私はドンドルマを拠点としたハンターだ。現在私はクエストの指定地である雪山に赴くため、アプトノス車に乗っていた。
いつもならパーティを組んでいる2人の女の子とドンドルマ周辺で狩りを行っているのだが、2人とも各々の事情で今回はお休み。
それに伴い私一人で、厳密にいえば雪山の麓にあるポッケ村の『専属ハンター』と協力して、雪山で発生した『フルフル』2頭の狩猟を行う様にギルドから言われていた。
ギルドからそう言われた時、私はドキリと心臓が大きな音を立てたのを覚えている。
ポッケ村の専属のハンターと言われたら、該当するのは一人だけ。そう、あの『伝説のガンナー』の再来とまで言われたソロハンター『白雪鬼』ただ一人だ。
ソロハンターと言われる存在ははみ出し者か、あるいは
で、かの白き鬼は後者だと言われている。
白き鬼の話はドンドルマでもしきりに話題になる事があり、曰く村に帰る事が殆ど無く、帰ってきたとしてもその次の日か次の次の日には別のクエストのために村を出ていってしまうとの事だ。
偶々同じクエストに同行したハンターの話では、装備がなぜかちぐはぐであり、その癖妙に動きが良く、従来のガンナーでは考えられないほど動き回り、的確に弱点部位に弾を当てて瞬く間にモンスターを捕獲してしまったという。
「あれは人間業じゃない。まさしく鬼か、それか神様みたいな業だったよ」
そう語るハンターの目には、まるで古龍の御業を見たかのような、圧倒的な畏敬の念が浮かんでいたのを私はよく覚えている。
「どんな人なのかなぁ……」
私は流れゆく景色をぼんやりと眺めながら、件の白き鬼の人物像に思いを馳せる。
噂では年齢は20代後半辺りで、太陽を思い起こさせる様な銀の髪を持ち、艶やかな白い肌は雪を固めて作ったが如く、その美しい顔は女も男も虜にするという。
だがその顔を見られる機会は村人ですら滅多になく、仮に見れようものならその年の運を全て使い果たしたとすら言われている。
「う~気になる!」
考えれば考える程気になって仕方がなかった。私だって噂に躍らされるような年頃の女の子なのだ! そこにそんな意味深かつ気になるよーな噂が流れたとあっては、もうわたしゃーいてもたってもいられんのですヨ!
そんな時に噂の中心の白鬼様に会える機会が与えられたとあっちゃあ、もう受ける以外に選択肢なんてないじゃんそんなの!
「うおおおおおお待ってろポッケ村―! 私が『白雪鬼』の素顔を見てやるんだからあああああ!」
「うるさいからちょっと黙れニャ」
「あ、うん。ごめん」
同行していたギルドのアイルーが耳を塞ぎながらぎろりと一瞥。私は素直に突き上げていた拳を引っ込め、おとなしく座った。私は素直に言う事を聞く良い子なのだ。決してその視線にビビった訳ではない。無いったら無い。……ホントだヨ?
額から流れる冷汗を拭い去り、私は心の中で再度決意する。
(絶対ぜっっったい素顔を見てやるもんねー!)
……再び睨みつけられて、私はポッケ村に着くまで石のように固まっていた。
■
「えぇえええ!!? もう行っちゃったんですか!?」
ポッケ村に着くなり、私は一も二も無く集会場の方へ赴いてギルドマネージャーに依頼の件を持ちかけた。で、言われたのは「奴さんもう行ったよ」の一言だった。
「私止めたのよ。危ないからって。そうしたら『別にフルフル2頭くらい一人で十分。それに、仮に俺がくたばった所で、一体誰が気にするっていうんだ?』って言われちゃってね~」
「な、何ですかそれ!? マネージャーなんですから立場で押し切っちゃえばいいじゃないですか!?」
私の疑問にマネージャーは、彼にも色々あるのよ~、と肩を竦めた。
「ちなみ白雪鬼さんが行ってからどれくらい経ちました?」
「そうね~……大体1時間前くらいかしら~?」
「なら急いでいけば間に合いますね!」
「そう言うと思ったわ~」
ハンターはせっかちだからね~、とギルドマネージャーは言いながら、すでに村の外に雪山行きのアプトノス車の用意は出来ているから、準備が済み次第出発できるわ~というありがたいお言葉を私に下さった。
そうと決まれば善は急げ。私はすぐさま装備の点検を始めた。
『雌火竜リオレイア』の防具である、ドレスを思い起こさせる鎧を各種点検する。そうなのだ。私たちのパーティはリオレイアを倒せるくらいの実力があるのだ。私だってこれでも結構名の知れたハンターなのだ。
ふふんと誰にともなく自慢げに鼻を鳴らす。……ギルドマネージャーさんと受付嬢さんたちの白い目を華麗にスルーし、私は再び装備の点検に戻る。……よし問題なし。
それから最後に相棒であるこれまたリオレイアの素材で作った『ヴァルキリーブレイド』という大剣を背負い、これで準備完了だ。
「では行ってきます!」
「気を付けて行って来てねぇ~」
私は見送ってくれたギルドマネージャーに手を振って応えると、村の外に止まっていたアプトノス車に飛び込んだ。
私が乗りこむと、馬車の御者であるアイルーがすぐさまアプトノスに鞭を飛ばし、雪山まで全速力で駆け抜けた。
乗り心地は最悪だったし、若干酔いかけはしたけど、それでもあっという間に雪山のキャンプに到着した私は早速支給品ボックスをあさり、そして驚いた。
「うそ、全く手が付けられてない……!」
支給品ボックスの中身はボウガンの弾以外そっくりそのままそこにあった。応急薬どころか地図すらとられていないとは……!
「って感心してる場合じゃなーい! 急がないと!」
私は応急薬を6個、携帯食料2個、ホットドリンク、地図をかっぱらい、アイテムポーチにねじ込むと、地図を片手にキャンプから飛び出した。
フルフルZシリーズ、これが好き。