通常弾ぺちぺちマン   作:三流二式

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VSブルファンゴ・ガレオス・ランポス

 じめじめとした沼地の湿気に不快感を覚えながらも、『イーオスシリーズ』に身を包んだホースバックはライトボウガン『ショットボウガン・紅』を構えたまま、警戒を続けていた。

 後方に続くのは『ガノスDシリーズ』、『クイーンブラスターⅡ』を構えた女ロングカット、『ギザミシリーズ』、『ジェイドストーム』の男ディスタンス。

 

 

 彼らはともに下位ハンターのグループである。シャーテックは基本的に三人組(スリーマンセル)が基本であり、同ランクのものがメンバーを組む。

 他のメンバーで下位なのはトリガーハッピー、ガンスリンガー、ヘビィレインの三名であり、この三人も一つのチームを組んでいる。

 

 

 そして残りがすべて上位ハンターであり、上位と下位で丁度半々となっている。

 彼ら下位組は基本的にスカウトされた者たちであり、各地でくすぶっていたのをガントレットが拾っていった形で所属することとなった。

 

 

 トチノキの活躍によりガンナーの重要性は上がったものの、未だ従来の戦法から大きな変化は見られていない。

 というのも、依然としてハンターに人気なのは近接職であり、進んでガンナーになろうとするもの好きは、やはりそう多くないのだ。

 

 

 なろうとする者がいなければノウハウの蓄積も儘ならず、結果として戦い方に大きな進展がないまま今に至る。一人だけ逸脱したものがいたところで、真似しようとする者は出てこないものだ。

 しかし近年、トチノキが直々に各地へ赴きインストラクションを施すようになってからは、年々ガンナーになろうとするものが増えてきている傾向にある。彼から教えを施された者は新人ながら質の高いガンナーとなり、各地で重宝され、名を馳せてゆく。

 

 

 そうした名声を聞き、今までなら十人中一人いればよかったガンナーが、二人、多ければ三人はガンナーになるようなことになってきた。やはり話で聞くよりも直に見たほうが具体的な動きに想像がつきやすく、今までの漠然とした「ガンナーよりも剣士のほうが重要」という、半ば決めつけのようなレッテル張りは払拭されつつある。

 

 

 しかしまだ大陸全土がそういう風潮にあるとは言いずらく、各地で燻ぶっている者がそこここで見受けられる。ガントレットたちシャーテックはそういった者たちに狙いをすまし、スカウトないし狩猟スタイルの変化を促していっているのである。

 

 

 そういう経緯でシャーテック所属となったのであって、ホースバックたちは近接職たちに敵対心と対抗意識を抱いており、更には上位への足掛かりを虎視眈々と狙っていた。そんな折に訪れたのが此度の長期訓練である。

 これ幸いとばかりに彼らは訓練に励み、またキンボシを挙げ先生であるトチノキのへの覚えをめでたいものとし、推薦状を勝ち取ろうと躍起になっていた。

 

 

「ハアーッ! ハアーッ!」

 

 

 ボウガンを握るホースバックの息は荒く、前方を睨む眼光は血走っていた。

 

 

「落ち着けホースバック」

 

 

 冷たく言い捨てるロングカットの眼光もまた冷たい。彼女も近接職を憎悪しており、また性格も酷薄で、ガンナーとしての腕前はいいが煙たがられてたのはそういうところであった。

 

 

「ウルッセーゾ、コラー……!」

 

 

 殿を務めているディスタンスが殺気立ち、たちまちチーム内に不穏な気配が立ち上った。

 

 

 彼らはチームであるが、互いに蹴落としあうライバルでもあった。協調性のかけらもなく、口を開けば互いに罵り合うのが常であったが、それでも数年ともにすれば連携も上がり、「チームでならば上位も狙える」と、トチノキのお墨付きももらっている。

 上位への足掛かりが目の前にぶら下げられ、彼らは普段以上に殺気立っており、口数も少ない。

 

 

 だがこの攻撃性が仲間に向かうことはない。この殺意をモンスターへ向けることこそが一番いいと、彼らは学んでいるからだ。

 ……それが彼らの実力で通じるレベルならば有効な戦法であった。

 

 

「グワーッ!?」

 

 

 それはディスタンスとロングカットが額が付かんばかりの距離でにらみ合っている時だった。前方からホースバックの悲鳴が聞こえた。

 

 

「「───ッ」」

 

 

 二人は弾れたように散開し、得物を前方へと向けた。そして目をしばたたいた。

 

 

「ブフーッ! ブフーッ!」

 

 

 鼻息荒く興奮し、地面を搔いているのは、二本の牙が特徴のイノシシめいた小型モンスター『ブルファンゴ』である。しかし放たれる圧が、彼らの知るブルファンゴとはまるで違った。

 さながら大型モンスターのような威圧感と、威厳すら漂う風格がそこにはあった。

 

 

「ア、アバーッ……クソッ」

 

 

 おそらく突進を受けたであろうホースバックがようやく悶絶から復帰して立ち上がり、回復薬の空瓶を放り捨てながらボウガンの銃口を仇敵へと向ける。

 

 

「クソたれこういう事かよ!」

 

 

 ホースバックは憎悪に燃える目で前方を睨みながら吐き捨てた。

 

 

「小型モンスター一体を討伐するだけのクエストだからおかしいと思ったが……」

 

 

 ロングカットは苛立ちを隠しもせずに眉を顰めた。

 

 

「舐めんじゃねーぞ、コラッ!」

 

