今後も大まかにはこんな感じになると思いますので気長に待っていただけたらと思います。はい。
戦闘が始まって一体どれくらい時間が経っただろうか。さほど経っていない気がするし、長時間戦っている気もする。とにかく目の前の敵を倒し続け、前へ進もうと必死に足掻く。
「はぁ、はぁ……エリス、ここまでで何体倒した?」
「そんなのを数えているほど猶予はありません―――前へ!!」
「くっ!」
エリスの指示でとっさに前へと飛ぶ。直後、後ろから風を切るような音が聞こえ、ドガァ!という鈍い音が響く。クワイエットウィングを広げながら後ろを首だけ動かし振り向くと、兵士の斧が地面を抉り粉々になっている。回避が遅れればあの斧に頭をかち割られていたところだろう。
「前から1、左右から1体ずつ!」
「ストームエンチャント!」
「Storm enchant!」
ライオットトリガーに風を纏わせ前へ出る。前から来た兵士は右手に持った剣を真上から振り下ろしてくる。おれはそれを少し左へと体をずらすことで躱す。剣を振り終わり隙だらけの敵へ、ライオットトリガーを左から右へと振りその胴体を上下に切り裂く。相手は単なる無人の機械。遠慮はいらない。
ライオットトリガーを振った勢いをそのままに体を右へと回転、回し蹴りで先ほど切り裂いた兵士の体の上半身を、右から来ていた兵士の方へと蹴り飛ばす。少し慌てた様子で急停止するがもう遅い。飛んできた上半身とぶつかり、地面へと落下していく。
それを横目で確認しつつ、左―――振り向いたため右からくる兵士の剣をライオットトリガーで受け止める。相手の剣を上へと弾き飛ばし、がら空きになったところを右上から袈裟斬りにする。
落ちていく兵士に目もくれず、前へと向き直り飛ぶ。だが、すぐさま別の兵士たちが立ちふさがり思うように前へには進めない。
「この……次から次へと!」
「マスター、あまり時間はかけられませんよ」
「ああ、分かってる」
次々と襲い掛かってくる敵を倒しながら、このままではマズいという考えが頭をかすめる。おれの魔力量はそう多くはない。なるべく使わない様に心がけてはいるがこのままではジリ貧であることはまず間違いない。
ここの兵士を倒して終わりではない以上、こんなところで足止めを食らって魔力を浪費している場合ではないんだ。一刻でも早く、プレシアさんのところへ行かなければいけない。だから―――
「そこを………どけえええええええ!!!」
013 宿命に決着を
高町なのは Side
私たちはモニターで雪道君が玉座の間から追い出されるのを見た後、心が壊れる1歩手前までいったフェイトちゃんを医務室に送り届けて通路を走り、途中で合流したクロノ君と一緒にプレシアさんの本拠地へと足を踏み入れていた。
アルフさんはフェイトちゃんに付いていてもらっているため、今突入したのは私とユーノ君、それとクロノ君の3人。入口の大きな扉の前には大量の兵士が立ちはだかっている。
「いっぱいいるね……」
「まだ入り口だ。中にはもっといるよ。そこで雪道も戦ってる」
「急いで助けに行かないと! あ、でもクロノ君……この子たちって?」
「近くの敵を攻撃するだけのただの機械だよ」
「そっか。なら安心だね」
クロノ君から相手は無人だと聞いてほっとする。人が乗っていないというなら特に加減はいらない、思いっきりやっていいということだから。
一刻も早く雪道君を助けに行くため、レイジングハートを構えて前へ踏み出す。でもそれはクロノ君に制されてしまう。
「この程度の相手に、無駄弾は必要ないよ」
「え?」
そう言いながらクロノ君は自分のデバイスを構えつつ前へ出る。
「スティンガースナイプ」
「はあ!」
気合と共に放たれた青い魔力弾はすごいスピードで飛び、こちらへ迫って来ていた兵士を次々と打ち倒していく。2体、3体、4体―――まだまだ止まらない!
