通常弾ぺちぺちマン   作:三流二式

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そういえばこの世界の一般ハンターがどんな風に動くのか、まだ描写していなかったのを思い出したので初投稿です。


ゲリョスな季節

「はあ……はあ……おいそっち行ったぞ! 早くしやがれこのボケ!」

「ゲギョギョ~!」

 

 

 沼地のエリア4にてアメザリが息を荒らげながら相棒の方へ怒鳴りかける。

 

 

「うぉおおおお俺の素晴らしい斬撃を喰らえー!!!」

 

 

 キングロブスタは握りしめたハイドラバイトでジャンプ切りを繰り出した。

 

 

「ゲギョー!」

 

 

 しかしその斬撃は頭部のトサカに当たり、ガキンという音と共に弾かれてしまった。

 

 

「バカナー!?」

「ゲゲゲー!」

「アバーッ!?」

 

 

 そのまま体当たりを喰らい、キングロブスタはなさけない悲鳴を上げながら無様にごろごろと転がった。

 

 

「馬鹿が、何やってやがる! スゴイ・バカ!」

「ザッケンナコラー! 俺は悪くねぇぞ! 口だけ達者なお前と違って行動力がある!」

「その行動が駄目だっつってんだよこのボケ!」

「ナンオラー!」

「テメッコラー!」

「ケケケ^v^」

 

 

 売り言葉に買い言葉。いまにも殴り合いそうなほど険悪な雰囲気が漂う両者に、離れて見ていたゲリョスは鼻で笑うように嘴を慣らし、尻を出してフリフリと振った。

 

 

「あの野郎俺の事を馬鹿にしやがった!」

「馬鹿そのものなんだから当り前だろ!」

「今そんなこと言ってる場合か? この間抜け」

「言われなくても分かっとるわ!」

 

 

 キングロブスタは回復薬をがぶりと飲みほし、体から再生の蒸気を発しながら果敢に切りかかってゆく。

 

「ギョギョ~!」

「ひ~」

 

 

 ゲリョスのついばみを危うくかわし、胴体をハイドラバイトで切り付けた。固いゴム質の皮が切り込まれ、血飛沫が舞う。

 

 

「ギョ~!」

 

 

 それを嫌ったゲリョスはタックルで吹き飛ばそうとする。

 

 

「グワーッ!?」

 

 

 しかしすんでの所でバックラーのガードが間に合い、キングロブスタは後方へノックバックするにとどまった。

 

 

「オラァよそ見すんじゃねーぞ!」

「クエ~ッ!?」

 

 

 キングロブスタに注意が逸れている隙に反対側から接近したアメザリがピンクボンボンでゲリョスを連続で切り付けた。

 

 

「クエッ!? クェエエ!?」

「だぁああああああ!!!」

「ギョッ!?」

 

 

 アメザリの連続攻撃にたたらを踏んだゲリョスに、キングロブスタはこれ幸いとばかりに接近し、逆手に持ったハイドラバイトを翼の付け根に突き刺した。

 

 

「ギャア~!?」

「おら囲め囲め!」

「死ねっコラー!」

 

 

 ひっくり返ったゲリョスに2人は群がり、ハイドラバイトを、ピンクボンボンをしゃにむに振り下ろした。

 血飛沫が舞い、ゲリョスはバタバタと翼や足を振り回したが、興奮した2人はぶち当たるそれ等に頓着せずただ只管攻撃に専念した。

 

 

「く……クエ……」

 

 

 やがて、ゲリョスは暴れる力すらも失い、ついには大きく身動ぎしたかと思えば、ぱったりと動かなくなった。

 

 

「ハァーハァー……華麗なる勝利だ!」

 

 

 夥しい返り血を払い、息も絶え絶えに絞り出すような声量でキングロブスタは勝ち誇った。

 

 

「あれの何処が華麗だ。もっとマシなこと抜かせ、このバカ」

「あ?」

「俺のおかげで勝ったもんだ。取り分はお前3、俺7だ」

「ざけんじゃねぇ、俺のおかげだ! 俺9お前1だ!」

「「あ?」」

 

 

 殴り合う二人を遠巻きに眺めながら、ここは平気そうだと判断し、次へ移る。

 足早に次へと向かう。あそこにいたら、馬鹿が感染(うつ)りそうだ。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「クエ~!」

「おらぁ!」

 

 

