モモンガさんが大好きな小さな守護神   作:紀野感無

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(ユー。その、なんで……)

(なあに?ワーカーになった理由でも聞きたい?それともフォーサイトを選んだ理由?)

(え、ええ。そうよ。あんた上手く隠してるけど、実力は私たちとは比較にならないくらいには強いでしょ。ワーカーなんてしていなくても生きていけるくらいには)

(それはまた、どうしてそう思ったの?)

(舐めないでよね。それくらい見ればわかるわよ。それで……もしかして、その。あんた、もしかしてヘッケランのこと……)

(……。ぶはっ!)

(ちょっ、何笑ってんのよ!)

(いやいや。ヘッケランは旦那様として愛されてるなぁ、と。それはそれとしてイミーナの乙女な一面が見れてお姉さん満足…いだっ)

(ぶん殴るわよ)

(殴ってから言わないで?頭割れたらどうすんの)

(それで、どうなのよ)

(無視⁉︎ま、まあいいや。そうだねぇ。女として惚れ……まった冗談。冗談だから。その弓を納めて)

(早く言いなさい次は無いわよ)

(全くもう。えーと、私が奴隷商に捕まってたのは聞いてる?)

(ええ、そこからロバーデイクと一緒に助け出したって聞いたわ)

(まあ私としては、この世にもう未練も無い婚約者も無い、人生に疲れ果ててたし、精神をぶっ壊して幽霊になっても良かったんだけど。残念なことにお人好しな男2人に助け出されちった)

(それでヘッケラン達に強さを見抜かれてスカウトされたってこと?)

(いいや、残念ながら違うよ。そも、最初はロバーデイクが懇意にしている教会に世話になる予定だった。それが……)

(それが?)

(…………。まあ、なんやかんやあってね。最終的に私がヘッケランに惚れてチームに入れてくれと頼んだのさ)

(え?は、はあっ⁉︎え、ちょ、それってどういう……)

(クスッ。さてね。どういう意味かはご想像にお任せするよ。ま、確実に言えるのは……嘗て惚れたヤツとそっくりな瞳をしてた。そんなところかな)






6話 死の王

「みんな、大丈夫か?」

 

突然何かに強制転移させられ、魔法の武具を持ったスケルトンやエルダーリッチを何度か相手にしながら逃げ続けた。

だが避難した小部屋の先で魔法陣が発動したことでまた別の場所に送られてしまった。

 

「ええ。少しキツイけど、まだいけるわ」

「イミーナさんに同じです」

「私も」

「そうか、アルシェはユーと連絡は取れたか?」

「ダメ。遮断されているのか繋がらなかった。スクロールもあと一枚しか無いから…」

「わかった。それを使うタイミングは任せる。んで……どうするよこの先」

 

周囲を見渡すと、何かの通路なのはわかるが、それが何なのかはさっぱり見当がつかない。

 

「まるで『この先に来い』って言ってるみたいね」

「この雰囲気も……似たようなものを過去に経験しました。帝国の闘技場で」

「……という事は」

 

ロバーの一言で、ようやくどこか既視感を持っていた理由がわかる。

 

「なるほどな。どうやらこの先で俺たちを殺そうって腹なのかもな」

「ま、侵入者なのは私たちなんだし、当然の対応だわね」

「ですが、知恵を持つ者ならば対話も可能なはず。……応じてくれれば、ですが」

「ユーさんから『最後の手段に』って渡されたものがあるけど、使わないに越した事はない」

 

と、手のひらサイズの小包を大切そうに胸に抱えるアルシェ。

中身がどんなものなのかは少し気になったが、それを確かめる前に通路の奥にある鉄格子が上へ登っていく。

 

「『入ってこい』ってか?」

「みたいね。どうする。今すぐ撤退できるなら、ユーのアイテム使ってするべきじゃない?」

「使うべきだと思う。でも、ユーさんが……」

「ユーさんならば、きっと無事に戻ってくる。私はそう信じていますが……」

 

