今回の投稿がお初となります。
いろいろと至らぬ点がありますでしょうがどうぞよろしくお願いいたします。
000 プロローグ
時刻は夕暮れ、普通ならば子どもは家に帰って母が作る夕ご飯を待っているだろう時間。おれ、咲良 雪道は家に帰っている途中だった。
もちろん一人ではない。隣には母の春美がいて手をつないで帰っている。おれと母さんの手をつないでいない方の手にはスーパーのビニール袋。よく利用しているスーパーで遅めの夕飯の買い出しを終えたところ。
他の人から見れば子どもが母の買い物について行って、その帰りという風に見えるだろう。だがうちの場合は少し違う。
母さんはおれの視線に気づいたのか微笑み、そして申し訳なさそうに口を開いた。
「ごめんね、雪ちゃん。私が忘れてたばっかりに・・・」
「いいよ別に。おれもうっかりしてたよ」
冷蔵庫の中身が少なくなってきていたので母さんに買い出しを頼んでいたのだが、うっかり忘れていたらしく遅くなったこの時間に買い出し来たというわけだ。
察しのいい人はもう気付いているかもしれないが正しくは『母』が『子』を連れてではなく、『子』が『母』を連れて・・・だ。
母さんはどういう訳か極度の家事音痴だった。
料理をさせれば必ず怪我をし、掃除をさせれば逆に散らかし、洗濯をさせれば洗剤を入れすぎて等々。例を挙げればキリがない。
おかげでまだ小学校に上がってないにも関わらずおれは家事全般できるようになり、しょっちゅう怪我をする母さんの面倒を見ていたため応急処置もできるようになってしまった。
もはや料理は趣味の一環となりつつある。
「雪ちゃんは悪くないのよ、忘れてた私が悪いんだから」
「ううん、そういう母さんのことを考慮してなかったおれも悪かったよ」
「なんかちょっとひどくないかしら・・・」
「母さんの家事音痴を考えれば当然だよ。まあ毎日何か忙しそうにしてるっていうのもあると思うけど」
そんな会話をしつつ、ゆっくりと薄暗くなった道を歩いていく。帰り道の途中にある公園を通りかかった時だった。
「ん?」
時間帯が時間帯だけに誰もいないはずの公園。なのに誰かの声が聞こえた気がしたのだ。
「どうかした?」
「いや・・・母さん、今何か聞こえなかった?」
「特に何も聞こえなかったと思うけど」
どうやら母さんには聞こえていないらしい。気にしないでいいはずだが、歩きながらもなんとなく公園を見てしまう。
その時、奥の方にあるブランコに誰かが座っているのがちらりと見えた。
(まぁ見えてしまったし、そのままっていうのはなんかな・・・)
おれは母さんとつないでいた手を離し代わりに食材の入ったビニール袋を出す。
「雪ちゃん?」
「母さん、悪いんだけど荷物持って先に帰ってて」
「・・・分かった、なるべく早く帰ってくるのよ?」
「りょーかい」
荷物を手渡し公園へと入っていく。こういう場合母さんは特に理由も聞かずに送り出してくれるので非常にありがたかった。
帰った後でいろいろ聞かれるんだろうけど・・・
ブランコに近づくと一人の女の子が座っているのが見えた。
歳は同じくらいだろうか? 栗色の髪を左右で結ってツインテールにしている。俯いているため顔は見えないが雰囲気からして暗い顔をしているのだろう。
とりあえず明るめに声をかけてみよう。同い年っぽいしおそらく警戒はされないはず。
「よっ、こんな時間に何してるんだ?」
「え・・・?」
顔を上げた女の子はその・・・かなり可愛かった。こんな時に何考えてるんだと思うが可愛いのだから仕方がない。
幼いながらも整った顔立ちで大きな目。他の人の顔なんて気にしたことなかったが思わず見とれてしまった。
「・・・・・・」
「あの?」
困ったように聞いてくる彼女。そういえば自分から話しかけたのにそれ以降何もしゃべってなかった。
「ああいや、こんな遅い時間になにしてるんだろうって思って」
「うん。お母さんのがご飯作ってくれるまで待ってるだけなの」
「待ってるって、なんで外で?」
「私のお家はお店やってて、忙しいから・・・」
答えになってるようでなっていない返答をする女の子。