 エリア6にてゲリョスの頭突きを、ランポスSは自慢の大楯で防ぎ切り、右手のナイトランスで胴体を一突きした。

 

 

「ギョエ~!」

「アニキ!」

「ヌウン!」

「ギエー!?」

 

 

 しかしゴム質の上皮は恐ろしく強固であり、さしたるダメージも無く、ゲリョスは流れる血も気にせずついばもうと試みたが、横合いから振り下ろされたリュウノアギトの脅威に慌てて後ろに跳んだ。

 

 

「甘いわね」

「ギョワ~ッ!?」

 

 

 しかし安堵も束の間。後方に跳んだ直後にレベル2麻痺弾がゲリョスの頭部を直撃し、ゲリョスは体を動かせなくなってしまった。

 

 

「あぁ痺れる姿……可愛いわぁ~……」

 

 

 うっとりと呟く彼女を背に、ランポスSとハンターUは痺れて動けないゲリョスへと突っ込んでいった。

 

 

「ありゃ病気っすね。忌憚のない意見ってやつっす」

「人の好みはそれぞれだ。あまり悪く言ってやるな」

「アニキが熟女好きなのもそうっすか?」

「……お前を殺す」

 

 

 何て軽口を叩きながら両者は得物を振り下ろし、あるいは突き刺し、着実に討伐へと近づけていった。

 

 

「ギョゴゴ~!!!」

 

 

 シビレを脱したゲリョスは怒り狂い、毒を吐き出しまくったが、ランポスSの大楯はこれを全て防ぎ切り、逆にカウンター突きを決めた。

 

 

「ックエ~!!!」

 

 

 危機を感じたゲリョスはトサカを明滅させた。そして辺り一面に目も眩むような閃光が放たれた。しかし、彼らは大楯、大剣を盾に、ヘビィボウガンを掲げて各々防ぎ切った。

 

 

「お終いね」

 

 

 そういうと、ゲリョスUは装填したレベル2貫通弾を撃ち放ち、ゲリョスの胴体を深々と穿った。

 

 

「クェ……」

 

 

 それが止めとなり、ゲリョスはずしんと倒れ伏し、動かなくなった。

 

 

「思うんすけど、ゲリョス好きとして、ゲリョス殺すのは良いんすか?」

 

 

 ゲリョスの死骸から剥ぎ取りを行いながら、ランポスSは何とはなしに聞いてみた。

 

 

「良いに決まってるじゃない。あれはゲリョスと私とをつなぐ神聖な行為であり、彼を彼女を滅ぼす度に、私はゲリョスへ、すなわち神へと近づいて行くのよ」

「聞いた俺がバカでした」

 

 

 ランポスSは話にもならんとばかりに首を振り、分かり切った答えなど聞く意味も無いとばかりにハンターUは黙々と作業を進め、ゲリョスUはそんな彼らを不幸な事だとせせら笑った。

 

 

 そんな時である。後ろから声をかけられたのは。

 

 

 3人は同時に振り向き、振り向いた先には2人のアイルーを連れたあの珍妙な格好のハンターが立っていた。

 

 

「いやさすがは上位のハンター。鮮やかなお手前で……クキキ」

「やい何だテメェ!」

 

 

 立ち上がり、ランポスSは凄んで見せた。返り血に塗れ、身の丈を超す大槍を背負う彼の様相は威圧的だった。

 しかし、それを前にするハンターはいささかも物怖じした様子もなく、ただ淡々と自分の要件を告げた。

 

 

「道中でも構わんのだが、小さなゲリョスを見なかったかね?」

「あぁ? 何を言って」

「よせ、……なぜそんな事を聞く?」

 

 

 ランポスSを下がらせ、代わりにハンターUが前に立った。身の丈以上の大剣と、190を超す体躯、そして巌の如き厳格な雰囲気はランポスSを超える威圧感だ。

 しかしやはり全く何の怯えも無く、ハンターは告げる。

 

 

「なに、係員からそいつがいたら狩猟するように言われてね。差し支えなければ教えてほしいのだが」

 

 

 ハンターUはすかさずゲリョスUに目配せした。彼女は肩を竦めた。言って良し。

 

 

「いや、すまないが見ていない」

「もし見ていたら私は真っ先にその子について行ってるわ」

「……そうか」

 

 

 うっとりと呟くゲリョスUに若干引きながら、やや思案するように顎に手をやると、頷き、礼を言ってそのまま去って行った。

 

