魔法少女リリカルなのはFH   作:ワンダバ

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週1ペースで投稿していく予定だったのですが遅くなって申し訳ないです。

別にマ○オがレーシングするゲームだったり、仮○ライ○ーが無双するゲームだったり、他の投稿者様の素晴らしき小説などにうつつを抜かしているわけではありません嘘ですうつつ抜かしてました。

何はともあれ今回も張り切ってどうぞ。




012 勝負の行方、彼方の思い出

 

 なのはとフェイトの一騎打ちが始まって数十分、どちらも互いに一歩も譲らない激しい戦いが続いてる。魔力弾の撃ちあい、デバイスによる打撃、シールドでのせめぎ合い……なのはは一切フェイトに後れを取っておらず、まさしく互角の戦いをして見せる。

 フェイトと初めて会ったあたりではまだ完全に素人だったなのは。しかし今ではもうその姿は見る影もなく完全な熟練者といっていいかもしれない。速く、そして強い。

 アースラにいる間、ちょくちょく訓練には付き合っていたが基本的には別々にしていた。まさかここまで上達しているなんて……もうおれでも彼女に勝つのは結構厳しいんじゃ………?

 そんな風に考えながら2人の戦闘を見守っていると、お互い一度距離を取りにらみ合いとなった。なのはもフェイトも肩で息をしている。全力で戦っているのでその分消耗も激しいんだろう。

 決着の時はそう遠くない。そう直感的に感じた。

 

 

 012 勝負の行方、彼方の思い出

 

 お互いに向き合ってしばらくすると、フェイトはバルディッシュを自分の前に縦してに構える。

 

「Phalanx shift」

 

 彼女の足元にも大きな魔方陣が広がり、さらにはなのはの周囲に金色の魔方陣が現れ、消える。なのはは警戒はしているがその場から動かない。

 なんとなくではあるが、あれが危険なものであることが分かる。あの場で留まっているのはきっとまずいだろう。だがおれはそれを伝えず、黙って見守る。

 フェイトの周りに高密度に編まれた魔力弾が次々と現れ始め、それを見たなのはは慌ててその場を離脱しようとする―――が両腕を金色の輪のようなものが彼女をその場に拘束してしまう。

 あれはバインド……先ほどなのはの周りに出た魔方陣がそれだったのだろう。

 

「まずい! フェイトは本気だ!」

「なのは! 今サポートを―――」

「だめ! アルフさんもユーノ君も手を出さないで! これは全力全開の一騎打ちだから……私とフェイトちゃんの勝負だから!」

「でも、フェイトのそれは本当にまずいんだよ!」

「ごちゃごちゃ言ってないで黙って見てろ、2人とも」

「雪道! 君はなのはが心配じゃ……!」

「いいから黙って見てろ!」

「あんた……」

 

 心配じゃないわけがない。今だってすぐにでもなのはのところに助けに行きたい。でもおれはそれを手を握りしめて必死にこらえる。これは単なるジュエルシードを賭けた戦いじゃない。それ以上に様々な思いが詰まった戦いなんだ。

 言葉だけじゃ足りなかった。でも2人で戦って勝ったって意味がない。だからこの一騎打ちなんだ。ここで他の人が手を出してしまえばここまで戦った意味も、なのはの覚悟もすべて水の泡になる。だからこそおれはただ見守る。

 

「フォトンランサー、ファランクスシフト……打ち砕け! ファイア!」

「Fire」

 

 待機状態だったフェイトのフォトンランサーが一斉に発射され、動けないままのなのはに次々と襲い掛かる。着弾し爆発。爆発の煙でなのはの姿が見えなくなるが、それでも魔力弾は止まらずに降りそそぎ続ける。

 

「なのは!」

「フェイト……!」

「…………」

 

 数えきれないほどの魔力弾が撃ち込まれ、ようやく止まる。さすがのフェイトもこれにはかなり消耗したようで先ほどよりも荒く息をついている。

 徐々に煙が晴れていく。その中のなのはは―――ところどころバリアジャケットが傷ついているが……健在だ。シールドのようなものが見えたが、まさか今のを全部防ぎ切ったのか……?

