ドンドルマの依頼でポッケ村にドスギアノスが湧いたから狩猟→なんやかんやで村に滞在→仲間の2人も用事が済み次第ポッケ村に合流→キャッキャウフフしながらティガと対峙→順調に成長していって最後はウカムを討伐って感じです。そうならなかったのは何も感も白雪鬼くんちゃんが強すぎたせいです。
セリアちゃんの実力は良いとこ中堅で、少しずつ成長していく感じを表現したかったんですが、少し急ぎ過ぎたかもしれません。
「暑いです~……」
「我慢しろ、もうすぐ着くぞ」
「うへ~……」
私は流れ落ちる汗を拭いながら水筒の水を飲む。
(生温い……)
行く前にキンキンに冷やしていたにもかかわらず、この場所に来てわずか30分程度で不快なほど水が生温くなっていた。
息を吐き、思わず天を仰ぎ見る。黒煙と分厚い雲に覆われた地獄めいた空を。
私は白雪鬼さんの依頼である上位の『バサルモス』の狩猟依頼に同行していた。
で、そのバサルモスがいる場所が何と火山だったのだ。
私はつい先日ハンターランクが上がり、それに伴い火山での狩猟が許可された。そんな時に白雪鬼さんが火山で上位のバサルモスの狩猟依頼を受けたという話を聞きつけた。
私はどうか連れてって欲しいと頭を下げた。当然白雪鬼さんは渋った。というより遠回しについて来るなという拒絶の言葉を告げられた。
彼の言う事は分っている。私はもう2度も分不相応な事をして彼に迷惑をかけている。
分かっている。自分でも厚顔無恥なお願いである事くらい分かっている。でも私は彼の領域での戦いを知っておきたかった。いつか彼の横に並んだ時に足手まといにならない様に。
初めはただの下心から始まった彼への興味が、いつの間にか共に轡を並べて分かち合いたいと、そう思うようになっていた。
1ヶ月に満たない交流だというのに、私はこの孤独な弓兵に酷く入れ込んでしまっていた。
彼と一緒に狩猟をした事のある人も、こんな事を思ったのだろうか?
思いが通じたのか分からない。彼はため息を吐き、仮面越しで分からないけど心底うんざりしたような声色で私の同行を許可してくれた。
『もう次は無いからな』
出発の時に短くも有無を言わさぬ声色で言われた警告は未だに耳にこびり付いている。
『勿論です。今回はただ白雪鬼さんの戦いを見るだけですから! 絶対に出しゃばったりなんかしません!』
……仮面越しに猜疑の瞳が向けられたのを感じた。
信頼は地の底。戦いで活躍しようなどと烏滸がましいにもほどがある。私はただのお荷物でしかない。そんな中で無理を言って同行を許可された手前、泣き言を漏らすなんて以ての外なんだけど、ちょっと予想していた以上に暑すぎる! クーラードリンクを飲んでいてこれなのだからたまらない。
「ニャハハハハ! そんな程度で泣き言漏らすとかとんだ根性なしニャ! 大人しく下山する事を進めるニャ!」
さささどうぞどうぞ! とばかりに両手を使って後方に向かってジェスチャーするヨシツネに、私は歯を食いしばって耐えた。
言い方は腹立たしいけど、彼の言う通りだ。こんな程度で音を上げて、一体どうして彼の戦いについて行けるというのか。
何も言わず、無言で進む私にヨシツネは舌打ちして、顔を前に戻して無言で主人の後ろを黙ってくっ付いて行った。私もそうした。
分かっていたことなのだが、ヨシツネはどうも私の事が気に食わないみたいだ。最初の頃は碌でもない行動ばかりする私に腹を立てているからそうしているのかと思っていたみたいだけど、どうやらそうではないらしい。
というのも、わたしだけでなく村の人たちにも同じように辛辣にこき下ろしているのだから。
彼の白雪鬼さんへのこの執着ぶりは一体何なのだろうか? とてもただ一緒に暮らしてるからだけとは思えないのだけれど……。
白雪鬼さんなら何か知っているのだろうか? 私はちらりと先頭を進む白雪鬼さんの後姿を盗み見る。
彼は私たちの諍いなぞ我関せずとばかりに不干渉を決め込み、ただひたすら無言で目的地に向かって歩を進めていた。
下位の依頼の時はヨシツネと、ときどき私を交えて軽口をたたき合ったものなのだけど。やはり上位の依頼だと彼もそんな余裕は無いのだろうか?
