モモンガさんが大好きな小さな守護神   作:紀野感無

50 / 51
〜ナザリックのとある1日〜

「……」

アテナはとある階層に足を運ぶ。が、その足取りは少し怯えが混じっていた。

「(あ、相変わらず雰囲気、怖い)」

運んだ先は第二階層【黒棺(ブラック・カプセル)
ナザリック五大最悪の一つ『拠点最悪』こと恐怖公が住んでいる階層である。


尚アテナはその事実を知らない。



「…よしっ」

鎧とか外し、白いスカートとか黒いシャツなどのラフな格好になり、色々と荷物を取り出して(結構勇気を出して)前へ進む。
奥の方にいたのは--

「ん…どなたで…」
「こん、にちは。恐怖公」
「ややっ⁉︎ア、アテナ様⁉︎吾輩の居住区へようこそいらっしゃいました!」

そこにいたのは人間大の大きさで王様みたいなコートを着ているゴキブリ。


もう一度言おう。


ゴキブリだ。


いや別に可愛いと思うんだけどね。リアルにいた時もゴキブリ見たことあるけど何も思わなかったし(やまいこさんやぶくぶく茶釜さん達にドン引かれたけど)

「し、しかし吾輩へどのような…。もしや失敗でもしてしまったでしょうか…」
「あ、ううん。恐怖公、挨拶ちゃんとしたことなかったなって。だから、こないだの侵入者のお礼も含めて、挨拶しようと、思ったです」
「な、なな、なんと…慈悲深き御方でしょうか…。そのお気持ちだけで我輩、
「い、いや、そんな畏まらなくていい、から。それよりも、これ。みんなで、飲んでほしくて」
「ややっ?これは…なんと⁉︎」

恐怖公に一本の私の背丈はあろうサイズの瓶を渡す。その中身は…

「こ、こんな素晴らしい果実酒を我らに⁉︎」
「うん、眷属が多いから量も多い方が、っておもったから。足りないかな?」
「めめ、滅相もありません!これだけで吾輩達、100年は不眠不休で働けそうでございますぞ!」
「い、いや、休んでね?」

あ、ちょ、眷属のみんな。登ってきてお礼を言おうとしてくれるのは嬉しいけど、くすぐったいです。あ、こら、服の中に入っちゃダメ。

「あ、こ、こら!眷属達!アテナ様にご迷惑をお掛けしないのです!」
「だいじょうぶ、だよ。みんな、おしごと、がんばってね。共食い、しちゃだめだよ?」


恐怖公含め全員の敬礼(したような感じ)を見て、引き続き別の領域守護者達のもとに行くことを伝えてこの場を後にする。



その後、事情を知ったアインズさんに正座させられました。
なんで?

五大最悪?そのうちの1つが恐怖公?
まさかー。あんなかっこいいゴキブリが最悪とかなんてそんなわけ……


え?そうなの?


今日も今日とてナザリックは平和です。


12話 戦争準備 そして…

バハルス帝国とリ・エスティーゼ王国は毎年のように戦争(と言っても小競り合いのようなものだが)をしていた。

 

しかし、今回だけは事情がかなり違っており、リ・エスティーゼ王国の王室には現国王や皇子、皇女、そして大勢の貴族が集まっていた。

 

「すまぬ、あらためて書状の内容を聞かせてくれないか」

 

「ハ、ハッ!帝国はアインズ・ウール・ゴウン魔導王率いる『ナザリック』なる組織を、国家として認め、同盟を結んだ事をここに宣言する。バハルス帝国皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。

元々、エ・ランテル近郊は、ゴウン魔導王の土地であり、リ・エスティーゼ王国は本来の所有者に返還しなければならない。

帝国はゴウン魔導王に協力し、王国へ侵攻して、領土を奪還する」

 

「狂人の戯言でしょうな」

「攻め入る為の言い訳のネタが尽きたのでしょうな」

「……どうだか」

 

この場の貴族は、マジック・キャスター1人などどうでも良いと考えているのが大半を占めていた。

しかし、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフだけは険しい顔のままだった。

 

「戦士長よ、何か意見があるなら聞かせてくれないか」

「しかし……」

 

王から促されたとはいえ、貴族が平民上がりのガゼフを見る目は険しい。

が、意を決して口を開いた。

 

「恐れながら申し上げます。今回の戦争は例年の小競り合いで終わると考えてはなりません」

 

「その理由は」

 

「はい。かの大マジック・キャスター、アインズ・ウール・ゴウンの存在です。王よ、エ・ランテル近郊を帝国、いやかのマジック・キャスターに引き渡すことはできませんか」

 

