儀があった翌日
『準備はいいかねマスター』
私は自室でエミヤと向き合い、手話に対してコクと頷く。
「モ モ ン ガ さ ん」
「も お ん が さ ん」
「お は よ う」
「お あ よ う」
「ご ざ い ま す」
「こ あ い あ す」
エミヤをしばらくの間見つめるとどこからかA4の紙に65点とかいた物を見せてくる。
65点かぁ……頑張ってるんだけど……
『そう気に病む必要はないぞマスター。初日にしては上出来も上出来さ』
『ほんとに?』
『ああ。で、どうする。まだ続けるかい?』
『もちろん。お願いエミヤ』
『承知した』
現在は発声練習中です。流石に喋れないのは不便すぎるのと、もっと気兼ねなくモモンガさん達とお話をしたいから。
音のある生活にも、半端無理矢理とはいえ慣れることができた。
……まあいまだに唐突に音が鳴るとびっくりしてしまうんだけど。
『声のボリュームの方はもう少しあげても良いかな?』
『うん。大丈夫かな』
エミヤには口で喋ると同時に手話をしてもらってる。
これは私の提案ではなくエミヤからの提案。
手話と音を頭の中で結びつけれたらより早く上達でき、音のある生活に慣れるのでは、ということらしい。
実際に効果はかなりあると思う。耳の中から殴られてるような感覚はもう殆どない。
『そうだな。マスター、今日1日は練習に費やし、明日の朝にギルド長殿へ挨拶に行く、というのはどうだろう』
『明日が本番ってこと?』
『そういうことだ。私の見立てだが、おそらく後数時間も練習すれば発声自体は問題なくなるだろう』
『……なら、やってみる』
『それでこそ我がマスターだ。さ、少し休憩してから練習再開といこう。クッキーを作ってきたので食べるといい』
『ありがとうエミヤ』
次の日
(この世界に来てから三日目。魔法やスキル、アイテムは使える。他に確かめることは……)
メイドの1人とセバスが傍に控えている状況で俺はこれからやるべき事を書き連ねる。
特にナザリックの外にいるかもしれないモンスターや人間の強さ確認は最重要事項だ。
仮にアテナさんやNPC達に危害を加えることの出来る存在がいるのならば警戒レベルや防衛策をさらに強固にする必要もある。
(だけどまずは何から……)
コンコン
不意に扉を叩く音が聞こえた。扉の前に待機していたメイドが外へ出て誰が来たのか確認をしてくれる。
「モモンガ様、アテナ様とエミヤ様です。面会をご希望とのことです」
「わかった、通してくれ」
そうして入ってきたアテナさんとエミヤを見て、エミヤが一瞬付き添いの先生に見えたのは黙っておこう。
まだ手話を覚えきれていない為転移直後に使ったスクロールを取り出すとエミヤに止められた。
「ギルド長殿。マスターは音のある生活にある程度慣れて、言葉を聞き取る程度は出来る様になったので普通に喋ってほしいそうだ」
「そうなのか?アテナさん、大丈夫なんですか?」
アテナさんはコクコクと頷いて何度か深呼吸をしていた。
何が始まるのか分からず、首を傾げるとアテナさんが何かの入れ物をこちらに差し出しながら口を開いた。
「もも、がさん。おはよう、ごあいます。なにか、てつだえること、ありますか。それと、えみやとごはんをつくってきたので いっしょにたべませんか」
手伝ってくれるという申し出はとても嬉しかったが、それ以上にアテナさんが言葉を発したことに驚き思わずエミヤを見る。
傍にいたセバスと一般メイドは感極まっているのか涙しながら拍手していた。
俺も思わず拍手してしまいそうだった。
「昨日ずっと練習をされていた。曰く、ギルド長殿や他の守護者殿、メイド達と普通にお話しできるようになりたい、とのことだ」
「なるほど。アテナさん、凄いです。本当に。それにお手伝いを申し出てくれてありがとうございます。ご飯も作ってきてくださって。俺はアテナさんがいて幸せ者です」
アテナさんに近寄ると、あらためて小さいなと思ってしまう。
今の俺が180位の身長なはずだから、大体150くらいなのだろうか。
娘がいたらこんな感じなのだろうかと思い頭を撫でると嬉しそうに笑う。まさに年相応の女の子、といった感じだ。
……俺、この人に告白されて、いるんだよな。
今の今まで異常事態のせいで忘れていたけど、いつ返事をすれば良いのだろうか。
「……?ももんが、さん?もしかして、ごはん、いらなかった、ですか?」
「っ、ああいえ。そう言うわけじゃないんですが、この体になってからというもの食欲や睡眠欲とか何もなくてですね。ご飯も食べれないんですよ」
「あんでっと、だからですか?」
「はい。おそらくですが」
「そ、れなら。わたし、これ、もってます。つかて、ください」
そう言われて渡されたのは一つの指輪。鑑定してみると『人化の指輪』だった。
……人化?つまり?人間種に一時的になれる?