 

「何なんすか、あいつ」

「……分からん。分からんが、得体が知れんな」

「小さなゲリョス、小さな、ウフ、ウフフ……」

 

 

 1名だけ若干様子がおかしいが、奇妙なハンターの去って行った方向を、3人はしばらく見つめていた。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「えい、たあ!」

 

 

 エリア1にて少女はぶんぶんと大骨塊を振り回してゲリョスを殴りつけにいくが、ゲリョスは何のそのと殴打を耐えきり、逆に尻尾で弾き飛ばした。

 

 

「きゃあ!?」

「あ! この~!」

 

 

 吹き飛ばされた少女の姿に怒りを覚えた少年は、振り回される尻尾をかいくぐり、大太刀『鉄刀』で尻尾をつけねから切り飛ばした。

 

 

「ギョワ~!?」

「2人とも、これを!」

 

 

 

 ゲリョスが痛みに七転八倒している隙に、少女の姉が狩猟笛『ギアノバルーン』より体力回復中・消臭の旋律を弾き終え、2人を支援した。

 

 

「わ、ありがとう!」

「行くぞ~!」

「ギョゴゴ~!!!」

 

 

 痛みから脱し、怒り狂ったゲリョスと、若きハンターたちは再び対峙した。

 

 

 その時である。

 

 

 ぱきっと枝を踏む音がした。なんでもない音のはずだった。だが、なぜか彼らは聞き逃せなかった。ゲリョスの方も同様に。

 同時に音の方向へと目を向ける。そこにはあまりにも小さなゲリョスがいた。

 

 

 サイズとしては彼らとほぼ同じか、それより小さなくらいで、目の前のゲリョスとは比較にもならない。なのに、この悪寒は何だ? 

 対峙した瞬間から行動の一切が止められた。まるで、蛇を前にした蛙のように。足が硬直して動かない。心臓が早鐘を打ち、冷汗がとめどなく流れ落ちてゆく。

 

 

 その小さなゲリョスは彼らをじっと見たまま動かない。鼓動がうるさい。

 

 

「ゲゲッ」

 

 

 小さなゲリョスはやおら一歩前に踏み出した。彼らはびくりと身を震わす。

 

 

 頓着せず、小さなゲリョスはもう一歩、更に一歩、それからあっと言う間も無く恐ろしく加速したゲリョスはロケットの様に手負いのゲリョスへと頭突きをかました。

 

 

「ギッ──────」

 

 

 悲鳴を上げる間すらなかった。尋常ならざる衝突音とともに、ゲリョスの体が冗談のように吹き飛び、放物線を描いて地面に転がった。

 地に伏したゲリョスはピクリとも動かない。即死であった。

 

 

「あ、あぁ……」

 

 

 恐れ、硬直する彼らを誰が責められようか。上位のハンターとて腰が抜けるような存在を前に、未熟な彼らが何もできないなど、当然の事であった。

 

 

「クワックワッ!」

 

 

 未熟な彼らを嘲笑いながら、ゲリョスはひょこひょこ近寄っていった。どうやって弄んでやろうか、そんな事を考えながら。

 

 

 姉は何とか2人を逃がそうと前に出ようとした。少年は2人を逃がす為に突撃しようとした。少女はせめて盾になれるように前に出ようとした。

 

 

 彼等の決死の庇い合いは、結局の所不要であった。

 

 

「クエッ──―ギ!?」

 

 

 と、ゲリョスは唐突にバックジャンプした。その一瞬後に火山の噴火の様な爆音が轟き吠えた。それが発砲音であると彼らが気が付くのに、しばしの時を有した。

 

 

 状況の把握をする前に、彼らの前にあの変な格好のハンターが現れた。その横には手に手にブーメランや小タル爆弾を持ったアイルーも。

 ハンターの手にはあの狩りに生きるに時々載るぽかぽか白雪村の第xxx号に乗っていたグラビモスに酷似した大弩が握られていた。

 

 

「行け。ここに()()()()()()()()()()はいない」

 

 

 返事をしようとした。しかしできなかった。目を奪われた。御伽噺のような戦いに。

 

 

「クエェエエ!!!」

 

 

 ゲリョスが毒液を吐いた。凄まじい勢い。飛竜のブレスも顔負けのそれを、ハンターは青白い光と共にあり得ない挙動でイナシ、素早く動き回るゲリョスを恐るべき正確さで撃ち抜いてゆく。