その姿勢を、貴族派閥--王族に従わず好き勝手している派閥--の人間は嘲笑う。

そんな貴族派閥を敵視し反発するように、王派閥の人間も各々の意見を出していく。

 

「戦士長殿、そのような発言は、無用な疑いを招きますよ」

 

「……。ですが…」

「横からごめんなさい、発言してもいいかしら」

 

その中に凛とした声が響く。

王族であるラナー皇女ではなく、貴族たちの列の中から。

 

「ああ構わないとも。()()()()()()()()殿」

「ありがとう、王様」

 

そこにいたのは、銀髪に赤い瞳をした()()そして周りの貴族と装いがかなり違っており、紫耀く服に膝上程度のスカートを着用していた。

 

見た目はどう甘く見積もっても10代前半。だがしっかり成人済み(18歳)である。

 

しかし纏う雰囲気は歴とした貴族のそれだった。

貴族派閥、王派閥問わず周りから露骨な舌打ちが聞こえてくるが我関せずと、イリヤスフィール(以下イリヤ)は戦士長の方を見る。

 

「以前に助けてくれたっていう…えーと、アインズとやらはどんな格好をしていたのかしら」

 

「格好ですか。魔導士らしいローブを着ていたとしか」

 

「それだけ?他に目ぼしい装飾品とか無かったの?」

 

「……そういえば、頭の横に、ツノのようなものが付いておりました」

 

「じゃあ、他に付き従っていた人とか居なかった?例えば弓を使う人とか、剣を持った()()()()()()()()()()人、とか」

 

「いえ。そのような方々は。ああ…いや、確か護衛という少女がおりました」

 

「へぇ。……流石に断言はできないわね。後で聞いてみないと」

 

「え?」

 

「何でもないわ。それで素朴な疑問だけれど、戦士長は、もしそのアインズとやらと全力で秘宝もありきの1対1だったら、勝てる?」

 

アインツベルンからの質問に周りが動揺する中、ガゼフは「無理です」と即答する。

 

「ふーん…その根拠は?」

 

「私は秘宝を纏っていなかったとはいえ、六色聖典に手も足も出ませんでした。ですがかの御仁は、単独で引き受け、おそらく壊滅させたと思われるからです」

 

そこまで聞いて満足したのか、イリヤは笑顔で頷いて頭を下げる。

 

「ありがとう。とても有意義な情報だったわ。じゃあ王様、改めて私の意見も言って良いかしら?」

 

「勿論だ。忌憚無き意見を述べてくれ」

 

「じゃあお言葉に甘えて。例年通りにしたなら……皆、死ぬんじゃないかしら?」

 

そう告げた瞬間、殆どの貴族はイリヤを罵倒する。

だがそれでも尚涼しい顔をして聞き流していた。

 

「私から言えるのは、今すぐにでもエ・ランテルを明け渡す方がいいって事くらいね。後は貴方達で勝手にやってちょうだい。今回の戦争は、アインツベルン家は関与しないわ。やるだけ無駄だもの」

 

それだけ告げ、イリヤはその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

「…………。もういいかしら。バーサーカー」

「どうだったお嬢」

「バーサーカーには悪いけど、参加しない方がいいと思うわ」

「え?マジ?何があったよ」

 

イリヤの後ろに立っていたのは、2.5メートル程度の大男。申し訳程度に外套を纏って体を隠しているが、その上からでもわかるくらいに筋骨隆々だった。

しかし周りが気にしていないのは、本人のもつマジックアイテムのおかげだった。

 

そんなバーサーカーと呼んだ大男にイリヤスフィールは掻い摘んで説明する。

アインス・ウール・ゴウンの名前を出しても特に動揺するそぶりは無かった。

 

「じゃあどうすっかねぇ。移住でもする?」

「戦いたいってオーラが滲み出てるわよ」

「ヤベバレた」

「はぁ…前から思っていたんだけれど、なんで貴方の主人みたいになってるのよ私…」

「そういう()()にしたからな。お嬢には悪いが」

 

イリヤは今後起こるであろうことに頭を抱えながら、今後どう動くかを模索する。

 

「そういえば【剣豪】はエ・ランテルにいるんじゃなかったかしら」

「うん?アイツ確かスレインに行っただろ」

「でも最近エ・ランテルで有名になってるわよあの酒豪さん」

「だろうな。……まて、マジでアイツいんのかよ」

 

バーサーカーは死ぬほど嫌そうな顔をしながら、一度エ・ランテルに向かうことを決めたと告げる。

イリヤは「は?」と真顔で見つめた。

 