「アテナさん付けてみますので少々お待ちを!」
周りにセバス達がいるのも構わず指輪を手にはめ、効果を発動させる。
まず感じたのは良い匂いとお腹が空いた感覚。
そして気分が高揚したにも関わらず今までみたいに強制的に沈静化されなかった。
「ありがとうございますアテナさん!俺もこれで食事ができるんですね!」
「そのゆびわ、わたし、つかわないので、ももんがさ、に、あげ、ます。つかて、ください」
「はい!ありがとうございます!ずっと大事にさせて頂きます!あ、せっかく作ってくださったんですから食べましょう!」
ちなみに、モモンガの人化はハンサムなイケメンとのこと(アテナ&メイド証言)
アテナさんが持っていた入れ物には白い四角いモノで何か色々なものを挟んでいるものがたくさん入っていた。
「アテナさん、これは?」
「さんどいちって言うらしいです」
「サンドイチ?」
(ギルド長殿。サンドウィッチという食べ物のことです。まだちゃんと喋れないので大目に見てあげてほしい)
(なるほど。すまないなエミヤ)
(いえいえこれしきのこと。マスターやギルド長殿のお役に立てるなら本望というものですとも)
アテナさんが皿を何枚か取り出し盛り付けている最中にエミヤが小声で教えてくれる。
なるほど、本でしか見たことなかったがコレがサンドウィッチというものなのか。
「せばすも、しくすすも、いっしょにたべよ」
「いえアテナ様。私は大丈夫ですのでモモンガ様とお楽しみください」
「そ、そうです!それに私の様な者がアテナ様やモモンガ様と共に食卓を囲むなんて恐れ多いです!」
「でも、みんなのぶん、つくてきたんです。わたし、みんなといっしょにたべたい」
「セバス殿、シクスス殿。マスターは皆と食事を望んでいるんだ。せっかく頑張って作ってくれたのだからお言葉に甘えるべきじゃないか?」
「そうだな。エミヤの言う通りだ。セバス、シクススよ、共に食事にしよう」
「ですが……」
未だ渋るセバス達に、ちょっと悪いとは思うが奥の手を使うことにする。
「なんだ?それとも私たちと食事をするのは嫌か?」
「滅相もございません!」
「そんなことはありません!」
「では共に食事にしよう。何、食事は大勢の方が楽しいと言うしな」
そこまでしてようやくセバスとシクススがこちらへ来る。
それを見てアテナさんの顔が一気に明るくなる。
ああ、この笑顔を一生守りたいなと、不覚にも思ってしまった。
「マスター。私が準備しよう。座っていたまえ」
「ん、わか、た」
エミヤは慣れた手つきで飲み物とサンドウィッチというものを均等に分けていく。
まずは俺に、その次にアテナさん、セバス、シクススの順に置いていき、皆の前に3〜4つのサンドウィッチと茶色い飲み物が置かれた。
「今回は無難に卵サンドウィッチと野菜とハムのサンドウィッチにさせて頂いた。今後も機会があればより凝ったものを料理したいとのことなので期待して欲しいそうだ」
「そうだな。アテナさん、気長にお待ちしていますね。楽しみにしています」
「がん、ばりまふ」
「それでは私は食堂運営をしなければならないのでコレにて失礼させて頂きたい。ギルド長殿、また何かあればいつでもお呼びください。すぐに駆けつけます」
「うむ。ご苦労だったエミヤ」
「あいがと、えみや」
「お礼など勿体無い。ギルド長殿、それにセバス殿にシクスス殿も、お礼の言葉や労いの言葉は是非とも我がマスターへ」
「エミヤ、私の人化は極秘事項だ。間違っても噂を流さないように」
「それはまた何故……と言う野暮なことはやめましょうか。ええ解りました。私の心のうちに留めておきましょう」
イケメンな見た目同様、どうやら中身もイケメンなエミヤは気の利いた言葉を言って部屋から出ていった。
「おいし、ですか?」
「はい。とても美味しいですよアテナさん」
「よかた、です。せばすとしくすすも、おくちにあいますか?」
「ええ。とても美味です。ありがとうございますアテナ様」
