魔法少女リリカルなのはFH   作:ワンダバ

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011 胸に誓いを込めて

 

 先ほどの嵐などは嘘のように不穏な空は晴れ、アルフが目くらましのために起こした水しぶきもおさまり辺り一帯は静けさを取り戻していた。

 フェイト達がこの場から立ち去った後もおれ達は動かずに立ち尽くしている。一度いろいろなことが起きすぎて正直処理が追いつかない感じだった。

 

《4人とも、戻ってきて》

《了解》

 

 リンディさんからの通信が入り、帰還命令が下される。結局今回もまた、フェイトと話すことすらできずに終わってしまった。共闘して少しは話せるチャンスだと思ったのだが。

 しかしフェイトの言っていた『母さん』という言葉がどうにも気になる。あれは一体どういう意味だったのか。

 

《それで……なのさんと雪道君、それからユーノ君には私直々のお叱りタイムです》

《《《うぅ、はい……》》》

 

 完全に忘れてた。お叱りは後程って言ったし仕方がないよな……はぁ………

 

 

 011 胸に誓いを込めて

 

 アースラのブリーフィングルームに呼び出されたおれ達はリンディさんからお叱りを受けている。おれ達は3人並んで立ち、デスクを挟んだ反対側にリンディさんがいる。

 

「指示や命令を守るのは個人のみならず、集団を守るためのルールです。勝手な判断や行動があなた達だけでなく、周囲の人達をも危険に巻き込んだかもしれないということ……それは分かりますね?」

「「「はい………」」」

 

 リンディさんの言ってることは分かる、というか当たり前の言葉だ。おれ達の行動のせいでフェイトを取り逃がし、ジュエルシードも半分持っていかれたも同然。

 あの紫の雷はアースラにも攻撃し、被害が出たと聞いている。叱られて当然だ。しかしクロノ達の言うとおりにフェイトの自滅を待てばよかったのかと言われれば、おれはそうは思わない。

 だが集団の規律を乱してしまったことには変わりはないので、どんな罰が下されてもおかしくはない。一体何を言われるのか―――

 

「本来なら厳罰に処すところですが、結果としていくつか得るところがありました」

「得るところ……ですか?」

「ええ。よって今回のところは不問とします」

 

 顔を見合わせるおれ達。さすがにこれには驚く。罰を受けるどころか御咎めなしとは。その『得るところ』っていうのがそんなに大きかったのか?

 

「ただし、2度目はありませんよ? いいですね?」

「「はい」」

「すみませんでした」

 

 言いながら頭を下げる。リンディさんが寛大な人で助かった。

 

「さて、問題はここからね。クロノ? 事件の大本について何か心当たりが?」

「はい。エイミィ、モニターに」

「はいはーい」

 

 おれ達が叱られている間、ずっと後ろで控えていたクロノが前へ出てくる。エイミィさんは姿は見えないが声はする、別の部屋か。

 最初からいたしおそらくこの事件の大本とやらを話すつもりだったのだろう。エイミィさんの声がしてからすぐにデスクの中心にモニターが展開、そこに一人の女性が映し出される。

 プレシア・テスタロッサ。

 クロノ達と同じミッドチルダ出身の魔導師で、優秀だったものの違法研究とその事故で昔に放逐されてしまった人物。

 登録データと先ほどアースラを襲った魔力波動のデータが一致しているため、本人であるのは間違いないそうだ。

 

「あの少女、フェイトはおそらく……」

「フェイトちゃん、あの時『母さん』って」

「じゃあこの人が、フェイトの母さん……?」

「親子……ね………」

 

 どうやらなのはも聞こえていたらしいフェイトの言葉を口にする。状況から考えて親子なのは間違いないと思うけど……

 でも親子ならなんでフェイトはあの時あんな怖がっている様子だったんだ? 普通は助けに来てくれて安堵するとかじゃないだろうか。

 

「エイミィ! プレシア女史についてもう少し詳しいデータを出せる? 放逐後の足取り、家族関係、その他なんでも」

「はい、すぐ探します!」

 

 エイミィさんがデータを探している間、おれはさらに思考を巡らせていく。あのフェイトの怯えていた声と表情……もしかしてフェイトとプレシアさんの関係はそんなに良くないのか?