 

 

 そして青白い光が弾けたかと思えば、ハンターの動きは最早目で追えない程に加速した。

 

 

「ギギギィイイイイイ!!!」

 

 

 ゲリョスは、ハンターは激しく撃ち合いながら、風のような勢いであっという間に彼の下から離れていった。

 

 

「「──────」」

 

 

 彼等はしばらくの間ゲリョスとハンターたちが去って行った方向を茫然と見つめていたが、やがて緊張が抜けたのか、激しく息を吐きながらへたり込んだ。

 

 

 

 

 ◼️

 

 

 

 

 おいこっちが先に来たんだぞ何を抜かすかこのあほうは最後の一体だぞおれらが狩るやめておきなさいあの子上位よ姉さんの言う通りだぜザコがよ何だとクソガキおぉやるかやってやれやってやれ。

 

 

 エリア2にて、確認されていた10体の最後の一匹をめぐって2組のハンターグループが睨み合っていた。

 

 

「うん? おい、お前たち、見てみろ、何か様子がおかしい」

 

 

 口論に参加せずじっとゲリョスを見張っていたハンターUが後方へと呼び掛けた。

 未だ険悪な雰囲気のまま、しかし言われた通りゲリョスへと視線を向ける。

 

 

 視線の先のゲリョスはしきりに左右を見渡し、落ち着かないように足で地面を引っ掻いたりしていた。

 

 

「何だ? 何か」

「どうした」

 

 

 ランポスSが微かに聞こえた音に訝しがり、首をひねった。

 

 

「イヤなんか地鳴りみたいな音がしたんです」

「地鳴り? ……ッ!?」

 

 

 ハンターUが復唱した直後、火山の噴火の如き爆音が響き渡った。

 

 

「「ッ!?」」

 

 

 全員が弾かれたように音の出所へと目を向ける。直後、色付きの風が吹き荒れた。

 

 

「な……なんだあっ」

「見て!」

 

 

 狼狽するランポスSの隣のゲリョスUがターゲットのゲリョスへと指を向ける。

 

 

「クェエエ……」

 

 

 視線の先で、上位のゲリョスが、完全に委縮していた。上位のゲリョスがだ。いくら危険度のランクが低いとはいえ、上位のモンスターというだけあって彼とて強者と呼べるだけの領域に生きている。

 にも拘らず、恐るべき色付きの風を目にした途端、怒るでも逃げるでもなく、完全に縮こまってしまった。まるで嵐を前に過ぎ去るのを待つ小動物のように。

 

 

 色付きの風は加速する。断続的に響き渡る火山の噴火の如き轟音。滅茶苦茶に振り回される蛍光紫色の水流。そしてどこからともなく飛来したブーメランや雨あられと降り注ぐ小タル爆弾の雨。

 

 

「──────」

 

 

 地獄のような光景に、ハンターたちは言葉も無い。

 

 

「ギュエッ!?」

 

 

 まるで絞められた鳥のような悲鳴に目を向けると、上位のゲリョスの首に何かロープのような物が巻き付けられていた。それが尻尾であると彼らが察した時には、すでに上位のゲリョスは凄まじい勢いで放り投げられていた。

 

 

「ギョ~!?」

 

 

 悲鳴を上げるゲリョスに、今度は恐ろしい勢いで赤熱する弾丸が突き刺さった。

 

 

「ギョバッ!? ギョババババーッ!?」

 

 

 悶絶するゲリョスの背後、投げ放った下手人である小さなゲリョスはすでにトサカの明滅を終えており、膨大な閃光を周囲へと解き放った。

 

 

「「グワーッ!?」」

 

 

 視覚を閃光が洗い、たちまち視界は真っ白に染まった。目を押さえて苦悶する彼らの耳に、恐るべき憤怒の絶叫が、火山の噴火の如き爆音が、刃が空気を割く音が、火薬が炸裂する音が何度も何度も聞こえた。

 やがて視界が晴れると、いつの間にか聞こえていた音は止んでいた。

 

 

 世界は嘘の様に静まり返り、重ぐるしい気配は消えていた。まるで嵐が過ぎ去り、凪いだ海面のようにすべてが静まり返っていた。

 

 

