通常弾ぺちぺちマン   作:三流二式

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この馬鹿はメインの小説をほっぽり出して一体何をやっているのでしかね?


プロローグ 〝通常弾ぺちぺちマン〟

 突然だけど、皆は入り込んでみたいゲームや漫画とかはあるかな? 

 

 

 そういう人は、例えばドラクエとかファイナルファンタジーとかに入り込んで、原作知識活かして早い段階で凄い魔法を習得したりして皆をあっと言わせたり、事前に事件の発端の黒幕をぶっ飛ばして物語をそもそもスタートさせないとか。

 

 

 そういうことをしてみたいとか考えたことは、一度くらいはあるのだろうか? 

 

 

 俺はもちろんあるぜ! 

 

 

 ゴッドイーターの世界に入り込んでスサノオ2体ソロ撃破とか、得意のロングブレードで昇り飛竜叩き込んでカンストダメージ叩き込んでやったり、大車とかいうふざけた奴をぶっ殺してアリサさんとネンゴロ重点とか妄想してはウへヘへと一人にやついていたりしていた。

 

 

 勿論それはしょせんゲームに沿った世界そのままであることが前提の妄想な訳だから、じゃあその世界にマジで飛ばされたら、俺はきっと遠距離系の神機でバレットエディットで作った強力な弾丸ぺちぺちマンになっているに違いない。切った張ったとかマジで無理だし。

 

 

 前置きが長くなってしまったが、結局俺が何を言いたいのかというと。

 

 

 

 

 

 

 

 転生してしまったのだ。しかも俺がプレイしていたゲームの世界に。

 

 

 俺が転生する前にプレイしていたゲームの名は『モンスターハンター』。それも2Gだ。

 2Gだぞ2G。しゃがみ撃ちも無ければブレイブヘビィも無い。回復薬だっていちいちキメポーズが必要なあれだぞ。

 

 

 何でそんな古臭いゲームをやっていたのかというと、部屋の中を整理していたらPSPがぽろっと出てきたからだ。

 

 

 もう長いこと遊んでいなかったから、久々に見たPSPが何だか新鮮に思えた。カセットを覗いてみると2Gのディスクが入っていて、しかも電池も十分残ってたから、整理の事もほっぽり出してプレイしていたのだ。

 

 

 久々にプレイした2Gは相も変わらずモンスターの動きが素直で、ライズやアイスボーンのような複雑な立ち回りや操作がない分ヘビィやライトボウガンでクエストに行くと、面白いほど呆気なくモンスターをやっつける事ができた。

 

 

 夢中になってやっていると、気が付けば空は紅色。俺は慌ててPSPの電源を消し、充電器につないで部屋の整理を再開した。

 しかしその最中も、俺はかつて夢中になって2Gをプレイしていた時の事を懐かしく思い出していた。

 

 

 当時の俺は友達と集まってはPSPを突き合わせてモンハンばっかりやっていた。やっぱどこでも友達と集まってワイワイやれる楽しさは相当で、年が上がるにつれて友達と疎遠になり一緒にプレイする事が無くなっても当時を名残惜しむかのようにシリーズの尻を追っかけている。

 

 

 好きなゲームだよ、ほんと。

 でもこの世界に入りたいかと聞かれたら、俺は確実にNOと言う。

 

 

 だってこの世界、基本詰んでるんだもん。

 

 

 何だよ人類の生存圏は殆ど無いとか。ランポッポ一匹でも当り前のように死人が出るとか。何だよラージャンの毛皮でコートを作りたいとか。何だよ真の女王の座をかけて勝負するとか。

 何にせよ普通の人が生きていくにはあまりにも過酷な世界だという事は確かである。

 

 

 地獄である。糞である。

 創作の物語としては好きだが、現実として生きたいとは到底思えない世界なのだ。

 

 

 なのに転生してしまった。ご丁寧に子供の姿である。この世界で子供の姿で転生とか、神様は俺に死ねってか? ふざけてるぜ。

 しかもだ、純粋な人間では無く何だってよりにもよって半分だけ竜人族なんですかね? 

 

 

 え? そもそも何で転生した世界がモンスターハンターの世界だってわかったのかって? 

 だって意識を失って目が覚めた瞬間、母親らしき人の手に抱かれて物凄い勢いでティガレックスに追いかけられてたんだもん。

 

 

 びっくりなんてもんじゃない。危うくフルフルの咆哮みたいな奇声を上げてしまう所だった。

 でも状況が状況なだけに、俺は声を上げるのを何とか堪えた。そうしないと、何か致命的な事が起こると俺は直感的に理解していた。

 

 

 それと、半分竜人族の血が混じってるせいなのか? あるいは俺が『ヒノエ』さんや『ミノト』さんみたいに特別なのか知らないけど、ティガレックスの思念の様なものが漠然とだが聞こえてきていたんだ。

 

 

 尤も分かった事といえば〝肉! 食う! 〟、〝しかも子供まで付いていてお得! 〟くらいだったのだけど。

 

 

 どうも俺のお母さまらしき人は竜人族で、しかもハンターだったらしく、背中にはモノスゲェごつい大弓を背負っていた。

 でもお母さま……よりによって『ハンターボウ』ですかいな……。

 

 

 中々使い込んでいた感じがあったから、おそらくⅡかⅢあたりに改造してあったのかな? 

