魔法少女リリカルなのはFH   作:ワンダバ

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009 大きく動き出す状況

 

「ここでの戦闘は危険すぎる―――時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ! 詳しい状況を聞かせてもらおうか!」

「時空……管理局……?」

 

 なのはとフェイトの動きを止めて割り込んできた黒服の男。時空管理局……どんなものかは分からないが、おそらく警察的な何かなのだろう。

 しかし一体どこから来たんだ? 空中から突然現れたように見えたんだが。

 

「まずは2人とも武器を引くんだ」

 

 警察的な組織ならばしょっ引かれる可能性もないわけじゃない。無断での魔法の行使とかすごくありそうだ。これからのことを考えると憂鬱だ……

 

 

 009 大きく動き出す状況

 

 ひとまず全員で地上へと降りる。その間も時空管理局の……名前はなんだったか、まあとりあえず彼は警戒を解いてない。

 

「このまま戦闘行為を続けるなら………っ!!」

 

 話している途中、突如空中へ視線を向ける。そちらからはオレンジの魔法弾が飛んできている。その数は3発。彼は左手をその方向へかざしラウンドシールドを展開、魔法弾はすべて弾かれる。今の一瞬でこれだけのシールドを張れるというのは、戦闘を止めに来ただけあってかなりのやりてだな。

 魔法弾の飛んできた方向へ目を凝らすと、そこにはアルフ。引き続き魔法弾を撃つ態勢に入っている。

 

「フェイト、撤退するよ! 離れて!」

 

 少し迷った様子を見せた後、上空へと飛ぶフェイト。それを確認した後にアルフが魔法弾を撃ち込んでくる。しかし回避だけならバックでいいはず。上空へ飛んだってことは!

 なのはと時空管理局の彼はバックで回避するが、おれはフェイトを追いかけるように空へと上がる。フェイトの目的はジュエルシードだ。いろいろと状況はごたついているが、あれを渡すわけにはいかない。

 おれの方が後から飛んでいるためこのままでは追いつけない。ならば!

 

「エリス!」

「Air bullet!」

 

 ライオットトリガーをフェイトの方へ向け、空圧弾を4発ほど飛ばす。少しこちらを向き、すぐさま回避行動をとるフェイト。でもそれでいい、おれの目的は当てることじゃない。

 彼女が回避をしたことにより若干スピードが落ちる。それを見計らってクワイエットウィングを羽ばたかせ、加速する。フェイトを追い越す瞬間、バルディッシュをこちらへ振ろうとしてくるが―――

 おれとフェイトの間を通るように青色の魔法弾が飛んでくる。その攻撃は完全に無警戒だったらしく、何発かかすったのかバランスを崩して地上へと落下していく。

 

「なっ!? くそっ!」

「フェイト!!」

「フェイトちゃん!」

 

 慌てて手を伸ばすが、その手は空を切り彼女の手を掴み損ねる。あわや地上へ激突するという瞬間に、ギリギリでアルフが滑り込んで受け止める。あ、焦らせやがって・・・。

 さっきの攻撃を行ったのは間違いなく時空管理局の彼だ。そちらへ顔を向けるとデバイスを構えており、追撃の姿勢を見せている。さらに攻撃を加えるつもりか!?

 

「ダメ!!」

「っ!?」

「やめて!! 撃たないで!!」

 

 射線上になのはが入り、フェイトをかばう。あのバカ! またあんな無茶を! 彼はその行動に一瞬気を取られる。止めるなら今しかないだろう。まさかなのはごと撃つとは思はないが、念のためだ。

 再び背中の羽を羽ばたかせ、彼のところまで行きデバイスを掴む。

 

「止せ! これ以上の追撃はちょっとやりすぎだぞ!」

 

 こちらを睨んでくるが、怯まずにおれも睨み返す。これでもフェイトとは浅からぬ仲なのだ。いきなり来て好き勝手にやられるのはおれとしても面白くない。

 

「逃げるよフェイト。しっかり掴まって!」

 

 森の向こう側へと消えていく2人。ちらりと確認したが、フェイトはかなりダメージがあるようだ。そんな直撃したようには見えなかったが、どうしたのか。

 ともかくおれは彼のデバイスを離し、ともに地上へ降りる。

 