「アテナ様のお料理を口にすることができて私は幸せ者です!」
具材はエミヤが作って私はパンを挟んだだけなのだけどみんな褒めてくれるので嬉しい反面無性に恥ずかしくなってしまう。
それを紛らわすようにモモンガさんに声をかける。
「ももんか、さん。なにをしてた、ですか?」
「特にこれといった仕事はしていませんよ。優先してやるべき事、後回しにして良い事などを大まかに決めていただけです。他のことはアルベドやデミウルゴス、それにセバス達も手伝ってくれたりしていますので大助かりしています」
「でしたら、これからこきゅーとすと、もぎせん、をしようって思ってるんですけど、みにきませんか?」
するとモモンガさんが飲んでいた麦茶を吹き出していた。
え?何か変なこと言ったのかな?
「どうした、ですか?」
「大丈夫です。ちょっと驚いてしまって。ええと、模擬戦ですか。それはアテナさんの希望で?」
「はい。わたしも戦えるのかどうか、たしかめたいんです」
「理由をお聞きしてもいいですか?」
「……守られるだけの存在には、なりたくないんです。わたしだって、しごしん(守護神)のかたがきをもってる、です。
みんなを、なざりっくを。
なによりモモンガさんをまもりたい。
そのために全力を尽くしたい。
そのためにやれることは、ぜんぶ、やりたい。
……これじゃ、だめですか?」
モモンガさんはしばらく葛藤していた。
なお余談だがセバスとメイドのシクススは涙を堪えるのに必死だったらしい。
「……わかりました。許可します」
「ありがと、ございます」
「ルールなどは決めてるんですか?」
「HPが、はんぶんになったら終わり、です。あとは武器のスキルのみokで、あとはつかったらだめ、ってるーるです」
「ふむ、それならば大丈夫でしょう。場所は第六階層のコロシアムでしょうか?」
「はい。2じかんごに、やるよていです」
「わかりました。ではその頃に私も第六階層へ向かいます」
「わがまま、きいてくれてありがとう、ございます」
「こちらこそアテナさんの気持ちを知れて嬉しいです」
唐突にそんなことを言われるものだから思わずむせてしまう。
顔赤くなってないと……いいけど。
「そ、それよりこのあとって、おてつだいすること、ありますか?」
「いえ特に無いですね。これといった急ぎの仕事も先ほど言ったようにアルベドやデミウルゴスがやってくれているので」
「なら、わたしは準備をして、きます。なにかおてつだい、あったらいつでもよんでくらさい」
「はい。ありがとうございます」
モモンガさんは人化を解いていつもの姿になるのを見届けてみんなにお辞儀をする。
セバスのお辞儀が綺麗というか、完璧すぎるので後で教えてもらおうと思ったりした。
「こん、にちは こきゅーとす」
「アテナ様、ヨウコソオ越シクダサイマシタ」
「たったまま。たったままでいいですから」
私が通るたびにみんなが跪いたり90度の直角お辞儀をしたりとかでもう、色々と疲れる。
もっとみんなと軽口言い合えるくらいには仲良くなりたいのに……。
「こきゅーとす、もぎせん、やりたいんだけど、いいかな?」
「ハッ!勿論デゴザイマス。ワタクシノ全身全霊ヲ以テオ相手致シマス!」
「うん。じゃあももんがさんも、みにきてくれる事になてるから、2時間後にかんぜんふそう(完全武装)で、第六階層に来て、もらえる?」
「承知シマシタ!」
戦えるのがよほど嬉しいのか冷気をフシューフシューと出している。
こう見るとかっこいいというよりも可愛いと思えてしまう。
「それじゃ、また、2時間後、おねがいします」
「ハッ!」
結局最後まで直立不動は崩してはくれなかったけど、コキュートスも嬉しそうだし、まあいっか。
〜2時間後〜
「……ももんがさん、これ、なにが」
「いや、その、本当にすいません。軽い気持ちで『見に来たかったら来ると良い』ってアルベドに言ってしまったら、あの、そこから各階層守護者、領域守護者、他NPC達にも伝達されたみたいで。こうなっちゃいました」