 何にせよそれでティガ相手はちょっときついと思いますね……。

 

 

 しかも俺というクソの役にも立たないお荷物がいたのでは本来の動きなどできようはずも無し。

 何とか逃げおおせるために雪山を駆けずり回っていたけど、とうとう崖の端まで追い詰められてしまった。

 

 

 母らしき人は俺と目の前で今にも飛び掛って来そうなティガレックスを見やり、そして決心がついたかのように口元をキュッとつぐむと、あろうことか俺を崖の下に放り投げた。

 

 

 貴方は伊之助の母親か! てことはアレか、わしはドスファンゴにでも育てられるのか!? 

 

 

「ごめんね……」

 

 

 急速な勢いで落下する俺の耳に、謝罪の言葉がかろうじて聞こえた。その時の母らしき人の顔はとても穏やかで、もうこの世に未練は無いとばかりに雑念が一切なかった。それはこれから死にゆく者だけが浮かべる死者の顔だった。

 

 

 覚えている事といえばそれくらいで、そこから先の事はよく覚えていない。覚えているのは、地面が分厚い雪に覆われていて怪我無く済んだことと、2人組のハンターらしき人たちが急いで崖を上っていく光景だった。

 

 

 ティガレックス特有の咆哮と、ハンターさんたちの激しく武器をぶつけ合う音を最後に、俺の意識は闇に消えた。

 そして気付いたら俺はどこかに民家のベッドで寝かされていた。そして寝台の近くに鏡が置いてあり、そこではじめて自分の左耳がとんがっていて、左手の指が4本しかない事に気が付いたのだった。

 

 

 それからこの家の家主がやって来て、次に村長さんがやって来て、俺は平身低頭でこの村に居させてください! と懇願して、何とかこの村で生きる事を許可されたのであった。

 そんなこんなで山脈近くの雪山の懐に抱かれた村『ポッケ村』で、一人で暮らしていたが、母親らしき人が現れる事はついになかった。

 

 

 まあ殺されたのだろう。根気よく彼女の生存を願ってくれている人には申し訳ないが、俺はそう確信している。

 ドライと言われちゃ返す言葉も無いが、俺からすれば数時間の面識なので、そこはどうしようもないので許して欲しいものである。

 

 

 さて俺のこの村での扱いだが、当然の様に疎まれている。

 現代社会だって肌の色の違いや瞳の色で差別されているのだ。それよりモラルが低い世界で、しかもよりによって半分だけ別の種族なのだ。これが純血のどっちかであるならばまだマシだったろう。

 

 

 俺がいるときは対応が普通だけど、曲がり角に消えた途端あの半端者は~とか、人モドキは~とか散々な言い様である。

 

 

 このままでは村八分になるのは時間の問題だったから、俺は否応なくハンターを目指さざるを得なかった。

 で、肝心の武器種だが、俺はボウガンと弓を選んだ。

 

 

 当り前だろ? 切った張ったとかマジで無理。現代人のひ弱さ舐めんな? 

 

 

 ライトボウガンはなけなしの貯金を切り崩して『チェーンブリッツ』を。弓はお母様の遺品がそっくりそのまま手に入ったから『ハンターボウⅢ』を。ヘビィは鉱石と麓近くに生息していた『アプトノス』から集めた竜骨を加工屋の兄ちゃんに渡して『ボーンシューター』を。

 

 

 それを手札に初めの内は何とかやりくりし、20年以上? 30年以下? の月日が流れた。

 

 

 俺はいま雪山で『ギアノス』が群れて進路妨害をしてるっていうんで、散弾が速射に対応している『ショットボウガン・白』を担いで規定数のギアノスを穴だらけにしていた。

 

 

「アバーッ!?」

 

 

 案の定いた『ドスギアノス』もギアノスもろとも散弾で穴だらけにしてやり、止めに顔面に撃ち込んだ徹甲弾が爆発して頭部が木っ端みじんになって、雪の中に没した。

 

 

「ハァ……」

 

 

 倒れ伏したドスギアノスとギアノスと何かいつの間にか巻き込んでいた『ブランゴ』の流す血と臓物で雪は真っ赤に染まって溶けだしており、あちこちで湯気が立ち昇っていた。しかも眉をしかめる程の死臭が鼻につき、ついむせてしまった。

 

 

 俺は空薬莢を排出し、不測の事態が起きてもいい様に散弾を装填し、それから剥ぎ取り作業に取り掛かった。

 ドスギアノスは想定内として、ブランゴの素材が取れるのは嬉しい誤算だった。

 

 

 特に『鋭い牙』、これが良い。後毛皮。後は骨。

 

 

 肉を切り開き、骨を摘出する。内臓は残念ながら食えたもんじゃないからその場に放置。

 自分で言うのは何だが、随分手慣れたものだと、剥ぎ取りが完了し、山になった不要な部位を見ながらそう思う。

 

 

 初めは剥ぎ取りは疎かボウガンでの殺傷すらままならなかったから大した進歩である。日進月歩とはこのことだ。死んでしまった母親も鼻が高いに違いない。

 

 

 命のやり取りには未だ慣れないが、弾丸越しのやり取りなら多少は我慢が出来る程度になっていた。

 それでもやはり他のハンターに比べれば、俺などちんけな弱虫野郎でしかないのだろう。

 

 

 それでも俺は生きている。どれだけ行き先がぶれようが、落とし穴に落ちようが結局のところそれが全てだ。

 

 

 命あっての物種。死んだら終わり。QED。証明終了。

 

 

「帰ろ……」

 

 

 俺はボウガンを背に担ぎ、自分が行った行為から背を向けた。

 

 

 

 

 




通常速射いいよね
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