 今思えば、あの時プレシアさんが放ったであろう魔法の雷。おれ達を狙ったのが外れてフェイトに当たったのかと思っていたのだが、違うんじゃないのか?

 あの攻撃はあまりにも正確にフェイトを撃ちぬいていた。あれは故意に狙ったのでは……でもなぜ?

 そこまで考えて、頭を振ってその先の考えを打ち消す。辿り着いた答えがあんまりなものだし、特にそうだと断定する材料もない。ここから先はフェイトか、プレシアさん本人に確認するしかないだろう。

 

「雪道君、どうかした?」

「いや……大丈夫だ」

「本当?」

「本当だよ。そう心配するなって」

 

 心配そうな顔を向けて聞いてくるなのはに少し微笑みながら答えると、なのはも同じように微笑んで頷いてくれる。少しして、情報を出し終わったのかブリーフィングルームへエイミィさんがやってきてプレシアさんの情報について話し始める。

 ミッドチルダの歴史で26年前。彼女は中央技術局の第3局長だったが、当時彼女個人が開発をしていた物に違法な材料を持って実験を行い失敗。結果中規模次元震を起こし中央を追われて地方へと飛ばされた。

 地方へ飛ばされた後も数年は研究に携わっていたがしばらくの後行方不明になりそれきりの足取りは無し……ということらしい。

 

「家族や行方不明になるまでの行動は?」

「その辺のデータは綺麗さっぱり抹消されちゃってます。今本局に問い合わせて調べてもらっていますので」

「時間はどれくらい?」

「一両日中にはと」

「……プレシア女史もフェイトちゃんもあれほどの魔力を放出した後では早々動きはとれないでしょう」

 

 フェイトはジュエルシード封印、プレシアさんはどこからかは分からないがかなり大規模な魔法攻撃をしてきたのでおそらくそうなのだろう。まあこちらも人のことを言えたものじゃないか。

 おれはもちろん、なのはもフェイトに魔力を半分渡した状態で封印を行ったのだ。完全に尽きたわけじゃないが結構な量の魔力を消費している。

 あれこれ考えているうちに話がまとまったのか、リンディさんが立ち上がりこちらを向く。

 

「あなた達は一休みしておいた方がいいわね」

「あ、でも……」

「特になのはさんと雪道君はあまり長く学校を休みっぱなしでも良くないでしょう。一時帰宅を許可します、ご家族と学校に少し顔を見せておいた方がいいわ」

「ここはお言葉に甘えておこうぜ。結構魔力消費したし、おれ達じゃ今は特に何もできないしさ」

「……うん」

 

 リンディさんの提案におれも賛同しておく。正直な話、情けないがおれ自身結構疲れたので休んでおきたいというのもある。

 クロノ達と一緒にこの後の仕事のために部屋を去って行く。なんとなくその後ろ姿を見つつ、おれは言っておかなくてはいけないことを思いついた。なのはをほっておくわけにもいかないが、ここはユーノに頼っておこう。

 そう思いなのはに気付かれないようにユーノに念話を飛ばす。

 

《ユーノ、少しなのはを頼む》

《う、うん》

 

 ユーノになのはを託し、リンディさんの後を追いかける。あまり歩いていなかったのですぐに追いつくことができた。

 

「すみません、少しいいですか?」

「あら、雪道君。どうかした?」

「ええ、実は―――」

 

 

 ………

 

 ………………

 

 ……………………

 

 

「なるほどね……」

「君なぁ、さっき艦長に勝手な行動は慎めと言われたばかりだろう?」

「それは分かってる。だからいきなりじゃなくて、事前にこうして頼みに来たんだ」

 

