それと、今回からちょくちょく雪道の使う魔法などにドイツ語が混じってきますが、基本適当に使っているので文法とかはどっかに忘れてくれると助かります。
それではごゆるりとどうぞ!
「さて皆さん。実は先週急に決まったんですが、今日から新しいお友達がこのクラスにやってきます」
朝のホームルーム。クラスの担任の言葉でにわかにクラスが盛り上がる。
誰なのか盛り上がる中、雪道達は落ち着いた様子でその瞬間を待っていた。誰が来るのかはもう既に分かり切っているからだ。
「海外からの留学生さんです。フェイトさん、どうぞ」
「失礼します」
教室の扉を開け、教壇の前に聖祥小学校の制服に身を包んだフェイトが立つ。
「あの……フェイト・テスタロッサといいます。よろしくお願いします」
若干顔を赤くしながらぺこりとお辞儀をするフェイト。雪道達はもちろん、クラスの全員が惜しみない拍手を送る。
皆笑顔だが、特になのはは嬉しそうに顔をほころばせていた。
020 新たな力
「ねえ! 向こうの学校ってどんな感じ?」
「すげぇ急な転入だよね? なんで?」
「日本語上手だよね? どこで覚えたの?」
「その……えっと……」
ホームルームが終わった後の休憩時間。フェイトは当然と言うべきか、クラスメイトに囲まれて質問攻めにあっていた。
転校生として仕方がないとはいえ、さすがにあれではフェイトが可哀そうだ。
「予想はしてたけど、しょうがないな……アリサ、女子の方頼めるか?」
「はいはいっと」
いい加減に見かねた雪道とアリサは質問攻めを終息させるため、フェイトを取り囲んでいる人垣に近づいていく。
「そこまでそこまで! 転校初日の留学生をわやくちゃにしないの!」
「興味が尽きないのは分かるが、さすがにフェイトが困ってるだろ?」
「雪……アリサ……」
人垣の間に入り、2人は質問を止める。フェイトは雪道とアリサの姿を見ると、助かったというような表情をする。
さて、ひとまず質問攻めはこれで止まった。だが放っておいてはまた同じ状況になりかねない。そうならないために、雪道は先手を打っておくことにした。
「質問するならゆっくり1つずつ。挙手でもしてくれ」
「じゃあ、俺から!」
「はい、どうぞ」
雪道とアリサの二人がかりでフェイトのへの質問をさばきながら、休憩時間などが過ぎてゆき昼休みとなった。
雪道達5人は机をくっつけあい、お弁当を取り出して昼食の準備をする。
「やれやれ……やっと終わったな」
「思った以上に大変だったわね」
「2人ともごめんね?」
申し訳なさそうに謝るフェイトに2人は気にするなといいつつ、お弁当のふたを開ける。
「あれ? 雪道君とフェイトちゃん、お弁当の中身が同じなんだ?」
「あ、本当なの」
「そりゃ、おれがまとめて作ってるからそうなる」
「でも珍しいね。雪くん、いつもサンドイッチとかなのに」
「おれ一人ならそれで済ますんだけどな。さすがにフェイトにもとなるとしっかり作るべきかと思って」
「なるほど」
「出たわね、雪道万能説」
「いや、いつ出たんだよその説」
軽く雑談を交わしつつ、皆でいただきますをして食べ始める。なのは達がお弁当を食べる中、雪道は弁当に箸を付けずにフェイトの様子を窺う。
ちなみに雪道の作ったお弁当は、鶏肉をメインにした洋食よりの内容になっている。
「うん、おいしい」
「本当か?」
「もちろん。どれもしっかり味がついてておいしいよ」
「ならよかった」
フェイトの感想を聞いて、ようやく安心したのか雪道も食べ始める。一口食べ、雪道自身も納得のいく仕上がりになっていると頷く。
その様子を見て、なのは達3人の視線は自然と彼らのお弁当へと注がれる。色合いに気を使っているのもあり、はたから見てもとても美味しそうだ。
「「「(じー………)」」」
「えっと……どうかした?」
「そんなに見られると食べづらいんだが」
「あ、あはは。ごめんね?」
「フェイトちゃん、美味しそうに食べるからちょっと気になっちゃって……」
「なんだ、欲しいなら別にやるぞ」
「いいの? あんたの食べる分減っちゃうけど……」
