「リョウー朝ダゾーオキロー。」
ハルがベッドの上でコロコロと転がる。この時間になると優しく起こしてくれる。夢の国からゆっくりと引き上げてくれるような感じだ。激しく起こさないのでかなり目覚めはいい。
「んぁ…あぁ…もう朝か…。ありがとな、ハル。」
ハルは撫でられると耳をピコピコさせた。俺は起き上がりカーテンを開く。さんさんと差し込む太陽の光で完璧に目が覚めた。伸びをして一息付き、着替え始める。時計は6時半を指していた。一階に降りると姉さんが朝食作りをしていた。
「あら、おはようリョウ♪」
おはよう姉さん、と返事をしたいがその前に俺は確認したいことがあった。今この状況を見れば一目瞭然だけど…一応聞いてみた。
「姉さん…カイセイとミズキは…?」
そう、カイセイとミズキがまだこの場に居ない。
「まだ来てないわよ?」
無論予想はしてた答えがまんまその通り帰ってくる。
まだ寝てるのか…とため息が出る。
「あいつらまたかよ…遅刻しても知らねぇぞ…」
愚痴をこぼしつつキッチンからフライパンとお玉を拝借し、再度二階に上がる。おもむろにカイセイの部屋の扉を開ける。そして思いっきり、
ガンガンガンガンガンッ!
ふがッ!と奇声を上げカイセイが飛び起きる。カイセイのハロ[ナツ]も腹の上で飛び上がり、ベッドから転げ落ちる。寝ぼけ眼で俺を見るカイセイは一言。
「…おはよう…」 「オハヨウ...デス。」
と言ったままナツと共に放心状態になる。やはりハロも飼い主に似るのだろうか…?そんなカイセイを尻目に黙々とカーテンを開けていく。朝が弱いにも程がある。でもカイセイの場合はまだマシなほうだ。問題は次の部屋である。
部屋に入るとミズキのハロ[アキ]が(ロボなのに)涙声でリョウに訴えかける。
「助ケテ...ミズキガ起キナイノ...」
しかし、毎朝アキにこれだけさせながら起きないとは。
ミズキはカイセイを差し置いて朝が大の苦手だ。リョウはフライパンを根気良くならし続ける。と、ようやく体を起こす。これまた寝ぼけ眼で一言。
「うにゅ…おはようごじゃいましゅ…」
まだ寝ぼけてろれつが回らないのか色々おかしい語尾になる。他から見れば可愛らしい光景だ。俺も可愛らしいと思うが、状況が状況だ。仕方がないから俺と姉が考案した解決方法を使う。
「今日の朝飯はホットケーk…」 ガバッ!
俺が言い終わらない内に飛び起きた。甘いものに目がないミズキには効果抜群だ。無論嘘は付いてない。仮に嘘を付くと一日中気を落としてしまう。いつもの元気がない様子を見てるとこっちは罪悪感が半端ない。
「ほ、本当…?」
キラキラした純粋な目で俺を見るミズキ。あぁ…今日も平和だ…。
「本当さ、早く来ないと冷めるぞ?」
「やったぁ♪」
本当だと知り、可愛らしい笑顔を見せる。ミズキの笑顔は商店街の中でも一、二を争う人気っぷりだ。クラスどころか学校中でも人気だ。皆からはこの笑顔を普通に見れるお前は幸せ者だ、と言われる。無論、幸せ者だと思う。彼女の笑顔には何度も助けられ、励まされた。チームの紅一点であり、一番愛嬌のある性格は俺だけじゃなく、チーム全体の活力の一つになっている。
「ほーら二人とも、朝ごはん出来たよ~!」
姉さんの呼ぶ声がする。気付けば時計は7時を指そうとしていた。さぁて…飯にしますか!
