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「もし今日が最後の日だったら君はどうする?」
「なんだよ、いきなり」
俺は人気のない公園で不毛なことを聞いてくる少女に思わず言葉を返した。
「いや、ちょっと気になってね。こんなどうでもいい話でも退屈しのぎにはうってつけでしょう? もし世界が今日滅ぶとしたらどうする?」
そう言うと少女は口角を少しだけ上げこちらを見てきた。
まあ、その言い分が分からないでもない。確かにやることはないからだ。だからと言ってその話題を振るのもどうかと思う。答えはするけども。
「あー、そうだな、好きな女の子と一緒にいるとかだな」
「ほーう、定番だね」
彼女はニヤリと笑い、鼻を掻いた。
「お前はどうなんだよ。そういうお前は」
「うん?」
「そっちだけ聞くとかフェアじゃないだろ、聞かせろよ、
「……今日滅ぶと決まった訳じゃないでしょ」
彼女は目をそらしながら俺に言葉を返したが、おそらく今日世界は滅ぶだろう。なんと言ったって世界中の偉い人たちが世界が滅ぶと予測し、その事を宣言してしまったのだから。そんなこと映画の中だけの出来事だと思っていた。……思っていたかった。だけど、現実に起きてしまった。今世界の大半の人たちはきっと神とやらに祈っているか、家族と過ごしているのだろう。
「……ねえ、今日が最後の日だと思っているんなら家族とか彼女と一緒にいなくていいの?」
「……家族はともかく何で彼女? 彼女なんかいないぞ?」
「え?」
「家族とは既に色々話したし、今日は皆好きなことをするそうだ」
「え? 彼女いないの?」
「……なんでそこに喰いつく?」
いやだって、と小さい声で呟く彼女に俺は首を傾げた。
「2ヶ月ぐらい前に、青いリボンを頭に着けたかわいい女の子と一緒にいたからてっきり彼女かと……」
「妹だな、それ」
そう言うと彼女の表情が固まり、その後顔が真っ赤になった。
「え、じゃあさっきの、好きな人と一緒にいるって言ってたのは……」「お前のことだな」「本当に?」「世界が滅ぶっていう時に嘘付く奴はいないよ」
こんなことがなければ言えなかったであろう思いはするすると出てきた。俺はヘタレだ。
「……そう言えば私は答えてなかったね。質問」
「……顔、真っ赤だぞ」
「私はもし今日が最後の日なら――」
話題をそらすことが下手だな、本当に。
「好きな人と一緒にいるかな」
「……なんだ、両思いだったのか、早く告白しておけば良かったな」
後悔しても遅いが思わず顔に手をやってしまう。
「そうだね、過去は変えられない、本当なら」
「ん?」
「ねえ、君はもし自分を犠牲に世界を救える力があったら使う?」
「……なんだよ、いきなり。……多分使うな」
目の前にいる彼女を救えるのなら。きっと使うだろう。
「そっか、そっか」
「だから、本当に何を……」
「ごめん、ちょっと行って来る」
彼女はいきなり変なことを行った。文脈が繋がってない。何を言いたいのか全く分からない。それでも何か嫌な予感がした。
「おい、何を」
「世界を救いに行って来る」
「は?」
「君はこの事を忘れるけど、大丈夫、私が覚えているよ」
「おい、おい、おい、何を、本当に何をする気……」
「じゃあね」
そう最後に呟いた彼女の体は目映い光を放つといなくなっていた。
「もし今日が地球最後の日だったら君はどうする?」
「なんだよ、いきなり」
私は怪訝そうにする彼を見て笑みを浮かべた。あのときと一緒の答えだ。
「別にいいでしょ。どうせ暇なんだから」
「……好きな人と一緒にいるかな」
「ほーう、じゃあ私とだね」
「……」
彼は顔を真っ赤にさせるとそっぽ向いてしまった。
「そんなに照れなくてもいいでしょ」
私は可愛らしい彼を見て思わず声を出して笑ってしまった。
「だってもう私たち――」
運命は変わらないものだと言うけれど、きっと意志の一つで変わるものもたくさんある。なぜなら――。
「付き合ってるんだから」
少なくとも2つ大きな運命が変わったのだから。