「やれやれ、やってくれたな」

「2人がぶつかるのを止めてくれたのは感謝するが、あれ以上は黙って見てられなかったんだ」

「ともかくジュエルシードは回収させてもらう」

「ああ、それは構わないぞ。と言ってもこちらに権限なんてないようなもんだとは思うが。なのはもそれでいいよな?」

「う、うん」

 

 ジュエルシードを手に取る彼。しかし、これからどうすればいいのやら。そう考えていると空中に突然魔方陣が現れ、そこに女の人の顔が映る。なんだろう、モニターかなにかか?

 

「クロノ、お疲れ様」

「すみません。片方は逃がしてしまいました」

「うーん、まあ大丈夫よ。でね? ちょっと話を聞きたいから、そっちの子たちをアースラに案内してあげてくれるかしら」

「了解です、すぐに戻ります」

 

 話が終わり、魔方陣は消えてしまう。彼―――クロノって言われてたよな? クロノがこちらを見ている。

 

「そういう訳でご同行願いたいんだが」

「えーと……」

「拒否権は?」

「無いわけじゃないが、おススメはしない」

「だよなぁ」

 

 なのはとアイコンタクトを取る。コクリと頷いたので問題はなさそうだ。おれ達はクロノに連れられて、魔方陣をくぐる。

 少し眩しい光が身を包み、次の瞬間にはおれ達はまったく見たこともないような場所へと移動していた。地面には光のラインのようなものが走っており、周りは結構薄暗い。なんかSF映画とかでありそうなところだ。魔法で散々ドンパチやっておいて今さらSFも何もないんだが。

 クロノが歩いていくので、それにおっかなびっくりついていく。ユーノはいつの間にかなのはの肩から降りて横を歩いている。

 

《ユーノ君、ここっていったい》

《時空管理局の次元航行船の中だね》

《つまり?》

《簡単に言うと、いくつもある次元世界を自由に移動する。そのための船》

《あんま簡単じゃないかも》

《むしろさっぱり分からんな。あとなのは》

《……何?》

《バリアジャケットの腰のあたりを掴むのやめてくれ、歩き辛い》

《あ、ごめん……ダメかな?》

 

 そう言ってちょっと上目遣いでこちらを見てくる。うぐ……そんな風に言われると断れない………

 

《いやまあ、いいよ……》

《うん、ありがと》

 

 甘いというかちょろいな、おれ。空気に耐えられずに強引に話を逸らすことにする。

 

《えーと、ユーノ。説明をもう少し噛み砕いて言えないか?》

《あー、うん。えーっとね……なのはや雪道が暮らしている世界のほかにもいくつもの世界があって、僕たちの世界もその1つで、その狭間を渡るのがこの船で、それぞれの世界に干渉し合うのを管理してるのが彼ら時空管理局なの》

《そうなんだ》

《分かったような、分からないような》

 

 自分なりに解釈しようと考えながら歩く。難しく言われているけどつまり、おれ達の世界ってやつを日本とすると、その他の世界は外国、船は海を渡るもので、時空管理局についてはまあ……今は最初に思った感じでいいか。

 そうこうしている間に自動扉の様なものを通り抜け、そこでクロノがこちらを振り返って話し始める。

 

「ああ、いつまでもその恰好というのも窮屈だろう。バリアジャケットとデバイスは解除して平気だよ」

「あ、そっか。そうですね」

「じゃあ、そうさせてもらいますか」

 

 おれ達はバリアジャケットを解除して学校の制服姿へ戻る。

 

「君も、元の姿へ戻ってもいいんじゃないか?」

「ああ、そういえばそうですね。ずっとこの姿でいたから忘れてました」

「おいおい、自分の姿を忘れてるんじゃないだろうな?」

「まさか。それはないよ」

 

 おれの冗談に笑って答えた後、ユーノの周りが緑色に輝き始める。光が収まると、クリーム色の髪に緑色の瞳の少年が現れる。へぇ、これがユーノの本来の姿か。

 

「ふぅ、なのはにこの姿を見せるのは久しぶりになるのかな? 雪道は初めてだよね」

「まあな。ふぅん、それが本来の姿か。声からそれとなく想像してたけど、おれ達と同年代ってとこか」

「そうだね」

 

 まじまじとユーノの姿を見てしまう。それにしてもなんかさっきからなのはが静かだな。そう思いそちらを見ると、指をさしたまま固まっている。なんだ?