朝ごはんを食べ終わり、身支度を整える。ドアノブに手を掛けた。
「「「行ってきまーす!」」」
「「行ってらっしゃい!」」
俺らが挨拶すると姉さんと厨房で仕込みをしていたオーナーが挨拶を返してくれる。裏口の扉を開けると一筋の日光が明るく俺達を照らす。俺らは栄台学園という学校に通う高等部の二年生だ。突然だがリーヴァには組織に加入する条件の一つに[任務担当区の付近への引っ越し、または付近の学校に転校する原則](エピソード.2参照)がある。もとから親が居ないに等しい俺は関係ないがカイセイとミズキは親の許可を貰いこの地区へ引っ越し、栄台学園へと転校してきたのだ。彼らの過去は後々話すことにしよう。
「くぅ~!今日も朝日が眩しくて気持ちいいぜ!」
「キモチイイゼ!」
カイセイが伸びをしながらナツも合わせて言う。さっきまで「眩しいからカーテン閉めろぉ~…」なんて叫んでいた人物の言葉とは思えん。そうこうしてる内に裏道から商店街へ出た。朝からプラモ街は賑わっていた。
「おぅ!おはよう!」
「あら、おはよう♪」
「おはようミズキちゃん!」
道を歩けば顔馴染みが挨拶してくれる。工具屋のおっちゃん、花屋のお姉さん、良く会うモデラーさん。とにかく色々な人が挨拶してくれる。朝の挨拶は心地がいい。
「よぉ!おっはー!」「オッハー!オッハー!」
「あ、おはようございます先輩!」
声をかけられ振り向くと二人の男女がこちらへ歩いてくる。自分達は彼らを手招きする。俺らの親友である。
サクラ・トウマ
俺らと同じ栄台学園高等部の二年生だ。剣道部とガンプラバトル部の掛け持ちをこなす少年である。彼とは入学以来の付き合いで、バトルもよく勝負したりするかけがえのない親友だ。バトルの腕はなかなかで、地区のローカル大会の常連選手である。しかし妹のサポートがないと即攻撃に移り、時には相手を道ずれに自爆する。その為付いた通り名が[爆弾小僧]。緑色のハロを持ち名前は「モナド」。
サクラ・キョウコ
同じく栄台学園に通う中等部三年生だ。なぎなた部でありトウマの妹で、ガンダムの知識はそれなりにもつ女の子。バトルはしないが、姉さんにも負けない程の高い洞察力と解析能力を駆使し、トウマのバトルをサポートしている。因みに名前を漢字で書くと[杏子]であるためミズキからは[あんこちゃん]と呼ばれる。
「ようトウマ!おっはー!」
「あんこちゃんもおはよう♪」
俺とミズキが挨拶する。
「んもぅ!あんこじゃないです!杏子です!」
赤い顔でキョウコが頬を膨らませる。朝の恒例である。
「そういえばトウマ、例の新作は完成してるのか?」
「ん?ああ、アレか。一応機体の方は出来上がったんだが…問題は武装さ。ベースキットの武器の使用を考えてたんだけど…自分が使いこなせる武器を使いたいし、なにより…」
「面白くないってか?」
「あら…解っちまったか?」
笑いながら談笑していると、隣から横槍が入った。
「はいはい!兄ちゃんもそこまで!あまりペラペラ喋らない!」
「シャベラナイ!シャベラナイ!」
どうやら秘密事項だったらしい。それでも俺に話してくる所を見ると良き信頼関係を築けたことがわかる。
そんなこんなで到着する。校長の趣味でデザインされた西洋風の校門をくぐり教室へと急いだ。
栄台学園は、商店街に囲まれる形で雷堵町のど真ん中に位置する学校だ。中高一貫校の学校の広さはその辺の学校よりかは大きい。その敷地のほとんどが校舎で構成されている。現校長の趣味なのか数年前に大改修を行い、校舎を西洋風のデザインに変えたのがそもそもの原因らしい。その余った場所に部室やら中庭を詰め込んだ感じだ。しかしそんな詰め込みまくった迷路みたいな学校が人気なのには理由がある。それは部活の強さである。中高一貫の栄台学園は、様々な部活がある。中高生が出場できる部活は全てあるほどの凄まじさだ。野球、サッカー、テニスにバスケ、バレーは勿論のこと、茶道や花道、はては漫研からも著名人が排出されるという逸材を秘めた学校だ。
だからと言って何も問題がないわけじゃない。主な問題はその複雑な校内設計だ。迷子になる生徒が毎日続出、それが新入生となると…といったものが日常茶飯事に起こっている。もうひとつは…[三大問題生徒]の問題である。
「おいトウマッッ!!よくも俺のかわいい部下をやってくれたな!」
校門の前に着いたとたんに野太い声が響く。件の問題の生徒がきた…。
エチゴヤ・カンノスケ
学校の三大問題生徒の一人で自称[栄台の番長]。主にガンプラバトルで他校の生徒と度々衝突することがある。その都度ウォルダンAチームに制止されている。噂だと栄台の不良生徒を指揮しているらしい。バトルでは重MSのガンプラを好んで使用する。
「いやいやwお前らが俺にいちゃもんつけてくるからだろ!自業自得!」
「じゃかしい!今度こそギタギタにしてやるわ!」
あーあ…面倒くさいことに…。キョウコも含めた全員が溜め息を出す。ただの喧嘩ならまだしもガンプラバトルの場合、リーヴァの管轄に入る。しかも喧嘩に介入をする以上事後処理に時間をかけるかもしれない。規定により許可されているとはいえ、遅刻は気持ちのいいものではない。しかしリョウは奥の手を出した。
「なら俺もやるぜ。間に合わせのコイツだけど、ちょうどいいわ。」
ハロから取り出したのはストライクガンダム。しかもストライカーパックを持たず、ライフルとシールドだけのシンプルなストライクだった。リョウはまるで挑発するかのように怒気をこめ言い放った。
「今のお前にはコイツで充分だ!」
今の発言でエチゴヤは完全にキレた。おもむろにハロを取り出しバトル空間を形成、こちらのハロともども強制さんかさせるつもりだった。トウマとリョウは慌てずに自分らのハロからもバトル空間を形成する。リング型のパネルを叩きながら二人は叫んだ。
「「さぁ!ストライクの強さを教えてやる!!」」
エピソード3,完
身支度を整えてウェルダンを出た俺たちは、新たにサクラ兄妹と合流し学園へと向かう。
しかし校門には3大問題生徒の一人、カンノスケが怒り立ちふさがった!
俺はトウマと共にストライクで立ち向かう!
次回 エピソード.3挟撃、ダブルストライク!
ストライクを舐めんなよ!