 

「いったぁ……撃ち終わると、バインドってのも解けちゃうんだね。今度はこっちの……番だよ!」

「Divine buster」

 

 レイジングハートをフェイトの方に向け、そのまま桜色の砲撃、ディバインバスターが放たれる。フェイトは消耗が激しく動けないのかその場から動かずにラウンドシールドを展開して防ぐ。

 直撃ではないものの、衝撃の余波で少しずつフェイトのバリアジャケットが破損していく。放たれていた砲撃が徐々に弱まり、終息する。シールドを消し、さらに肩で息をするフェイト。

 だけどまだ、終わりじゃない。

 

「受けてみて……ディバインバスターのバリエーション!」

「Starlight breaker」

 

 なのはの足元に巨大な魔方陣が輝き、そこに大量の魔力が集束していく。魔方陣の規模からしてディバインバスターとは比較にならないほどの威力になるのは想像に難くない。

 フェイトも今度は移動しようとするが……その両手足にはバインド。フェイトがなのはにしたことを、今度はなのはがフェイトにし返したのだ。これでフェイトはファランクスシフトを受けたなのは同様、回避はできない。

 なのはがレイジングハートを掛け声とともに振り下ろす!

 

「これが私の全力全開! スターライトォ……ブレイカァアアアアア!」

 

 特大の桜色の奔流がフェイトに向かって撃ち下ろされる。その砲撃のでかさたるや、ディバインバスターやおれのサイクロンパニッシャーの比じゃない。とんでもないバカ魔力だ。正直に言ってこれはフェイトがかなり心配になってくる。死んだりはしないだろうけど……

 しばらくして砲撃が止み、レイジングハートが放熱。あれだけの魔法を使い、なのはもこれ以上ないくらいに疲れ切っている。飛んでいるのがやっとといった感じか。フェイトは少しの間は飛んでいたが、意識が途切れたのか海へとゆるやかに落下していく。

 

「エリス、羽を」

「はい」

 

 おれはクワイエットウィングを展開し海面ギリギリを飛行。落ちてきたフェイトをなんとか海へ落とさずにキャッチすることができた。少し離れた場所に落ちたバルディッシュもばっちり回収し、そのままお姫様抱っこでなのはの傍へと上昇する。

 

「ん……」

「フェイト、気が付いたか?」

「私は……」

「えと、これで私の勝ちだよね?」

「そう……みたいだね……」

「Put out」

 

 主人であるフェイトが負けを認めたため、バルディッシュは持っているすべてのジュエルシードを周りに出す。自分の力で飛べるか聞き、飛べるようなので下ろしてやってからバルディッシュを渡す。

 ひとまずこれで一段落ついたな。だけどまだ、安心はできない。

 

 《よし、2人ともジュエルシードを確保して。それから―――》

 《いや、来た!》

 

 エイミィさんの声がしたのとほぼ同時に空が歪み、紫の雷が走り始める。

 

「やっぱり来たな……! ラウンドシールド全力展開!」

「Round shield!」

 

 タイミングは分からなかったが、おそらく仕掛けてくるであろうと予想していたおれは右手を前に突出しラウンドシールドをあらん限りの力で展開。だが思っていたよりも威力が高い。シールドを少し突き破って……!

