ちゃんと描写で伝わるといいのですが・・・
ともあれ、今回もまったりとどうぞ!
海鳴市のとあるスーパー。そこでは騎士であるシャマルは私服を着込み、彼女たち騎士の今回の主であるはやてと買い物に来ていた。
彼女たちの周りでは、時間帯も夕暮れであるため同じく買い物に来ている主婦がたくさんいて、店の中はかなりの賑わいとなっている。
今晩の献立を考えながら、ぽつりとはやては気になっていることを呟く。
「なんや、最近みんなお家におらんようになってしもうたね」
「え!? ええ、まあその……なんでしょうね?」
「あ、別に私は全然ええよ? 皆が外でやりたいことがあるんやったら、それは……別に……」
「はやてちゃん……」
「私は元々一人やったしな」
そう言って笑うはやてにシャマルは堪らない気持ちになる。今自分達がやっていることは、はやてを救うためにやっていること。しかし、そのせいで肝心のはやてに寂しい思いをさせているという事実にやりきれない思いが募る。
シャマルははやての前に回り、車椅子に座っているはやての目線に合わせる様にしゃがむ。
「大丈夫です! 今は……みんな忙しいですけど、すぐにまた……きっと……」
「―――そっか。シャマルがそう言うんなら、そうなんやろね。今日はすずかちゃんも来てくれるし、お肉はこんなもんかな?」
「はい!」
はやてのその笑顔を見て、シャマルはさらに決意を固くする。一刻も早く闇の書を完成させて、自分達の主を救わなければと……。
021 ささやかな願いと乱入者
結界内のビルの屋上。そこで雪道達は、ヴィータとザフィーラに向き合っている。
結界がある以上はそう簡単には逃げられないはず。雪道達は、まず言葉を伝えるところから始めることにした。雪道となのはが、フェイトにそうしたように。
「おれ達は別に戦うためにここへ来たわけじゃない。戦わずに済むならそれが一番だと思ってる」
「だから、まずは話を聞かせて」
「闇の書の完成を目指してる理由を!」
「あのさぁ、ベルカのことわざにこういうのがあんだよ。『和平の使者なら槍は持たない』」
よく意味が分からないと顔を見合わせるなのはとフェイト。雪道はヴィータの言いたいことがなんとなく分かり、表情を曇らせる。
ヴィータはグラーフ・アイゼンをこちらへ向け、少し笑いながら言い放つ。
「話し合いをしようってのに武器を持ってくる奴がいるかバカ!って意味だよバーカ!」
「なっ!? いきなり有無を言わさず襲い掛かってきた子がそれを言う!?」
「ま、まあまあ落ち着けって、な?」
「でもぉ!」
「ヴィータ、それはことわざではなく小話のオチだぞ」
「うっせ! 細かいことはいいんだよ!」
微妙に食って掛かろうとするなのはを雪道がいさめ、ザフィーラがヴィータに余計なつっこみを入れているときだった。凄まじい轟音と共に何か―――紫の光が雪道達の前へと降り、土煙を上げる。煙が晴れ、そこにいたのはシグナム。どうやら強引に結界を突き破って来たらしい。
辺りが一触即発の空気に包まれる中、雪道は数歩前に踏み出す。何か仕掛けてくるのかと警戒し、ヴィータ達は構えをとる。だが、雪道は攻撃するつもりはさらさらない。
「ヴィータ……だったよな。お前が言っていることには一理ある」
「あ?」
「『和平の使者なら槍は持たない』……それなら、これでいいか?」
「なっ!?」
「「えっ!?」」
雪道の取った行動にヴィータだけでなく、なのは達も驚きをあらわにする。雪道は起動していたエネルギーブレードを引き金を引いてしまうと、腰の鞘へグリップを納刀。そして鞘を外し、足元へと投げる。
つまり、雪道は武器を捨て完全な丸腰となったのだ。ここで何か攻撃を仕掛ければ、雪道は武器を拾う必要があるため、行動がワンテンポ遅れることになる。戦闘において、それは死活問題と言ってもいい。
「お前……バカなのか!?」
「武器を持つなって言ったのはそっちじゃないか」
「そ、それは……とにかく! そんなことしたって教えてやらねぇよ!」
「むぅ、ダメか」
デバイスを突きつけながら声を荒げるヴィータ。その様子を見て、やはり話し合いはできないかと雪道は肩をすくめる。これで話を聞ければ手っ取り早かったのだが。