ロバーの心配は全員が理解していた。

 

 

『仮に俺たちが転移できたとしても、ユーが無事に帰って来れるのか』

 

 

「…………」

 

どうするのが最善策だ。考えろ。

 

「まず、ユーの言っていた転移のアイテムとやらを試してみよう。それで無理ならその時は……」

 

罠と分かっていても進むしかない。そこで出来る限り生き延びる方法を見つけるしか。

 

「よし、いいか?」

「「「(コク)」」」

 

緑色の宝石がついた指輪の上に反対側の手を乗せ、あらかじめ教えられていた使用方法を試す。

 

手を握り、俺たちの宿の風景を思い浮かべながら、転移しろと念じる。

 

だが……

 

「「「「ッ⁉︎」」」」

 

一瞬足元へ魔法陣が現れたと思うと、魔法陣及び緑色の宝石はその場で砕け散ってしまった。

転移は阻害されている、ということになるのか?

 

「ははっ、最悪、だな」

 

冷や汗が背中を伝い、過去1の恐怖が身を包む。

あー。ここで死ぬのかもな。

 

「ユーと離れるべきじゃなかったわねぇ」

「私がもっと警戒をしていれば…」

「……私、ユーさんに頼りすぎていた。慢心を捨てきれていなかった」

 

「ま、とにかく……進んでみますか。ここが闘技場と同じ施設だってなら、ここの主人は俺たちに戦えって言ってるだろうからな」

 

ここで地団駄を踏んでいても埒があかない。ユーはきっと俺たちを探している。ならばこちらからも探しにいくべきだ。

そのためにもここを切り抜けないと、な。

 

「いくぞ。万が一は俺を捨てていけよ?」

「ふざけんじゃないわよ」

「ご冗談を」

「そんなことをしたらユーさんが地獄まで殴り込みに行くって言ってた」

 

怖いこと言ってんなあの新人様は。

しかし、そのおかげで緊迫していた雰囲気が、ほんの少しだけ和らいでくれた。

 

4人で警戒しながら鉄格子の先へ進んでいく。

 

潜り抜けた先は、案の定闘技場の中だった。だが上を見上げるとそこには星空が広がっている。

 

外へ転移したって事か?

 

「とうっ!」

 

警戒しながら中心へ進んで行くと、どこからか元気な声が響き、俺たちの近くに誰かが着地する。

 

そこには金髪の子供が--耳が長いからおそらくはエルフが--いた。

 

「挑戦者は!ナザリック地下大墳墓に侵入した、命知らずの愚か者達4人!

そしてそれに対するのは、ナザリック地下大墳墓の主!偉大にして至高なる死の王!アインズ・ウール・ゴウン様!」

 

エルフの言葉と共に、俺たちの対面から一体のスケルトンが歩いてくる。

その後ろにはめちゃくちゃ美人な女性を侍らせていた。

 

めちゃくちゃ強そうだ。俺たち全員でかかっても勝てるかどうか……。

 

「申し訳ない。私が警戒を怠らなかったら……。みんな……」

「いやいや、何を言っているんですかねこの小娘は」

「ですね。それでいうなら私も同罪ですよ」

「そういうことよ。気にする必要はないわ」

 

アルシェが自分を責め始めるが、おそらく俺たち全員で警戒していても結果は変わらなかっただろう。

それに過ぎたことよりも今は目の前のことをどうにか出来ないかを考えた方がいい。

 

「さて、こんなとこで死んだら新人のユー様に笑われちまうし。交渉してみるかな」

「欲を言うなら、この墳墓についても聞いてみれば?」

「そうですよ。知りたがっていたじゃありませんか」

 

イミーナとロバーが茶化してくるが、それのおかげで多少は冷静になることができた。

 

 

覚悟は決まった。

 

俺はいい。アルシェ達だけでも……

 

 

「まずは、謝罪をさせていただきたい。アインズ・ウール……殿」

 

