通常弾ぺちぺちマン   作:三流二式

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月間狩りに生きるvol.××特別読み切り『ポカポカ白雪村』

『はいはいどーも初めまして、どっかの村でハンターをやってる白雪鬼というものだ』

 

 

『あー質問なら受け付けんぞ。文句が言いたきゃこの時期に風邪何ぞ引いたあのアホに言ってくれ』

 

 

『まったく、何が元専属ハンターだよ。自分の体調管理くらいしっかりやってくれってもんだ。おかげでこんな糞面倒なコラムを書かされることになったんだぞ!』

 

 

『あーやだやだ、ただでさえやる事が多いっていうのに何が悲しくてこんなもん書かなきゃいけないんだよ。龍歴院で博士号取るための試験勉強だってしなくちゃいけないのにさー。大体────』

 

 

 

(*以下原稿用紙一枚分ほどの愚痴が続いたため中略)

 

 

 

『──―で、このコーナーは俺の経験やら浅知恵やらから捻りだしたしょうもない話を無駄話を交えてダラダラ書き綴っていくだけの酷く面白味の無いコーナーだ。代打としちゃ妥当だと思わんかね?』

 

 

『……前書きはこれくらいで良いか? じゃあ早速だが本編に入っていくぞ』

 

 

『記念すべき今回のお題は、デデン! 『ティガレックス』についてだ。あぁ今回はなんて書いたが勿論次回なんてないぞ。期待した奴は残念でしたー』

 

 

『で、ティガレックスについてだが……俺はモンスターという存在自体嫌いだが、その中でもティガレックスという生き物は特に嫌いだ』

 

 

『理由? は! 冗談だろ? 大型モンスターなんて碌でもない生き物の中で、肉食で、更にリオレウスよりも危険度が上のこいつが嫌いにならない訳が無いだろうが。馬鹿にしてんのか。そんなんだから『規制済み』』

 

 

『さてティガレックス。あぁ愛しのティガレックス。まず初めにこいつが発見された経緯でもざっくりと紹介していくか』

 

 

『ではこれよりティガレックス発見の経緯を教えていくので、精々学んでいきたまえよ、無知なハンター諸君』

 

 

『こいつが発見された経緯だが、とは言ってもこいつは特定の巣を持たずに餌を求めて各地を徘徊するという習性上、目撃例自体は結構な頻度で上がっていたんだ』

 

 

『しかしだ、こいつと相対したことのある()()()ハンター諸君ならば知っている通り、こいつは酷く獰猛な上にあっちゃこっちゃ動き回るせいで、生態の調査がなかなか進まなかった』

 

 

『だが発見されてから20年も経てば、いくら獰猛なモンスターといえども調査は進んでいくものさ。それは生態を研究する学者共が優秀というのもあるが、この俺が何度か捕獲して生きたサンプルを送り続けてやったんだから、そうでなきゃ困るというものだ』

 

 

『発見の経緯はこのくらいでいいだろう。次に教えるのはこいつの生態についてだ』

 

 

『前述したとおりこいつは一定の場所に留まることなく、獲物を求めてあちこちを徘徊する。大体は砂漠とか砂原の様な乾燥地帯が主な生息地なんだが、持ち前の適応能力に任せて得意じゃない寒冷地帯にまでわざわざ足を運んだりする。いい迷惑だぜ』

 

 

『そのせいで大人しかった『ガムート』の群れが殺気立って大暴れするから、本当に迷惑だ。ただまあティガレックスの襲撃で、上手くいけばガムートの肉が食える可能性があるから、そこだけは感謝してやってもいい。ガムートの肉は牛に近い食感で、寒さに耐えるために脂肪をたっぷり蓄えてあるからとっても肉厚でジューシー。おすすめの食べ方は豪快に鉄板焼きが一番。モグモガーリックフライを乗せて、ムーファミルクのバターを乗せて、がぶりと一口。そして達人ビールで流し込む。幸せというものを感じたいのなら一度やってみると良い。ついでに取れるポポの肉と食べ比べもしてもいいかもな。どちらも甲乙つけがたい。極上の食材だ。ちなみにこれら全てを実行するとなると、合計金額はひい……ふう……みい……ざっと20000ゼニ―だな! ムッハハハハ!』

 

 

『話が逸れた』

 

 

『ともかく、奴に特定の巣は無く、何処にでも出現する可能性があるってこった。森丘で、雪山で、砂原で狩猟している君たちの目の前に突如としてティガレックスが降ってくることが無いように祈っているよ』

 

 

『で、生態の話の続きだが、ティガレックスの異名は知っているかね? そう『轟竜』だ』

 

 

『何故奴は『轟竜』などと呼ばれているか? その理由は、奴は特殊ななき袋『大鳴き袋』と言われる器官をもっているからだ。そこから発せられる桁違いの咆哮は、最早音の領域に非ず。周囲の物体を粉砕する音の暴力は、飛竜のブレスにすら匹敵する。食らってみた者が言うんだ。間違いない。実際鼓膜が破れたし。ま、その経験があったおかげで2度目は喰らわずに済んだから、戦闘に置いて経験は何よりも重要なファクターな事ですね?』