私たちはそのまま、目的のバサルモスが見つかるまでの間無言で火山の中を歩き回った。途中やけに多いイーオスの集団にかち合い、白雪鬼さんが肥やし玉を投げてさっさと追い払ったという出来事以外には、特に問題の無い探索だった。
「見つけた……」
その呟きと共に、突如前を歩いていた白雪鬼さんの足が止まった。それに伴い私たちの足も止まる。
「え、何処ですか?」
場所はエリア4。草木一本生き物一匹すらいないマグマ沸き立つ地獄の窯のような場所だった。
しかし件のバサルモスの姿は何処にもなく、ちらほらと爆弾岩があるくらいだ。強いて言うなら
「まあ初見ならそんなもんだろう」
私を一瞥すると、白雪さんは背負っていた弓に手を伸ばした。
瞬間、空気が変わり、ぞわりと肌が粟立つ。
その様に私は依頼の出発前に村人の誰かが言っていたある事を思い出した。なんでも白雪鬼さんが弓を持ち出すときはどうしようもない強敵や、短期で終わらせたい時だけなのだという。
「こいつは『ダイミョウザザミ』の弓でな、『オオバサミⅣ』つう水属性の貫通弓だ」
言いながら白雪鬼さんは一際大きな爆弾岩に向けて矢筒から矢を取り出し、弦に矢をつがえ、ぎりぎりと引き絞った。
矢が引き絞られる度に空気までもが引き絞られるような錯覚に陥る。
「はっ……はっ……」
息苦しい。自然と浅くなった呼吸がうるさい。
「お前は離れていろ。オトモ、行け。派手なモーニングコールを送ってやれ」
「ニャ」
ヨシツネは頷くと、大きい爆弾岩の方へと勢いよく駈け出した。
私も同時に白雪さんから離れ、近くにあった人一人が容易に隠れられる大きさの岩の影に身を隠した。
岩から顔を出し、2人の姿を確認する。
丁度ヨシツネが爆弾岩の前までたどり着き、大タル爆弾を放り投げたところだった。
「ニ゛ャ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
投げ放たれた大タル爆弾は放物線を描いて爆弾岩に直撃。瞬間腹に響ような轟音が響き、目も眩む閃光と共に火柱が上がった。
「オォオオン!!?」
それと同時にどこからともなく絶叫が聞こえた。
(一体どこから!?)
狼狽える私に答えるように、ヨシツネに爆弾を放り投げられた大岩が身悶えし、それは姿を表した。
私が大岩と思っていたのはそれの背中だった。まるで岩そのものが竜の姿を形どったかのような体。ずんぐりむっくりなその姿はどこか愛嬌を感じないでもなかった。翼はあるが、体を覆う岩の様な甲殻の重さから、飛ぶのはあまり得意ではなさそうだ。
岩竜『バサルモス』が絶叫を上げながら、地中から勢いよく飛び出してきた。
「そぉら寝起きに冷たい水はいかが?」
間髪入れず、白雪鬼さんは弓から手を離した。
引き絞られた弓矢は力の解放に歓喜するかの如く光の様に飛び去り、狙っていた腹に過たず深く突き立った。
「オオォ!?」
突き立った矢は刺さった拍子に高圧の水流を噴射し、更にバサルモスの腹を抉った。ビキッとここからでも分かる程亀裂の音が大きく響いた。
が、さすがに上位クラスのモンスター。すぐに体勢を立て直したバサルモスはウロチョロするヨシツネに目もくれずに白雪鬼さんに向かって突進を繰り出した。
白雪鬼さんは慌てることなくステップで突進をかわす。
「あれは……」
しかもそのステップは何か特殊なようで、紅い光が生じ*1、向き直ると同時に放たれた矢は先ほどの引き絞っていた矢、え~と確か溜め3だったかな? と同じ威力で放たれた。
「オォン!?」
全く同じ個所で硬い甲殻を突き破り、もしかしたら肉にさえ届いたかもしれない威力の矢に、バサルモスは堪らず後退る。
その隙に白雪鬼さんは矢を射た勢いでさらにもう一射*2、その反動を利用してさらにもう一射*3。驚異の3連射をバサルモスの腹に叩き込んだ。