「アインズ・ウール・ゴウンだ」

 

「失礼。アインズ・ウール・ゴウン殿。この墳墓に無断で入り込んだ事は謝罪させていただきたい。もし受け入れてくださるのなら……」

 

「悪いが、私はお前達を生きて返す気はない。金銭欲というくだらない欲望でこの墳墓を襲撃しておいて、見逃してくださいは筋が通らないと、そう思わないか?」

 

「……確かに、金銭欲がゼロかと言われたら、それは嘘になります。ですが!俺たちはそれ以上に…」

 

「やめろ!それ以上嘘を口にして私を不快にするな。懺悔する間もなく死ぬのは嫌だろう?」

 

「確かに、それは嫌ですね。ですが……本当に違うのです。私達は金銭よりもそれ以上にこの墳墓を作られた方……つまりは貴方様について知りたく、この地に足を踏み入れました。私のチームメイトともこの墳墓の主人がいる可能性も考え、ここの宝物等には一切手をつけないというルールを設けておりました」

 

「ほう?それを証明する事はできるのか?」

 

「無論です。殺さないと約束してくださるのなら、現在持っているアイテムをこの場に全て出してみせましょう」

 

目の前の墳墓の主人は顎に手を当てながらしばらく考え込んでいた。これで少しでも許してくれるといいが……。

 

「いいや。する必要はない。お前達が私たちのものを取っていようといなかろうと、侵入者であることに変わりはない」

 

ごもっとも。じゃあ……

 

「それは確かにその通りです。では、私たちの持つもので出来うる限りのお詫びの品をお渡しさせて頂きたい。その為のアイテムをいくつか持っております」

 

「不要だ。何度でも言おう。お前達は侵入者だ。故に私はお前達を殺す」

 

「ッ……では、一つだけ確認をしてもよろしいでしょうか?」

 

「いいだろう。許可する」

 

「俺たちの他に、もう1人仲間がいました。そいつは今、どうなっているのでしょうか」

 

「ああ、お前達がユーと呼んでいた女か。さあな、今頃死んでいるかもな」

 

いいやそんなことはない。ユーなら……いや、そんなことを考えても仕方ない。

 

「では、俺たちは貴方様と戦うしか道がない、と言うことですね?」

 

「そう言うことになるな。どうする?大人しく頭を垂れるならば、苦痛無き死を与えてやろう」

 

「それは無理ですね。俺たちは……生きて帰ると、5人で約束しているんです」

 

「そうか。では精々足掻くといい」

 

 

 

 

 

 

 

「武技、双剣斬撃!」

「ふんっ!」

 

手始めに攻撃を仕掛けるが、盾で弾かれてしまう。だがそこで手は緩めず、続けて攻撃を仕掛ける。

連撃を続けることで、少しでも長く俺へ意識を割かせる。

 

魔法の矢(マジックアロー)!」

下級敏捷力増大(レッサー・デクスタリティ)!」

 

「児戯だな」

 

アルシェ達が放つ魔法は、当たる前に霧散する。

それを見た俺たちは、この化け物が魔法無効化の特殊能力を持っているだろうと当たりをつける。

 

アルシェによる魔法の火力は当てにならない。なら俺かイミーナしか有効打を取れる攻撃手段は無い、と言うことになる。

アルシェもそれを理解したのか、すぐに立ち回りを変えていた。

 

「このっ!」

「そんなもの、私には……。何?」

 

化け物はイミーナが放った矢を、1発目は敢えて受け止めていた。だが何かを感じたのか2発目は盾で弾いていた。

 

「ふむ……なるほどな。どうやらユーとやらの評価を今一度改める必要がありそうだ」

 

「もう一度くらいなさい!」

 

イミーナが再度撃ち込み、それを防がれた隙に死界へ潜り込む。

武技を発動させ、身体能力を大きく向上させる。

 