「感想くれるんなら全然。ほれ」
「なら私も」
雪道とフェイトは自分のお弁当に入っている鶏肉を3人に配って行く。
全員に行き渡ると、なのは達は同時に鶏肉を口へと入れる。
「どうだ?」
「お、おいしい……」
「本当!」
「これ雪くんが作ったんだよね? さすがなの!」
「雪、本当に料理上手だよね。昨日の夕飯の和食もおいしかったし」
「昨日は歓迎会ってことで気合入れたからな」
満足のいく感想をもらい、嬉しそうに笑う雪道。皆で和気藹々と話しながら、学校での時間は過ぎ去って行く。
学校が終わってからの放課後、今日は5人はなのはの家に集まって夕暮れまで過ごす。
それなりの時間が経ち、アリサとすずかは時間が来たので車で帰ったいったが、雪道とフェイトはまだ余裕があるので残る。3人で集まると、自然とこの前の騎士たちとの話になった。
「なのはと雪は、あの人たちの事をどう思う?」
「あの人たちって言うと、騎士の人達の事か?」
「うん。闇の書の守護騎士たちの事」
「えと……私は急に襲い掛かられて、すぐ倒されちゃったからよく分かんないけど……フェイトちゃんは?」
「何か不思議な感じだった。上手く言えないけど……悪意みたいなものを全然感じなかったんだ」
「悪意を感じなかった……ね……」
「闇の書の完成を目指してる理由とか、教えてくれたらいいんだけど……」
「それは無理だな。おれも一応聞いては見たけど、『貴様に話す義理はない』って一刀両断されちまったし」
「雪は騎士の人達と少し話したんだ? どう思った?」
「そうだな……」
雪道自身もあの時の事を思い返してみる。騎士たちと向き合った時、彼女たちからは何か決意みたいなものを感じた。
あの目の奥から発せられる、寸分の迷いのない固い意志。あれは確かに悪意から来ているものではないと思った。
「騎士たちの目からは何か……すごく強い意志みたいなのを感じた。あの様子だと、ちょっとやそっとじゃ理由なんて話してくれなさそうだな」
「強い意志で自分を固めちゃうと、周りの言葉って……なかなか入ってこないから。私もそうだったしね」
「フェイトちゃん……」
そう言って少し顔を俯かせるフェイト。強い意志で何かをするということに、少し前の自分を重ねてしまう。
プレシア―――母さんのためにどんなに傷ついても疑っても、絶対に彼女は正しいんだって信じて、信じたくて。そう思っていた時は、誰のどんな言葉もフェイトには入ってこなかった。
フェイトの言葉を受けて表情が暗くなる雪道となのは。それを見てフェイトは慌ててフォローを入れる。
「でも言葉をかけるのは……想いを伝えるのは絶対に無駄じゃないよ! 母さんの事を信じようとしてた私も、2人の言葉で何度も揺れたから」
「そうだな……今はこうしてフェイトとも友達になれたんだ。絶対にできないことなんてないさ」
「そうだね!」
「彼女たちの話を聞くには多分、なんとか勝たなくちゃならない。だから、もっと強くなろう」
「うん、私も今よりもっと強くなる。迷いなく戦えるように、強く」
「一緒に頑張ろうね! 雪くん、フェイトちゃん!」
そうして3人は笑って頷き合う。そこにさっきまでの重苦しい空気はない。
かつては敵同士だった2人と1人が、同じ部屋で笑い合っていられる。だから騎士たちとの事も何とかなる。そう信じて。
その夜、雪道は自分の部屋で臨時で借りているデバイスを起動させてとある作業をしていた。
なかなか思うように進まず唸っていると、部屋のドアがノックされる。
「はーい、どうぞー」
「お邪魔します」
入ってきたのはフェイトだった。その手には国語の教科書なんかを持っているところを見るに、何か分からないところを聞きに来たのだろうと雪道は察しを付ける。
「また分からないとこがあったか?」
「うん、ごめんね? 何度も」
「いいさ。何でも聞いてくれって言ったのはおれだし」
フェイトの分からない部分を聞きながら、一つ一つ丁寧に教えていく雪道。その説明にはよどみがなく、非常にわかりやすい。
