コンコン
「はーい」
「アテナ様。デミウルゴスです。ご相談したいことがございまして。入室してもよろしいでしょうか?」
「うん。どーぞ」
ガチャ
「失礼致します」
「私のところ、くるの珍しいね。どうしたの?」
「実は、これから行う計画にて、アテナ様のお力添えを頂きたく…」
「私の?私なんかでいいなら、喜んで力を貸すよ」
「ありがとうございます。実は…」
デミウルゴスから語られた作戦の内容は、リ・エスティーゼ王国に対し大規模な被害をもたらすもので、その一環として私にも現場に出て欲しいとのこと。
それについて「至高の御身にこのようなことをさせてしまう作戦しか思いつかない私を〜」みたいなこと言いながらめちゃくちゃ苦しそうだったから、落ち着かせるためにも肩をポンポンと叩く。
「私にしかできない、から、頼みにきたんだよね?いいよ。何をすればいいの?」
「実は…」
デミウルゴスの計画を一通り聞き、(特に人間に対して思い入れがないから)私も遠慮なく参加する旨を伝えた。
「いいよ。デミウルゴスのためになるなら喜んで協力する。でも一つの条件を付け加えてもいいかな?」
「勿論でございます。どのような条件を?」
「【アテナ】が出るんじゃなくて、【冒険者ミネルヴァ】が出ることにしたいんだけど、いいかな?そうすれば、仮に今の私の姿が人間にバレたとしても、冒険者モモンと【アテナ】が繋がってるなんて夢にも思わないだろうし」
「承知いたしました。ではそのように…」
「待って待って。それでね、デミウルゴス…えーとーーー--って段取りしてもらえるかな?」
「っ!ですが私のようなシモベがそのようなことを…」
「いいからいいから。アインズさんに聞かれたら私がフォローするし、なにより私を頼ってくれたのがすごく嬉しいの。今回のことを気にするなって言ってもデミウルゴスは真面目だから気にすると思う。だからね…これを機にもっともっと、私やアインズさんを頼ってくれると嬉しいな。私達は、デミウルゴスを信頼してるんだから」
余談だが、この後アテナと別れたデミウルゴスは歓喜のあまり涙を流したと言う。そして更にアインズ、アテナへの忠誠心を高めていた。
冒険者モモンと美姫ナーベがアダマンタイト級冒険者になった約一ヶ月後…
リ・エスティーゼ王国では多くの冒険者、兵士などが集められており、王国の裏社会にいると噂されている犯罪組織【八本指】の拠点、計8箇所を叩いていた。
その拠点の内一つでは、王国の最高位冒険者、アダマンタイト級冒険者『蒼の薔薇』一員である巨漢顔負けの肉体を持つ女戦士『ガガーラン』と忍者戦いのアサシン『ティア』がとある化け物と戦っていた。
その相手はメイド服を着た小柄な女性。だが様々な蟲を扱い、王国最高峰の冒険者である2人を相手取り、常に優勢だった。
「(……少し心配だったけど、杞憂だったかな。私の出る幕は無さそう)」
その様子を見守る影が1人。
伝説級の装備で身を固め、奇妙な仮面を付けているその人物は、完全不可知化を使う事で戦っている3人全員に気づかれていなかった。
「(デミウルゴスの予定だと、私が出るのはアインズさんと対峙する時だし、もう少し後で…)」
すると空から巨大な水晶の槍が3人の間に落ちてくる。
そこにはその人物と同じく(デザインは違うが)仮面をつけ、赤い外套を纏った小柄な女性がいた。それは冒険者の仲間であり、救援に駆けつけてきた、と言ったところだろう。
「(……強いね。単純なレベル差だと苦労しそう)」
冒険譚で正義の味方がよく言いそうな前口上を一通り言った後、メイド服を着た化け物と冒険者3人はぶつかり出した。
数十分程度の戦闘を得て、メイド服を着た化け物は地に伏せていた。その様子から冒険者が勝利したのだろう。
見ていた者は怒りから手を強く握りしめていたが、助けがあることは理解していたので深呼吸をすることで、なんとか落ち着かせていた。
「(本当なら助けてあげたいけど…デミウルゴスの計画を壊しちゃまずいしなぁ…。ごめんね。ほんっとうにごめん。でも絶対に仇は取るから)」
メイド服の化け物にトドメを刺そうとした冒険者3人の前に、いつのまにか赤いスーツを身に纏った男が降り立つ。奇妙な仮面をつけており、悪魔のような尻尾が生えている。
「(よし、ナイスタイミング!じゃあ後はやり返してくれるだろうからエントマへの労いとか考えとこうかな…)」
赤いスーツの悪魔は、ガガーランとティアを一瞬で焼き殺し、赤い外套の冒険者すら手玉に取り、圧勝していた。
『アテナ様。そろそろかと思います。御準備を』
『了解。ごめんねエントマ助けれなくて』