 

「うぐぅ……!」

「雪道君!」

「心配するな! それよりもフェイトを!」

「う、うん!」

 

 フェイトの事はなのはに任せ、右腕が雷に焼かれるも構わず必死にシールドを維持し続ける。

 しばらくして攻撃が止み、同時に空の歪みも消える。………なんとか2人を守りきることができたな。しかし先ほどの攻撃の間にいつの間にかジュエルシードはすべて持っていかれてしまったようだ。

 地上で様子をうかがっていたユーノとアルフもこちらへと飛んで駆け寄ってくる。

 

「大丈夫かい!?」

「私たちは大丈夫ですけど、雪道君の手が……」

「まったく、君はまた無茶を……」

「これくらいはどうってことない。フェイトは大丈夫か?」

「わ、私は何とも」

「ならよかった」

「よくあるもんか。とりあえず治癒魔法をかけるから、じっとしてて」

「悪い、助かる」

 

 心配そうななのはと不安げに見てくるフェイトに、ユーノに治癒魔法をかけられながらだが微笑んで見せて大丈夫だとアピールしておく。実際は結構ダメージ入ってあんまり大丈夫じゃないが。ともかく今は2人を安全な場所へ連れて行くことが先決だな。

 

 《クロノ、アースラへのゲートを頼む》

 《了解だ》

 

 クロノとの通信から少しして、目の前に魔方陣が現れる。これでいつでもアースラへ行けるわけだが、さすがに問答無用でフェイトを連れ込むわけにもいかないな。

 

「とりあえずおれ達はアースラ―――管理局の船に行くけど、フェイトも一緒に来てくれるか?」

「フェイトちゃん、いい?」

「その……私は……」

「フェイト」

「アルフ……うん、分かった」

 

 フェイトはアルフに促され、動向を了承してくれた。おれ達は連れだってゲートをくぐり、アースラへ帰還する。

 フェイトの事は出迎えてくれた管理局の人となのは達に任せ、おれは一人クロノのところへと向かった。どうしてもしておきたいことが一つあり、それを頼むために。

 

「クロノ」

「雪道か。どうかしたか?」

「実はまた頼みたいことがあってな」

「また? 今度はなんだ?」

「さっきみんながプレシアさんの本拠地へといっただろ? 少し遅れてってことになるが、おれにも行かせてほしいんだ」

「雪道も?」

 

 驚いたように言うクロノ。まあ当然の反応だよな、管理局員ってわけじゃないのに行かせてくれって言われたら。これも当然だが断られる。

 

「そんなの認められるわけないだろう。君は協力者であっても、管理局員じゃないんだ」

「それは分かってる。でもどうしても行きたいんだ」

「………理由を聞いても?」

 

 顎に手を当ててから尋ねてくる。理由か……うん、おれとしては特に黙っておく理由もないので話してしまってもいいか。

 

「理由は……一度プレシアさんと話をしてみたいんだ」

「話を?」

「ああ」

 

 フェイトの母さんであるプレシアさんが、何故あそこまでフェイトに対して辛辣に当たるのか。大まかなことはアルフから聞いてはいるが、彼女自身がどう思っているのかは分かっていないのだ。それをおれはどうしても本人の口から聞いておきたかった。

 なのはのことに引き続いて無茶な頼みをするのは心苦しいが、おれは必死に頼み込む。

 

「管理局の人に捕まってからじゃもう聞く機会もないだろ? だから、頼む」

「……………分かった」

「本当か!?」

「今回は特別だ。ただし、危険だと思ったらすぐに引き返すこと。それは約束してくれ」

「分かった、恩に着る!」

 

 クロノから了承をもらったおれはゲートを開いてもらい、プレシアさんの本拠地へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 高町なのは Side

 

 アースラへと帰還した後、私たちはフェイトちゃんとアルフさん、それからユーノ君と連れだってブリッジへと向かった。雪道君は少し用事があると言ってどこかへ行ってしまったけど、どこへ行ったのだろう?

