通常弾ぺちぺちマン   作:三流二式

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長すぎたので2つに分けました。なのにあんまり長さが変わってないってどういうこと―?


押しかけハンター『セリア』

「えっと、フルフルが出没するエリアは1,3,6,7,8だから……えぇ~と……うぅ、雪山って殆ど来た事が無いから何処にいるのか分からないよ~!」

 

 

 んがんがホットドリンク片手に地図とにらめっこをするが、雪山なんて所に来た事なんて全くなく、更にフルフルと戦ったことだってほとんどなかったから、勝手がさっぱり分からなかった。

 現在私はエリア3あたりをうろちょろしていた。

 

 

 ……仮にもそこはフルフルが良く行くエリアで、しかも寝床に選ぶ様な場所だって事など私の頭からさっぱり抜け落ちていた。

 背後から生臭い息がかかった。

 

 

「ッ!!?」

 

 

 私はぎょっとなって咄嗟に大剣を手に取って盾めいて前方に翳した。その瞬間、大剣越しに凄い衝撃が私を襲った。

 

 

「っつぁ!?」

 

 

 咄嗟だったからあまり踏ん張りが利かず、私は後方に一歩二歩と後退った。

 

 

「このぉ!」

 

 

 気合で反動から脱すると、私は不意を突いてきた元凶を睨みつけた。

 

 

 粘液に覆われた白くてブヨブヨとした質感の皮膚。目の無い顔は気味が悪く、半開きになった口から唾液がダラダラと垂れ流しになっていた。

 

 

『奇怪竜フルフル』が、明確な敵意を剥き出しにして私の前に立ちはだかっていた。

 

 

「くっ!」

 

 

 鼻をしきりに鳴らし、こちらの位置を探しているフルフルに向かって私は大剣を構えた。

 フルフルは目が退化しており、匂いで獲物を探るという。そして体内に発電器官を有していて、鈍い動きだと迂闊に飛び込めば放射した電撃で返り討ちにあったという例が多々あるから、ここは攻撃を誘発してその隙に攻撃するのが一番だ。

 

 

「!」

(来た!)

 

 

 それまで鼻を鳴らしてきょろきょろしていたフルフルが、こちらに勢いよく振り向き、首を伸ばしてきた。

 

 

 私は前転して湾曲する首を潜り抜け、首が戻る間に胴体を2度3度切りつけた。

 

 

「ぎゃあ!」

 

 

 首を戻したフルフルがゆっくりと、しかし確かに私に狙いをつけて突進してきた。

 

 

 私は横に跳んで突進をかわしながら大剣でフルフルの胴体を切り付けた。

 

 

 その後も同じような攻防は続き、確実にフルフルに傷をつけていったのだが、フルフルの表情の無い顔や元々動きが鈍いせいで、本当にダメージを与えているという実感はちっとも湧かなかった。

 

 

「も~何なのよ~!」

 

 

 またゆっくりとした動きで突進してきたフルフルの横を通り過ぎながら、大剣で胴を傷つける。

 これで何度目だろう? 手ごたえを感じているはずなのに、どうにも進展しているとは思えなかった。

 

 

 フルフルが突進を終え、こちらにゆっくりと振り向いた。口から稲妻を含んだ息を吐きながらゆっくりと。

 

 

「ッ! 怒り状態!」

 

 

 私の言葉に呼応するように、フルフルはいきなり跳躍してきた。その速さは先ほどの鈍い動作とは比べ物にならないくらい速く、急な緩急の変化に私はついていけなかった。

 しかも電撃を纏ったその跳躍は、雌火竜の装備を着た私に驚くほど良く効いた。

 

 

「ああぁ!!?」

 

 

 吹き飛ばされた私は壁に叩きつけられた。

 

 

「か、はっ……!」

 

 

 肺の空気が一気に口から抜け出し、私は酸素を求めて喘いだ。ダメージは大きく、早く回復薬を飲まねばならないのに体が痺れて動かない。

 

 

「はあぁ───……」

 

 

 フルフルは長い息を吐き、私に与えたダメージを確認するように鼻をふごふごと鳴らした。

 

 

(早く……早く動かなくちゃ……)

 

 

 頭は危機を感じて驚くほど冴えているのに、それに反して体はちっとも動かない。

 

 

(早く早く早く!!!)