 あることを頼みに行ったら思いっきりクロノに呆れるような目で見られてしまった。いやまあ昨日の今日どころかついさっき言われたことを無視するような事を言ってるのだ。まるで反省してないと取られても仕方がない。

 だがこれはどうあっても譲るわけにはいかない。おれは頭を下げ、必死に頼み込む。

 

「命令違反した後でこんなことを頼むのは図々しいのは分かってます。でもどうしても必要なことだと思ってるんです。お願いします」

「しかしだな……」

「いいんじゃない? 聞いてあげれば」

「ハルミ?」

 

 声をした方を向いてみると、いつの間にか母さんの姿があった。髪とかボサボサでかなりあれな姿だけど。

 

「もう、またそんな恰好で」

「まあまあ、今は私の格好なんていいでしょ? それでリンディ的にはどうなの?」

「そうねぇ」

「雪ちゃんの言う通り、あの……フェイトちゃん?とはこの子たちの方が付き合いは長いみたいだし。同い年っぽいから任せてみてもいいと思うけど」

「………そうね、分かったわ」

「本当ですか!?」

「ハルミの言ってることも分からなくはないから。でも、条件があります」

「条件?」

 

 いくつかの条件を言われ、特に何も問題はないので了承。なんとかお願いを聞いてもらうことができた。

 そのまま仕事に向かうリンディさん達を見送り、母さんに向き直る。

 

「口添えしてくれてありがとう、母さん」

「どういたしまして。でもほんと変わったわね」

「変わった? 何が?」

「雪ちゃんに決まってるでしょ。困ってる人はほっておけないのは前からだけど、他の人のためにっていうのはあんまりなかったし」

「そ、そうかな?」

「お母様の言う通りですよ。マスターは自分が納得できないからという理由で動くことはあっても、完全に他人のために動くというようなことはありませんでした」

 

 母さんと相棒にそう言われてなんとなく気恥ずかしくなる。確かに昔なのはの家庭の事情とかに口を出したのはおれ自身がすっきりするため、つまりは自己満足のためだけに動いたようなものだった。

 だが今回はどうだろう。フェイトとのことは正直おれはそこまで思い入れはないと思う。つまりなのはのために、おれのことは二の次で彼女のために動いたということになる。言われてみれば2人の言う通りかもしれない。

 というか冷静に分析してみたらさらに恥ずかしくなってきた。顔が熱い。

 

「どうかした? 顔が赤いけど」

「いや、なんでも」

「そう? まあとにもかくにも、折角口添えしてあげたんだし、何かしてほしいなぁなんて」

「えーと、部屋でも掃除する?」

「他には?」

「………なんか作ろうか?」

「甘いものをよろしく♪」

「はいよ。あ、なのは達も呼んでくるよ」

 

 これで、お膳立ては整った。後は当人たち次第ってところかな。

 

 

 

 

 一時帰宅を許可されたおれ達は一度アースラを降り、家へと帰ることに。おれは母さんがアースラに乗っていて、さらに今は1人暮らしみたいなもんなのでそのまま帰宅。

 なのはは家族へ報告がいるということで一度リンディさんがついて行くこととなった。まあ報告といっても本当のことを話すわけにはいかないので、嘘の報告になるのだが。

 一度帰ってきたことをアリサやすずかにも伝えておきたいがおれは携帯を持っていないため、それはなのはに任せることにした。

 おれは今何をしているかというと、絶賛買い出しに出ている最中だ。

 

「帰ったはいいけど、冷蔵庫の中空っぽなの完全に忘れてた」

「長期で家を空けますからね。マスター、頑張って中身処理してたじゃないですか」

「結構いろいろあったしすっかりな。あとエリス、外で普通にしゃべるの勘弁してくれ」

《おっと、これは失礼。アースラでの生活に馴染みすぎて》

《分からんでもないがな》

 

