モモンガさんが大好きな小さな守護神   作:紀野感無

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〜???〜

「王国の敗けだろうな。それじゃ私は帰るぞ。無理言って抜けてきたんだ」

「あ、ごめんけどもうちょっとだけ待ってもらえるかい?」

「……まだ何かあるのか」

「ちょっとね、君と、とある人たちと。話し合いたいことがあるんだ」

「私に利があるなら残ってやるが、そんなもの提示できるか?」

「できないね。でも、君の未来にも関係がある、と言えばいいかな?」

「……はぁ、いいだろう」

ため息をつきながら、どこからか豪華な椅子と酒を取り出したエイ=ユー・オウは我が物顔で寛ぎだした。

「相変わらず好き勝手にするね、一応僕の部屋なんだけど」
「じゃあ次からは誰もいない荒野とかに呼び出すんだな」


14話 一騎討ち(P V P)

 

「アインズ・ウール・ゴウン魔導王殿!汝に一騎討ちを申し込む!」

 

私がアインズさんの元に到着し、そこにいたのはリ・エスティーゼ王国の王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。

 

剣をアインズさんに真っ直ぐ向け、一騎討ちを申し込んだ。

 

「正気か?」

 

「無論」

 

「確実に死ぬぞ?」

 

「間違い無くそうなるだろうな」

 

「何を考えている?お前は負けを確信しているようではないか」

 

「敵の王が剣の届く距離に来たのだ。ごく当然の流れだろう」

 

「確かに物理的な距離は近い。だが…」

 

アインズさんが指を少し動かす。それに呼応するように後ろに控えていた黒い仔山羊が一本の触手を、ガゼフ・ストロノーフの横に振り下ろした。

 

「あの程度にすら反応すらできないではないか。それでも勝つ可能性があるとでも?」

 

「かもしれないぞ、ゴウン殿」

 

「……私が殺さないと言ったから図に乗ったのか?」

 

「そんなつもりはこれっぽっちもない。私は王国の戦士長として出来る事の全てをしたい。それだけだ」

 

「向かってくるのならば、私は容赦なくお前を殺す。そしてそれは確実だ」

 

「だろうな」

 

「そうか……残念だ」

 

アインズさんのその声は、とても悲しげで、寂しそうで--

 

 

「アインズ・ウール・ゴウン魔導王殿!我が名はリ・エスティーゼ王国、王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフ!汝に一騎討ちを申し込む!」

 

 

そうして、もう一度高らかに宣言をした。

 

 

……すごい人だなぁ、本当。戦争に出る前、アインズさんがこの人を引き入れようとした気持ちがよく分かる気がする。

 

 

「戦士長!それは…」

「ガゼフ…!お前……」

「受け入れてくださるなら、魔導王殿。この2人を、またそちらの護衛の方を一騎討ちの見届け人に指定させて頂きたい」

 

「「なっ…!」」

「ふむ?」

 

ガセフさんは次にそばにいた男2人を、そして私を見届け人に指定した。

 

「ま、まて!待ってくれ!魔導王閣下!お願いだ!厚かましい願いであることは承知しているが、心からの願いだ!俺たち2人を!同時に相手してくれないか!貴方では苦ではないはず!」

「ブレイン・アングラウス!俺の覚悟に泥を塗る気か!」

「っ…!」

 

ブレインと呼ばれた男は、ガゼフさんの言葉で何かを無理やり飲み込みながら、一歩後ろに下がった。

 

「私は2人を相手でも構わないぞ?」

 

「それには及ばない。その2人に手出しは無用」

 

「……。そう…か。その瞳は前にも見たな。死を覚悟して進む意思。強い眼だ。…憧れるよ。だが…すまない」

 

「?」

 

「私個人の思いとしては勿論構わない。だがこれは私の一存で決めれる事ではない。何より見届け人に指定されたアテナさんの意思も確認できていないからな。先にアテナさんの意思を確認しても?」

 

「勿論」

 

どこか悲しそうな雰囲気を出しながら、申し訳なさそうな雰囲気で私の方を見て、受けるのかどうか、問いかけられた。

 

「……まず、ガゼフさんに1つ確認することがあります、聞いても宜しいですか?」

 

「勿論」

 

「この一騎打ちが終わった後、どちらか…いえ、十中八九ガゼフさんは死ぬでしょう。その後、貴方を蘇生すべきだと、そう思います。それについての考えをお聞かせください」

 

「蘇生は不要。死体は投げ捨てて貰って構いません」

 

私に対して敬語なのは、私が女だからなのか、それともガゼフさんの人の良さなのか。

そこは分からないけど、蘇生を望まないならば次に確認することがある。

 

「そうですか。では、改めて私の考えをお伝えします」

 

冷酷に、淡々と感情を捨て去る。

アインズさんの前に立ち、槍を地面に突き刺して仁王立ちする。

 

「王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。貴殿の覚悟はしかと理解しました。

 

ですがアインズ・ウール・ゴウン魔導王の護衛を務める身として、その一騎討ちを了承する訳にはいきません。以前カルネ村でもお伝えした通り、私はこの方を護る義務があります。