コロシアムに転移して最初に感じたのはものすごい大きな音。
頭をぐわんぐわんと揺らされてるような、そんな感じだった。耳の中が痛むけど、なんとか我慢できた。
周りを見渡すと満席の座席。本当にナザリック全てのNPCが集まってると言われても信じそうなくらいには沢山いる。
「司会は、おまかせしてよいですか?」
「はい。勿論です。ただですね、少し大きな声というか、声を響かせるアイテムを使いますので耳を塞いでくれると助かります」
モモンガさんの言葉にコクと頷いて、耳を軽く塞ぐ。
『えー、おほん!皆よく集まってくれた!これから行われるのはアテナさんによる模擬戦だ!アテナさんの戦いを間近で見た事の無い者が殆どだろうから、是非とも楽しんでほしい!私が言うのもなんだが、アテナさんの戦いはとても華麗で美しい!是非とも期待してくれ!』
なんか戦いがなんとかかんとかとは聞こえたけど、その瞬間にもっと大きな音が響いてそれどころじゃなかった。
『では今回の模擬戦に指名された相手を呼ぶとしよう。名前を呼ばれた者は速やかに私達の元へくるように。
今回アテナさんより指名されたのは……コキュートス!』
コキュートスが観客席からとても勢いよく、かつ砂埃は立てないとか言うどうやったのと言いたくなるような登場をしてくれ、さらに盛り上がっているのがなんとなくわかる。あの、そろそろみんなクールダウンしようよ。そんなに凄いものでもないよ。
「アテナさん、もう大丈夫ですよ」
モモンガさんに肩を叩かれ、少し小さめの声でそう言われる。
耳から手を離すとだいぶ歓声は無くなっていた。
「ではコキュートス。此度の模擬戦、私も楽しみにさせてもらうとしよう。全力を尽くすのだ。アテナさんがどれだけ全力で戦えるのかを確かめるのが目的であるため、間違っても手は抜かないように」
「うん、わたしをきずつけてしまう、とかはかんがえないで、ね」
「承知シマシタ。改メテ、アテナ様ノオ相手ニゴ指名シテ下サリ、アリガタキ幸セデゴザイマス!」
「では、改めてルールを確認しよう。
まず互いに完全武装で行うこと。
魔法は禁止、スキルは武器関連のスキルは許可する。つまりアテナさんだと守護神などに関するスキル、コキュートスの場合だとフロストオーラなどは使用不可だ。構わないか?」
「ハッ!問題ゴザイマセン!」
「だいじょうぶ、です」
「勝敗についてだがどちらかのHPが半分を切った時点で終了とする。私が常に魔法を用いて確認をするのでステータス偽装などはやめるように。他何か質問は?」
「だいじょうぶ、です」
「私モ問題アリマセン!」
「それでは、互いに正々堂々の素晴らしい戦いを期待している。私が爆発系の魔法を放つので、それを合図に戦闘開始だ。では、互いに健闘を祈る」
そうしてモモンガさんは一際豪華な観客席へ座った。周りには階層守護者のみんながいる。
…………
アルベド、距離近く無い?めちゃくちゃいちゃついているように見えるのは気のせいかな。
うん、気のせいだよね。
それよりも、コキュートスとのことに集中しよう。
うん、頑張ろう。幻滅されないように、全力で。
コキュートスも4本の手にそれぞれ武器を装備していた。
「それでは……始め!」
モモンガさんが爆発系魔法を放ち、それが爆発するのと同時に私とコキュートスは互いに駆け出した。
オリ主のセリフが平仮名多目なのは辿々しい喋り方を表現している、つもりです(小声
見辛いなと感じたらもう少し漢字など多めの文章に書き直すかもしれません
えー、感想・評価を下さった方、お気に入り登録をしてくださった方、本当にありがとうございます。とても嬉しいです
それでは読んでくださりありがとうございました
皆様の暇つぶしになれば幸いです。
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