 あっちでの生活に慣れ過ぎるのもちょっと問題だな……とりあえず下手なボロが出ないように気を付けねば。

 そう思いつつ今晩のメニューを考えながら歩く。またすぐにアースラに戻るんだからすぐに処理できるものにしないと。

 久々の海鳴市をのんびり歩いているその時、少し遠くの方でかなり弱めの魔力を感じる。

 

「なんだ、魔力?」

《ジュエルシードでは……ないですよね》

《ああ。フェイト側が持っているものと合わせればもう残ってないはずだ》

《ではなんでしょうか? フェイトさんだとも思えませんが》

《ともかく行ってみよう》

 

 僅かな反応を頼りに、エリスにナビゲートしてもらいながらその場所へと走る。この感じだと道路沿いの雑木林の中の方になるか。

 さらに中へ入って行くと、地面に赤い点が落ちていることに気付く。これは、血の跡? 見つけたそれを辿って行くとそこには―――

 

「あれは……アルフ!?」

 

 そこにはフェイトの使い魔であるアルフが血まみれで倒れていた。今は狼の姿でいるみたいだが……

 駆け寄って様子を見てみるが、かなり酷い怪我だ。

 

「これは酷いですね……」

「あぁ……」

 

 一体何があったのかとか聞きたいことはあるが、答えれそうな状態じゃない。だけどどうする?

 いままで敵対していたとはいえ、さすがにこのままってわけには行かない。誰かを呼ぼうにも連絡手段を持ってない。

 ユーノみたいに簡単にでも治癒魔法を使えればよかったのだが……思考を巡らせていると後ろから足音が聞こえ、振り返ってみるとアリサとその付き人の鮫島さんがいた。

 

「あれ、雪道?」

「アリサ……」

「ちょっと、どうしたのその子?」

「怪我をしていますな、かなり酷いようです」

「おれが来たときにはもうこうなっていたんだ。どうにかしてやりたいんだが……」

「そうね……鮫島」

「はい、心得ております」

 

 アリサの言葉に頷き、アルフへと近づいていく鮫島さん。

 

「どうするつもりだ?」

「とりあえず家で面倒を見るわ」

「え? いいのか?」

「ほっておけないっていうのは私も同じだから」

「だが………いや、よろしく頼む」

「ええ、任せておいて」

 

 魔法とは一切関係ないアリサに預けるのはどうかと一瞬考えたが、今ここでおれが何かできるわけでもない。

 それにあのフェイトの使い魔なのだ。いままではおれ達が敵対していたから攻撃してきただけで、助けてくれたアリサに牙をむくとは思えない。それを考えたくないだけかもしれないが。

 ただすべて丸投げというのも心配だ。おれは持っていたメモ帳に自分の家の電話番号を書き、それをアリサに渡しておくことにする。

 

「一応、何かあったら連絡をくれ。これはおれの家の番号だ」

「うん、分かったわ」

「とりあえず応急処置がいりますな」

「あ、おれも手伝います」

「これはこれは、助かります」

 

 アルフの応急処置をしていた鮫島さんを手伝う。それが完了したあと、アルフはアリサのリムジンに乗せられてそのまま家へと連れて行かれた。今はとりあえず任せておくしかない。

 

「大丈夫ですかね?」

「使い魔で普通の動物とは違うから多分大丈夫だとは思うが」

「それも心配ですが、アリサさん達は……」

「その辺はもう信じるしかないな」

 

 その場にいながらほとんど何もできなかった自分を歯がゆく思いながら、おれはその場を後にした。

 

 

 

 

 翌日、久々に学校へと登校した。よほど心配していたのかすずかはすぐにこちらに駆け寄ってきた。

 アリサもまだぶっきらぼうながらもすずかについてこちらに来る。アリサについては昨日既に会ってはいるのだが。

 

「なのはちゃん! 雪道君も! よかったぁ元気で!」

「うん、ありがとうすずかちゃん」

「アリサも悪かったな……心配かけて」

「………まあよかったわ、元気で」

 