 ブリッジではオペレーターの皆さんが忙しそうに報告をしている。それはこれからフェイトちゃんのお母さん、プレシアさんを逮捕するためだ。指揮を執っていたリンディさんがこちらに気付くと歩いてきて、こちらへと話しかける。

 

「お疲れさま。それから……フェイトさん、初めまして」

 

 フェイトちゃんへ話しかけるリンディさん。でもフェイトちゃんは手に持っている傷ついたバルディッシュを見つめたまま動かない。

 

 《母親が逮捕されるシーンを見せるのは忍びないわ。なのはさん、彼女をどこか別の部屋へ》

 《あ、はい》

 

 念話でそう話しかけられて慌てて答える。確かにリンディさんの言う通り、自分のお母さんが逮捕される様子を見せるのは酷だと思う。どこがいいかな……そうだ、私の部屋にでも誘ってみよう。

 

「フェイトちゃん、よかったら私の部屋に―――」

『総員、玉座の間に侵入。目標を発見』

 

 フェイトちゃんに話しかけようとしたとき、モニターからそんな声が聞こえてくる。そこには管理局の人達に囲まれたプレシアさんの姿が映っている。囲まれても特に焦る様子もなく、少し口元を笑わせたまま椅子に座ったまま動かない。

 囲んでいる管理局の人達以外の人が部屋を調べ始め、とある一つの部屋の前へと辿り着き、その扉を開ける。そおの瞬間、余裕を見せていたプレシアさんの表情が一気に豹変した。

 

「え!?」

「っ!?」

 

 私はあまりの驚きについ声が出てしまう。隣にいるフェイトちゃんも同じく驚いた様子なのが伝わってくる。部屋を発見した人たちの顔も驚愕に染まっている。

 その部屋の奥。ちょうど中央辺りに円柱状のガラスの水槽のようなものがあり、緑色の液体がその中に満たされている。そしてその中に……フェイトちゃんと瓜二つの金髪の女の子が膝を抱えるような態勢で浮いている。

 男性管理局員2人がその水槽に近づこうとした矢先、いつの間にか移動してきていたプレシアさんの魔法の攻撃によって吹き飛ばされてしまう。

 

『私のアリシアに……近寄らないで……!』

『くっ……撃てぇ!』

 

 慌てるように攻撃を放つがそれはプレシアさんには届かず、掻き消されてしまう。ゆったりとした動きで左手を前に出すプレシアさん。その様子を見てリンディさんが慌てたように立ち上がる。

 

『うるさいわ……』

「危ない! 防いで!」

『うわああああああああああ!』

 

 リンディさんの警告は間に合わず、紫の雷に撃ち抜かれた皆さんがその場で倒れてしまう。あれだけいた皆さんを一瞬で……

 

「いけない! 局員たちの送還を!」

「りょ、了解です!」

 

 アースラのブリッジが慌ただしくなる中、いまだに部屋の様子を映し続けているモニターではプレシアさんがゆっくりとガラス―――アリシアへと近づいて行っている。

 

『もうダメね……時間がないわ。たった9個のロストロギアではアルハザードへ辿り着けるかどうかは分からないけど……でも、もういいわ。終わりにする』

 

 まるで愛でるかのように水槽を撫でながらそんな風につぶやき、こちらへと目を向ける。モニター越しなのにこちらを見られているような気がして、私はその姿をみて少し、怖いと思ってしまった。

 

『この子を亡くしてからの暗鬱な時間も……この子の身代わりの人形を娘扱いするのも』

 

 身代わりの人形。その言葉を聞いた瞬間、自分の体が強張るのが分かった。

 母親の口から出るにはあんまりな言葉。私ですらこんな悲しい気持ちになっているんだ、プレシアさんの娘であるフェイトちゃんがどれほどこの言葉に傷つくか予想するのは簡単だった。

 

『聞いていて? あなたのことよフェイト。折角アリシアの記憶をあげたのにそっくりなのは見た目だけ……役立たずでちっとも使えない、私のお人形』

「最初の事故の時にね、プレシアは実の娘……アリシア・テスタロッサを亡くしているの。彼女が最後に行っていた研究は使い魔とは異なる、使い魔を超える人造生命の生成。そして死者蘇生の秘術。フェイトって名前は、当時彼女の研究につけられた開発コードなの」