 

 

『こいつは飛竜のくせして陸上での動きに特化している。ただ完全に飛べない訳じゃなくって、風の流れに乗ってムササビみたいに滑空する事によって長距離を移動するんだ。こいつが様々な地域で出没するのは、この生態のためだろうぜ』

 

 

『さて陸上での動きに特化してると記したが、具体的にどんな感じなのか教えてやろう』

 

 

『まずはこいつの代名詞である突進。糞、これに尽きる。だからこっちは弓だっつってんだろーが! いちいち距離を潰してくるのはやめろって言ってんでしょおおおおおおおお!!! しつこいんだよ! 2度も3度もよー! 対策? 納刀して逃げろ。以上!』

 

 

『次、飛び掛かり。糞糞の糞。だから距離を潰してくるなあああああああ!!!』

 

 

『対策は不用意に距離を空けないようにするか、いっそ前に出て飛び越えさせると良いよ』

 

 

『次、回転攻撃。距離を取れ、以上! でも近くにいるときに突発的にやる事が多いから、近接要員が一番喰らうのがこれじゃなーい?』

 

 

『次、岩飛ばし。不用意に距離を空けるといきなりやってくる。不意にやられてガンナーがぶち当たって一乙っていう話は良く聞いたり聞かなかったり。一発も当たった事が無いから知らん』

 

 

『近接武器は反時計回りに且つヒットアンドアウェイを心掛けること。あと正面に極力立つな。ガンナーは……そもそもこいつ相手にガンナーとか自殺行為なので無難に近接オンリーで行った方が良いんじゃねーの? それでも行きたいっていうマゾモスは、正面に立たずに電撃弾を後ろから垂れ流していると良いぞ。俺は拡散矢で顔面付近をうろつくけど……』

 

 

『後付け加えるとするなら、こいつは凄い運動能力を持っているのはさんざ説明したとおり。だがそれは無尽蔵じゃ無い。こいつは疲れやすいのだ。大暴れするこいつの猛攻をしのぎ切れば、直にスタミナが尽きてくる。ヘロヘロになったそのタイミングで、罠や閃光玉やらを駆使して一気に叩みかけろ。4人いりゃあ怒る前に捕獲くらいならできるだろ?』

 

 

『まあこんなもんか。良かったじゃないか。これで君たちは少し賢くなれた。この調子でどんどん知識をつけて沢山狩猟してくれたまえ。そして上位、更にG級まで駆け上がって、ぜひとも俺の仕事を奪い去ってくれ。期待してるよ勇猛果敢なハンター諸君』

 

 

『じゃーねー』

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「よし、焼けたな」

 

 

 

 ポッケ村、トチノキ宅のキッチンで、エプロン姿のトチノキがオーブンを開け、小麦色にやけたパンやら何やらを取り出してゆく。

 

 

「あー香ばしい」

 

 

 小麦色にやけたパンの発する香ばしい香りを深々と吸い込み、恍惚とした表情で呟く。

 

 

「あも」

 

 

 そのうちの一つを無造作につかみ取り、一齧り。

 

 

「んーこれだよこれ! この頭の悪い味! たまらん!」

 

 

 ふわふわな生地を咀嚼する度に小麦の香ばしい香りが鼻腔をくすぐり、とろりとしたカスタードクリームが優しく舌を包み込み、荒んでいた心を柔らかく抱擁した。

 

 

「やっぱクリームパンはこうでなきゃいけねぇ」

「なんにゃごとごと音がすると思ったら、旦那さんまたなんか作ってるニャ」

 

 

 ムシャムシャとクリームパンをかじっていると、不意にキッチンの扉が開き、マサムネとヨシツネが入ってきた。

 

 

「旦那が突発的に何か作り出す事なんかいつもの事だろ? つーか旦那、ギルドから依頼された携帯食料の改良はどうしたんだよ?」

 

 

 マサムネの疑問の言葉に、トチノキは顔も向けずにテーブルの一角を指示した。そちらに目を向けると、ご自由にご試食くださいと書かれた立て札と、数種類の棒状のクッキーめいたものが積まれていた。

 マサムネはそれを手に取って一齧りし、既存の携帯食料とは比較にならない程旨い携帯食料に目を剥いた。

 

 

 それから彼女は携帯食料の山からパンの山の方へ目を移す。

 クリームパンの他にウィンナーロール、メロンパン、チョココロネ、ベーグル等、明らかに依頼されていた携帯食料よりも多く作られていた。

 

 

「パン作る片手間に作ったのかよ……」

「ふつう逆ニャ」

「全くだ」

 

 