 

「なのは? どうかしたか?」

「ふぇえええええええ!?」

 

 急に叫びだすなのは。なに!? 何事なの!? あ、ちょっとなのはの口癖移ったかも。いやそうじゃなくてだな……!

 

「なのは?」

「どうしたんだ急に!?」

「ユーノ君ってユーノ君ってあのその! だって! 嘘!? えええええ!」

「君たちの間で何か……見解の相違でも?」

 

 見解の相違―――ああ、なのはのこのリアクション。これから導き出される答えなんて1つしかないだろう。

 

「ま、まさかとは思うけどなのはお前……知らなかったのか?」

「えと、なのは……僕たちが初めて会った時ってこの姿じゃ?」

「違う違う! 最初っからフェレットだったよ!」

 

 腕を組んで考え始めるユーノ。なんだろう、某トンチを利かせるお坊さんが考える時の木魚の音が聞こえてくるような。あ、思い当たったらしい。チーン!って音が聞こえた気がするな。

 

「あー! そうだそうだ! ごめんごめん、この姿は見せてなかった」

「だよね? そうだよね? びっくりしたぁ」

「いやでもさ、しゃべる動物なんているわけないんだしさ。アルフ見た時点てそれとなく予想つくだろ?」

「そう言われてもぉ……」

「んっんん! ちょっといいか?」

 

 横からわざとらしく咳払いして歩いてくるクロノ。存在忘れてたわ。

 

「君たちの事情はよく知らないが、艦長を待たせているのでできれば早めに話を聞きたいんだが」

「あ、はい」

「すみません」

「ではこちらへ」

 

 そう言って再び歩き出す。さっきので緊張はほぐれたのか、もうなのははおれの服を掴んでいない。

 しかしでかいなこの船……あちこち見ながら歩いていると、1つの扉の前で止まる。おそらく艦長と言われてる人の部屋だろう。

 扉が開き、中へと入る。

 

「艦長、来てもらいました」

「あ……」

「へ……?」

 

 そこには盆栽、茶道用の茶釜、ししおどし、畳みに緋毛氈、大きい和傘まである。何これなんで和風?

 そして部屋の中心には公園のあのモニターの中に映っていた緑色の髪の女性。この人が艦長なんだよな? つっこみどころが多すぎる。

 

「お疲れ様。まあ3人ともどうぞどうぞ、楽にして?」

「はぁ」

 

 ともかくつっ立っているわけにもいかないので、靴を脱いで緋毛氈の上へあがらせてもらう。

 おれ、なのは、ユーノの順番で艦長さんの前へと座る。クロノは艦長さんの隣へ座った。なんとなくこの上に上がると何故か正座しないといけない気がする。

 

「どうぞ」

「あ、は、はい」

「抹茶に和菓子……」

 

 何故? 何故こんな時空間とかいうぶっ飛んだとこまで来て改めて日本を味わってるんだ? つっこみたい……でもそんな場合でもないよな。つっこんだら負けだ。

 ともかくこちらの事情を一通り話すことになる。全面的に説明はユーノに任せることにした。

 

「なるほど、そうですか。あのロストロギア―――ジュエルシードを発掘したのはあなただったんですね」

「それで、僕が回収しようと……」

「立派だわ」

「だけど、同時に無謀でもある!」

 

 クロノにそう一括されて俯き落ち込むユーノ。ちょうど話が途切れたので、こちらも分からないことがあるので聞かせてもらうか。ユーノのフォローはなのはに任せる。

 

「あの、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」

「何かしら?」

「フェイト……金髪のあの子も言ってたんですけど、ロストロギアってなんなんですか?」

「あぁ、異質世界の遺産……って言っても分からないわね。えっと―――」

 