 

 溜めに溜めた殺意を爆発させたディスタンスは、躊躇なく引き金を引き放ち、レベル2通常弾の速射をブルファンゴへ叩き込んだ。

 

 

「ブフーッ!」

 

 

 しかしブルファンゴはそれらを当然のように受け切った。その時点でもはや通常のブルファンゴとは一線を画するのは目に見えていた。

 

 

「来るぞ!」

 

 

 ロングカットの警告と同時に、「上位」のブルファンゴは敵対者に向けて突進した。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「グワーッ!」

 

 

 ヘビィレインは攻撃を受け損ね、受け身も取れずに無様に砂の上を転がった。

 

 

「クソがーっ!」

 

 

 半ば狂乱しているトリガーハッピーは砂の中を泳ぎ去る背びれに向けて『サンドフォール』のレベル2通常弾速射をばらまいたが、背びれの主は右に左に巧みに泳いで被弾を最小限に抑え切った。

 

 

「ヘエーヘエー……今のを避けるのか。アハーアハー……」

 

 

 ブナハシリーズに身を包んだ男ガンスリンガーが、反転して勢いよく突っ込んできた『上位のガレオス』の飛び掛かりを大仰な仕草でかわし、反転してライトボウガン『クロオビボウガン』の引き金を引き、レベル1貫通弾を無防備胴体に叩き込んだ。

 

 

「シャーッ!」

 

 

 血飛沫!されど敵、なおも健在。空中で攻撃を受けて体勢を崩しながら砂の上に転がったものの、小型モンスターとは思えぬ速度で体勢を復帰し、再び砂の中を潜行した。

 

 

「畜生、なんて強さだ!」

「アババババーッ!?」

 

 

 麻痺毒で動けず悶絶するヘビィレインを庇うように立ち、リロードを終えたトリガーハッピーが額の汗をぬぐった。

 

 

「ヘエーヘエーいいねぇ! そう来なくちゃあなぁセンセイーッ!」

 

 

 口の端から涎をたらし、興奮で目をぎらつかせたガンスリンガーがのけぞり、心底楽しそうに叫んだ。それを隙と見たガレオスは感情の宿らぬ濁った眼を細め、今度こそ仕留めるために勢いよく砂の中から飛び出した。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 

 血に飢えた剣豪、とでも称すればいいか。あるいは暗がりから獲物を狙う殺人者か。

 森岡のエリア9にて、同種の死体を何の感慨もなく踏み砕きながらゆっくりと歩み進む『ランポス』の瞳は凪いでいた。

 

 

「イイイイーヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ!」

 

 

 間髪入れずにスリケニストは獲物である『神ヶ島』からレベル3通常弾を乱射した。トチノキより授けられた新大陸式の射撃術により向上した連射速度は実際大したものであった。

 しかし、相対するランポスはなんとそれらを見切り、あるいは『剛爪』で弾き、あろうことか無傷でしのぎ切った。

 

 

「なんとっ!?」

 

 

 目を向いて驚愕するスリケニストへランポスは踏み込み、ぬるりとその懐へと入り込んでいた。

 

 

「あ、ヤバ───」

「イイイイヤアアアーッ!」

 

 

 鈍く光るナイフじみた爪が彼女を切り裂く寸前で、プケプケαシリーズ*1に身を包んだハイウェイマンのアンブッシュが「G級」のランポスの胴体をとらえた。強烈に踏み込みながら「ダチュラブラスターⅡ」をランスさながらに銃口をねじ込む彼のヒサツ・ワザである。

 

 

「シャーッ!」

「───! こいつッ」

 

 

 ハイウェイマンは舌打ちし、本来ならばフィニッシュムーブである竜撃弾を撃ち放つのをやめ、状況判断から瞬時に敵の間合いから離れた。その一瞬後にランポスの剛爪が薙いだ。

 

 

「イヤーッ!」

 

 

 離れるハイウェイマンを援護すべくハプルSシリーズ*2の男ディアハンターが46式潜伏重砲4の引き金を引き、レベル1散弾をばらまいた。

 

 

「ギッ」

 

 

 ランポスはすさまじい反応速度を発揮して飛びのいたがさすがに全てはよけ切れなかったようで、体のそこかしこから血を流していた。

 なかなか大きな傷である。だが命を奪うまで程遠い。瞳に燃える戦意は欠片も揺らいでいない。

 

 

「周囲に敵はもういません」

「そうか」

 

 

 短い時間で体勢復帰し、周囲のクリアリングを行っていたスリケニストからの報告にハイウェイマンは短く返し、弾の種類を竜撃弾から毒弾へと切り替えた。

 

 

「毒で弱らせる。ディアハンターは隙を見てレベル3通常弾を叩き込め。お前はレベル1散弾で牽制しろ」

「……」

「ハイ」

 

 

 ディアハンターは無言で後方へ下がり、レベル3通常弾をリロードし、ひたすらに隙を伺いながら気配を消した。リロードを終えたスリケニストは前に出てレベル1散弾を放ちランポスの注意を引く。

 

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

「シャーッ!」

 

 

 ランポスとスリケニストの格闘を見つめながら、ハイウェイマンはこのクエストを押し付けてきた師を思う。

 

 

(面倒を押し付けやがって……)

 

 

 ハイウェイマンは胸中で毒づき、それから引き金を引いた。

 

 

*1
見た目はマスターランクだが性能は上位基準

*2
頭だけ見た目はハプルXのフルフェイスマスク。性能は上位基準

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