「相当急いでいたみたいだよん」
「以前の事でお礼申し上げておきたかったのですがね。それと鞍替えを受け入れてもらえないか打診を」
「ちょっと待ってそれ初耳」
「言ってませんし」
エ・ランテルで今や『漆黒』モモンの次には有名であろう女剣士は、酒瓶をを飲み干しながら、珍しく向こうから会いにきた旧友の話をしていた。
「あれほどのお方がそんなに警戒する相手なんでしょうが、今度は何処に向かってるんですか」
「さあ?遺跡調査ってことしか知らないわよ。大森林の近くだとか」
「大森林?」
「そ。帝国での依頼でどうこうつってた。あ、何なんか心当たりある?」
「…………。いえ、まあ、あの方なら大丈夫でしょう。それよりも……どんだけ酒買い込んだんですか。今見えてるだけでも10升はありますよね?」
「たくさん!」
「何処からそんな金」
「アイツとの取引でもらった!」
「みんな、ほい。言ってたやつね」
ワーカーが一堂に集まっていた中、ユーが俺たちにひっそりと小さな袋を渡していく。
それとは別でそれぞれ全員へ武具--俺には炎魔法が刻まれている双剣を、イミーナには神聖属性が矢に付与される弓を、ロバーデイクには癒しの力を高めるペンダントを、アルシェには魔力出力を上げるイヤリングを--渡された。
「うわぉ、スッゲェ……」
いきなり新しい武器を渡されても、と思ったが俺の手に渡った瞬間に今まで扱っていた双剣とほぼ同じ形と重量に変化した。これなら武器への慣れなどで遅れをとることは無さそうだ。
「他に渡した装飾品は邪魔にならない程度につけておいて。特にこの緑の宝石がついた指輪。これをつけた上から手袋とかで隠しといて」
「というと?」
「万が一看破の魔法だったりアイテム鑑定なんかされたら対策されかねない。私たちの最後の生命線と言っても過言じゃないからね」
ユー曰く、転移の指輪だとか。転移先を歌う林檎亭の部屋にしてあるらしく、よほどの妨害をされない限りは転移できるとのことだった。
「ま、あとは…各種身体能力の向上や状態異常の無効化、他にも色々とあるけど……特にこの赤い宝石。これを消費する羽目にならないのが一番かな」
詳しい効果は教えてもらえなかったが、どれもこれもが高価なんて言葉では片付けれないほどの逸品だとわかる。
思わず返しそうになったが、消耗品なんだから使わなきゃ意味がないだろ?と押し通されてしまった。
「私からの説明は終わりかな。後はアルシェ、はい」
「これは?」
「遠くにいても会話ができる魔法のスクロール。アルシェなら使えるはず。万が一私とはぐれた場合は中に入ってる魔力補充のポーションと一緒に併用してずっと私と繋げて」
「うん分かった」
念には念を込めるとは言っていたけど、ここまでする程なのか。
ユーがこの墳墓調査をどれだけ警戒していたのか、改めて理解した気がする。
「私からは以上。悪いね出遅れてしまって」
「構わねえよ。俺たちが死なないための備えをしてくれたんだからな。イミーナ達も大丈夫か?」
「ええ問題ないわ」
「私も問題ありません」
「私も」
「おっし。そんじゃあ行こう。未知を探索しにな」
「遅かったではないか、フォーサイトの」
「すまんすまん」
いくつかの霊廟を探索し、墳墓中央に鎮座する巨大な建造物まで辿り着く。
出遅れた為か、俺たち以外のワーカーは全員揃っていた。
「おや、そちらがあなた方の新人と噂の?」
「ん?ああそうだ。名前はユー。今後も会う機会があるだろうから覚えといてくれ。"俺たちの"新たな仲間だ」
「……ども」
『天武』が何か品定めするかのようにユーを見るから、つい強気な言葉で紹介する。かくいうユーも下心を感じたのか一瞥するだけですぐに黙ってしまった。