お店をやっててご飯が遅くなるのは分かる。だけどわざわざ外、しかもこんな誰もいない公園で待つ理由が分からなかった。
「うーん・・・別に家の中で待っててもいいと思うんだけど」
「ずっと家にいるとみんなに心配かけちゃうし、私がこうしてる分にはなんともないから大丈夫なの」
そういってにっこりと笑う。おそらく万人がこの笑顔を見れば思わず見た人も微笑んでしまう、そんな笑顔。
だけどおれにはそうは見えなかった。その表情の奥にあるものをなんとなく感じ取ってしまったから。
「どうして、そんな風に笑ってるんだよ・・・」
「え?」
「そんなに悲しそうにしてるのに、なんでそんな風に笑うんだ・・・?」
「っ!?」
驚いたように目を見開き、そして怯えたように表情を歪めてしまう。本来ならこんな、出会って数分しか経っていない奴が言うべき言葉ではなかったのかもしれない。
でも言わずにはいられなかった。その笑顔はあまりにも痛々しく、見ているこちらのほうが悲しくなってきそうな、そんな笑顔だったから。
「な・・・んで・・・?」
「特に理由はないけど、なんとなく。表情を見る限りでは当たってるみたいだけど」
「わ、私・・・は・・・そんな・・・」
今にも泣きだしてしまいそうな顔で必死に声をしぼりだそうとする彼女。その様子を見ておれの中で一つの思いが決まった。
母さんからはよく
「それって雪ちゃんの長所だけど、短所でもあるわよねぇ」
と言われてる。自分でもある程度は自覚しているけどなかなか直らない、というよりも直す気がない。
目の前で困ってる人がいると見捨てることができない。手を伸ばせば助けれそうならばギリギリ限界まで手を伸ばし続けたい、そう思ってしまう。
だから・・・
「よし、んじゃこれから君の家に行こう」
「ふぇ?」
「ほら、立って立って」
「え? え?」
まだ状況が理解しきれてないのか、なかなか動かない彼女の手を取って立たせる。
「で、君の家はどっちだ?」
「えっと・・・あっちのほうだけど・・・」
「よし、行こうぜ」
「・・・・・・」
取った手はつないだまま、離さないようにして歩き出す。まだいまいち頭がついてきていないのだろう、それでも一応手を引かれて歩き始める彼女。
さて、この子の家族には一言言ってやらないとな。
「ここか?」
「うん・・・」
公園を出てしばらく歩いたおれ達は『翠屋』という看板がかかげられたお店の前にいた。残念ながらなんて読むのかは分からない。まあ小学校すらまだなのだからしょうがない。
入口の扉には閉店の文字があるが、入らないことには始まらないので意を決して扉を開ける。
ちなみに女の子とはまだ手をつないでいる。逃げられては敵わないからな。
「いらっしゃいませー。すいません、今日はもう閉店で・・・あら?」
中に入ると一人の女性がいた。女の子と同じ髪の色、しかしその髪は腰のあたりまでと長い。それをストレートで流している。
ふむ、おそらくこの人がお母さんなのだろう。しかし・・・歳の離れた姉と言われても全然違和感がないくらい綺麗だ。
おれの母さんもかなり見た目が若いが、これはいい勝負なんじゃないだろうか。なんの勝負かは知らんが。
「ども」
「・・・ただいま」
ここまで来ればさすがに逃げ出したりはしないだろう、そう思い手を離しながら軽く挨拶をする。
「桃子? どうした?」
「母さん?」
そう言いながら奥から今度は男性が二人、そして女性が一人出てくる。
先頭のこの子のお母さん、『ももこ』さんの名前を呼びながら出てきたのがお父さんなのだろうがこれまた若い。貫禄があるため兄とは言えないが、その貫禄と相まってかなりのカッコよさだ。
後ろに続いている二人のうちの父と同じ短髪の男性はこの子の兄、その隣の眼鏡をかけ髪を後ろで三つ編みにしている女性は姉といったところか。二人ともお父さんと同じ黒髪をしている。
おそらくこれで家族全員が揃ったか。それで一つ思ったことがあるのだが、ここまで美男美女しか出てきていない。どうなってんだこの一家は、芸能人でも輩出するつもりか?