フェイトもフェイトで、教えてもらったことはまるでスポンジが水を吸収するかのように覚えていく。
「ここはこう書いてるけど、こっちのほうが理解しやすいと思うんだけど」
「確かに、ありがとう。これでもう大丈夫だよ」
「あいよ。また分からないとこがあったら遠慮なく聞いてくれ」
「うん―――あれ? 雪、それって?」
「ああ、これ?」
机の上に展開させたままだったモニターを見てフェイトは疑問の声を上げる。そこには三角形が特徴的な魔方陣が映し出されており、いろいろといじってある形跡が見える。
「確かベルカ式だよね?」
「ああ、母さんに頼んで資料を回してもらったんだ」
「どうするの?」
「それは秘密だ」
不思議そうに尋ねるフェイトに、にやりと笑って見せる雪道。
その表情は何かとても楽しそうなもで、フェイトはなんとなくその表情が脳裏に焼き付くのだった。
「うん、これならもう大丈夫そうだね」
「本当ですか?」
「ああ、しかし思った以上に回復が速かったね。さすがの若さと言ったところかな」
数日後の管理局本局。リンカーコアの検査のため、雪道は医務室を訪れていた。当然、なのはたちも付き添いで来ている。
医者の診断の結果、もう大丈夫だという太鼓判をもらって、ほっと胸をなでおろす雪道。お世話になった彼にお礼を言い、医務室を後にする。
医務室を出たところでなのはとフェイト、ユーノとアルフが駆け寄ってくる。
「雪道!」
「検査結果、どうだった?」
「ああ、もう大丈夫だそうだ。無事完治ってとこだな」
「それはよかったの!」
「ん? なのは、フェイト、それ……」
「うん、こっちも無事完治」
そう言ってなのはとフェイトはそれぞれ自分の相棒を掲げて見せる。もうひび割れている様子もなく、まさしく完治と言った具合だ。
「ああ、よかったな」
「そういえば雪道、春美さんが検査が終わったらすぐに来るように言ってたけど」
「母さんが?」
「多分エリスのことについて何かあるんじゃない?」
「なるほどね」
「折角だから、ついて行ってもいい?」
「ああ、いいぞ」
「やったの!」
春美は自宅からエリスの最終調整の関係で、今は管理局に来ている。5人で通路を歩き、春美がいる研究室の前までやってくる。
ノックをし、返事があったので扉を開けて入る……のだが………
「ありゃ~……」
「これはまた……」
一言でいうなら、めっちゃ散らかっている。どうやったらこうなるんだというくらい、紙やら機械の部品やらが散乱している。
雪道は痛くなってくる頭を抑えるように、こめかみに手を当てる。
「ああ、いらっしゃい」
「お、お邪魔してます……」
「もう、ほんっとうに片付けできないんだから……!」
「それは諦めてほしいんだけど?」
「開き直んな! というか何か話があるんじゃなかったのか?」
「そうそう、そうでした。ここじゃなんだし、外の休憩スペースに行きましょうか?」
確かにこんな散らかった場所では落ち着いて話もできない。というわけで、全員は一旦すぐ近くの休憩スペースへと移動する。
春美は皆に飲み物をおごり、雪道の前へと立つ。
「さて話ですが……まあお察しの通り、エリスについてね。もういいわよ」
「どうも、お久しぶりです。皆さん」
「エリス! 久しぶりなの!」
「どうやら大丈夫みたいだな」
「ええ、おかげさまで」
春美の着ている白衣の胸ポケットからひょこりと出てきたエリシュオンは、そのまま雪道の傍までふよふよと近寄りネックレス状態になって首へと掛かる。それを見て雪道はようやく、元の状態に戻ったのだと実感することができた。
いままで基本的に雪道はエリスを肌身離さず持っていたので、ここまで長い間離れていたのは初めてだ。なんとなく寂しさを感じていたのを、雪道はこの瞬間に自覚した。
「おかえり、エリス」
「はい、ただいまです。マスター」
「ふふっ……よかったね、雪」
「感動の再会も終わったところで、説明に入らせてもらうわよ。今回で結構変わってるからね」
「そうなのか?」
「はい。驚きの変化ですよ。名前も少しばかり変わりました」
「名前が?」