 艦長さんが話してくれた内容はこうだ。

 この時空間には数えきれないほど沢山の世界がある。その世界はそれぞれ独自の発展をするのだが、中には稀に発展しすぎる世界が誕生するらしい。そうした中で、行き過ぎた技術や科学によってその世界が滅んでしまい、取り残された滅んだ世界の技術の遺産。それらを総称してロストロギアと呼んでいるという話だ。

 使用方法は不明、しかし使いようによっては世界どころか次元空間すら消し去ってしまうこともあるらしい。なんともスケールの大きい話だ。

 そんでもっておれ達が探しているジュエルシードは、次元干渉型のエネルギー結晶体とか言うもの。いくつか集めて特定の方法で起動させれば次元震、はては次元断層も引き起こすらしい。

 

「その次元震ってのは?」

「君とあの黒衣の魔導師がぶつかった時に発生した振動と爆発、あれが次元震だよ」

 

 なのはの方を見ながら話すクロノ。てことは昨日のあれか。確かにあの爆発は凄まじかった。

 

「たった1つのジュエルシードの、全威力の何万分の一の発動でもあれだけの影響があるんだ。複数個集まって発動させたときの影響は計り知れない」

「あ、あれで何万分の一なのか!?」

 

 そりゃ21個もあるうちの1個が発動しただけなんだからそこまでじゃないとは思っていたけど、まさかそこまでとは。全部集まったら世界とか簡単に吹き飛ばせそうだ。

 

「聞いたことあります。旧暦の462年、次元断層が起こった時のこと」

「ああ、あれはひどいものだった……」

「隣接する平行世界がいくつも崩壊した、歴史に残る悲劇……」

 

 想像すらつかない。どうやらとんでもなく危ないものを取り合っていたようだ。下手したらおれ達の世界は今頃なくなっていたかもしれない。

 

「繰り返してはいけないわ」

 

 そういいながら抹茶へ角砂糖を投入。うん、もう驚かないよおれ。そのまま一口飲む艦長さん。美味しいんだろうか……?

 

「これよりロストロギア、ジュエルシードの回収には時空管理局が全権を持ちます」

「君たちは今回の事は忘れて、元の世界に戻って元通りに暮らすといい」

「でも、そんな」

「次元干渉に関わる事件だ。民間人に介入してもらうレベルの話じゃない」

 

 確かにそうだ。今の話を聞いただけでもかなり危険だってことくらい誰にだって分かる。プロに任せておれ達は引くべきなんだろう。だけど―――

 

「でも!」

「落ち着けなのは。ここで押し問答したって意味ない」

「雪道君……」

「まあ急に言われても気持ちの整理もつかないでしょう。一晩ゆっくり考えて、3人で話し合ってそれから改めて、お話をしましょう?」

「送って行こう。元の場所でいいね?」

「「はい(あぁ)……」」

 

 そうしておれ達はアースラを後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 再び公園へ戻ってきたおれ達。日は先ほどよりも傾き今にも日が暮れそうになっている。

 

「とりあえず、帰ろうぜ」

「うん」

 

 と言ってもユーノはまだフェレットの状態に戻っていない。帰るに帰れないな。

 

「うーんと、同い年くらい?」

「あ、うん……多分。もしかして怒ってる? そんなつもりじゃなかったんだけど」

「ううん。びっくりはしたけど、それだけだよ?」

「その、ごめん」

「バッカ、いいって言ってるんだからそうじゃないだろ?」

「うん……ありがとう」

 

 そう言い直して、笑いあう。うん、こうしてると気持ちも紛れるな。しばらくしてユーノは目を瞑り、フェレットの状態へとなる。そしてなのはの肩へ乗る。

 

「とりあえず、普段はこっちの姿でいるほうが便利そうだから」

「うん、そうだね」

「一旦家へ帰って晩御飯食べて、それから考えようぜ」

「うん、これからどうするか……ちゃんと考えないといけないね」

 

 これからどうするか。ゆっくりと考えながら、おれ達は家への帰るために歩き出す。あ、そうだ。この雰囲気とかに流されて忘れそうになってたけど1つ、なのはには文句を言わなければ。

 