「どうせイリヤ相手だとホラしか言わねえよ。それなら俺が行った方が早え」

「待って、本当に待って。勝手なことをしないで。目をつけられたら面倒だもの」

「あの酒カスに好き勝手させる方が面倒だ。予言するぞ?仮に今回の戦争でエ・ランテルが魔導王とやらに明け渡されたら…」

「渡されたら?」

「百パー確実に、俺らんとこ来てタカるぞ」

「あ、そう」

 

真面目に聞いているのがバカらしくなったのか、イリヤは軽く別れの挨拶と、まだ勝手に動かないでと念を押して自室へ戻った。

 

「そんじゃ、怒られない程度に動くかな」

 

そしてバーサーカーもその場から姿を消した。

 

 

 


 

 

 

〜ナザリック地下大墳墓 第九階層 執務室〜

 

「え、戦争、ですか?」

 

「エ・ランテルを手中に入れるために、帝国協力の元、いつもの小競り合いに近い戦争に力を貸すことになりました」

 

「あの、あいんずさん。一ついいですか?」

 

「はい」

 

「たくさん殺す、ですか?」

 

「かもしれません」

 

アインズ、アテナは今後の計画を話しながら、時にアルベドも交えながら意見交換していった。

特に戦争でどういった役割を任されたのか、出された条件等を聞きながらアテナは難しい顔をしていた。

 

「アテナ様、何かありましたでしょうか…?」

「あいんずさん、あるべど。あの、私の勝手な考え、言ってもいい、ですか?」

 

2人は頷き、アテナの言葉を待つ。

 

「わたしは、いやです。その作戦」

 

「と、言いますと?」

 

アインズは真面目な声で、アルベドも神妙な面持ちで次の言葉を待つ。

 

「だって、あいんずさん優しい人、なのに。もしあいんずさん、本気出したら。レベルが10とか20の人たちが例え何十万人いても、問題ない、ですよね」

 

「そうですね。死霊系魔法をレジストされることもないでしょうから。そうでなくとも、上位アンデット1体召喚すれば終わりでしょう」

 

「でも、そんな事したら。あいんずさん、怖がられる、です。それが嫌、です。あいんずさんがそんなこと、するくらいなら、私が前に出ます。あいんずさん汚名、被るなら、私が被ります」

 

アテナの言葉に慌てるアインズとアルベド。

お互いにそんな事はしなくていい、する必要無い、そんなことさせたく無いなど、話し合いは平行線になっていく。

 

「むー、じゃあ。一緒に出る、でどうですか」

 

「いえですから…」

 

「私も一緒にアインズさんに降りかかる業を背負います。一緒に辛いものを背負えなくて、助ける事が出来なくて、何が守護神ですか」

 

流暢に喋るアテナ。それを聞いて本人の気持ちがより昂ったのだと、アインズは理解する。

 

アインズにとってどうでもいい人間から何と思われようと構わない、だからこそ引き受けた事だった。

しかしアテナの言葉で少し考えを改める。

 

「……わかりました。アルベド、アテナさんも共に向かうとして、この場合どこまで作戦に支障が出る」

 

「恐らく問題ないかと思われます。ですが…」

 

「私、表に出ない、言ったもんね」

 

「そうです。アテナ様の方針が大きく変わってしまいまして…」

 

「ならその方針取り消すよ。私は常にアインズさんの横で魔導王を守る護衛、そんな立ち位置ならどう?」

 

「それならば問題は無いかと。しかし…よろしいのですか?」

 

「私が我儘言ったんだから、それくらいはしないとね。……ごめんね困らせて。あいんずさんも、ごめんなさいワガママ、言っちゃって」

 

そこから、改めて今後の動きを3人で突き詰めていくことになる。

その途中でアルベドとアテナが、アインズのことでちょっとバチバチするのは別のお話--

 

 

 

 

 


 

〜二ヶ月後〜

バハルス帝国兵 本陣にて

 

「カルネ村、なんとかなったんですか?」

「はい。予想外すぎる事が起きましたが、村人達だけでどうにか難は凌ぎました」

 

日にちが経つのは早いもので、もう二ヶ月経って戦争の始まる日になった。

昨日にカルネ村まで王国兵が5000人来たらしいけど、何をどうやったのかエンリ・エモットが『ゴブリン将軍の角笛』で5000のゴブリンを召喚し返り討ちにしたらしい。

 

「ルプスレギナはどうでした?」

「ちゃんと報連相してましたよ。前に叱ったのが相当効いていたみたいです」

「あはは…」

 