っといやいや、おれはんなバカなことを思うためにわざわざここに来たのではない。
向こうではなにか話しているみたいだが・・・あ、こっち向いた。全員おれを見ている。兄とおぼしき男性はちょっと睨んできていてその・・・こえぇ。
「えっと、君は?」
「実は皆さんに言いたいことがありまして」
「言いたいこと・・・?」
「ええ。この子なんですが、ついさっき公園であったんですよ。たった一人でポツンとブランコに座っていましてね」
「・・・一人で?」
「それで気になったのでどうしたんだと聞くと、家族が忙しそうだから外で待っているのだと言っていました」
「そんな・・・でも出ていくときは友達と一緒だからって・・・」
そういいながら驚きを隠せないでいるこの子の母。この様子から見るにまったく知らなかったようだ。
この子の父たちも大なり小なり驚いているようなので、全員気付いていなかったということなのだろう。
「そのあとおれに笑って見せてくれたんですが、おれにはその笑顔はどうにも無理しているようにしか見えなかったんですよ」
「無理・・・」
「あんな笑顔をさせる家族はどういった人たちなのかとこうして見に来たんですけど、どうやら誰もこの子の無理には気が付いていなかったみたいだな?」
「「「「・・・・・・」」」」
誰もなにも言わない、少し重たい空気が流れる。話している途中でちょっと腹が立ってきていたため少し言葉が荒くなってしまった。クールダウン、クールダ・・・
「あの・・・もういいから・・・」
そういいながら服の腕の裾を控えめに引っ張ってくる彼女。
別にこの子のためを思ってとか、そんなたいそうな気持ちでここまで来たわけではないのだが、そんなことをされれば逆にイラっとしてしまう。
「あのな、君にも問題があるんだからな?」
「ふぇ?」
「どうして何も言わなかった? そんなに辛そうなのに抱え込んでさ。なんでだ?」
「それは・・・みんな忙しそうだし、迷惑になると思って・・・」
「それがおかしいって言ってんの。あんなほとんど完璧な笑顔をするようになってまで抱えるものじゃないだろ?」
「でも・・・」
「でもも体験版もあるか。家族は頼るために居るんだよ。こうして君の家族を見る限り、誰も君を見捨てるような真似は絶対にしない、そう言える人たちじゃないか」
「どうしてそこまで言えるの?」
「別にこれといった理由はないよ。まあひとつ言うならばお兄さんがおれを睨んでたからか? 多分おれが君に何かしたんじゃないかと思ったんだろうな」
「お兄ちゃんが・・・?」
「ほう、気付いていたのか」
「そりゃ、思いっきりこっち見てましたしね。はっきり怖かったですよ」
ちょっとおどけて言う。でも本当に怖かった。
「みなさんもですよ。この子の笑顔は完璧で気付きにくいものだと思いましたけど、それでもよく見てれば分かったはずでしょう」
「そうだな・・・確かに俺達はちゃんと見ていなかった。自分たちの忙しさにかまけて・・・自分の子なのにな」
「うん・・・そうね」
表情を曇らせ申し訳なさそうに言う親二人。兄妹の二人も同じような表情をしている。
うん、これならもう大丈夫そうだ。みんなこの子のことをちゃんと見てくれるだろう。ここまで来た甲斐があったというものだ。
「とりあえず、おれが言いたいのは君はもっと家族に自分の思ってることを正直に話せってこと。皆さんはもっとこの子のこと見てやれってこと。そんだけです」
おれの中にあった言いたいことは言えた、あとはこの人たち次第でおれの出る幕はないだろう。完全な赤の他人なのでここまででも十分に出しゃばっているが・・・
「それじゃ、おれはこれで」
「ま、待って!」
ちらりとお店の壁に掛かってあった時計を見ると随分と時間が経っている。そろそろ帰らないと母さんが何しでかすか分かったもんじゃないので出て行こうとするが、呼び止められる。
いままで小さめの声でしかしゃべらなかった女の子が急に大きな声で言ってきたので、ちょっとびっくりして振り返る。
「あ、えっとその・・・あの・・・」
すると打って変わっておどおどし始める。何か言わなきゃと思っているけど言葉が見つからない、そんな感じだろう。
だからおれは少し笑って言う。
「今度笑うときは、心から楽しいときだけにしてくれよ」
「う、うん!」
彼女も少し笑いながら答える。まだぎこちないがあの公園で感じた悲しさや寂しさはそこにはなかった。
「それじゃあな」
そう言いながら今度こそおれは店を後にするのだった。