『いえ!私の方こそ早く来ることが出来れば…!』
『あはは…エントマには私の方からも労っておくね』
『なんと…!そのお気持ちだけで我らシモベにとって…』
デミウルゴスと冒険者の…えーと、えーと。確か冒険者チーム【青の薔薇】のイビルアイの戦闘は、どんどん激しくなっていく。というよりはイビルアイの攻撃が激しくなりながらも、デミウルゴスはその全てを涼しい顔で受け流していた。
そんなデミウルゴスから連絡を受けながら、辺りを警戒する。にしても、すごいなぁ。私なんか戦闘に注力しすぎてこんな正確に報告できないよ。
「(……あ、きた!)」
デミウルゴスがトドメを刺そうとした瞬間、空から何かが降ってくる。
ソレは漆黒の鎧に身を包み、身の丈ほどのグレートソードを2本、両の手に持っていた。
間違えようもない。冒険者モモン…すなわちアインズさんだ。
かっっっっっっこいい
「それで…私の敵は、どちらかな?」
「ッ!漆黒の英雄モモン殿!ヤツは強大な悪魔だ!アダマンタイト級冒険者として協力してくれ!」
「ふむ…?なるほど。承知した」
アインズさんは深いことは聞かず、デミウルゴスへ剣を向ける。
「これはこれは…お待ちしておりました。冒険者モモン様。私は『ヤルダバオト』と申します。以後お見知り置きを」
「ヤルダバオト…?それよりも私のことを知っているのか?」
「はい。とある伝がありまして、貴方様のことはよく存じております。私は貴方様が来るのをずっとお待ちしておりました」
「悪魔の知り合いは作ったつもりはないんだが…。その伝とやらを聞いてもいいかな?」
「申し訳ありませんが、お答えできません。知りたいのでしたら…力づくで如何でしょうか?」
「なるほど。わかりやすい答えだ。ではそうするとしよう」
その瞬間、アインズさんはデミウルゴスに肉薄し、グレートソードを振り下ろす。
対するデミウルゴスは慌てることなく受け止める。
そこからはイビルアイが入り込む余地のない戦いが繰り広げられていく。
「すごい…。なんだ、なんなんだこの気持ちは。もう止まってるはずの心臓が熱い…。ああ…頑張って、モモン様…!」
んんっ⁉︎えっ、ちょっ。まっ。
えっ⁉︎嘘でしょ⁉︎あの赤い外套の人⁉︎
まだ出会って数分くらいだよね⁉︎
なんか惚れてない⁉︎いや断言できるけど惚れてるよねあの冒険者!声色といい仕草といい!
ちょっまっ。アインズさんは私のだからダメだかんね⁉︎
『アテナ様。私の合図と共にご登場ください』
『わ、わかった。がんばるね。後、本当に私は喋らなくていいの?』
『はい。その方があの冒険者に変な疑いを持たれることもないでしょう』
赤い外套の冒険者が一瞬でアインズさんに惚れてしまっていた事実に悶々としながら、デミウルゴスからの連絡に返事する。
メッセージが切れ、何度か深呼吸をしてからデミウルゴスの言葉に耳を傾ける。
「っ…なるほど。噂通りのお方だ。近接戦闘では少々分が悪いようです」
「早く喋った方が身のためだと思うぞ?それとも喋る間もなく斬り伏せられたいか?」
「それは困りますね。では…私も切り札を使うとしましょう」
「?」
「来なさい」
合図を聞き、完全不可知化を解く。
ゆっくりとデミウルゴスの横へ歩き出していく。
「なっ…」
「彼女のことはよくご存知なはずですよ。冒険者モモン様?」
アインズさんは私が出てくるのが本当に予想外だったのか、言葉に詰まっていた。そして予想通り
『アテナさん何してるんですか⁉︎』
『えへへ…。驚きました?』
『ええそりゃもうかなりね!で、なぜアテナさんがここに?』
『デミウルゴスのお願いで、この作戦に参加することにしました。今の私は蘇生されて、禁術を用いることで操られている冒険者ミネルヴァ、ですから気をつけてくださいね』
『はぁ…わかりました。今姿を現したということは、私と一戦交えるということですか?』
『その通りです。アインズさん、以前に近接戦闘の腕前を評価して欲しい、って言ってたので。それもついでにできたらなと思ったんですけど…』
『覚えててくれたんですか⁉︎そりゃもう、俺としては願ったり叶ったりですよ!是非ともお願いします!』
アインズさんの声は、もう心の底から楽しそうだった。その声を聞いて思わずニヤけてしまう。
危ない危ない。仮面がなかったら変な疑い持たれてたかもしれない。
「……なるほどな。ヴァンパイア討伐後にミアさんは丁重に弔ったんだが…強大な悪魔の癖に墓泥棒など狡い真似をするな」
「墓泥棒だなんて人聞きの悪いことを。死体の有効活用と仰ってください。長話もこれくらいにして…行きなさい」