その態度に天武は機嫌を悪くしていたが話を無理やり墳墓の話に切り替える。
「いやぁスゲェ墳墓だなマジで。ワクワクが止まんねえわ」
「我らは宝ががっぽがっぽだった。そちらはどうだった?」
「ワシらの所もしゃな。いやはや、こんな墳墓がまだ未調査とはな。長生きはしてみるもんしゃ」
「俺たちも似たようなもんだな。ま、持って帰れたらいいな程度で考えてるから別に無くてもいいんだが」
他愛無い話をしながら、階段を『竜狩り』以外の全員で降りていく。
どうやら竜狩りのチームは表でもう少し周囲の探索をすることで安全を確実なものにしたいらしい。
降りている途中、ヘビーマッシャーのリーダーである小男グリンガムに脇腹をちょんちょんと突かれる。
「おいヘッケラン。どうしたのだお主」
「あん?何がだよ」
「あれだけの宝を前にしたのだろう?何故そんなにも落ち着いているのだ。以前までの汝なら喜びを隠しておらんかっただろう?」
「あー……いや、ま、色々とね」
「ふん、どうせあのユーとやらの影響だろう?」
「ま、それもあるわな。だけどこれは俺達フォーサイトが選択した事だ。宝よりも何よりも仲間の命を優先する。それだけさ」
「そうか。変に踏み込んで悪かった」
「構わねえよ。俺と付き合いが長いお前のことだ。心配してくれてんだろ?」
「まあ…な。ところであのユーとやらは相当な美人だな!我らも是非挨拶させてくれんか!」
「やなこった。俺たちのチームメンバーに色眼鏡使おうとするんじゃねえ」
そんな時、先頭を歩いていた盗賊達の足が止まる。
何か来ると告げられ、カラカラカラと何かが走る音が響いてくる。
「な……」
「おいおいマジかよ……」
道の向こうから走ってくるのは数十体のスケルトンの群れ。ただ剣を装備しているだけの、俺たちのようなワーカーからしたら苦戦するのも難しい相手だった。それを見た他のワーカー達はこの墳墓の主人を嘲笑していた。
「みんな、どう思うよ」
「あまりに弱すぎるかと。私たちの力量を見誤ったのでしょうか」
「それか、主人がいないとか?」
「何か誘導されているようにも感じる。まるで、この先に足を踏み入れてほしいかのような」
「……。あんなアホみたいに宝物を抱え込んでいた墳墓から発生するアンデットがこんな弱い訳ないと思うんだけど…」
ロバーとイミーナは墳墓の主人についての疑問を、アルシェとユーはアンデットが弱すぎることに疑問を抱いていた。
「進んでいいと思うか?俺は嫌な予感が拭えねえ」
「罠の可能性も十分にあり得るわね。でも早計すぎると思うわよ」
このスケルトンを囮にして更に強い存在や魔法の武具を装備したアンデット、エルダーリッチなどが襲ってくることも十分考えられた。
ひとまずは目の前に迫っていたスケルトンの群れはグリンガムが蹴散らしていた。
「イミーナは何か感じるか?」
「いいえ全く」
「他の3人は?」
「何も感じませんね」
「……。周りに魔法の力を持った存在はいないと思う」
「2人に同じかな。特に何の気配も感じない」
ならば、ひとまずは進んでも大丈夫だろう。ユーを見習って念には念を、石橋を叩きすぎるくらいの慎重さを持って進んでいくことに決める。
「どうやら分かれ道のようだな」
先頭を歩いていたグリンガムが十字路まで辿り着き、振り返る。
「さてどうする?我らと汝らで丁度3チームいることだ。別れて進むのが良いと思うが」
わざとらしい言葉遣いで俺たちへ確認をとっていく。特に誰も反論せず、右の通路はヘビーマッシャーのチームが、真っ直ぐの道を天武のチームが、左の通路を俺たちフォーサイトが進むことになった。
「そんじゃあお前ら、死ぬなよー」
「誰にものを言っているのだ」
「そうですよ。私を他の有象無象と同じにしないでください」
最後に軽口を叩き、俺たちは進む。