すっかり暗くなった道を歩きながら今日のこと、正確には公園からのことを思い返していると
《はぁぁぁ・・・》
頭の中にとてつもなく大きなため息、それも女性のものが響いてきた。おれの周りには人影はなく、ならば幻聴かと思われるがそうでもない。
普通なら慌てふためくところだが慌てず騒がず、ただ少し顔をしかめながら返事を返す。
《んだよ、大きなため息つきやがって》
《だってそうでしょう? 普通知り合って10分も経ってない人の家庭事情に首つっこみます?》
《しょうがないだろ、やらなきゃいけないと思ったんだから》
《それがおかしいんですよまったく・・・》
やれやれと言わんばかりに呆れるその人・・・いや、人ではないな。
そう考えながら首に掛かっている紐を引っ張りながら、さっきまでは服の内側に入れて隠していたマリンブルーの丸いクリスタルを取り出す。
実はずっとペンダントとして首から下げていたのだ。服の内に入れていたのであの子たちは気付くわけがなかったのだが。
その頭に響く声はそこから発せられている。なんでもこれは『念話』というらしい。
《そんなことだからお母様からは『超』がつくほどのお人好しって言われるのですよ》
《悪かったな、でもこれがおれの性格なんだよ諦めろ》
《別に悪いとは言ってませんよ。むしろそんなマスターが私は大好きです///》
おそらく顔があったら赤くなりながら言ってるじゃないだろうか。ちなみにマスターというのはおれのことだ。
《はいはいありがとよ》
《もっと感謝しながら言ってほしいものですね、そうしたら呆れた感じの返事をしますのに》
《適当に流して正解だったよ》
《でも本当に物好きですよね、あの女の子に名前すら聞かずにずんずん進んでいくんですから》
《・・・・・・あ》
そういえば名前をまったく聞いてなかった。それどころか自分の名前さえ名乗っていない。
《もしかしてマスター、素で忘れてたんですか? わざとじゃなくて?》
《・・・・・・・・・》
《ほんとこの人は・・・はぁぁぁぁぁぁぁ》
最初よりもさらにでかいため息をつかれるが今度は反論はできなかった。なにせ自分でも自分に呆れていたから・・・
高町なのは Side
今日はものすごいことがあったの。
私はいつも通り公園のブランコ座っていた。寂しいって、心の中で何度も繰り返しながら。
「寂しい・・・よ・・・」
少し声にも出してみる。でももちろん誰に届くわけでもない。だってこの公園には誰もいないのだから・・・
お父さんやお母さんはお店の切り盛りで忙しく、お兄ちゃんやお姉ちゃんもその手伝いなんかで私に構ってる時間なんてなかった。
私はそれを分かっていたし、迷惑にならないようにこうして外に出てお店が落ち着くまで一人でここで過ごすのが私の日常だった。
もちろん寂しいし悲しかったけど、それを顔に出したらみんなが困るから笑うようにして・・・・
そんな風に思うともっと悲しくなって俯いてしまう。そうしていたら急に誰かに話しかけられた。
「よっ、こんな時間に何してるんだ?」
「え・・・?」
顔を上げるとそこには見知らぬ男の子が立っていた。
歳は私と同じくらい? 少し茶色の混じった黒髪、瞳も同じ色をしているの。男の子には悪いと思うけどとても綺麗だと思った。
どうやら一人で座っているの見かけて心配してくれたらしいの。優しそうな人でちょっと安心。
少し話しをしていると家の話題になった。事情が事情なので、心配させまいと笑いながら言葉を返す。
なんてことはない、いつも通りの笑顔で言う。
「どうして、そんな風に笑ってるんだよ・・・」
「え?」
「そんなに悲しそうにしてるのに、なんでそんな風に笑うんだ・・・?」
「っ!?」
どうしてばれたのか、どうして分かったのか。その時のことは混乱していてあまりよく覚えていない。
そうこうしているうちに、男の子は何かを決めたような表情になり言った。
「よし、んじゃこれから君の家に行こう」
「ふぇ?」
「ほら、立って立って」
「え? え?」
いきなり手を取られてさらに混乱する。いきなりすぎて頭がついていかなかった。
家に着いて、そこからはトントン拍子で話が進んでいったの。
男の子が私の心の中にしまっていたものを、本当は言いたくて仕方がなかったことを言ってくれて。止めようとしたけど、逆にちょっと怒られて。
「とりあえず、おれが言いたいのは君はもっと家族に自分の思ってることを正直に話せってこと。皆さんはもっとこの子のこと見てやれってこと。そんだけです」