近い箇所に連続して貫通性の高い矢を撃ち込まれ、ついにバキンッ! という鈍い音とともにバサルモスの腹を覆っていた甲殻が剥がれ落ちた。
「嘘、もう部位破壊しちゃった……!」
接敵からわずか2分ほどで、もう白雪鬼さんは敵の最大の弱点を晒すことに成功してしまった。あまりの光景に私は開いた口が塞がらない。
驚きの光景はまだ続く。バサルモスは反撃に短い尾を振り回した。しかし白雪鬼さんはあろうことかそれを踏み台にして上に跳び、バサルモスの目元付近に貫通矢を撃ち込んだ。
「オォ!?」
突き立った拍子に甲殻の破片がばら撒かれ、バサルモスは血の涙を流しながら片目を瞑った。あの痛がりようからして、もしかしたら潰れたのかもしれない。
「オオオン!!」
バサルモスは無茶苦茶に翼を、頭を振り回して狙いを妨げると同時に、その巨体を生かして彼を踏み潰そうとした。
だが白雪鬼さんは風に舞う羽毛のように気が付けばバサルモスの側面、背後に、ほんの斜め横に滑るように移動し、決して姿を捉える隙を与えずに剥き出しになった腹に正確無比に矢を撃ち込み続けた。
「──────!」
まるで舞い踊るかのように岩竜の周りを動き回る白雪鬼さんの姿に、私は目が離せなかった。
彼の動きは徹底して相手の間合いに入らず、逆にこちらの間合いを維持し続けて一方的に攻撃し続けるというとんでもない狩猟スタイルだった。
文にしてみれば何を馬鹿なと一蹴してしまうようなことだけど、実際に現実でそれをされてしまったら、きっと誰でも私の様に呆けたように口を開け、見入ってしまうだろう。
あれはまさに神業、うぅん。そんな範疇じゃない。最早あれは魔技、鬼の御業としか言いようが無かった。
あの奇跡のような
「……?」
ふと見ると、右手が細かく震えていた。違う右手だけではない。全身が震えていた。
それはきっと目の前の彼と私の差を無意識に感じ取った体が、畏れたのだ。あの神の如き鬼の御業に。
ごくりと喉が鳴る。追いつきたいと思う気持ちは彼の本気の戦闘を見た後でも変わらない。しかし同時に思うのだ。果たしてあれに並び立てるまでにどれだけの死線を潜らなければならないのだろうか?
それはもう莫大としか言いようが無い。あれは訓練だけで培われた業ではない。死ぬほどの訓練と死ぬほどの戦闘経験があって初めて成し遂げられる業なのだ。
「もっと多く、よりたくさんのモンスターと、戦わなくちゃ……!」
何事も経験だ。大地だって一日二日でできたものじゃない。途方も無い長い年月により少しずつ形作られるのだ。
経験するのだ。飛竜種、鳥竜種、牙獣種……、様々な種、様々な個体と戦い、そして研鑽する。
彼の戦闘はもう間もなく終わる。帰還次第すぐに手をつけなくては。この熱が冷めないうちに!
そしてすぐにでもクエストに向かわねば。白雪鬼さんの隣に立つには私はあまりにも経験が足りない!
……幸か不幸か、経験しなければならない死線は、この後すぐに経験する事になった。
「っ!?」
反射だった。予感が脳裏をかすめた時には背負っていたヴァルキリーブレイドを手に取って横薙ぎに振るっていた。
「「ギャッ!?」」
振るわれたヴァルキリーブレイドはあわや飛び掛る寸前だったイーオス3体をまとめて両断した。
「こいつらは!」
襲い掛かってきたのは今しがた倒した個体だけでなく、複数匹がまだ残っており、私を中心に包囲網を築いていた。
分かる。こいつらはさっき白雪鬼さんが追い払ったイーオスたちだ!
(この動き……統率されている……!)
突発的な襲撃ではない事は動きがあまりにも連携が取れてることで気が付いていた。という事はこれを統制している者がどこかにいるという事!