「……うっし、成功」
ナーベラルと別れ、指輪を使いナザリック内に転移する。第十階層、玉座の間に通づる扉の前に立つと、ゆっくりと開いていき、アルベドが跪き待っていた。
「お帰りなさいませ。アインズ様」
「ただいまアルベド。計画通り、これより侵入者が来るはずだ。歓迎の準備はどうなっている?」
「万全でございます。お客様が楽しんでいただくのは確実かと。こちらをご覧ください」
玉座に腰をかけると、目の前にいくつものモニターが映し出される。そこには十字路に差し掛かり、別れていくワーカー達が確認できた。
「ふん、ようやくエントリーか。アルベド、誰1人として無事に返すなよ」
「勿論でございます。いと尊き御方の居城に乗り込んできた愚かな盗賊達の末路を楽しんでくださいませ。それと…ご要望にありました件の実験用モルモットは、どの者たちになさいますか?」
「ああ…そうだな……。ではコレに……」
エルフを連れた男を指そうとした瞬間
『……』
「ッ⁉︎」
モニターの向こうにいる金髪で紅い眼、シスター服らしきものを着ているワーカーに睨まれた。
「アインズ様⁉︎どうかなさいましたか⁉︎」
「アルベド!このワーカーの情報を見せろ!」
「は、はいっ!」
即座に左通路を選択したワーカーの情報が俺の前に現れる。
「チーム名はフォーサイト。戦士、
「まて、4人だと?」
「報告ではそのように」
「だが現に5人いる。どういうことだ?」
「そ、それは、恐らくですが情報が少し古い、もしくは直前に1人戦力補充をしたと考えられます。今回の場合ですと前者が可能性としては高いかと。あの人間はかなり年老いていますから」
「ああすまない。怒ったわけではないんだ。……もう少し様子を見てみるか。先程のが気のせいの可能性もある」
少し予定とは違うが、デスナイトなどをぶつけ力量を測ってみるのも--
『見られてんね。誰だろ』
「なにっ⁉︎」
「なっ⁉︎」
睨んできたと思われるワーカーが、そんなことを呟いた。
『ユー?どうした?』
『リーダー、ちょっとだけ止まって。アレでダメだから……このレベルのでいいかな?』
女が懐から宝石のようなものを取り出し砕く。するとフォーサイトを映していた画面が砂嵐に包まれたようになり何も見えなくなった。
あの女はフォーサイトと少しだけ会話したがその時にはいなかった。ということは『ユー』と呼ばれていた女が遅れていたチームメイトといったところだろう。何者なんだ…?
俺たち以外に転移してきたプレイヤーか?
「アルベドよ、ニグレドへ出来うる限りの情報系対策を施してこの人間たちを監視するよう伝えてくれ。他の守護者にも最大限警戒するように。アテナさんには私から伝えておく」
「畏まりました。すぐに伝達して参ります」
アルベドが退出して数分後、すぐに画面が映る。
ユーと呼ばれていた女を注視すると、全身至る所にマジックアイテムを身につけているのがわかる。
「(これ、上手く隠してるけど神器級も身につけてないか?)」
それに他のメンバーもいくつかマジックアイテムらしきものが確認できる。俺と話してた時はそんなもの持っていなかったから、このユーとやらが渡したと見ていいだろう。
「お待たせしましたアインズ様。各員へ最大限警戒し任務にあたるよう通達して参りました」
「ありがとうアルベド。続けて悪いが一つ聞きたい。このワーカーを分断させることは可能か?」
「勿論でございます」
「では--」
「----。はい、はい、わかりました」
『何度も確認をしたのでそちらは大丈夫だと思いますが、それでも油断しないでください。万が一の時は…』
「みんなを連れてすぐに避難、ですね」
『その通りです。ではアテナさん、ご健闘を』
「アインズさんも、頑張ってくださいね」