 

 

 動かない。動けない。そうこうしている間にも、怒り狂ったフルフルはべたんべたんと足音を響かせながら私にゆっくりと迫ってくる。

 

 

『ね~え知ってる? フルフルって獲物に直接卵を植え付けて、孵化した子供はその獲物の肉や体液を内側から喰べて成長していくんだって! 凄いよね!』

 

 

 クエストを受ける前に友人とした会話が思い起こされる。何でよりによってそんな事を今思い出してしまうのか。自分自身を殴りつけてやりたくなる。

 心では今をどうにかしないと分かっているのに、私の意思とは関係なく頭は腹を食い破って出てくるフルフルの幼体を完璧に脳裏に描き切った。

 

 

(や、やだ……やだやだ、そんなの嫌!!!)

 

 

 ガタガタと震える体を掻き抱こうとするも、体が痺れて動けない。痺れのせいで目の端から流れ落ちる涙すら払えない。

 最近はネコタクの技術が発達して死者が驚くほど減ったというが、死ぬ前に卵を産みつけられてしまったら、結局死ぬことに変わりは無いではないか。

 

 

 べたんべたん。一歩、また一歩と、のっぺらぼうの妖が、私の体を蹂躙するべく近寄ってくる。

 

 

「こ、来ないで……来ないでよぅ!」

 

 

 ご丁寧に口だけは動いたから、無駄だと分かっていても拒絶の言葉を吐かずにはいられなかった。

 当然聞き入れられることは無く、とうとうフルフルは私のすぐ目の前までやって来た。

 

 

「はぁああああ─────……」

 

 

 フルフルは私の顔のすぐ目の前まで首を伸ばした。生臭い息が顔にかかり、思わずむせてしまった。しかし恐怖と痺れのために顔を逸らせない。私の耳元に死神の足音が聞こえた。

 フルフルは口を開けた。大きく開けられた口は喉奥まではっきりとわかる程で、どうやら彼は私に卵を植え付けるより食べる方を優先したらしい。

 

 

「やだ……こんな終わり方なんて嫌!!!」

 

 

 フルフルの口が迫る。死神が背後で手ぐすね引いて私を待っていた。私は声の限り叫んだ。そんなことしても無意味なのに。

 

 

 そう思っていた。私を丸のみにしようとフルフルが勢い良く首をすぼめた瞬間だった。彼の体に唐突に紅蓮の花が咲いた。

 

 

「ぎゃわああああああああ!!?」

 

 

 フルフルが絶叫を上げて私から後退った。

 

 

「え? え?」

 

 

 唐突の事で理解が追いついていない私の事などお構いなしに、状況は急速に進展してゆく。

 転倒して足をばたつかせるフルフルにまた炎の花が咲いた。その炎の威力は私の大剣の一太刀を優に超えており、一発ごとにフルフルの肉を目に見えるほど焼き焦がしていた。

 

 

「す、すごい……!」

 

 

 訳も分からず感心している私の目の前に、一匹のアイルーが降り立った。しかもそのアイルーはなぜか鎧を纏っており、私の困惑に拍車をかけた。

 

 

「ニ゛ャ゛ー爆弾食らえニャー!!!」

 

 

 不思議なアイルーはというと、その小さなポーチのどこに入っていたのか小タル爆弾を取り出しいてはぽいぽい放り投げた。

 

 

 どれだけ切りつけられてもぴんぴんしていたフルフルが、火炎の雨を受けてみるみる弱っていくのを見るのはなかなか痛快な気分だった。

 

 

「ぎゅ、おご……」

 

 

 もはや動く体力すらなくなったフルフルが血の塊を吐いたのを機に、火炎の雨は止んだ。代わりに一発の弾丸がフルフルの脳天に突き刺さり。僅かな点滅の後、大爆発を引き起こした。

 

 

「わっ!」

 

 

 結構な衝撃に、私は思わず顔を覆った。どうやら痺れは取れていたらしい。私は覆っていた腕を下ろし、フルフルがどうなったか確認した。

 フルフルの頭付近はもうもうと煙が立ち込めており、どうなっているのか判別は難しかった。やがて黒煙が晴れると、フルフルの頭はすっかりなくなっていた。

 

 

「はわわ……」

 

 

 私は痺れとは別の意味で動くことが出来ず、腰を抜かしてへたり込んだ。

 それを心配したのか。鎧を着たアイルーが私の元までやって来て顔を覗き込んできた。

 

 

「は、はわ、えっとあの」

「何ニャ思ったより平気そうニャ。心配して損したニャ」

 

 

 何を言えばいいのか分からずもごもご口を動かす私に、アイルーはものすごく冷たい目で私を一瞥すると、プイッとそっぽを向いてしまった。

 

 

「え!? ちょ、あの」

「お~い旦那さ~ん。もう降りてきても平気ニャよ~!」

 