 そっぽを向きながらそういうアリサを見て笑いあうなのはとすずか。こういうのを見てると帰ってきたんだとしみじみ実感する。

 ひとまずこれまでのこと(リンディさんのでっち上げ話)をし、またすぐに行かないといけないことを話す。

 

「そっかぁ、また行かないといけないんだ」

「うん……」

「大変だね……」

「でも、大丈夫!」

「そだな。結構慣れては来てるしそこまで大変じゃないよ」

「そっかぁ。あ! 放課後は? 少しくらいなら一緒に遊べる?」

「うん、大丈夫。だよね?」

「おう」

「じゃあ……うちに来る? 新しいゲームもあるし」

「本当!?」

 

 遊べるということでどんどん話が盛り上がって行く3人。そうだ、昨日の……アルフの事を聞いておこう。特に連絡がなかったので問題はないと思うが念のためだ。

 

「そういやアリサ、昨日のあいつはどうしてる?」

「あの子なら、今家で療養してるわよ。餌も食べてたし大丈夫そう」

「そっか」

「昨日?」

「うん。昨日怪我してる犬を見つけてね、すごい大型でなんか毛並みがオレンジ色で、おでこに赤い宝石がついてるの」

 

 アリサの特徴を聞いていたなのはの表情が少し変わる。まあ気付くよな。

 

《雪道君。その大型の犬ってもしかして》

《もしかしなくてもアルフだ。どうしてそんな怪我で倒れていたのかはまだ分からないけど、たまたま居合わせたアリサに保護してもらったんだ》

《そうだったんだ……アルフさん、大丈夫なの?》

《とりあえずな。アリサの家に誘われてるしちょうどいい、様子を見よう》

《うん。そうだね》

 

 その後一度家に荷物を置いてから行こうという話になり、一旦この話はそこで終了。そのまま授業などを消化する。

 

 

 

 

 学校が終わって放課後。ユーノ(フェレット姿)も合流してアリサの家へと来たおれ達はアルフの様子を窺う。包帯を巻かれてはいるがひとまずは大丈夫そうだ。なのは達3人も心配そうに見ている。

 普通に話しかけたらおかしな人だが、念話なら別だろう。

 

《ようアルフ。調子はどうだ?》

《あんた達か……》

《その怪我、どうしたんですか? それにフェイトちゃんは……》

 

 なのはがそう聞くが、アルフは特に答えずに背を向けて檻の奥へと歩いて行ってしまう。やっぱりなにかあったんだろう。

 

「あらら、元気なくなっちゃった……どうした? 大丈夫?」

「傷が痛むのかも……そっとしといてあげようか」

「うん……」

 

 しゃがんでいた3人が立ちあがりその場を離れようとしたとき、すずかに抱かれていたユーノがするりと抜けだし檻の前へと行く。

 

「あっ、ユーノ! こら、あぶないぞ?」

「大丈夫だよ、ユーノ君は」

《なのは、雪道。彼女からは僕が話を聞いておくから、2人はアリサちゃん達と》

《うん、分かった》

《いや、おれも聞いていくよ》

《雪道君?》

《昨日から縁があるし、一応何かあった時のためにな。あ、勘違いしないでくれよ? 別にアルフを疑ったりしてるわけじゃないから》

《そっか、分かったの》

「3人とも先に行っておいてくれ。おれは後から行くよ」

「そう?」

「ああ。ユーノが食われないかどうか見ておかないとな」

 

 適当な言い訳をいい、3人が歩いていくのを見送る。これで話を聞く態勢が整ったか。

 

《一体何があったの? 君たちの間に、一体何が……》

《………あんた達がここにいるってことは、管理局の連中も見てるんだろうね》

《ああ》

 