アインズさんから緊急で連絡が入り、ワーカーの中にプレイヤーが紛れている可能性が高いことを教えてもらった。私が担当するチームは可能性が低いらしいけど、アインズさんの言うように油断禁物で行こう。
「よし、みんな。お仕事の時間、いこう」
「「「「「ハッ!」」」」」
戦闘メイド『プレアデス』のみんな(ナーベラルだけ別任務でいないが)と、ナザリックの中に入らず表に残ったワーカーたちの元へ向かう。
「あ、みえて、きた。それじゃ連絡、お願い」
「畏まりました」
どうみても老人としか言いようの無い槍使いがいるワーカーチームは、何かを話しながら周囲を軽く探索していた。
「流石に未調査の遺跡に最初に侵入するのは、ちと危険が高すぎしゃよ。彼らはワシらのカナリアしゃ」
「へぇ、意外と考えてるんですね」
「⁉︎」
敢えて存在をバラすように、先ほどまで彼らが降りていた階段の上に降り立ち、淡々と声をかける。
5人の男が一斉に私たちを見上げてくる。
「主ら……何者しゃ」
「私はこの地の守護を任されている者です。単刀直入に言いますが、我が主人の命により貴方達を処理しにきました」
「守護を任されている…?」
「子供…?」
「後ろの奴らは……」
「老公、どうしますか?」
老公と呼ばれた老人は、私たちを見ながら少し考える素振りを見せ、槍を肩に担いでいた。
「ま、人数は互角しゃ。なんとかなるしゃろ」
「ふむ……自信があるのですね」
「まあの。でなけりゃこんな歳まで生きておらんわい」
「確かに、それもそうかもしれませんね」
「さて、どうしようかの」
「にしても…墓地でメイドって、センス疑うな」
若い男がそう言った瞬間、私の後ろの空間の温度が、なんかめっちゃ上がった気がした。
「殺シマショオー」
「殺すべき」
「普通に殺すのではなく、あり得ないほどの苦痛を与えるべきでしょう」
「頭ぶっ潰してやるっす」
「どうなさいますか、アテナ様」
うん、メイド服をバカにされたことでプレアデスの皆様がプッツンしてます。ブチギレです。
「そうですね。殺すのは確定事項となっていますので、殺し方はどうでもいいのですが……。せっかくですし、私と一緒に戦いましょうか」
「「「「「⁉︎」」」」」
「こうしましょう。じゃんけんして、勝ち残った1人が私と一緒に侵入者の相手を。勿論、多少の……」
「「「「「じゃん、けん!ポン!」」」」」
私が説明を終える前にプレアデスのみんなが、めちゃくちゃ真剣な目つきでじゃんけんを始めてしまった。
「あはは……ま、そういうわけですので。逃げようなんて思わないでくださいね?逃げれないとは思いますが」
手でパンと叩いて鳴らすと、ワーカーを取り囲むように魔法の武具を持ったスケルトン、通称ナザリック・オールド・ガーダーが5体、オルトリンデが創り出した御使い(分身体)が数体出現する。
「心配しないでください。この子達はあくまでも貴方達が逃げない為の見張り役です。それで……えと、決まりそう?」
「「じゃん!けん!ぽん!ぽん!ぽん!」」
最後まで残ってたのはシズとユリ。他3人のソリュシャン、エントマ、ルプスレギナはめっちゃ悔しそうにその場に項垂れていた。
「ふんす!」
「くっ……」
「あ、きまったんだ」
どうやら最後まで勝ち残ったのはシズらしい。
「というわけで、貴方達の相手は私たち2人となりました。出来うる限りの抵抗をしてください。万が一にも勝てたのなら、生きてここから帰れるよう手筈を整えてあげますので。せいぜい頑張ってくださいね」
カツ…カツ……と敢えて音を鳴らしながらゆっくりと階段を降り、とワーカー達の前に立つ。
何人かは逃げようが提案していたが、老公とやらは首を横に振っていた。