「なのは」

「うん? なに?」

「クロノが介入してくる前のフェイトとのやり取り、あれどういうことだよ?」

「え? あぁ……」

「それは僕も聞きたいかな。朝の話の感じとはなんか随分と違う感じだったけど」

 

 そう。今日の朝の念話でなのはは、フェイトとちゃんと話し合いたいと言っていたのだ。だというのにあの急激な熱血展開だ。多分おれじゃなくたってびっくりするだろう。

 

「うーんと、いろいろ私も考えたんだけどね……アルフさんが言ってたことが気になって」

「アルフの?」

「それでね? どうやったら話してもらえるようになるのか考えて、まずは対等の関係というかなんというか……ともかくフェイトちゃんに認めてもらわないといけないって。そう思ったの」

「それで闘いに勝ったらってわけか」

「理屈は分からないでもないけど……」

 

 あのまま話を切り出してもフェイトはおれ達の話を聞いてくれる可能性は低かった。というかなかっただろう。となればなのはの『拳で語り合おうぜ理論』は分からないでもない、むしろそっちの方がいい気がしてくる。なんか感化されて気がするけど。

 

「雪道君はどう思う?」

「そうだな……あのまま話し合っても無駄になりそうなのはこれまでのことから分かってはいるからな。だから悪くはない、と思う」

「ほんと?」

「ああ。でもまあそれは1度家に帰ってからにしようぜ。ジュエルシードのこともある」

「それもそうだね。あ、それじゃ私たちはこっちだから」

「おう」

 

 家での分かれ道まで来たので手を振ってそれぞれの家へ歩き出す。

 ジュエルシードと時空管理局、それからフェイトとのこと。

 一度きっちり整理しておかないとな。

 

 

 

 

 

 

 クロノ・ハラオウン Side

 

 3人が去った後、アースラのモニタールームへ行き先ほどの戦闘をモニターで再び見る。アースラのクルーであるエイミィも一緒だ。

 

「すごいや、どっちの女の子もAAAクラスの魔導師だよ!」

「ああ」

「こっちの白い服の子はクロノ君の好みっぽい可愛い子だし」

「エイミィ! そんなことはどうでもいいんだよ」

 

 彼女とはそれなりに長い付き合いだが、たまにこんな風にからかってくるのでどうも面倒だ。もう慣れてはいるのだが。

 

「魔力の平均値を見ても白い子で127万、黒い服の子で143万! 最大発揮値はその3倍以上! 魔力だけならクロノ君より上回っちゃってるねぇ」

「魔法は魔力値の大きさだけじゃない。状況に合わせた応用力と、的確に使用できる判断力だろ?」

「それはもちろん! 信頼してるよ、アースラの切り札だもんクロノ君は」

「…………」

 

 自分で煽っておいて調子のいいことばかり……文句は山の様にあるが、ここでいちいち反論していてはきりがないのでぐっと言葉を飲み込む。

 

「でもって、クロノ君の言葉通りのことをやってる紅い服の子もなかなかだね。魔力値は2人と見比べるとちょっと残念だけど、魔法の扱いが上手いよね」

「確かにそうだな」

 

 紅い服の彼―――雪道と言っただろうか? 彼の判断力はなかなかのものだ。魔力値で圧倒的に劣っているにも関わらず2人に遅れを取っていない。先ほどもジュエルシードを確保しようと飛んだ黒服の子を必要最低限の魔法で止めて見せていた。瞬時の状況把握と判断ができなければできない芸当だ。

 そうして3人の分析を続けていると扉をくぐり、自分の母でもあるこのアースラの艦長、リンディがこちらへ歩いてくる。

 

「あ、艦長」

「ん? あぁ、3人のデータね」

「はい」

 

 リンディ艦長はモニターを見上げわずかに手に力を込める。

 

「確かに、すごい子たちね」

「これだけの魔力がロストロギアに注ぎ込まれれば次元震が起きるのも頷ける」

「あの子たち……なのはさんとユーノ君、それから雪道君がジュエルシードを集めている理由は分かったけど。こっちの黒い服の子はなんでなのかしらね?」

「随分と必死な様子だった。何かよほど強い目的があるのか」

 

 手を顎に当てて考える。このジュエルシードは使用者の願いを叶えると言われている。そこまでして叶えたい願いがあるのだろうか?