 

その為、どうしても一騎討ちを、と望むならばまずは私を倒してからにして頂きます」

 

ガゼフさんは特に驚く様子もなく、当然だなという感情を隠すことなく笑い、後ろのアインズさんからは息を漏らす音が聞こえた。

 

「これが私の答えです。もし私に勝った場合はお望み通り、貴方と魔導王陛下の一騎討ちを見届けましょう。魔導王陛下、勝手ながらこのような条件を出してしまい申し訳ありません。罰は後で如何様にも」

「問題ありません。…とのことだが、ガゼフ・ストロノーフ。どうするかね?」

 

「承知した。護衛の方がいるというならば、確かに倒さねばなるまい」

 

こうして、私とガゼフ・ストロノーフさんの一騎討ちが決まった。

 

 

 

「勝敗はどう決めますか?」

 

「貴女の場合は負けを認めてくださった場合、俺の場合は死んだ時で構いません」

 

「……であるならば、私の場合も死ぬまで、でしょう。それが一騎討ちを受ける者の責務かと」

 

「しかし……」

 

「もしや、私が女だからと侮っていますか?」

 

「そんなまさか。……いや、心のどこかでは女性だからと考えていたのかもしれません。無礼を詫びる」

 

「問題ありませんよ。さて…と」

「始まる前に、少し待ってくれ」

 

5メートルくらいの距離を取り、槍と適当な円盾を装備したあたりでアインズさんからストップが入る。アインズさんはガゼフさんの剣を見せてくれと頼み、ガゼフさんは二つ返事で了承し剣を渡していた。

 

「……はは!凄いなこれは!ガゼフ・ストロノーフ、この剣についてどこまで知っている?」

 

「全て知っているさ。この剣は金属を紙のように切り裂くことができる、現実離れした鋭利さを持っている」

 

「残念、それはその剣が持つ力の一端でしかない」

 

「何?」

 

「この短剣に付随している魔法の力はその剣と同程度だが、このように…」

 

アインズさんは取り出した短剣で自分の頬を軽く引っ掻くが、傷一つつくことはなかった。

 

「このように魔法の力が弱い武器では私やアテナさんには傷一つ付くことはない。しかしその剣はそれを可能にする。

つまり一言で表すなら、私やアテナさんを殺すことが出来る武器、ということだな。これならば最低限の一騎討ちの形が取れるだろう」

 

アインズさんが剣を返し、元の位置に戻る。その際にこっそり「殺すかどうか、お任せします」と言われ、自分の中での方針はほぼ決まった。

 

はは…にしても、本当にアインズさんって優しいなぁ……。

私の勝手な我儘なのに、こんなに寛容なんだから……

 

「さて…アテナさん、準備の程は?」

「問題ありません」

「ストロノーフ殿は?」

「こちらも問題無い」

「あとは…そこの白い鎧、何か開始の合図を」

 

「ッ…」

 

白羽の矢が立ったのはおそらくガゼフさんの部下であろう金髪の少年。

魔法のハンドベルがあるらしく、それを使うとの事。

 

「「…………」」

 

ベルがなるのを、無言で待つ。

 

「ストロノーフ様…!ッッッ!」

 

 

チリンチリンと、鳴り響いた。

 

 

 

「武技・急所感知(……弱点無し。予想はしてたが当たり前か。なら…)」

 

特殊技能(スキル)・戦乙女の加護」

 

ガゼフは続けて能力向上などの武技を複数発動させる。

アテナはガゼフが何かをしているのは分かっていながらも敢えて準備が終わるまで待っていた。

 

「さて……もうそろそろ良さそうですね。では…」

 

「(死中に活を求めよ…だったか。ここで出来ることは、彼女の槍を持つ腕を使用不能にする、もしくは……)」

 

守りの浅い首を狙う--そこまで考え、ガゼフは己の考えを叩き直す。

 

「(いや、いくら敵とはいえ女性を殺す事など俺にはできない)」

 

アテナがゆっくりと歩みを進め、ガゼフの間合いへ踏み込んだ。

 

「武技・能力向上、能力超向上…!流水加速…!」

 

ガゼフは出せる限りの全力を絞り尽くしていく。

 

「武技!六光連斬!」

 

ガゼフの持つ最強の武技が放たれた。

 

 

 

 

 

 

「ッ…!」

「…流石ですね」

 

決着は一瞬でついた。

 

「ガゼフ!」

「ストロノーフ様!」

 

ガゼフの武技をアテナは真っ向から槍の一閃で打ち破ってみせた。ガゼフは両腕を、肘で斬り落とされ膝をつく。

 

一方アテナも無傷というわけではなく、鎧には僅かながら斬られた痕が刻まれていた。

 

「擦り傷すら貰う予定はありませんでしたが……どうやら侮っていたのは私のようです。さて…ガゼフさん、まだ続けますか?」

 

「ぐっ…あ、当たり、前……だ、俺はまだ……死んで……いないぞ!」

 