「挟撃された時点で逃げ道なぞないわ。だが向こうは2人で相手をすると言っておる。最大戦力であろうスケルトンや天使を使わないとなると、こやつらと戦うことにしか勝機はないしゃろ。ふんばるんしゃ!」
えーと……最大戦力?何言ってるのこの人。
ただの見張り役だって言ったよね私。ちょっとくらい話を聞こうよ。
ほらプレアデスのみんな笑いを堪えるのに必死じゃん。
「(にしても逃げるもんだと思ってたけど…向かってくるのは少し意外だな)」
侵入者が逃げ出すのを想定した試験とかも兼ねてたんだけど……ま、その辺はアドリブでって言ってたし、全員殺してもいいって言ってたし、なんとかしよう。うん、がんばる。
「それでは、行きますよ侵入者の皆さん。精々足掻いてくださいね」
「私があの老人を相手するね。シズは他の人間を抑えてほしい」
「畏まりました」
「あ、でも。武器、ちょっと弱いやつ渡されてるよね?」
「はい、アインズ様に渡されています」
「よかった。じゃあ、殺さないよう、気をつけてね」
気のせいじゃなければシズがすごく嬉しそうにホワホワしている気がする。
ホワホワとはなんぞやと言われそうだけど、なんかホワホワはホワホワだ。
「(アインズさんから出された縛りはレベル30換算のステータスで魔法とかも使わずに戦うだから…。タイマンならなんとかなると思うし、他の人間はシズを信じよう)」
人間達がポーションだとか強化魔法やらの準備がようやく終わったのを見て、手始めに老公とやらの後ろに回り込む。
「⁉︎」
「シールドバッシュ」
完全に虚をついたのに、まさかの防がれてしまった。意外だったけど、目的はノックバックで仲間と引き離すことだったので問題は無い。
「さてお爺さん。私と遊んでもらいますよ」
「しゃしゃ、ワシのような枯れたジジイを、お前さんのような別嬪さんが相手してくれるとは、長生きはしてみるもんしゃ」
そう笑っているが、目つきも手元にも、油断は見て取れない。
これは強敵になりそう。
「シズ、そっちは任せたよ」
「お任せください」
後ろで爆発音が聞こえたのを合図に、再度踏み込み近づく。
今度は無造作に上から槍を振り下ろしてみると、これまた受け止められてしまった。この老体のどこにそんな力があるのやら。
「ぬぐっ…」
「ハッ!」
「ぐわっ⁉︎」
もう一度槍を、今度は横に振り払うが今度も受け止められる。けど今回はそれで止めず胴体を蹴り飛ばす。
「へぇ、意外です。そこそこ本気で蹴ったんですけど。ちゃんと強いんですね」
「お嬢さんも、相当強いようしゃな…」
「ですが想定の範囲内の強さの様子。様子見は結構ですが早めに本気を出すことをお勧めします」
「そうさせてもらうかの」
と、お爺さんは倒れることなくその場で槍を構え、何かをぶつぶつ呟く。
たった2回の攻防とはいえ、本気を出すべきだと判断したのは流石。
「しゃあっ!」
「!」
すると、思ったより速く動いて私に肉薄してくる。
顔目掛けて突き出された槍を、その場は動かず顔だけを横に逸らすことで避ける。
だが今度はお爺さんの方がそれだけでは終わらず、怒涛の連撃を繰り出してくる。
「と…と……」
円盾で正確に弾いていき、最後の一撃を盾の芯で受け止め、鍔迫り合いを敢えて起こす。
「ちぇあ!」
「わぁ」
(レベル30換算のステータスとはいえ)決して手を抜いていたつもりはないのに、まさかの押し切られてしまった。
「とったり!」
そして喉元目掛けて槍を突き刺してきた。でも----
「残念。惜しかったですね」
「…は、は。困ったのう。これで仕留めれないとは…」
「それで、まだ打つ手はありますか?」
確かに速くはなったけど、私からしたら遅すぎた。当たる直前に槍を掴み、止めて見せると驚愕で目を見開いていた。