 

「目的……ね。まだ小さな子よね。普通に育ってればまだ母親に甘えていたい年頃でしょうに」

 

 そう、彼女はまだ幼い。ここまでの危険を冒してまでしたいこととはなんなのか。モニターで戦う彼女を見ながらいろいろと思考を巡らせてみるが、もちろん分かるはずもなかった……

 

 

 Side out...

 

 

 

 

 夜、家に帰ったおれは家事などもそこそこにして家を空ける準備をしていた。帰った後一度なのは達と念話をし、今後についてどうするか話し合った。と言ってもおれ達の答えなんて話し合うまでもなく決まっているのだが。

 ユーノがアースラの人達と話をつけ、事が終わるまでは時空管理局に身を置くことと、指示には絶対に従うことを条件に今回のジュエルシードの事に改めて関わらせてもらうことになった。

 身支度をしつつ、今はなのはが家族を説得し終わるのを待っている。家を空ける以上はある程度話す必要があるわけだが、その辺りはなのは次第だ。

 

「なのはさん、大丈夫ですかね……」

「さてな。全部が全部話せるわけじゃないし、成功を祈るしかないな」

 

 基本的に1人暮らしのおれは気楽なものだけど、普通なら意味の分からないことをと引き留められるものだ。頑張れなのは。

 

「よっし、身支度はこんなもんか」

「そうですね。あとはしっかりと戸締りするだけですね」

 

 荷物を詰め込んだバッグを肩に吊るし、家を出てしっかりと戸締りをする。見て回って鍵がどこも空いてないことを確認。確認が終わったぐらいのタイミングでなのはから念話が入った。

 

《雪道君、今大丈夫?》

《おう、大丈夫だ。どうだった?》

《うん。お母さん分かってくれて、送り出してくれたよ。これから家を出るところ》

《そっか。そりゃ何よりだ》

 

 とりあえず今最大の懸念は払しょくされた。本当によかった。ユーノの話ではアースラへは再び夕方のあの公園から乗るという話だ。今日分かれた場所で一旦落ち合おうと話をし、念話を切る。

 家を出て歩き出し、合流場所へ着く。するとそこにはもうなのはの姿があった。肩で息をしているが、走って来たのか?

 

「悪い、待たせたな。ていうか走って来たのか?」

「うん、なんだか急がないといけないような気がして」

「なんだそりゃ。まあこっからは歩いて行こうぜ」

「うん」

 

 なのはと並んで歩き出す。しばらく会話はなかったが、なのはの方から話を切り出してくる。

 

「あのね、今日家に帰ってる時に話してたことなんだけど」

「ん? というとあれか、フェイトと闘って認めてもらうってやつか?」

「そう。雪道君は悪くないって言ってたけど、なんだか他に考えてるような顔してたから」

「あー、まあな」

 

 あの時言っていたなのはの『拳で語り合おうぜ理論』は確かに悪くはないと思った。フェイトとはこれまで何度も対立してきたし、これ以上ないほどには分かりやすい方法だとは思う。しかし―――

 

「悪くはないんだが、少し問題点があるな」

「問題点?」

「これまでフェイトとは2対1で戦ってきただろう? そうしないとまるで歯が立たなかったからな」

「そうだね」

「でだ。今回この案を採用するにあたって一番重要なのは、戦って勝って認めてもらうこと。でも2対1でやったんじゃ卑怯っぽいだろ?」

「うーん、確かに。それじゃ認めてもらえないかもなの」

 

 そうなのだ。認めてもらわないといけないということは、真正面から正々堂々ぶつかって勝利をもぎ取らないといけない。だというのに2対1という数で有利な状態でやったのではとてもじゃないが認めてもらえないだろう。

 

「じゃあどうすれば?」

「まあそれは。決まってるようなもんだろ」

「え?」

 

 戦って相手に認めてもらう。そんなシチュエーションは様々な話の中でいろいろとある。いろんな形であるものの、今も昔も結局のところ根っこの部分はそう変わってない。この場合やるべきことはたった1つ。

 

「1対1のタイマン……だな」

 

 

 




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