「速い!?」
「スナイプショット!」
兵士を貫いて上空へ上がった魔力弾は、まるで意思があるかのように引き返してきて残りの兵士を殲滅していく。縦横無尽に駆け巡った魔力弾が消えるころには、扉の前に立つ一番大きな兵士を残してすべて倒されている。
残った兵士に向かって駆けていくクロノ君。それを迎撃しようと兵士は斧を振り下ろすが、それをひらりと躱してジャンプ、兵士の上へと乗りデバイスを突き立てる。
「はぁあああ!」
「ブレイクインパルス」
青い閃光が走り、素早く兵士の上から飛んでバックするクロノ君。そして次の瞬間には兵士は爆発に包まれなすすべもなく崩れ落ちる。
驚きのあまり私とユーノ君はその場でポカンとした状態で動けない。そりゃクロノ君はリンディさんの子供さんで私達より強いってことはなんとなくは分かってはいたけれど……まさかここまでとは思っても見なかった。
「ぼーっとしてないで、行くよ!」
「「あ、うん!」」
声をかけられて慌てて駆け出す私達。扉を開け、赤く明滅している廊下をひたすら走る。通路は何かところどころ欠けたように無くなっていて、1人がようやく通れるくらいにまで狭くなってしまっている場所もある。
あまり意識しない様にしているものの、さすがに気になって横目で無くなってしまっている地面を見る。その先には特に何があるわけでもなく、虹色に輝いているような空間が広がっているのみ。ともすれば綺麗に見えるのかもしれないが、私はそれよりも言いようのない恐怖を感じてしまう。
「その穴は気を付けて!」
「え?」
「虚数空間。あらゆる魔法が一切発動しなくなる空間なんだ。飛行魔法もデリートされる、重力のそこまで落ちることになる」
「どうなるの?」
「二度と上がってこれなくなるよ」
「き、気を付ける!」
話を聞いてからは先ほどよりもより注意して走る。そうしてしばらく走っていると扉が見えた。その扉をクロノ君が先に立ち、蹴りるようにして開ける。そこには先ほどと同じように……いや、さきほどよりも多くの兵士がいる。兵士と兵士の間から僅かに次の部屋へと続く階段が見える。
この兵士たちをなんとかして倒さないと先には進めそうにない。今度こそ私も―――
「ここから二手に分かれる。君たちは最上階にある駆動炉の封印を!」
「クロノ君はどうするの? それに雪道君も!」
「僕はプレシアの方へ行く。彼女を逮捕するのが僕の役目だからね。それに雪道はプレシアの方にいる。彼も僕に任せてくれ」
「………うん、分かったの」
「よし、今から道を作る! そしたら!」
「うん!」
私はユーノ君を抱えてフライアーフィンを広げる。これでいつでも飛べる!
「ブレイズキャノン」
クロノ君のデバイスのデバイスから大きな魔力弾が放たれ、階段までの道にいる敵を薙ぎ払ってくれる。新しい敵が道を塞ぐ前にフライアーフィンを羽ばたかせて階段まで一気に飛ぶ!
「クロノ君! 気を付けてね! それから雪道君もよろしくなの!」
すれ違う時に声をかけると少し微笑んで頷いてくれる。そのまま階段を飛んで駆動炉まで駆けあがる。雪道君はクロノ君がなんとかしてくれる……私は私のできることを!
Side out...
フェイト・テスタロッサ Side
アルフに連れられて私はアースラの医務室、そのベッドに腰を掛けていた。今も頭の中では、母さんの放った言葉の数々が頭を巡って……消えない。正面にあるモニターでは、何度もぶつかったあの子達が、母さんの召喚した兵士と戦っている様子が映し出されている。
「あの子たちが心配だから……あたし、ちょっと手伝ってくるね」
「アルフ?」
「すぐ帰ってくるよ。そんで、全部終わったら……ゆっくりでいいから。あたしの大好きな、ほんとのフェイトに戻ってね?」
立ち上がってそう優しく言う。私の頬を撫でながら、優しく。
「本当の……私?」
「そう。これからはフェイトの時間は全部、フェイトが自由に使っていいんだから」
「これからの………時間………」
「じゃあ、行ってくるね」