 共に携帯食料をかじりながら、マサムネとヨシツネは好き勝手な事を言った。トチノキは鼻を鳴らし、しかし何も言わなかった。

 

 

「モガモガモガ、ん?」

 

 

 それはメロンパンを半分程食べ終えたあたりの事。玄関のドアを叩く音が聞こえ、トチノキはもごもごと口を動かしたまま、ドアへと向かった。

 

 

 ドアを開けると、そこには誰も立っていなかった。訝し気に眉を顰めると、足元でにゃあという声が聞こえ、視線をそちらへと向ける。

 

 

「おお、誰かと思えば」

 

 

 途端に訝し気な顔は柔らかなものへと変わった。

 

 

 そこには頭にラッパを乗せた大きな赤いぼうしを被ったアイルーが立っていた。

 

 

「やあ『郵便屋さん』、こんにちは」

 

 

 普段の彼からすればおよそ考えられない程優し気な声色で郵便屋さんへとあいさつをし、そっと両手でつかむと抱え上げ、自分の目線と同じになる様に抱え上げた。

 

 

「ニャ、こんにちニャ」

 

 

 くりくりとした大きな目で闇色の瞳を見つめ返しながら、舌ったらずな口調で彼も挨拶を返した。

 

 

「それで、こんな辺鄙な場所に来てどうしたんだ? 俺に届け物か?」

「うんそうニャ」

 

 

 郵便屋さんはくるりと首を回して後方を振り返った。トチノキもそちらに目を向けると、リヤカー一杯に山と積まれた紙束が目に入った。

 

 

「うへ、あんなの運んできたのか。そりゃご苦労様」

「うん、とってもつかれたニャ」

「よし、ちょっと待ってろ」

 

 

 トチノキは郵便屋さんを下ろすと家内へと入って行き、再び現れると暖かなスープの入ったマグを差し出した。

 

 

「ほら、ヤオザミの出汁をベースにしたホットドリンクだ。あったまるぜ」

「わ! ありがとうニャ!」

「それで、俺への手紙ってのはどれだい? またギルドから?」

「ニャ、あれニャ」

 

 

 再度トチノキは尋ね、くぴくぴとホットドリンクを飲みながら、郵便屋さんはリヤカーの白い山を指示した。

 

 

「うんそれは分ったから、あの中のどれだ?」

「あれニャ」

 

 

 同じ質問をし、それからまた同じ返答が返ってきた。

 

 

 トチノキは白い山に目を向け、それから郵便屋さんを見た。そして白い山に目を向けると、トチノキはよろよろと白い山へと近づき、震える手を伸ばし、白い山を構成している紙切れを一枚手に取った。

 

 

 それは手紙であった。差出人は『グラビモスが倒せない』という人物であった。

 

 

 折りたたまれていた手紙を開き、内容を読んでみる。

 

 

『月間狩りに生きるvol.××特別読み切り読みました! 大変面白かったです! で、続きはいつ載りますか?』

 

 

 トチノキは手紙を破り捨てた。それからもう一枚を手に取る。差出人は『くたばれドスイーオス』という人物。

 

 

『月間狩りに生きるvol.××特別読み切り読ませていただきました。次のお題ですが、ドスイーオスはいかがでしょうか?』

 

 

 トチノキは手紙を破り捨てた。それからもう一枚を手に取る。

 

 

『続きは?』

 

 

 トチノキは手紙を破り捨てた。

 

 

『続き』

 

 

 トチノキは手紙を破り捨てた。

 

 

『ガノトトス!』

 

 

 トチノキは手紙を破り捨てた。

 

 

『PN雌火竜姫 月間狩りに生きるvol.××特別読み切り『ポカポカ白雪村』とっても面白かったです! これで終わりなんてもったいないです! ですので次のお題はリオレイアなんてどうでしょうか? 飛竜のオーソドックスな──―』

「あ゛────────────────!!!!!!」

 

 

 トチノキは渾身の力で手紙を引き裂くと、だんだんと踏みにじり、激昂したラージャンめいて絶叫した。

 

 

「ザッケンナコラー!!!」

「どうしたんだ旦那!? 急に大声を出して!?」

「ドシタンス!? 旦那さんドシタンス!?」

「けぷ、ごちそうさまニャ」

 

 

 大声を聞きつけたオトモ2匹が血相を変えて飛び出してくるが、トチノキの怒りはさっぱりひかなかった。逆ににこやかな顔で歩み寄ってくるギルドマネージャーの姿を認め、そして見せつけるかのように顔の前で書類をひらひらさせているのが目に入った途端、トチノキは爆発した。

 

 

 この日を境に、月間狩りに生きるに新たなるコーナーが設けられることになるのだが、その誕生経緯は目を背けたくなるほど酷いものであった。

 

 

「ニャ、クルペッコ」

 

 

 郵便屋さんはマグカップを両手に持ちながら、首をこてんとかしげて、目の前の不思議な光景を眺めているのであった。

 

 

 

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