 

 私なんかに目もくれず、アイルーは頭上に向けて大声を張り上げた。すると、一人のハンターがフルフルのすぐ近くに降り立った。

 アイルーは私の時とは大違いな態度でそのハンターに近づき、ハンターが何か言うと烈火のごとく怒りだした。

 

 

 しかしそのハンターは怒り狂うアイルーなど眼中に無いとばかりにスルーし、こちらへ近づいてきて、私のすぐ目の前で止まった。

 

 

 私は目の前に立つハンターの頭からつま先までじっくりと見上げた。そのハンターの装備は頭は『モノブロス』の防具で、体は死神を思わせるような黒い防具を着ていた。武器にいたっては、何だろうあれ。アイルーのぬいぐるみ? を背負っていた。

 

 

「……早いうちに回復薬を飲んでおけ」

 

 

 そのハンターは私を観察するように見下ろし、そう呟くと私から背を向けフルフルの剥ぎ取り作業を行い始めた。

 

 

「あ、はい」

 

 

 私は言われた通りアイテムポーチから応急薬を取り出しグイっとあおった。口内に苦みが広がりえずきそうになるが何とか飲み干す。

 途端に体から煙が上がり、肉体の負傷個所がみるみる修復されてゆく。

 

 

「あ、あの!」

 

 

 治ったと見るや私は立ち上がり、黙々と作業を続けるハンターの背中に声をかけた。

 

 

「なんだ?」

 

 

 ハンターはこちらに振り向きもせずに言った。

 

 

「あの、えっと……た、助けてくれてありがとうございました!」

「あんたがマネージャーの言ってた援軍ってやつだな」

 

 

 私のお礼など聞いてませんとばかりに、ハンターは淡々と言った。

 

 

「は、はい、そうです! そうでした……そうだったんですけど……」

「残念ながらもう一頭は討伐済み。クエストは完了。あんたはとんだ無駄足だったな」

 

 

 ハンターはこちらに見向きもせずに言い捨てた。

 そんな態度に私はちょっとムッとなってしまった。確かに私は何の役にも立てなかったとはいえ、いくら何でもそんな冷たく接しなくたっていいではないか。

 

 

 反論をしようと口を開きかけたその時、ハンターはすくっと立ち上がり、こちらに近寄ってきた。

 

 

「まあなんだ。ハンターをやっていたらこういう日もある。だったら今日はそういう日だと割り切った方が身のためだ」

 

 

 そう言いながらハンターは肩をポンと叩いて先に行ってしまった。

 その背を茫然と目で追いながら、私は口を半開きにしたまましばらく呆けていた。ずるい。何でこのタイミングで優しくしてくるのか。これでは私の怒りのはけ口はどうすればいいのか。

 

 

 しばらくボーっと立ち尽くしていたが、やがて動けるようになると先に行ったハンターの背を追った。死神が舌打ちして、私から背を向けて去って行った。

 

 

「あなたがポッケ村のハンターっていう事であってますか?」

 

 

 追いつくなり、私は早速ハンターに話かけにいった。円滑なコミュニケーションはいつだって何気ない会話から始まるのだ! 

 

 

「そうなる」

 

 

 だがそれは相手に会話の意思がある時だけの話。噂の白き鬼は噂の通りコミュニケーションをあまりとらない人のようで、彼の一言でその意志は十分伝わった。

 

 

 しかしそれでめげる私ではない! 絶対に彼の素顔を見るまであきらめたりなんかするもんですか! 

 

 

「えっと、ギルドからの指名で二人でクエストに行くって話だったんですけど、どうして先に行っちゃったんですか?」

 

 

 私の疑問に、白雪鬼さんはうんざりと首を振った。

 

 

「俺はこのクエストを3日も前に受注していた。その時は特に人数の指定なんかなかったんだ。だから俺は3日かけて計画を練り、その時を待っていたんだ。それなのに今朝になって突然このクエストは2人で受けてもらうとかマネージャーは抜かしやがった! ふざけんじゃねぇ! 今更計画の変更なんて出来るか!」

「だから一人で先に行った、と?」

 

 

 白雪鬼さんは私の疑問に答えず、こちらの方に首を向けた。防具越しで分からないが、おそらく睨んでいるのだろう。燃え上がるような怒りをひしひしと肌に感じ、これ以上は不味いと私はすぐさま話題の転換を図った。

 

 

「あの、私『セリア』っていいます!」

「そうか」

「ドンドルマでハンマーの娘とライトボウガンの娘とパーティで狩りをしているんです!」

「そうか」

「えーと……あの……ここ最近話題になっている感じの『雌火竜戦隊(ヴァルキリーズ)』ってチームなんですけど! し、知ってますか!?」

「そうか」

「……」

 

 

 し、塩! 対応が塩すぎです! 会話が続かないよー! 