「はい。エリシュオン・ゲヴェーアとなりました。呼び方はこれまでと同じでいいですが」
「ん、了解だ」
春美はとりあえずバリアジャケットを展開してほしいというので、雪道は頷きエリシュオンを手に握る。
皆の顔にも少し緊張が走る。一応医者から大丈夫だという太鼓判は先ほどもらったが、実際に雪道が魔法を使うのはこれが大体1週間ぶりだ。本当に大丈夫なのか、不安は拭えない。
「Start up」
エリシュオンの言葉と同時に雪道は紅の光に包まれ、バリアジャケットを展開し終えていた。
「どうやら、ちゃんと展開できてるみたいだな」
「ええ、問題ありません」
「雪くんのバリアジャケット……なんだか随分と変わったね」
「確かに、全然違うね」
「え?」
なのはとフェイトの言葉で雪道は自分の体を見下ろしてみる。確かに前の紅いローブとはなんだが感じが違う……というか色も違う。
胸の赤紫の布があしらわれたブローチになっているエリシュオンと、ローブの内側に着ていた白いカッターシャツに変わりはない。
足まで覆うローブだった上着は白色の縁取りは変わっていないが、下半身の前から横あたりまでの部分が無くなり、前から見れば上半身のみのジャケットに見えなくもない。閉まっていたローブの前は空いており、手には指ぬきのグローブが新たに追加されている。
何より違うのは、雪道の魔力光と同じ紅色だった上着とズボン、靴が緋色になっていることだろう。
「一応ローブからその形に変えたのはちゃんと意味があるのよ? 色については気分だけど」
「気分かよ……で、形が変わった意味は?」
「それは武器の変更に伴ってです」
「武器の変更?」
「雪ちゃんが前に使ってたライオットトリガー、折れちゃったからねぇ」
春美の言う通り、雪道の武器であるライオットトリガーは前回の戦いで中ほどから折れてしまっていた。修繕も難しく、もう使えない状態だった。
「ごめん、母さん。折角作ってくれたのに……」
「別にいいのよ。ライオットトリガーはまだ魔法に慣れていない雪ちゃんでも使いやすいようにって言う設定で作ってたの。だから実力の付いてきた雪ちゃんには、ちょっと役不足だと思ってたとこだったのよ」
「そう……だったのか?」
「ええ。そこで満を持して新武装の登場よ。エリス、出してあげて」
「はい。マスター、手を前に」
「おう」
雪道が右手を前に出すと魔方陣が出現、彼の手の中に武器が具現化していく。雪道が手を握り込むと、その手には新たな彼の武器が現れていた。
色は眩しいまでの銀。見た目はライフルの様に見え、かなり機械的な雰囲気になっている。手に持つ部分はリボルバー式になっており、撃鉄やリボルバー式の特徴的なシリンダーなどもついている。
「これが……おれの新しい武器……」
「そう。エリスから送られてきていたデータを元に、雪ちゃん専用として作ったあなたのための武器―――ライオットバタフライよ」
「ライオットバタフライ……これってライフルなのか?」
「まあ一見はね。銃身に見える部分は、鞘でもあるのよ」
「鞘?」
「ひとまずそれを腰に吊るして、グリップを握って引き抜いてみて」
言われて通りにライオットバタフライを腰の左側に吊るす。雪道は、腰の横までの布が無くなったのはこのためだったのかと気付く。
鞘と言うことは、ライオットトリガーと同じく銃剣なのか? 右手で黒いグリップを握り、雪道は念のために誰もいない方向へと引き抜く。だが、やたらと感覚が軽い。まったく剣を引き抜いたという感じがしないのだ。
「………あれ?」
「なんだか違和感があるね……」
「刀身がないのかな?」
「そういえば、何もついてないね」
なのはとフェイトの感想通り引き抜いたはいいが、そこに存在していなければならない刀身がなかった。手に握っているそれは、銃身がない回転式拳銃にしか見えない。
念のために鞘の部分の中身を見てみるが、中に刃が残ってしまってるなんてこともない。というか何やら機械的な結合部分しか見えない。
「母さん……これ……」
「そんな心配そうな顔しないの。設計ミスとかじゃないから。撃鉄は起こさずに引き金を引いてごらんなさい。もちろん、誰もいない方向に向かってね」