その後もアインズさんと何気ない会話を楽しんでいたら、戦争開始の準備をお願いしますと、帝国の…えーと、ニンベル?ナンプル?さんに呼び出された。

 

アインズさんが前を歩き、念の為一緒に来たマーレと共に後ろに付き従い、更に後ろからデス・ナイトが100体付いてくる。

 

「右の集団、先に動いてますね」

「でしたらそちらに向かって魔法を放つとしましょう。帝国の方も、それで宜しいかな?」

 

「は、はいっ。もちろんです」

 

最後にそう確認を取り、アインズさんは超位魔法を起動した。

 

「それでは、始めましょう」

「はい、何があっても守りますから、任せてください」

 

 

 

 

 

「「あ……」」

 

帝国軍の先頭に立つナニカが出した青白い魔法陣。

貴族や兵士がそれを見ても何も思っていない、もしくは困惑している中王王の天幕近くに控えていた1人の大男とその横にいた少女は、即座に武装を切り替え合流する。

 

その少女の名はイリヤスフィール。そしてバーサーカーと呼ばれていた大男。

 

2人は本来参加する予定はなかったが事情が変わり、2人のみで参加する事になっていた。

 

そんな無法な行いを貴族達はもちろん反発し、本来許されなかったがそこはイリヤが強引になんとかした結果だ。

 

「まずいわね」

「ああ、死ぬほどヤベェな」

「どうにかなる?」

「無理だと思うが、やってみようか」

 

二人は周りの貴族から問い詰められるが全て無視し、2人だけで会話を進めていき、バーサーカーは貴族たちを押し退け前へ進む。その途中で10本程度の槍を無理やり拝借しながら。

 

「さーて、と。なんとかなるといいねぇ」

 

バーサーカーは纏められた槍を荒縄で縛り、一つの丸太のようにし、槍投げの要領で構える。

一方でイリヤはバーサーカーへありったけのバフ魔法をかける。

 

「お嬢、これ防がれたら…分かってるな?」

「ええ勿論」

「オーケー。んじゃ…いっちょかましますか」

 

 

 

 

 

 

アインズが発動した超位魔法。

手には詠唱時間を短縮する課金アイテムが握られていたが、まだ使う様子は見せなかった。

 

「動きは無いですね」

「王国側にプレイヤーはいない、ということですかね。ですがまだ隠れているだけと言う可能性……ッ⁉︎」

 

その瞬間、二人を言いようのない寒気が襲う。

 

「ッ、守護神の道標!イージス!カウンターアロー!ミサイルパリィ!」

 

アインズの元へ超高速でナニカが飛来する。

アテナはとっさにスキルを複数使い、止めるのではなく強引に上へ軌道を逸らす方法を取ることでなんとか事なきを得る。

 

「な、何が……」

 

アインズの傍にいた帝国の騎士は何が起こったか分かっていなかった。

しかし王国側にとんでもない人間がいることだけは理解し、表にこそ出さないがこの化け物を殺してくれるのでは無いかと、淡い期待を持っていた。

 

「ふふふ…なるほどな」

 

()()()()()()、アインズさん」

 

「そうですね。いやはや…まさか本当にいるとは」

 

「じゃあ、予定通りに」

 

「ええ。私たちから見て右側の軍に魔法を打ち込みます。巻き込まれないよう注意を。それと決して無理だけはしないでくださいね」

 

「アインズさんこそ。アレを投げた存在は出来る限り抑え込みますが、無理だけはしないでくださいね。傷付くアインズさん見たくありませんから」

 

「大丈夫ですよ。最大限警戒して挑みますから。それでは、また後で会いましょう」

 

「はい、また後で。マーレ、油断しないようにね。アインズさん、ちゃんと守ってね」

 

「は、はいっ!お任せください!」

 

アテナは熾天使の翼を顕現させ、完全不可知可の魔法を施し上空に待機していた守護者シグルドを引き連れ、王国軍へ向かった。

 

「では私もお返しするとしよう」

 

アインズの手に握られた課金アイテムが砕け散る。

 

 

 

 

「超位魔法!【黒き豊穣への貢ぎ(イア・シュブニグラス)】!」

 

 

 

 




簡易プロフィール

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
種族:ホムンクルス(異形種)

種族レベル 計20レベル
職業レベル 計50レベル
合計70レベル
見た目はもちろん型月のイリヤ


ヘラクレス(バーサーカー)
種族:半神(異形種)

種族レベル 計15レベル
職業レベル 計85レベル
合計100レベル
見た目はもちろん型月の(以下略)

ヘラクレスは宮本武蔵とタイマンで勝ちかけたことがある(尚ワールドチャンピオン獲得前の話)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。