歩いて医務室をゆっくりと出ていくアルフ。これで1人になった。そうなるとこれまでのことを……母さんとのことをより深く考えてしまう。アルフが隣にいてくれたおかげでいくらか気持ちがましだったのをはじめて自覚した。
戦いが続いているモニターを見ながら、ぼんやりと考える。
母さんは最後まで私に微笑んでくれなかった。私が生きていたいと……そう思えたのは、他の誰でもない母さんに認めてほしかったから。どんなに足りないと言われても、どんなひどいことをされたとしても。私の事を認めて、笑っていてほしかった。最後の言葉は遮られてしまっていたけれど、はっきりと捨てられたということは理解してる。でも、それでも私はまだ……母さんに縋り付いている。
モニターでは合流したアルフがあの子たちに微笑んで、一緒に戦おうとしている。
「アルフ……」
どんな時でもずっとそばにいてくれたアルフ。言うことを聞かない私に、きっと随分悲しんだと思う。私の中では一番の優先事項は母さんだった。いろいろと気を使ってくれたのに、それを無碍にして………。
アルフと一緒に戦っている真っ白な服の女の子。初めて私と対等に、真っ直ぐ向き合ってくれたあの子。あの子たちが一緒に戦っている隣のモニターでは、紅い服の男の子が戦っている。真っ白な服の女の子と一緒に向き合ってくれた。敵対していたのに、自分が傷ついてまでも私を助けてくれて……母さんに対しても本気で怒ってくれていた。
2人とは何度も出会って戦って………そして何度も私の名前を呼んでくれた。何度も……何度も……。
「うっ……うぅ……」
私の頬には涙がつたう。どんなに堪えようとしても、溢れてくる。
「私が……」
私が生きていたいと思ったのは、母さんに認めてもらいからだった。それ以外に生きる意味なんて……生きていく価値なんてないと思ってた。それができないのなら、生きていけないんだと思ってた。
涙に濡れる視界のなかで、今日戦う時の前に言われた言葉が……2人の姿が蘇る。
『ただ捨てればいいってわけじゃない。じゃあ逃げればいいのかって言われれば、それはもっと違う』
「ただ捨てればいいってわけじゃない。じゃあ逃げればいいのかって言われれば、それはもっと違う」
私の……私たちのすべてはまだ、始まってもいない。
立ち上がり、バルディッシュをデバイスモードへと変えてしっかりと握る。あの子と戦った時のまま、まだボロボロで……その姿に私はささやきかける。
「そうなのかな? バルディッシュ……私はまだ、始まってもいなかったのかな……?」
「Get set」
バルディッシュの宝石部分が輝いて、そう返事をしてくれる。抱きしめる。うん、そうだよね……
「バルディッシュもずっと私の側にいてくれたんだもんね……。お前も、このまま終わるのなんて嫌だよね……!」
「Yes sir」
ここまま終われない。だから行かなくちゃいけない。でも、ボロボロのままじゃ―――
「行きたいのね?」
「え?」
声がした方に振り向くと、そこには1人の女性が立っている。誰だろう……分からないけど、今のセリフからしてなんとかできる術を知っている……?
「あなたの相棒に魔力を送ってあげて。それで自己修復が速くなるように促してあげるの。応急処置程度だけど、それで戦えると思うわ」
「あなたは……」
「私の事は今はいいの。それよりも……早くいってあげた方がいいんじゃない?」
「………はい」
疑問は尽きないけど、この人の言う通りだ。私はバルディッシュを前に構える。
「うまくできるか分からないけど、一緒にがんばろう」
目を閉じ、バルディッシュへと魔力を注いでいく。イメージするのは修復……バルディッシュの本来あるべき姿。すべてに魔力が行きわたる感触。うまくできるかは分からない。でも、不安はない。
「Recovery」
「うん」
私たちのすべては……まだ始まってもいない。だから……行こう。
「ほんとの自分を始めるために! そして―――」
今までの自分を、終わらせよう。
Side out...
ひたすら前に進み続け、おれはなんとか玉座の間の手前まで帰ってくることに成功した。かなり消耗してしまっているが、まだ行ける!