『良く調べたわね……そうよ、その通り。だけどダメね……ちっとも上手くいかなかった。作り物の命は所詮作り物。失ったものの代わりにはならないわ』

 

 プレシアさんの過去にも驚いた。けど、フェイトちゃんにはあまりにも……残酷な現実。

 

 

『アリシアはもっと優しく笑ってくれたわ』

 

 どうしようなく厳しく、悲しい現実。

 

『アリシアは時々我がままも言ったけど、私の言うことをとてもよく聞いてくれた』

「やめて………」

 

 言葉という名のナイフが突き刺さって行く。ぽつりと私は自分でも気づかないうちに、呟いていた。

 

『アリシアはいつでも私に優しかった……フェイト、やっぱりあなたはアリシアの偽物よ』

 

 もうやめて。

 

『折角あげたアリシアの記憶も、あなたじゃダメだった』

「やめてよ……」

 

 お願いだから。

 

『アリシアを蘇らせるまでの間に、私が慰みに使うだけのお人形……だからあなたはもういらないわ。どこへなりと消えなさい!』

「お願い! もうやめて!」

 

 このままじゃフェイトちゃんが……フェイトちゃんの心が………!

 

『ふふっ……いいことを教えてあげるわ、フェイト。おなたを創りだしてからずっとね……私はあなたのことが―――』

 

 お願いだから! もう!

 

『もういい加減にしろぉ!!!』

「え?」

 

 プレシアさんが決定的な言葉を言う直前、私のよく知った声がモニターから聞こえてきた。そこにいたのは………

 

「雪道君……?」

 

 Side out...

 

 

 

 

「もういい加減にしろぉ!!!」

 

 しばらく柱の陰に隠れ身をひそめていたおれは、プレシアさんの言葉に我慢の限界を超え、とうとう飛び出してしまった。最初のうちはなんとか自分を抑えれていたのだが、おれ自身の怒りとなのはの悲痛な叫びを聞いて抑えが利かなくなってしまった。

 急に飛び出してきたおれを、プレシアさんは非常に冷めた目で見ている。その視線で思わずたじろぎそうになってしまうが、ここで引くわけには行かない。

 

「どうしてそこまでの事を言えるんだ! フェイトは……あなたの娘だろう!」

「さっきからいたのだから聞いていたでしょう? あんな子は私の子じゃないわ」

 

 一切のためらいもなく言い放ってみせる彼女。今言葉にはなんの感情もこもっていない、ごく当たり前のように吐かれている。だけどそんな言葉を認めるわけにはいかない。

 

「フェイトはあなたのために、必死でジュエルシードを探していた! どんな風に扱われてもあなたを信じて、必死に!」

「そんなのは当たり前でしょう? フェイトは私のお人形なのだから」

「フェイトは人形じゃない! フェイトは……人間だ!」

「……………」

「母であるあなたに喜んでもらおうと頑張っていたんだろう!?」

「それがなんだというの? そんなもの、アリシアでなければ意味はないわ」

「………そうか」

 

 話してみてよく分かった。この人は、フェイトの事を何一つとして考えてない。利用するだけして捨てる気だ。情なんてものは一切……ない。

 右手にライオットトリガーを出しながらゆっくりと歩いて距離を少し詰める。フェイトの事をまったく考えないこの人をおれは、許せそうになかった。

 

「あなたには……ここで逮捕されてもらう」

「そうわいかないわ。私はこの子と一緒にアルハザードに行くのだから」

「アルハザード……? うおっ!?」

 

 アルハザードと言う聞きなれない言葉が出た瞬間、急激に足元が揺れ始めた。なんの前触れもなく起こり始めたため、バランスが上手くとれずに片膝をついてしまう。

 

《屋敷内に魔力反応多数!》

《なんだ!? 何が起こってる!?》

 

 エイミィさんとクロノの慌てた声が念話で伝わってくる。プレシアさんが何かしたのは間違いないが一体何を―――

 