「っ!私から離れろ!」
「えっ?」
アインズさんが横の冒険者を弾き飛ばした瞬間に、飛び出し、無造作に槍を振り下ろす。
防がれはするものの、ドゴォン!と轟音が鳴り響き、地面が陥没する。
あ、もちろん力はセーブしてます。今のアインズさんはレベル換算50くらいらしいので、私もとある縛りアイテムで少し下くらいの筋力にしてます。
「ッ…」
「モモンさん⁉︎」
「モモン様⁉︎」
「いいから…離れろ!死ぬぞ!ぬぐっ⁉︎」
槍を支点に、アインズさんを横から蹴り飛ばす。
かっっっった。何この鎧。
『こんなもんでどうです?』
『OKです。ダメージもさほど受けていませんので、この調子でお願いします』
『ラジャー、です』
蹴った足がジンジンするけど、なんとか平静を装う。アインズさんが立ち上がるまでに、避難していたナーベラルと赤い外套の冒険者を一瞥する。
ナーベラルは冷や汗ダラダラだし赤い外套の方はめちゃくちゃ怯えていた。
……なんでよ。私そんな怖いことしてないのに。
「おお…強大な力の持ち主とは感じていましたが、まさかこれほどとは…。素晴らしい拾い物をしたものです」
瓦礫の中からアインズさんが這い出てくる。立ち上がるのを確認して、再度近づく。
今度は同時に振り上げ、グレートソードと槍がぶつかり、甲高い金属音を何度も何度も鳴らす。
「ハァッ!」
「…!」
アインズさんは力で強引に押してきて、そのまま吹き飛ばされてしまう。そして追撃をしてくるので、着地と同時に横へ転がることで避ける。グレートソードという武器の性質上、どうしても動きが単調になりがちなのかな?
すると考える暇を与えたくないのか連続してグレートソードを振るってくる。
円盾を使ってその全てを防いでいき、僅かに生まれた隙を狙ってシールドバッシュを繰り出し、お返しとばかりにアインズさんを吹き飛ばす。
「(体術面がものすごく伸びてる…。コキュートスに教わってたのかな…)」
「(くっそ…!これでも結構成長したと思ってたんだけどなぁ!アテナさんやっぱり強い…!でも、楽しいな!)」
デミウルゴスから、あとどれくらい時間使っていいのかコッソリ聞いてみると、あと10分くらいは時間があるみたいだったから、時間いっぱい使って楽しもう。
よし、じゃあアインズさん。勝負、です!
「ふむ…そろそろですね。冒険者ミネルヴァ、戦闘をやめなさい」
「!」
デミウルゴスの声で我に帰り、楽しかったのになぁとかもっと楽しみたいとか色々考えてしまったけど、なんとか、鋼の意志で煩悩を抑え込みデミウルゴスの横に降り立つ。
「どうやら時間切れのようです。貴方様を倒せると踏んで連れて来ましたが…貴方様を圧倒できているとはいえ、生前の記憶でしょうかね。全力を出せていない様子…。まさかここまで耐えるとは予想外でした」
続けて、王都の一部を地獄の炎で覆うこと、とあるアイテムを探していることなどを伝え、私はデミウルゴスと共に転移した。
「……どうだった?」
「完璧でございました!アテナ様とアインズ様の戦闘を拝謁でき、このデミウルゴス歓喜のあまり…」
「うん、すとっぷすとっぷ。そんな、すごいもの、違うから」
相変わらずのこのヨイショ。気持ちは嬉しいけど恥ずかしい。
「じゃあ、ちょっとだけナザリックに戻って、エントマ、労ってくるね」
「畏まりました。私からも労いの言葉をお伝えいただければと思います」
「わかった。時間が来たら教えてね」
「エントマ。いる?」
「ッ、アテナサマ!」
ナザリックに戻ってメイド達専用の休憩室を訪れると、エントマがぐったりしながら休んでいた。私を見た瞬間起き上がり、ヨロヨロしながら跪こうとするので慌てて止める。
「ド、ドウシテ、コチラヘ…」
「さっき、戦ってたの見てたから。それで…」
「ッ!アノヨウナ失態、大変申シ訳アリマセン!」
「違う、違うから。本当は助けてあげたかった、けど、作戦あったから、できなかったの。私こそ、ごめんね」
その後も何度も謝られ、謝り返し、なんてのを繰り返していき、最終的にエントマを私が気の済むまで撫で倒すことでなんとかなった。
それと何故か私の元に、撫でてほしいと言う子が殺到しました。
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( ゚д゚)
たいっへん失礼しました(汗
次回、前日譚最終話 勘違いとすれ違いの嵐(適当
読んでくださりありがとうございました
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