 そして、彼らの視線の先には、頭部が無くなった小さなゲリョスの無残な死体と、その傍らに立つ奇妙な格好のハンターと付き従う2人のアイルーが映っていた。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 クエストも終わり、キャンプの撤収作業をしている最中も、彼らは無言であった。今までならば、クエスト中の反省やら報酬の分け前についてののっぴきならない会話が繰り広げられているのだが、本日は珍しく誰も口を開けなかった。

 

 

 原因はあの奇妙なハンターだ。奇抜な格好。油断ならぬ空気。どこか飄々とした態度。

 はじめは全てが癪に障ったものだが、今では大型モンスターを前にした小型モンスターのように一挙手一投足に注意を向けていた。

 

 

「~~~ッ! だぁああくそ!」

「! おいよせ!」

 

 

 空気に耐え兼ねたランポスSは部品を叩きつけ、ハンターUの制止も振り払い、件の奇妙なハンターへと肩を怒らせながら近づいていった。場に緊張が満ちる。

 

 

 アメザリとキングロブスタからどういう教育をしているんだという責めるような視線が突き刺さる。ハンターUはゲリョスUへ視線を向ける。彼女はゆっくりを首を振る。もうどうにでもなれ。

 

 

「やい、こら!」

「ン~?」

 

 

 奇妙なハンターはすでに与えられた作業を終えており、ルーキーたちと何かしらの会話をしているところであった。

 

 

「何かね、勇敢なハンター殿?」

「とぼけんな、てめえなんなんだ!」

 

 

 あまりの剣幕にルーキー3人組はたちまち縮こまり、奇妙なハンターの後ろに隠れるように逃げ込んだ。

 

 

「いやはや栄えある上位ハンター殿に名前を覚えられるほど俺は大したものじゃないよ」

「ざけんじゃねぇ、ちっこいゲリョスはとんでもねぇタマだったことくらい俺にも分る。それをぶっ殺したテメェもな。でもな、テメェみたいなやつの事なんか聞いたこともねぇ。それだけの実力があれば名前くらい売れてるはずだろ!」

「まさかそんな。君たちに比べれば俺なんて、ね? クキキ、ちっぽけなものよ」

「舐めてんのか、こら! 答えになってねえんだよ!」

 

 

 ランポスSがいくら凄んで見せても、奇妙なハンターはのらりくらりとかわすだけ。

 

 

「やい、だったらその面見せて見ろ!」

 

 

 苛立ちが頂点に達したランポスSは、誰もが思ってはいても決して口には出さなかったことをついに口にした。

 

 

「構わんよ」

 

 

 奇妙なハンターはあっさりと呪術師めいた仮面を脱ぎ去った。あまりにも拍子抜けだった。もっと渋るかと思っていたランポスSは肩透かしを食らい、そして現れた顔を見て、思考は完全に停止した。

 

 

「ん、おや? もっとオーバーなリアクションを期待していたのだが、もしや俺は君の期待に答えられなかったかね?」

 

 

 白鬼は夜の瞳で愚か者を見上げながら、薄笑いを浮かべた。

 

 

「しかし諸君はもっとおしゃべりだと思っていたのだが、もしや仕事が終われば寡黙なタイプだったりするのかい?」

 

 

 一人一人に目を向けるが、誰一人として身動ぎ一つしやしないので、白鬼は肩を竦めた。

 

 

「ふむ、どうやら皆、狩りの疲れが今になって出てきてしまったらしい。君たちもそんな感じかね?」

「え? あ、え……」

 

 

 振り返り、3人の子供へと語り掛けるが、掠れた声ともいえない声が出るばかりで、やはり誰も何も言ってはこない。

 

 

「まあ君たちはルーキーだ。彼ら以上に疲れているようだし、これ以上の言及はやめておこう。そういう訳で俺たちはこれでお暇させてもらうよ」

「えぇトチノキ殿。ありがとうございました。オタッシャデー!」

「うむ、係員殿、オタッシャデ」

 

 

 白鬼は振り返る事もせず、そのままアプトノス車へと乗り込み、去って行った。

 

 

 白鬼が去った後も、彼らはしばらくの間その衝撃から立ち直ることができなかった。

 

 

 そして、このクエストの後に、ある話が瞬く間に大陸へと広がっていくことになる。

 

 

 〝妙な格好のハンターには気をつけろ〟

 

 

 それは、幾年が流れたあとにも、形を変えて語り継がれることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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