「ようやく扉の前か……なかなかきっついぜ……」
「もう一息です。気合を入れて!」
「ああ!」
空圧弾をほとんど殴りつけるような形で行く手を阻んでいる兵士をなぎ倒し、扉の前へ。そして、タックルの要領で扉を開けて中へと侵入する。よし、あとはこの辺の雑魚を掃除してプレシアさんを追いかけるだけ………
「と、思ったんだけどな……」
「これは……」
玉座の間の奥。椅子があったところに、さっきおれがいたときにはなかった穴がぽっかりと開いており、下へと続くように瓦礫が浮いている。おそらくあそこからプレシアさんは下に降りたんだろう。
だが問題はその手前。玉座の間には兵士は1体だけだった。しかしそいつはバカみたいにでかい。いままで銀色の斧を持っている奴が1番でかく、そいつ以上の大物はいないと思っていた。だがそいつが問題にならないくらいにでかい。両肩には大きな砲台のようなものがついており、かなり重火力そうなのがうかがえる。
「位置付け的には最後の砦といったところですかね」
「冗談きついな……」
しかし文句を言ったところで始まらない。先ほどより揺れが大きくなっているし、次元震までのタイムリミットが近づいてきているのが分かる。それにあまりここで時間を取られていては後ろからまた雑魚が大量に押し寄せてきかねない。
「行くぞ!」
クワイエットウィングを広げ飛び、まずは牽制をかねて空圧弾を数発撃ちこんでいく。躱すそぶりは見せない……いや、躱す必要がないようだ。というのもおれの撃った空圧弾は大型に届く前にバリアに阻まれ消えてしまったからだ。
ならばと今度はストームエンチャントをライオットトリガーに纏わせ接近戦を挑むが、やはりそれはバリアに阻まれ大型の本体まで届かない。どんなに押してもひびひとつ入らない。このままでは埒が明かないと一旦距離を取る。
「なんて堅さだ……」
「これを突破するのは厳しいかもしれませんね」
エリスの言う通りこのバリアはあまりにも強固で今のおれの実力では突破するのは難しい。くそっ……どうする? 倒すのが難しいならなんとかしてこいつの注意を逸らし、後ろの穴に飛び込むか?
どう対処しようか考えていると、大型は腕を振りかぶりような仕草をとる。おそらくパンチだろうと当たりをつけ、いつでも動けるように待ち構える。大型ゆえか動きはゆったりとしている。これなら回避は余裕か?
だがその判断は間違っていることを思い知らされる。大型の伸ばしてきた腕、その手首辺りからガコン!という機械的な音と共に機銃がせり出してくる。
「な!? しまっ―――!!」
「Protection!」
機銃からは視界を埋め尽くすほどの銃弾が放たれる。完全に油断していたことと、驚きで回避が遅れる。エリスがなんとかプロテクションを自動展開してくれるが、攻撃が激しすぎて長くは持たずに無情にも砕かれてしまう。
「ぐぁあああああああああ!!」
なんとか回避を試みるが、さすがにすべて回避しきれるわけもなく、機銃の攻撃をまともに受け地面へと撃ち落される。空中から地面へと落下し、何度か地面ではね、止まる。体中に激痛が走り意識が飛びそうになる。それを気合で必死に繋ぎとめながら体を動かそうと必死に足掻く。
動いていると視界を赤い何かが塞ぎ、片目が見えなくなる。どうやら頭から血が流れているようだ。
「がっ……! ぐぅ……」
「いけない! マスター! 早くこの場から離脱を!」
「な……!?」
どうにか顔を上げ大型の方を見ると、両肩の砲台に魔力をチャージしているのが見える。動けなくなったおれを確実に消し去ろうとしているのか!
「こ…の……動、け……!」
このままではおれは死ぬ。なんとか体を動かそうと力を入れるが、意思に反して体はみっともなくもぞもぞと動くばかり。不味い……不味い不味い不味い! このままじゃ!
「こんな……とこで………終われないんだよ!」
「雪道!」
通路側から声が聞こえる。この声はクロノだろうか? 砲台はもう既にチャージは終わりつつあり、おれに止めを刺さんと発射の時を待っている状態だ。いくらクロノでもこの間に割って入って防御するのは間に合わないだろう。
「くっそぉ!」
明確な死のイメージがおれの頭をよぎった時、視界にメッセージが出ていることに気付いた。
「これは……?」
チャージの光と血のせいでよく見えないが、おそらくあの時と同じもの……もしかしたら違うかもしれない。だが、賭けてみる価値は十分にある!
頼むエリス……もう一度おれに、力を貸してくれ!!
「アウェイクン!!」
「Awaken」
言葉を放った瞬間、今までにない力の上昇、尽きることのないような膨大な魔力を感じ取る。体にも力が入る。これなら……いける!
おれが立ち上がるのと、砲撃が放たれたのはほぼ同時。素早く左手を前に突出し、ありったけの魔力を込めシールドを展開する!