私がそう思うのと同時に、群れのイーオスたちを押しのけて、一際体躯の大きいトサカの立派なイーオス、群れのリーダーである『ドスイーオス』が私の前までやって来た。
『いいか? もしドスランポスとか、ドスゲネポスとか、そういう群れを率いて襲ってくる奴がいたら、1も2も無く司令塔を叩け。連中は鳴き声とかでコミュニケーションをとってることが多いから、息つく暇を与えるな』
私は踏み込んだ。ドスイーオスは短く鳴いた。すると立ち塞がるようにイーオスが2匹並び出た。
『あ? 群れの奴らが襲ってきたら? お前の武器は何だ? 大剣だろうが。振り回して近寄らせるな』
「やあ!」
私は踏み込みの勢いを利用して大剣で回転切りを放った。
「ギャッ!?」
「グエッ!?」
目の前の2匹のイーオスが切り裂かれ、更に背後から襲おうとしてきたイーオスを牽制する。
「ギャーッ!」
その隙を狙ってドスイーオスが飛び掛かってきたけど、私はそれを狙っていた!
「たぁああああああ!!!」
私は回転の勢いを緩めることなくさらにもう一回転。飛び掛かってくるドスイーオスにそれを避ける術なんかない。私の一撃に吸い込まれるようにドスイーオスが落下してゆき、大剣がドスイーオスの首にめり込んだ。
大剣の大質量が勢い良く振られ、ドスイーオスの首は大した抵抗も無く切り飛ばされた。
宙を飛ぶドスイーオスの顔は驚いているように目を大きく見開いていた。信じられないとでも言う様に、最後の力を振り絞って黄色い瞳を私に向けた。
生首は円弧を描いて宙を舞い、それからどさりと音を立てて私たちの前に落下した。
「私の、勝ち!」
どしんとヴァルキリーブレイドを地面に突き刺した。イーオスたちは目の前に落ちた生首を見やり、それでボスの敗北を悟ったようで、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「ハァ……ッハァ……ッ」
「へ~ソロでドスイーオス倒すなんてやるじゃん」
突然声を掛けられて驚いて倒れ込みそうになる体が、そっと背後から支えられた。
「わわっ!? す、すみません!」
私は謝り、自力で立ち上がろうとしたけれど、どういう訳か足に力が入らず、彼に支えられたままになってしまった。
「え? どうして?」
「ソロでの狩猟は神経を使うからな。緊張の糸が切れて体に力が入らなくなってんだろうぜ」
「あの、バサルモスは?」
「そんなもんとっくに終わってるニャ」
支えられたままの姿勢で背後の白雪鬼さんに疑問の言葉をかけたが、彼が答える前にヨシツネが答えてしまった。私はヨシツネの指を指す方向へ目を向けた。
そこには落とし穴にはめられ、ぐっすりと眠るバサルモスの姿があった。
「『捕獲』したんですか……」
「面倒くさかったからな」
「いつから私の事を見てたんですか?」
「イーオスが飛び掛かってきた時くらい?」
「ほぼ最初からじゃないですか!」
私の言葉に白雪鬼さんはくすくすと笑うばかりで、結局それ以上何も言わなかった。代わりに力の抜けた私の体を彼はひょいと背負った。
「なっ!?」
「おっと抗議は聞かんぜ? お前が動けるようになるまで待ってやる時間が惜しいからな」
うぅ確かにその通りだけど、でももうちょっとこう、心の準備というか、一声かけてくれても良かったんじゃ……。
「むー……」
「はっ、そうむくれるなよ。さっきの戦い方。なかなか良かったと思うぜ」
「あれくらいじゃだめです。もっとうまく切り抜けられるようになって、あなたと一緒に戦いたいんです」
「そういう奴は過去に何人かいたな。音沙汰がさっぱりないから、まあ口だけだったんだろ」
「私は違いますー! 絶対絶対やってやるもん! もん!」
「期待せずに待ってるよ、ルーキー」
白雪鬼さんの声色に、ほんの少しだけ期待するような色が浮かんでいたのは果たして私の願望だろうか?
仮面の奥の表情は分らないが、それでも少しだけ笑っているような気がした。
私と彼との間には未だ溝があるけれど、いつかその溝を渡れたらいいな。
そう願いを込めて、私はキャンプに着く間、白雪鬼さんの背中に顔を埋めて匂いを堪能していた。
追記
何て言うか女の子ともいえるような男の子ともいえるような独特の香りがした事をここに記しておく。とても良かった……
バサルモスもグラビモスも水冷速射でいちころじゃー!近接でなんかとてもじゃないけど行けないよー!(双剣で足を壊しながら)