閃光(フラッシュ)!」

下級筋力増大(レッサー・ストレングス)!」

 

「双剣斬撃!」

 

全員の援護を受け、再び双剣斬撃を叩き込む。

片方の剣は盾に弾かれたが、もう片方は胸に掠らせることができ、そこを起点に炎が巻き上がる。

 

「(アンデットは炎に弱いはずだ。これで少しはダメージを喰らってくれてるといいが……)」

 

「ふふ、ふふふふ。なるほどな」

 

そんな希望を打ち砕くかのように、炎の中から声が響いてくる。

 

「なるほどなるほど。お前達が多少は自信をもっているわけだ。だが……悲しきかな」

 

化け物は軽く手を振るうだけで燃え盛る炎を消してみせ、全くこたえた様子が無かった。

 

「残念だったな。お前達のレベルがもっと高ければ、武具の質がもっと良い物を渡されていれば。私はお前達に負けていた可能性があっただろうに」

 

バケモノ。

目の前の存在を、それ以外に表現する言葉が見つからない。

体の芯が凍りつきそうな、そんな恐怖が纏わりついてくる。

 

「連携の取れたパーティの手数の多さ。それがどれほどの強さを発揮するかは知っていたつもりだったが……どこかで慢心していたのだろうな。まさか攻撃を貰うとは思わなかったよ。いやはや……人間にしては素晴らしい」

 

そう称賛されるが、これ以上の攻撃を与える事は不可能に近い。つまるところ、俺たちだけでは勝てる可能性が皆無とも言えた。

 

 

 

……でも、こんなところで諦めてたまるかよ。

 

 

 

「みんな、まだ行けるか?」

「あったりまえよ」

「勿論です」

「うん、まだやれる」

 

「ほう?あのユーとやらがいれば、と。そう考えないんだな」

 

本音を言うなら、ユーがいればどれほど心強かったか。でも俺たちは、俺たちの未来の結末を他人のせいにしたくはなかった。

 

「この程度の障害、乗り越えてみせねえと。リーダーとしての面目が立たないんでね」

 

「ふむ……。強い瞳だ。仲間を心の底から信頼している、そんな瞳だな」

 

ふと、そんなことを呟かれた。

 

もしかしたら、もっと交渉ができるのでは--

 

「時間もない。ここからは別の遊びをするとしよう」

 

「は?」

「え?」

「なっ」

「……嘘」

 

「かかってこい。人間ども」

 

化け物はそれまでもっていた剣と盾を、虚空へ消した。

それが意味する所はつまり……いや、まさか。あり得ねえ。

 

「マジック・キャスター……だと?」

「まさか!ヘッケランと対等に戦えていたのに⁉︎」

「魔法の方が得意だと言うのですか⁉︎」

「…………。いや、違う!断言できる!少なくとも魔力系じゃない!」

 

「ん?それはどう言う意味かな?」

 

「貴方からは、魔法の力を感じない!」

 

「なるほど探知系魔法を使っているのか。それはそれは失礼した」

 

化け物が左手にしていた指輪の一つを外す。

その瞬間、全身の毛が逆立つような寒気がした。

 

「ッ⁉︎そ、ん……」

 

俺の後ろでは、化け物の魔法の力を視たアルシェが口元を強く抑えながらその場に蹲った。

 

「これで分かったかな?私がどのような存在か。おやおや、酷く怯えているじゃないか。早く魔法をかけてあげたらどうかね?」

 

「な、何をしたのよ!」

「みんな!にげて!そいつは化け物!勝てるわけがない!力の桁が違う!無理無理無理!」

 

さっきまでは諦めていなかったアルシェが一転、化け物が指輪を外した途端に幼子のように泣きじゃくり、俺たちへ逃げるように促す。一体何が……。

 

「ロバーデイク、お願い!」

「ええ。獅子のごとき心(ライオンズ・ハート)

 

ロバーから恐怖を打ち消す魔法をかけてもらい、ようやく立ち上がったアルシェは尚、恐怖が抜けておらず怯えた様子で化け物を見ていた。

 