「Round shield」
大量の光の奔流がおれの命を奪おうと迫ってくるが、それをラウンドシールドがすべて弾き、寄せ付けない。先ほどのおれでは考えられない強固な盾だ。
砲撃が止み、辺りの煙が晴れる。攻撃を受け切ったおれは……まったくの無傷。自分の自慢の一撃を受け切られ動揺しているのか警戒しているのか、大型の動きは迷うように鈍くなる。その間にクロノがおれのところまで走ってきた。
「雪道、大丈夫か?」
「なんとかな。クロノも平気か? 頭から血が流れてるぞ?」
「これくらい問題ない。それよりも、こいつで最後か?」
「ああ」
どうにかしてこの大型を倒さない限りはここは通れない。生半可な攻撃はバリアにすべてシャットアウトされてしまうが……今のおれなら、なんとかなるかもしれない。
「クロノ、こいつにはかなり強固なバリアがあるんだが……おれはそいつを破壊する。止めを頼みたい」
できるのか?と少し不安げにこちらを見てくるクロノだが、もう一度頼むと言うと、頷いてくれる。お互いにかなりボロボロの状態だ。チャンスは……一度きり。
「それじゃあ、任せた」
「おう、任せろ」
少し笑いあい、拳を打ちつけ合う。クロノは大型の注意を引くために飛行して先行、おれはその場に止まりライオットトリガーを大型に向け集中する。足元に魔方陣が輝き、ライオットトリガーの先端に魔力が集約されていく。
今から放つのはサイクロンパニッシャー。だけどおれはこんなにも早く砲撃魔法の準備はできなかったはずだ。この力の効果だろうか? ……まあ今はいい。できることに越したことはない。だがこれだけでは奴のバリアを破るのは難しい。ならばどうするか? 答えはいたって簡単。
「一門追加!!」
その言葉を言うと、集約されている魔力の塊がさらに1つ増える。そう、足りないのならば……増やせばいい! 今のおれにはそれができる!
「はぁああああ!」
発射準備ができたのでクロノへと合図を送る。
「クロノ! いけるぜぇ!」
「よし、頼む!」
「こいつがおれの全身全霊! デュアル! サイクロン……パニッシャァアアアアアアアア!!!」
「Dual cyclone punisher」
放たれる2つの紅い砲撃がバリアとぶつかり合い激しく拮抗する。だが少しするとバリアに亀裂が入り、それが徐々に広がって行く!
「いっけえええええええええええええ!」
最後の一押しに力を込める。次の瞬間、バキィン!という音と共にバリアが崩れ去る。これで奴は完全に無防備な状態となった。
「今だ!」
「ああ!」
素早く大型に飛び乗ったクロノは自分のデバイスを突き立て魔力を注ぐ!
「これで終わりだぁ!」
「ブレイクインパルス」
大型の頭が爆発し、それが体全体へと広がる。大きな爆発の後に残ったのは大型であったものの残骸のみ。おれ達はどうにか勝利を手に入れることができた。
「なんとかなったな……」
「そうだな―――雪道、何か瞳の色が変わってないか?」
「え? そうなのか?」
「君は茶混じりの黒色だったはずだよな。今はなんだか……紅っていうのか?」
「………」
そう言われても自分の瞳の色なんて鏡でもなければ確認できない。普段はクロノの言う通りの色なのは間違いないが。色が変わった原因といえばこの謎の力なんだろうけど……どうなんだろうか。
「まあ今は気にしても仕方がないか。とにかく今は先に進もう」
「ん、そうだな」
ひとまずこの話題は一旦止め、おれ達は空いている穴から浮いている瓦礫を足場にしながら下へと降りる。しばらく進み、最下層と思われる場所へと辿り着いた。おれ達が降りた少し先には……プレシアさんとアリシア。ようやく会うことができた。
「どうして邪魔をするの!? 私は取り戻すの………こんなはずじゃなかった、世界のすべてを!」
「こんなはずじゃなかった……ね……。そんなの、きっと誰だって抱えて、生きているものだと思うんだけどな」
「なんですって?」
「そうさ、世界はいつだって……こんなはずじゃないことばっかりだよ」
どんなに時代が変わろうと、どれだけ技術が進歩しようと。規模の大きい小さいはあるかもしれないけど、いつだって誰だって、変わらずに抱えて生きているんだ。こんなはずじゃなかったと。