「分かった」
半信半疑ながらも雪道は誰のいない方向に向かってライオットバタフライを構え、引き金を引く。すると、シャン……と言う鈴のような音と共に紅く光る刀身が現れる。
「おお!?」
「わあ! 綺麗!」
「これってもしかして……」
「フェイトちゃんのバルディッシュのサイスフォームを参考に作った、エネルギーブレードよ。もう一度引き金を引けば消えるわ」
「なるほど。だから刀身がないのか」
「次にそのシリンダー部分の説明だけど、それ……最初は設定になかったのよね」
「そうなの?」
「エリスたっての希望で急遽取り付けた、カートリッジシステムよ」
「カートリッジシステムって……あの騎士たちが使ってた?」
雪道は一旦ブレードを消し、シリンダーの部分をまじまじと見つめる。確かに、シリンダーには銃弾のようなものが装填されているのが見える。
だが春美は、これは付けるつもりは最初はなかったと今言っていた。エリシュオンが直々に頼んだということらしいが、なぜそんな真似を……?
「エリスがこれを頼んだのか?」
「はい。今のままではきっと……あの騎士たちに挑んでも勝てないと思ったので。差し出がましいようですが、注文をさせていただきました」
「ちなみにカートリッジシステムはなのはちゃんのレイジングハート、フェイトちゃんのバルディッシュにも追加されてるわ」
「えぇ!?」
「そうだったんですか?」
「そちらもその子たちの意思でね。名前も変わってるから。レイジングハート・エクセリオンにバルディッシュ・アサルトよ」
「レイジングハートもバルディッシュも、私と同じ思いからカートリッジシステムの追加を望みました。私が言うのもおかしいですが、どうか受け入れてあげてください」
なのはとフェイトは自分の相棒を見る。なのはもフェイトも、もちろん雪道も騎士たちに敗北して悔しい思いをしたが、それはデバイスであるレイジングハートやバルディッシュ、エリシュオンも同じだった。
自分のマスターを勝利に導けなかった。その思いが彼女たちをカートリッジシステムの追加に踏み切らせたのだ。
「ありがとう、レイジングハート。これからもよろしくね?」
「バルディッシュも、ありがとう。またお世話になるね」
その言葉に応える様にきらりと光るレイジングハートとバルディッシュ。それを見てなのはとフェイトは嬉しそうに微笑む。
「さて、それじゃあなのはちゃん達にもまとめてカートリッジシステムについて説明するから、ちゃんと聞いてね?」
「「はい!」」
3人は春美からカートリッジシステムについての説明。雪道はライオットバタフライの追加の説明を受けた後、まだやることがあるという春美を残し、ユーノとアルフと一緒にそのままゲートへと向かう。
雪道達の世界へ帰るには、いくつかのゲートを中継する必要がある。あともう一つゲートをくぐればいいというとこまで来たとき、エイミィから通信が入る。ユーノがそれに出ることにした
《雪道君の容態はどうだった?》
《はい、もう大丈夫だと太鼓判を押してもらいました》
《そう! それはよかったぁ。今どこ?》
《2番目の中継ポートです。あと10分くらいでそちらへ戻れます》
《なら戻ったら―――っ!! こりゃ不味い!!》
《どうしました!?》
《至近距離にて緊急事態! 騎士たちが出たわ!》
表情を強張らせるユーノ。急にユーノの態度が変わったのを見て、雪道は何事かと声をかける。
「ユーノ、どうかしたか?」
「騎士たちが現れたって、今エイミィさんが!」
「なに!?」
ユーノの言葉で全員に緊張が走る。今、雪道達の世界で騎士たちとまともに交戦できるのはクロノしかいない。このままではクロノ一人で戦うことになりかねなかった。
「このままじゃクロノ君が……!」
「でもここからだとまだ帰るまでに時間がかかる……」
「ユーノ! ここから一気に帰ることってできないのかい!?」
「さすがにそれは無理だよ……順番待ちだってあるし―――」
「じたばたしたって仕方がない。ひとまず落ち着け」