「ッ、つかわ、ないと……」

「え?あ?は、はぁっ⁉︎」

 

アルシェは何かに縋る思いからか、小袋の中身を取り出していた。

そこに入っていたのはまたもや指輪。

 

それをみた化け物は何故かめちゃくちゃ驚いていたが、アルシェは構わず指につける。

 

「ま、まて!お前!それをどこで手に入れた!」

 

「言わない!絶対に!」

 

「待て!少し待て!本当に待て!分かった、お前達の命は保証する!だからその指輪を使うのは本当に待て!」

 

さっきまで俺たちを殺すと豪語していた化け物は一転し、俺たちを殺さないと言う。それほどまでにこの指輪はヤベェ代物って事か。

 

すでに訳がわからなく頭がパンクしそうだったが、一番分からなくなったのはユーという存在だった。こんな化け物すら驚き慌てるような代物を、なんでユーのやつは持っていて、何でアルシェに渡したんだ?

 

「(一体ユーのやつ、何者なんだよ…。いやまて、今のこの状況なら……)アルシェ!構うな!起動させろ!」

「わか、てる!」

 

勝てる気は微塵も浮かばないが、少しでも時間を稼ぐことくらいはできるはず。

そう考えて数歩前へ踏み出す。イミーナやロバーデイクも同じ考えのようで、アルシェを守るように前へ出る。その頃には指輪は無事起動したみたいで、俺たちの周りに青白い魔法陣が現れアルシェ達を包んだ。

 

「お願い!ユーさんを、みんなを……!」

「チィッ!不死者の接触(タッチ・オブ・アンデス)!」

 

瞬間、目の前から化け物が消える。すぐに後ろを振り返るとアルシェの真後ろに移動していた。

 

「うおぉぉぉぉ!ドケェ!」

 

全力で走り、アルシェの元へ向かう。化け物がアルシェの頭へ手を伸ばし切る直前に、彼女をその場から強引に動かすことに成功する。

 

「えっ、なに……」

「俺だよ!アルシェ、構わず発動させろ!」

 

化け物は目の前の獲物(アルシェ)がいなくなったことから、少し不機嫌な声を漏らし、俺へ向かって手を伸ばしてくる。

 

「武技、限界突破、痛覚鈍化、肉体向上、剛腕豪撃!」

 

今持てる全ての武技を発動させ、身体中がミシミシと悲鳴を上げるが、構わず続けて武技を発動させる。

 

「双剣ッ、斬撃!」

 

確実に当たった。

その確かな手応えを感じ、一歩後ろに下がる。

 

「ふむ。やはり人間にしてはなかなかやるようだ」

 

しかし、目の前の化け物はなんの意も介さず、腕を伸ばし頭を鷲掴みにする。

 

「うぐっ……こ…のっ……」

 

「おいおい暴れるなよ。思わず握り潰してしまうだろ?しかし通じないと分かっても尚、仲間のために時間稼ぎをしようとするお前の心意気は見事だ。だから私もお前達に誠意を持って叩き潰すとしよう。麻痺、毒、暗闇」

 

その言葉を最後に、俺の視界は暗闇に閉ざされてしまった。体も全く動かなくなり、続けて感じたのは地面に打ち付けられる痛み。

 

俺は最後にイミーナ達を案じて祈るしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

「ヘッケ……ラン……」

 

私が、私が指輪を使うのを躊躇ったから。判断が遅かったから。

その皺寄せが今、私を受け入れてくれた敬愛すべきリーダーに全て向かってしまった。

 

私を助けるために、全てをかなぐり捨てて助けに来たリーダーは、ピクリとも動かずにその場に倒れた。

 

「ふむ……状態異常を貫通するスキルを併用してようやくか。当たり前だがその辺の対策は万全か。だが時間対策をしていなかったところを見るに……?」

 