そう締めくくって家から出て行こうとする。何故かは分からないけど呼び止めなくちゃいけない気がした。
「それじゃ、おれはこれで」
「ま、待って!」
自分でも驚くほど大きな声が出た。男の子だけじゃなくてお母さんたちもびっくりしている。
そういえば呼び止めたはいいけど何を言えば? ありがとう・・・は違う気がするし、ええっとええっと・・・
「あ、えっとその・・・あの・・・」
どうしようかと言いあぐねていると、男の子はちょっと笑って言ってくれる。
「今度笑うときは、心から楽しいときだけにしてくれよ」
「う、うん!」
私も笑えていた気がする。わざとじゃない、自然な笑顔で・・・
その子が帰った後はみんなが私に謝ってくれて、私は泣きじゃくりながらお母さんに抱きついた。
そうして少し落ち着いてから、お母さんが聞いてくる。
「そういえばなのは、あの子は結局誰だったの?」
「そうだ、誰だったんだ?」
「うん、その公園で会ってそれで・・・あっ!」
「どうした?」
「お名前、聞くの忘れてたの・・・」
今頃になって気付いたけれど、お互いに名前を言い合ってなかった。いろいろありすぎてすっかり忘れていたの・・・
「そうか・・・それじゃあお礼を言うこともできないな」
「そうね・・・」
そう言いながら残念そうな顔をするお母さんとお父さん。うぅ、ごめんなさいなの。
「でもパッと見た感じなのはと同い年くらいだから、小学校とか一緒になるんじゃない?」
「そうだな、その可能性は低くない」
そう言ってくれるお兄ちゃんとお姉ちゃん。確かに年齢は同じぐらいだったしもしかしたら!
「そうかな・・・うん、そうだね! その時は必ずうちに連れてくる!」
「そう・・・。頼んだわね、なのは」
「任せてなの!」
いつ会えるかは分からないけれど、もしかしたらもう会えるか分からないけれど、今度会ったら絶対に、必ず言おう。
今日のことの感謝の気持ちと、私の名前『高町なのは』っていう名前を!
...Side out
この世の中には『魔法』と呼ばれるものが存在している。
といってもおれも母さんから少し話を聞いただけで詳しくは知らない。でも、存在している。
実際に母さんの使ってるところを見たし、その息子であるおれも使える。念話も魔法の一種だ。
しかし、ここでは魔法は空想の産物でしかなくおいそれと使っていいものではないらしい。じゃあなぜあるんだと思うが、残念ながら母さんは詳しく教えてくれなかった。
そもそも『ここ』というのはどこまでの範囲なのか・・・
まあそれは置いておくとして、魔法を使う人たちは『デバイス』という物を持っている。デバイスというのは魔法を使う時の補助の機械。
おれのはこのペンダント、正確にはマリンブルーのクリスタル部分のやつがそれだ。
デバイスにも様々な種類があるが、おれのはインテリジェントデバイスと言われるものだ。
自分で考え行動することができる、所謂超高性能AIと言ったところだろうか。当然作りが複雑になり、高価なものになるそうだ。
しかしそんな高価で貴重なデバイスの中でもおれの相棒、名前はエリシュオン(おれと母さんは愛称で〝エリス〟と呼んでいる)というのだが、それはさらに貴重かつ変り種だと母さんは言っていた。
次世代型インテリジェントデバイス、その試作機。
どうやったのかはさっぱり分からないが母さんがプログラムを組み、作った。パーツうんぬんは企業秘密。
なんでも性格や心があり、まるで普通の人と接しているかのような会話が可能なのだ。どんなものかというのは先ほどの念話から理解できるだろう。
他にもいくつか機能を有しているが、それはまあ今はいいだろう。
ともかく、この魔法のおかげで(いや、せいで?)おれの日常は他の人とはちょっとばかし違う。
それでもこれがおれの日常で、いつも通りの毎日。
おれにとって魔法は、特にこれと言って気にするでもないこと。いずれ大人になって社会に出れば使っていくこともないだろうと思っているぐらいのもの。
だけどあの日、あの瞬間を境にそれは大きく変わっていく。
魔法っていうものの存在を知った時に、それはもう決まっていたのかもしれない。
あるいは、あの寂しそうに笑っていた女の子に出会ったときに決まったのかもしれない。
でも今のおれはそれを知るすべもないわけで。
これは長い長い旅路への始まりという名のプロローグ・・・
〝魔法少女リリカルなのはFH〟
始まります
ご意見ご感想のほどお待ちしております。
やたら主人公の精神年齢が高いですが一応理由はあります。
それが分かるのはかなり後の方ですが・・・