 さすがに察しがいいな。アルフの言う通り、今この会話はアースラにいるクロノ達にも聞こえている。

 ユーノにアルフがいると話したとき、なら彼らにも話を聞いてもらった方がいいという提案でこうなっている。こちらはフェイト達の事情を一切知らないのでいい機会だろう、ということだ。

 

《時空管理局、クロノ・ハラオウンだ。どうも事情が深そうだ……正直に話してくれれば悪いようにはしない。君のことも、君の主フェイト・テスタロッサの事も》

《話すよ……全部。だけど約束して! フェイトを助けるって……! あの子は何も悪くないんだよ!》

《約束する。エイミィ、記録を》

《してるよ》

《本当だね?》

《嘘なんかつかないさ。おれもなのはも、別にフェイトをどうこうしたいわけじゃないんだよ。最初からな》

 

 アルフを見ながらそう言うと、彼女は頷き、話し始めてくれた。

 

 ………

 

 ………………

 

 ……………………

 

 アルフからすべての事情を聞き終わり、アリサ達と一緒にいるなのはにもこの話を伝える。おれが考えていた以上にこの話は重たく、正直なかなかきつい。

 だが今まで不透明だった点はすべて解消されて、これまで分からなかったフェイトに感じていた諸々事が腑に落ちる。

 

《というわけだ、なのは》

《うん》

《君たちの話と、現場の状況。そして彼女の使い魔、アルフの証言と現状を見るに……この話に嘘や矛盾はないみたいだ》

《どうなるのかな?》

《プレシア・テスタロッサを捕縛する。アースラを攻撃した事実だけでも逮捕の理由にはおつりがくるからね。だから僕たちは艦長の命令がありしだい、任務をプレシアの逮捕に変更することになる》

《それで……だ。なのははどうしたいんだ?》

 

 これはただの意思確認だ。この話を聞いてなのはがどういうかなんてほぼ決まっているも同然だろう。そう、彼女は必ず―――

 

《私は……私は! フェイトちゃんを助けたい! アルフさんの思いと、それから私の意思。フェイトちゃんの悲しい顔は……私もなんだか悲しいの。だから助けたいの! 悲しいことから。それに―――》

《それに、友達になってほしいってことの返事も聞いてないしな》

《うん!》

 

 おれの思った通りのことを口にするなのは。うん、そう言ってくれないとな。おれのお膳立ても無に帰さないで済みそうだ。

 

《分かった。こちらとしても君の魔力を使わせてもらえるのはありがたい。フェイト・テスタロッサについてはなのはに任せる》

《いいの? クロノ君》

《ああ。フェイト・テスタロッサについてはなのはに任せてほしいと雪道にも頼まれていたからね》

《え? そうだったの?》

《ちょっと口添えしただけだ。そこまで大したことじゃないさ》

《ううん。ありがとう》

 

 こうやって面と向かって……って念話だから面と向かってないが、お礼を言われると照れくさい。ちょっと顔が熱いが見られることもないのでよかった。

 

《という風に決まったんだが、アルフもそれでいいか?》

《なのは……だったね。それから雪道。頼めた義理じゃないけど、だけど……お願い。フェイトを助けて……あの子は今、ほんとに一人ぼっちなんだよ……》

《うん、大丈夫。任せて!》

 

 これでおれ達の方針は完全に決まった。アースラへの期間は明日の朝。それまでにフェイトと遭遇した場合は……前に考えていた通りだ。

 一度話はそこで終了したので、おれもなのは達に合流して遊ぶ。重い話の後だが……いや、むしろだからこそこういうなんでもない時間が大切なんだと思う。

 ゲームしたり、適当に雑談したり。そうしているうちにいつの間にか日も傾き、夕暮れとなった。今はテーブルでお菓子を食べながら話をしている。

 

「なかなか燃えたわね!」

「やっぱり2人がいたほうが楽しいよ」

「うん、ありがとう」

「もう少しで全部終わりそうだからさ、そうしたらもう大丈夫だと思う」

 