「雪くん……」
不安そうななのはに頷いて見せる雪道。雪道とて慌ててないわけではないが、ここで下手に焦っても状況は変わらない。
雪道は必死に自分を落ち着かせながら、マルチタスクでできることを絞り出す。
「ユーノ、リンディさんに頼んでおれ達を最優先でゲートを通過できるようにしてもらうんだ。それで多少は時間短縮になる」
「なるほど、分かった!」
「アルフは転送の準備だ。最後のゲートくぐると同時に……多分結界内だろうから、そこへジャンプできるように」
「了解!」
「雪、私たちは?」
「転送したらすぐに戦闘になる可能性が高い。今のうちに心の準備を済ませておこう。相棒が新しく生まれ変わってからの、ぶっつけ本番だからな」
「うん、分かったの」
雪道達はそれぞれ自分の相棒を握りしめ、心の準備をする。クロノが無事であることを信じながら、少しでも万全の態勢で戦いに臨むために。
クロノは現場に到着した後、発見した騎士―――ヴィータとザフィーラに気付かれないように上を取り、魔方陣を展開させて次々と魔力の刃を生み出していく。準備が整い、クロノはヴィータ達を取り囲っている管理局員に退避の指示を出す。
撃ちだす直前でザフィーラに気付かれるが、もう止まれない。ここまま撃ちだすしかない!
「スティンガーブレード……エクスキューションシフト! てぇええ!!」
「ちぃ!」
無数の水色の刃がヴィータ達に降り注いでいく。ザフィーラはヴィータの前へとかばう様に出てシールドを展開する。
スティンガーブレードがシールドに衝突し、その衝撃で爆煙が辺り一帯に広がる。
「はぁ……はぁ……少しは、通ったか?」
煙が晴れ、2人の姿を確認する。ヴィータは無傷、ザフィーラはかばうときに出した左腕にブレードが三本ほど刺さっている。
「ザフィーラ!」
「気にするな……この程度でどうにかなるほど、柔じゃない!」
「上等!」
ザフィーラが左腕に力を込めると、刺さっていたブレードは音もなく消え去る。どうやらほとんど効いていない様子だ。
自分一人で一体どこまでやれるのか。一抹の不安がクロノの脳内をかすめたとき、エイミィからの通信が入る。
《武装局員配置終了! オッケー、クロノ君!》
《了解!》
《それから今、現場に助っ人を転送したよ!》
《助っ人?》
クロノがその転送されたというビルの屋上を見てみる。するとそこにいたのは茶色と金髪のツインテールの女の子に、黒髪の男の子。そう、間違えようない。あれは―――
「なのは! フェイト! 雪道!」
「あいつら!」
雪道達はしっかりとヴィータ達を見据えており、その眼には強い力が宿っている。少し離れた場所にはユーノとアルフも転送されてきて、待機している。
「よし、行こう! 二人とも!」
「うん!」
「準備はできてる!」
それぞれのデバイスを掲げ、彼らは呼ぶ……自分の新しくなった相棒の名前を!
「エリシュオン・ゲヴェーア!」
「レイジングハート・エクセリオン!」
「バルディッシュ・アサルト!」
「
「Standby, ready」
「Get set」
「スタート・アップ!」
「「セーット・アーップ!」」
「「「Drive ignition!」」」
3人をそれぞれの魔力光が包み、桜色と金色と紅色の閃光が辺りを埋め尽くす!
その閃光が収束し、3人はバリアジャケットを纏った状態で再びヴィータ達に向き直る。
「あいつらのデバイス……まさか!」
「………」
なのはとフェイトは武器と形態へとなったデバイスを前へと構え、雪道は腰からライオットバタフライを抜き放ち、ブレードを起動する。
「Assault form, cartridge set」
「Accel mode, standby, ready」
「Type slash, activate」
戦いはここからさらに、激化する。
戦闘が始まるかと思いきや、次回へ持越しです。
ライオットバタフライは次回から本格始動と言うことになりますね。
ではここまで読んでくださってありがとうございました!
よろしければまた次回!