「こんなはずじゃない現実から逃げるか、それとも立ち向かうかは個人の自由だ。だけど、自分の勝手な悲しみに無関係な人間まで巻き込んでいい権利は……どこの誰にもありはしない!」
「人の自由を奪う権利は……人の未来を奪うなんて権利は! 例え神様だろうと持っちゃいないんだ!」
「……………っ!?」
おれ達がそう言葉をかけながら少しずつ距離を詰めるように歩いていると、2つの影がおれ達の間に入るように降りてくる。その影は他でもない。
「フェイト……アルフ……」
「…………」
フェイトはどう声をかけたらいいか分からないのか、降りてきた場所から動かない。あれだけのことを言われたのだ……無理もない。
だがしばらくすると、プレシアさんは急に咳き込みだす。その口元には血がついている。吐血……? 一体どうして………
「母さん!」
「何をしに来たの? 消えなさい、もうあなたに用はないわ」
「………あなたに、言いたいことがあってきました」
アルフもクロノも、プレシアさんでさえも特に何も言わない。皆が黙って、フェイトの話の続きを促す。
「私は……私はアリシア・テスタロッサじゃありません。あなたが作った、ただの人形なのかもしれません。だけど私は、フェイト・テスタロッサは……あなたに生み出してもらった………育ててもらった! あなたの娘です!」
「ふふ………あははははははは! アハハハハハハハ! だから何? いまさらあなたを娘と思えというの?」
「あなたがそれを望むのなら……あなたがそれを望むのなら私は、あなたを世界中のどんな出来事からもあなたを守る」
真っ直ぐに、決して瞳を逸らさずに。ただ見つめて、彼女は言葉を紡ぐ。
「私があなたの娘だからじゃない。あなたが、私の母さんだから!」
「………下らないわ」
「っ!」
プレシアさんが杖を床に叩き付けた瞬間、魔方陣が広がりジュエルシードが輝き始める。これってやばいんじゃないか!?
「まずい!」
「フェイト!!」
クワイエットウィングを広げてフェイトのすぐ傍まで飛び降り立つ。折角のフェイトの思いを一蹴したプレシアさんには文句の一つも言ってやりたいが……
《この規模の崩壊なら次元断層は起こりません! クロノ君たちも脱出して! 崩壊まで時間がないの!》
エイミィさんから通信が入ってきている間にも辺りは崩れだし始め、地面にも亀裂が入り始める。本当に急がないと、この崩壊に巻き込まれるのは必至だろう。
「了解した。フェイト・テスタロッサ! フェイト!」
「クロノ! アルフを連れて先に行け! フェイトはおれが連れて行く!」
「しかし!」
「いいから行け! 時間がないんだろうが!!」
「…………必ず戻ってこい!」
「当たり前だ!」
クロノはアルフを連れてこの場所から離脱いていく。アルフはまだ何か言っていたが、崩壊の音で聞こえなかった。さて………
「私は向かう……アルハザードへ! そしてすべてを取り戻す………過去も未来も、たった1つの幸福も!」
「悲しいな。あんた―――プレシアさんには、これだけ思ってくれてる人がいるのに、まるで取りつかれたみたいに」
「偽物はいらないのよ。アリシア……この子でなければ!」
「偽物なんかじゃない。フェイトはフェイトだ。それに気付けていれば、もっと違う形の幸福を掴むことだって―――」
届かないと分かっていても、それでも何か心に訴えかけれるものがないか。そう思いながら言葉を交わしている途中、プレシアさん足元が崩れ、プレシアさんとアリシアが落ちて行く。
「あっ!?」
「よせ! フェイトまで落ちるぞ!」
慌てて追いかけようとするフェイトの腕をつかんで引っ張って下がる。落ちていく2人。魔法でももう助けようがない。小さくなっていく2人をおれ達はただ見ていることだけしかできない。
自業自得といえばそれまでだ。だけど……今のおれの胸の中はもやもやとした気持ちが立ち込め、言いようのないやるせなさが渦巻いていた。
いよいよ無印編も次回でラスト。
今回は頑張って雪道君を活躍させたつもりなのですが、やっぱりなんだかんだで影が薄いような・・・?
まあそれもありますが、やはりもっと投稿ペースが上がるように精進していきたいですね。(盆が明けたらやっぱり厳しいということになるかもしれませが)
それはともかくとして、ご意見、ご感想などお待ちしております<(_ _)>