「……そうですか」

 

その後もガゼフは立ち上がり、剣を持てぬならば脚でと言わんばかりに蹴りを繰り出す。

しかし、万全の状態ならいざ知らず、武技を追加で発動するだけの気力もなければ両腕をも失った状態のガゼフの動きはあまりにも稚拙だった。

 

「がぁっ⁉︎」

 

アテナは無慈悲に徹した。

膝を砕き、槍で両足を突き刺して地面に固定し、顎へアッパーを叩き込んだ。

 

「……まだ、続けますか?」

「あ…た、り……まえ……だ……お、れ、は……」

「そう…ですか。ならば…」

 

アテナは握り拳に力を込め、ガゼフにトドメを刺さんと振りかぶり----

 

 

「そこまでだ!」

 

 

当たる直前でピタ…と止まる。

アテナはアインズの前まで下がり、佇んだ。

 

「もういいだろうガゼフ・ストロノーフ。負けを認めたまえ」

 

「そ…わけには…いか……」

 

「アテナさん、ガゼフ・ストロノーフに敬意を表し、これ以上王国軍への追撃はやめる事とします。宜しいですか?」

「はい、勿論です」

 

「「「……!」」」

 

こうして攻撃を止めると言ったアインズとそれをあっさり了承したアテナに3人は驚きを隠せなかった。

何故ならばこれは戦争であり、ガゼフは王国でも最重要人物と言っても過言ではなく、敵である2人がガゼフを殺さないという選択肢はあり得なかったからだった。

 

大治癒(ヒール)

 

アテナは右手をガゼフにかざし、治癒の魔法を唱える。瞬く間に一騎討ち前と同じ状態へと戻り、ガゼフは余計困惑する。

 

「これは私から貴方への賞賛です。勝利の可能性が皆無だというのに、己の責務を果たさんとした戦士長への」

「さて、帰りましょうかアテナさん」

「はいっ」

 

最後にアインズはリ・エスティーゼ王国の王に対し、恭順を示すのならば慈悲を与えること、近日中に魔導国へエ・ランテルを引き渡すよう伝えろとガゼフ達に伝え、アテナと共にその場を去った。

 

 

 

 

「(えへへ〜、アインズさんに良いところ見せられたぁ〜)」

 

「(アテナさん無慈悲すぎないか?フレーバーテキストに引っ張られてるとはいえ、あんな可愛らしい少女の見た目であんなこと平然とやるの、マジで怖かったんだが)」

 

そう、アインズは連日の忙しさですっかり忘れていたが、アテナの性格がフレーバーテキストと同化しつつある事を今更ながらに懸念を抱く。

 

今回はアインズの忠実な護衛だと広める目的から共に戦場へ赴いたが、本音を語るならばやはりナザリックに居てほしいと考えていた。

 

「(とはいえ…それだとあまりにも可哀想だよな。帰ってしっかりと話そう。……そういえば、英雄の集いのプレイヤー達は似たような事象は起きてないんだろうか)」

 

何故自分たち以外のプレイヤーには同様の現象が起きていないと決めつけていたのかと、アインズは自分の短慮を叱咤し、頭の中で急速にこれからの予定を立てていく。

 

「(先ずはユーにこの事象について聞いて、欲を言うなら宮本武蔵にも…いや、アイツは信用できなさそうだからやめておこう。襲われた時勝てないし。それから…)」

 

だけどそれらも落ち着いてから--魔導国が正式に建国できてからと考え、今はプレイヤーもいる中、全員無事で終わったことに安堵した。

 

「それじゃあ、帰りましょうかアテナさん」

「はいっ」

「マーレにシグルドも、此度は素晴らしい働きだった」

「えっ!?あ、そ、その、僕は後ろにいただけですから…」

「勿体無いお言葉です」

 

 

 

 

 

 

 

〜???〜

 

「ちーっす……って、ありゃ珍しい」

「こっちのセリフだ」

 

「帰れ、マジで今直ぐ回れ右して帰れオマエら」

 

バハルス帝国のとある宿場にいたユーの元に集まったのは『英雄の集い』のメンバーである宮本武蔵、エイ=ユー・オウ、そしてバーサーカーと呼ばれていた存在、ヘラクレスだった。また彼らの供として段蔵とイリヤスフィールもその場にいた。

 

より厳密に言うならばユーの元に『集まった』ではなく『アポ無しで押しかけた』だろうか。

 

「えーなになに、何やらかしたの筋肉ダルマ」

「テメェにだけは言われたかねえよ。つかオマエ、敢えて伝えなかったことあるだろ」

「あ、バレた?んでどうだったよ」

「殺す」

「きゃー怖い。段蔵、イリヤたすけてー」

「御二方、どうぞこの阿呆の首をへし折ってください」

「いいわよバーサーカー、やっちゃって」

「酷ない⁉︎」

 

「マジで帰れ貴様ら」

 

 

この3人を呼び出した張本人はいつ入ればいいものかと、2対1の殺し合い(じゃれあい)を眺めていた。




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