 

 

「ハっ!」

 

 

 白雪鬼さんの後ろをちょこちょこついていた鎧を着た変なアイルーが、こちらに振り向いて鼻で笑った。

 

 

「笑わなくてもいいでしょ~! っていうか貴方は一体何なの!? どうして鎧を着てハンターと同行しているの!?」

「あ!? 都会者はオトモアイルーも知らないニャ!? 信じられない情報弱者ニャ! こんな情弱がハンターやっているニャンてそんな事があっていいのニャ~!?」

 

 

 有り得ないとばかりにどこかの絵画めいて両頬に手を当てるオトモアイルーとやらに、私は怒りよりも困惑の方が勝った。

 

 

「オトモアイルー?」

「つい最近ネコバァという竜人族とギルドが連携して始めた新しい試みさ。知らないのも無理は無い。何せ今のところやっているのはこいつだけだからな。この馬鹿の戯言なんか気にするな」

 

 

 振り向きもせずに、前を歩く白雪鬼さんがさっと私にフォローを入れた。

 

 

「あ゛ぁ゛!? 何ニャその物言いは!? もしかして僕喧嘩売られてるニャ!? ザッケンニャコラー! スッゾオニャー!」

 

 

 私に向けられていたどこか小馬鹿にするような調子から一転。オトモアイルーは激昂して訳も分からない事を叫びながら背負っていたピッケルめいた形状の武器を振り回し始めた。

 

 

「テメッコニャー!」

「オトモ」

 

 

 白雪鬼さんは背後にいるオトモアイルーに短く呼びかけた。先ほどの狩りの時に爆弾を投げまくっていたアイルーの事が想起され、はらはらしながら見ていた私は次に彼が一体何を言うのか気が気でなかった。

 

 

「もうすぐ着くぞ」

「うん」

「え!?」

 

 

 これはさすがに驚きを隠せなかった。怒り狂っていたオトモアイルーはその一言だけで嘘のように怒りを鎮め、再び白雪鬼さんの後ろを黙々とついて行くではないか。

 

 

 困惑する私をよそに、二人は何事も無くずんずん進んでいく。それがあまりにも自然体であり、私は遅まきながらこのやり取りが二人にとって日常的な事であることに気が付いた。

 

 

「ムムム……」

 

 

 キャンプにたどり着き、撤収作業を手伝いながら私は二人のやり取りが頭から離れなかった。

 私たちのパーティとはまた違った信頼関係の提示に、私は酷く心を惹き付けられた。

 

 

(私もあんなふうにこの人と接してみたいなぁ……そうするにはどうすればいいのかなぁ……?)

 

 

 帰りのアプトノス車に揺られながら、目の前で腕を組んで俯く白雪鬼さんを凝視しながら私は考える。

 彼の膝の上には当然とばかりにオトモアイルーがちょこんと座っており、前足で頭を撫でたり、あくびをしたりしていた。両者ともに私なんかに目もくれない。二人からすれば私はこのクエスト限りの存在でしかないのだろう。

 

 

 彼の顔を見たい。仲良くもしたい。二つの欲望が私の中でぐるぐると渦を巻く。

 二兎を追う者は一兎をも得ずという。本来ならどちらかを選ばねばならないだろう選択肢だが、そもそも彼の様な手合いは仲良くならなければ素顔を見せるなんてことはまずないだろう。

 

 

 顔を見るためにはまず彼に信頼されなくちゃいけない。でも私はあまり長くこの地に留まっていられない。うんうん唸って考えていたら、いつの間にかポッケ村に到着していた。

 アプトノス車から降り、一息ついた瞬間、村人たちがわっとこちらに群がってきた。

 

 

 すわっ何事か! 思わず身構える私を村人たちは素通りし、私の後に出てきた白雪鬼さんを取り囲んでやんややんやの大騒ぎだった。

 目が点になって硬直する私に、遅れてやって来た村長さんがアプトノス車に積まれている狩りの成果を杖で示しながら、これが彼の村での立ち位置なのだと私に教えてくれた。

 

 

「あ奴は自分の生まれに大層負い目を感じているらしくてのう。こうでもしないと傷つけられると本気で思い込んでおる」

 

 