「こりゃ参った。唯一の勝ち筋だったんしゃが…」
「では、負けを認めますね?」
「そうしゃのう。ワシでは勝てんな」
槍から手を離すも追撃はして来ず、数歩後ろへ下がる。
「最期に何か言い残すことはありますか?ああ、後ろで戦っている貴方のお仲間は、せめて苦痛のないように殺してもらうようお願いしておきますので」
私の後ろでは、まだ戦闘が続いていた。
この世界にもほとんどないであろう銃相手に人間は四苦八苦していたが、シズがそもそも本気で殺そうとしていないのと、慣れてきたのか勝負自体は拮抗しているように見えた。
「そうしゃな。じゃあ一つ……」
お爺さんは覚悟を決めたのか私をじっと見つめてくる。
「……。おまえら!やるぞ!」
「「「「っ!おう!」」」」
だが喋ったのは遺言でもなく、仲間への掛け声。
それと同時に後ろでボンッと何かが爆発する音が聞こえる。
思わず振り返ると、シズも人間達も煙幕に包まれていた。
「ちぇあ!」
「死ねぇっ!」
「ふんっ!」
煙の中から出てきたのは2人の人間で、身なりから察するに戦士と盗賊。くだらない攻撃だなぁ…。
「っ⁉︎」
カウンターしようと構えた瞬間、私の目の前で何かが爆発した。
煙玉のようなものらしく、思わず硬直してしまった。
「ぐっ…」
「アテナ様⁉︎」
攻撃もらっちゃった……。これあとで反省会だ。
でも今は戦闘中だし、あとで考えるとして、一旦シズと合流する。
「アテナ様、申し訳ありません。人間を通してしまいました」
「だいじょーぶ、ごめんねシズ。こいつらの力量を見誤ってたみたい」
すっごい申し訳なさそうに言うものだから、シズの頭を撫でてあげるとまたホワホワしていた。
「……ん?あ、もう……」
「アテナ様?どうされましたか?」
「ん、いや。連絡が……」
「主ら、まだ動けるかの?」
「問題、ありません」
「まだいけます…!」
「少しお待ちを、回復魔法を使います」
「絶対生きて帰りましょう!」
おおう、人間の皆様はまだやる気があるみたい。
でもやる気出てるとか申し訳ないけど……時間切れみたい。
「みんなー。集合」
私の号令でプレアデスのみんなが即座に集まってくれる。
人間達は何かを警戒しだしたけど、もう遅いかな。
「私は別のところに行かなきゃ、なので。この人間達の処理は任せても、いいかな?」
「「「「「ハッ!お任せください!」」」」」
「どういうことしゃ。逃げるのかの?」
「どのように捉えてくださっても構いませんよ。ですが先ほどの連携はお見事でした。本当なら最後までお相手してあげたいところですが、貴方達以上に対処しなければならない相手が出てきたみたいですので。私はそちらへ向かわせていただきます」
これにて私のお仕事は終わり。最後くらいはプレアデスのみんなに好きなようにやってもらおう。
「じゃあみんな、お仕事、頑張ってください」
「「「「「ハッ!」」」」」
「あ、そうだ。あいんずさんが、好きなように殺していい、だって」
それを伝えた瞬間、みんながすんごい笑顔になってたのは気にしないでおこう。特にソリュシャンとルプスレギナ。もはや怖い笑顔してた。
「(にしても、戦い方がまだまだ荒いんだろうなぁ。シグルド達ともっと特訓しないと)」
少し不安だったけど、シズも頑張ってくれたし、私自身の課題も見たかったしで、有意義な時間でした。
こんな短期間で投稿できると思ってなかっただろう?
はっはっは。私もだ(
珍しく筆が乗りに乗りました。
余談だけど『竜狩り』の中でメイド服をバカにした男は、みんなで話し合って仲良く分けたらしい。
え、何を分けたんだって?
……察して(
次回 アインズによろしく回 かもしれない
それでは読んでくださりありがとうございます
感想や評価などしてもらえると嬉しいです