「マスター! 後方に魔力反応が!」

「後ろ……? なっ!?」

 

 エリスの声に後ろを振り返り驚愕する。先ほどは何もなかった玉座の間は甲冑を身に纏った兵士で埋め尽くされていた。おそらく彼女が呼び出したのだろうが、その数が尋常じゃない。とてもじゃないが数えきれないほどだ。

 どういうつもりなのか問いただそうと視界をプレシアさんに戻してみると、アリシアが入ってる水槽が固定されていた台から外され宙に浮いている。そして彼女が歩いてくると、その後ろに寄り添うようにゆっくりとついて移動していた。

 

「何をするつもりだ!」

「私たちの旅を……邪魔されたくないのよ」

 

 ゆっくりと歩いておれの隣をすれ違い、広間の彼女が先ほどまで座っていた玉座へと向かっていく。ようやく揺れにも慣れてきたので後を追いかけようとするが、広間を出たところで兵士に囲まれ身動きが取れなくなる。

 玉座へとたどり着いたプレシアさんは両手を広げ、9つのジュエルシードを宙に浮かべる。

 

「私たちは旅立つの……忘れられた都、アルハザードへ! この力で旅立って……取り戻すのよ! すべてを!」

 

 ジュエルシードの輝きが増し、揺れがさらに強くなる。あの輝き方は………まさか!?

 

「ジュエルシードを発動させたのか!?」

「あはははははは! アハハハハハハハ!」

 

 両手を広げたまま、まるで狂ったように笑う。いや、もうおそらく狂ってしまっているのかもしれない。自分の娘を失った悲しみで、もう……引き返せないところまで。

 まるで笑い声に呼応するかのように強くなっていく揺れ。前にリンディさんとクロノから聞いたロストロギアによる次元震。それが起ころうとしているのかもしれない。前になのはとフェイトのぶつかり合いで発動したものが1つだったのだ。それが今回は9個まとめてとなると、その規模は計り知れない。

 なんとかしてジュエルシード……プレシアさんを止めないと!!

 

「私とアリシアはアルハザードですべての過去を取り戻す! アッハハハハハ!」

「やめろ! アルハザードってのが一体なんなのかは知らないけど……そんなことしたって過去を取り戻したりなんかできやしない!」

「………なんですって……?」

「アリシアは生き返ったりしないって言ってるんだ!」

「黙りなさい!!」

 

 先ほどの狂ったような笑みから一転、激しい怒りを表してこちらを睨んでくる。おれは怯まずに睨み返す。

 

「あなたは絶対に止める!!」

「あなたなんかじゃ私たちは止められやしないわ。そっちでそのお人形たちと遊んでなさい」

「なっ!? うわあ!」

 

 おれを取り囲んでいた兵士達が一斉に動き出し、おれを玉座の間の外へと追いやる。数の暴力で押されてあっという間に外の通路、通路を通り過ぎて広間のような場所まで押し出される。

 広い場所に出て空間が確保されたのを確認し、一旦後方へと飛び距離を取る。ざっと周囲の状況を確認してみるが……前後左右上空も含めて兵士で埋め尽くされている。玉座の間とこの広間のものを合わせた数なので数えるのも面倒なくらいになった。

 

「くそ、随分と押し出してくれたな」

「それに兵士の数も増えて、突破するのはなかなか厳しそうですね……」

「上等。止めるって言ったからにはここを突破して絶対に止める! 行くぞ!」

「はい!」

 

 次元震を……プレシアさんを止めるために、右手に握るライオットトリガーをより強く握りしめ、おれは兵士の大群へと駆けた。

 

 

 




雪道君が久々に主人公らしいことをしてる感じがしてます。無印編も最後の山場、彼には存分に活躍してもらいたいもので・・・あ、はい。頑張って書きます。

それではご意見、ご感想のほどお待ちしております<(_ _)>
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