 フェイトとのことも決まり、かなり大詰めと言っていい。だけどまだ少しは心配をかけることになるのは心苦しい。

 

「なんか……2人ともなんか吹っ切れた?」

「え? うーんと、どうだろう?」

「多分、そうなんじゃないか?」

 

 吹っ切れた……ね……おそらくアリサの言う通りだと思う。いままではどうしていいか分からず、行き当たりばったりだったからな。

 アルフから話を聞けて、クロノ達からもGOサインをもらった。それだけで大分気持ちが楽になったのは間違いないから。

 

「心配してた……てか、私が怒ってたのはさ。あんた達が隠し事をしてることでも、考え事してることでもなくって……不安そうだったり迷ったりしてたこと。そしてそのまま私たちの所へ帰ってこないんじゃないかなって……そんな目をすること」

 

 自分の気持ちを吐露してくれるアリサ。そんなことを考えてくれてたのか……まるで気付いてなかった。そうか、そんな目……してたかな……

 なのはは少し目尻を拭い、立ち上がりながら言葉を紡ぐ。

 

「行かないよ、どこにも。友達だもん! どこにも!」

「そっか」

「雪道君も、だよね?」

「ん? ああ、行かないよ。友達なんだから……な?」

「うん」

《いいお友達を持ちましたね、マスター》

《そうだな》

 

 そう、どこにも行かない。おれ達の帰ってくる場所はここだ。それを今、いままで一番実感した。

 すべてを終わらせて、笑顔で必ず……ここへ帰ってくる。絶対。

 

 

 

 

 翌朝、若干空が明るくなってくる時間。準備をしておれは外へと出る。家を見つつ、いってきますと呟く。

 

「これで帰ってこなくてはならなくなりましたね」

「絶対ただいまっていってやるぜ」

 

 家に背を向けて走り出す。まずは前と同じ、なのはとの集合地点へと向かう。しばらくしてなのはとユーノも合流。アースラへの入り口代わりとなっている海鳴臨海公園へと走る。

 途中、アルフも合流してきた。檻に入っていたはずだが、抜け出してきたのか。アリサ驚くだろうな……

 しばらくののち、公園へと到着。向こうはおれ達の持っているジュエルシードが狙いだ。だとすれば必ず―――

 

「Scythe form」

 

 背後からバルディッシュの声が聞こえる。振り向くとそこには、フェイト。

 

「フェイト……もうやめよう? あんな女の言うこと、もう聞いちゃダメだよ! これじゃ不幸になるばっかりだよ!」

「それでも、私はあの人の娘だから」

「ま、そうだよな」

 

 悲しそうにつぶやくフェイト。そうだ、ただ言葉を投げかけるだけじゃ彼女は止まらない。ならどうすればいいか。おれ達はいままでさんざん悩んで、そして答えを見つけた。

 おれとなのははバリアジャケットを展開、なのははレイジングハートを握る。おれはまだ、武器は出さない。

 

「ただ捨てればいいってわけじゃない。じゃあ逃げればいいのかって言われれば、それはもっと違う」

「きっかけは……きっとジュエルシード。だから賭けよう……お互いがもってる全部のジュエルシードを!」

「「Put out」」

 

 なのはとフェイトの周りに、いままで集めてきたジュエルシードが展開する。これが、おれ達の見つけた答え。フェイトと遭遇した2回目、その時と同じく、ジュエルシードを賭ける。

 お互い、デバイスを構えあう。

 

「それからだよ……全部それから」

「今回おれは手を出さない。1対1だ」

 

 おれ達の関係はまだ、始まってない。本当のおれ達の関係を始めるために………だから―――

 

「だから始めよう………最初で最後の本気の勝負!」

 

 

 




いよいよ無印編も大詰めとなってきました・・・が、ここにきてとうとうストックが尽きました。

次回からは更新が遅くなるかもしれませんが、気長に待っていただけたらと思います。

それではご意見、ご感想のほどお待ちしております<(_ _)>
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