 そんな事は無い事に早く気付いて欲しいのじゃが。そう語る村長さんは酷く悲し気だった。

 私は村長さんから目を離し、村人に囲まれている白雪鬼さんに目を向けた。

 

 

 話を聞かせて欲しいと縋りついてくる子供の頭を撫でてやんわりと拒否し、肩を組んできたがっしりとした男性の背を叩きながら彼はするりと抜け出して積み荷の方へそそくさと歩き去った。

 傍目から見れば分け隔てなく接しているように見えるが、俯瞰して見ると、明らかに村人と彼との間に距離がある事に気が付いた。これはきっと完全な部外者の私だからこそ気付けた違和感だろう。

 

 

「分かるだろう?」

「はい……」

 

 

 私は白雪鬼さんから目を逸らさずに、村長さんに返事を返した。

 笑顔の村人に囲まれている白雪鬼さんは頭を完全に覆うタイプの防具だから、一体どんな表情をしているのかは分からない。けれど、決して笑顔でない事だけは確信できた。

 

 

「種族の違いは時として差別や偏見を生むが、そうするにはあ奴はあまりにも皆に優しくしすぎた。今更そんな目で見ている者などこの村にはもうおらぬよ」

 

 

 ならばなぜ彼は村人たちから距離を取っているのだろうか? それはきっと両者のコミュニケーション不足だと私は思う。

 少ししか会話をしていない私が言うのもなんだが、その少しの会話の中でも分かる事はある。

 

 

 両者はお互いの認識の違いを共有する事無くここまで来てしまった。村人たちがやや過剰に持ち上げるのも原因だろうけど、当の本人がさっぱりコミュニケーションを拒絶し続けているからこそ、ここまで酷く拗れてしまったのだろう。

 

 

「私……」

「んん?」

 

 

 ぼそりと口から洩れた一言に、村長さんは小首をかしげた。

 

 

「私、彼の顔を一目見るためにこのクエストを受けたんです」

「そうかい」

「でも今はそれだけじゃなくって、彼とこの村との関係を少しでも良くしてあげたいと思いました」

「ほ! それはそれは」

 

 

 村長さんは面白そうにほっほっほと笑った。

 

 

「だがどうする? あ奴は一度思い込むとなかなか考えを変えようとしない頑固者じゃぞ? しかもヌシのような面識のない奴の言葉などちっとも聞き入れようとしない偏屈な奴じゃ」

「ならこれから親しくなればいいんです!」

 

 

 私は言い切ると、白雪鬼さんに向かってずんずん歩いて行った。白雪鬼さんはちょうど積み荷を降ろし終えたところで、近づいてくる私に気が付きこちらに顔を向けた。

 

 

「お話があります!」

「俺には無い」

 

 

 一も二も無く出てきた否定の言葉を遮って、私は遠慮なく続ける。

 

 

「私、もう少しこの村に留まるつもりでいます!」

「あぁそうかい。それで? それが俺に何の関係が」

「さしあたって私をあなたの家にしばらく住ませてください!」

「」

 

 

 顔をこちらに向けたまま、白雪鬼さんの体が凍り付いたかのように固まった。さっきまでは鎧の奥の表情はさっぱり分からなかったけど、今ならば手に取るように分かった。恐らく口を開けて呆けているに違いない。だってその固まり方が彼の背を茫然と見ていた自分に重なって見えたから。

 

 

「な、何を言って……お、おま」

「おっと彼女はわしが招いた客人だぞ。まさか断りはすまいな?」

 

 

 よたよたと遅れてやって来た村長がいたずらっ子のような笑みを浮かべながら、そう言った。

 

 

「な……あ……は?」

 

 

 さっきまで酷く冷めた対応だった彼が、いま私の目の前で理不尽を前に腕をわなわなと震えさせていた。

 

 

「で、返事は?」

「……はい、白ちゃんセリアさんを家に泊めます」

「分かればよろしい」

 

 

 項垂れる白雪鬼さんを見て満足そうに村長さんは笑い、私の方に顔を向け、茶目っ気たっぷりにウィンクした。

 私は村長さんにつられる様に、くすりと笑った。

 

 

「けっ!」

 

 

 白雪鬼さんの隣で立っていたオトモアイルーがそっぽを向いた。

 

 




白鬼くんちゃんの装備は頭はモノブロS(剣士)、胴両腕足がデスギアSで、武器はアイルーヘルドールです。スキルは自動装填と攻撃(中)です。
ちなみにですが回復薬の効果はミカエルの眼のあれをイメージしています。知らない人は検索してトライガン、読もう!血界戦線も読むといいですぞ!
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