魔法陣は刻一刻と時間を刻んでいるのに、化け物はもはや私には興味を失ったかのように、手を何度も握っては開いていた。

 

「アルシェ!早く発動させなさい!」

「そうです!その指輪ならヘッケランも助けることがきっと……」

「ッ!わ、わかった!」

 

「ああ、恐らく無駄だと思うぞ?」

 

化け物の言葉を無視し、ユーさんに言われていた通りに唱える。

 

「お願い、指輪よ。私たちを……たすけて!」

 

願いを口にすると、魔法陣は淡く光り輝き---

 

 

霧散した。

 

 

「そん、な……」

「まっ……たく、嫌になるわね」

「ユーさんのとっておきすら……」

 

 

「だろうな。あのような曖昧な願いでは叶えるものも叶えれないだろう。……マジで何を考えて渡したんだ?……っと、さて、お前達のとっておきすら不発に終わったようだが、まだ抗うかね」

 

無理だ。勝てる訳がない。どうすれば。ユーさん……。

 

「アルシェ、逃げなさい」

「……えっ?」

 

泣きじゃくってしまいたかった。

もう全て無駄になってしまったと……そう諦めていたら、ロバーデイクから言葉をかけられた。

 

その意味が理解できず、困惑してしまう。

 

 

だって、でも、私だけ逃げたら……みんなは……

 

 

「飛んで逃げれば、逃げれる可能性がごく僅かとはいえあります。時間を1分……いえ、10秒は稼いでみせますから」

 

「ほほう?面白そうな提案だ。確かにお前達の持つマジックアイテムならば、或いは可能かもしれないな?」

 

「さあ、行きなさい。このお金は自由に使ってくださいね」

 

と、拒否しようとするが無理やりお金の入った袋を持たされてしまう。

 

「それと、ユーさんをこぴっどく叱っておいてくださいね。なにしてたんだ、ってね」

 

ロバーデイクの提案を受け入れられず、思わずイミーナを見ると、彼女も悪戯気味に微笑んだ。

 

「そうよアルシェ。妹さんがいるんでしょ。私たちを置いて逃げなさい」

「大丈夫ですよ。あのアインズとかいう化け物を倒し、ついでにヘッケランも助けて見せます」

「ユーのやつも見つけたら回収しとくわよ。そん時は、貴女とユーの奢りで一杯ね」

 

そんなこと出来るはずが、出来る訳がないのに。溢れてしまいそうになる涙を、頑張って、頑張って頑張って堪える。

 

ここまで私を助けようとしてくれているのに、無碍にしてみんな死ぬなんて、そんなのもっと嫌だったから。

 

「〜〜っっ、りがいじだ。ざきに、いっでる」

 

 

 

「感動のお別れのところ悪いが、特にお前は逃すわけにはいかない」

 

 

 

ロバーデイク達の意思を汲み取って背を向けた、そのはずだった。

でも化け物は既に私の目の前にいた。

 

 

「アルシェ!」

「っ、だめです。間に合わない!」

 

「(飛行の魔法を……いや、ダメ。間に合わない……死……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい。弱いものイジメが過ぎるんじゃないのかい?異形の王サマよ」

 

 

 

 

 

 

 




一方その頃 アルシェの指輪を見ていた守護神と某領域守護者

「え?あ、は、はぁっ⁉︎」
「な、なんっ、え、は、はぁっ⁉︎」


どんな感じかというと、アニメの第3期でエンリがゴブリン将軍の角笛を使った時のアインズ様みたいな感じ。


〜あとがき〜

もう少しだけ突っ走ります

がんばるぞい

P.S ほらよ!みんな救済が見たかったんだろ!任せろ(多分恐らくきっと)救済する(かもしれない)から!

それはそうとアルシェ可愛いですね



それでは読んでくださりありがとうございます
感想や評価などしてくださると嬉しいです

あ、もちろんこれまでもらった感想は全て目を通しておりますので(露骨
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