雪道は足元に置いたライオットバタフライを蹴り上げ左手でキャッチ。そのまま左腰へと吊るし直す。そうしている間に、なのはとフェイトが雪道の隣に並んだ。
「雪、ずいぶんと無茶するね」
「これで戦わずに済むってなら、その方がいいと思ったんだけどな」
「でも雪くんの今のやり方、私は好きだよ?」
「あっちは嫌いみたいだけどな」
これで状況は振り出しに戻ってしまった。戦わずしてこの場を収めることはできなさそうだった。
なのははヴィータを見据えながら、レイジングハートを構える。フェイトはシグナムを見据え、アルフはザフィーラへと向く。
「雪くんにみんな! 私、あの子と1対1で戦いたいの」
「1対1で?」
「うん。だから、手を出さないでほしいの」
「私も、あの人と」
「あたしもあの野郎に、ちょいと用があるね」
それぞれがそれぞれの相手を見据えて構えを取る。なのはは前回の戦いでヴィータに、フェイトはシグナム、アルフはザフィーラに負けてしまっている。雪道やクロノとしてはイエスとは言いたくないのだが、ただならぬ雰囲気に押され了承するしかなかった。
クロノは考えを巡らし、雪道とユーノへ念話を送る。
《この状況ならちょうどいい。雪道、ユーノ。僕らは手分けして闇の書の主を探そう》
《闇の書の?》
《連中は持っていない。もう一人の仲間か、主が持っているんだろう》
《なるほどな。ここでなのは達の戦いを眺めてるよりは有意義か》
《僕と雪道は結界の外。ユーノは結界の中を》
《分かった》
雪道はなのはとフェイトにここを離れることを伝えるために、雪道は彼女たちに念話を送る。
《おれはクロノと一緒に結界の外で闇の書を探す。ここは任せていいな?》
《うん、任せて》
《雪くんも頑張ってね》
《おう。そっちも気を付けてな》
雪道達はそれぞれの目的のために散る。なのははヴィータを追いかけ、フェイトはシグナムを。アルフはザフィーラの後を追い、ユーノは闇の書探すために戦いに巻き込まれない位置へ。雪道はクロノと一緒に結界の外を目指す。
しばらく飛び、結界の外に出た雪道とクロノは一旦足を止める。どういった風に探すかを話し合うためだ。
「それでクロノ。探すって言っても海鳴市は広いぞ? どうするんだ?」
「どうもこうもない。僕らは空を飛べるんだから、飛んで探すしかないさ」
「マジか……」
広域の捜索魔法でもあるのかと思っていた雪道だが、クロノのその言葉で若干げんなりとする。
その様子を見て、クロノは苦笑いしつつも雪道の肩を叩きながら、頑張ってくれと励ましを入れる。
「それほど遠くにいるとは考えにくい。ひとまず近く……僕は向こうの方を探す」
「じゃあおれは反対側だな」
「見つけたら念話で場所を教えて、合流するまで手は出さないこと。いいね?」
「了解だ」
雪道とクロノは互いに頷き合い、別々の方向へと分かれる。高速で流れていく景色に目を凝らしながら、夜風を切って飛ぶ。
捜索の最中、エリシュオンは今いる場所から少し離れた所に微弱な魔力反応を感知する。これが目的の人物かは分からないが、雪道に伝えておくことにした。
「マスター、ここから少し離れた場所に魔力反応を感知しました」
「本当か?」
「はい。ただ闇の書のなのかどうかは分かりませんが……」
「当てもなく探し回るよりはマシか……案内頼む」
「了解です」
エリシュオンのナビゲートの元、感知した場所へと向かって飛ぶ。そのポイントのビルの屋上。そこに緑色の服の女性、シャマルがいるのが見えた。
どうやら当たりだったようだ。雪道は気付かれない遠目の位置に一度着陸し、クロノへと連絡を入れる。ほどなくしてクロノが合流。再び飛び上がってシャマルの元へ行く。
シャマルの背後を取り、クロノはデバイスを突きつける。所謂フリーズというものだ。雪道はその少し後ろへと降り立つ。
「捜査ロストロギアの所持、使用の疑いであなたを逮捕します。抵抗しなければ、弁護の機会があなたにはある。同意するなら武装の解除を」
「何かひどいことしようってわけじゃない。ただ少し話を―――」
「ふっ!」
「ぐあぁ!!」
「クロノ!?」
雪道が話している途中、不意に右から何か足音が聞こえる。そちらを振り向く間もなく、接近してきたそれはクロノの腹部を蹴り飛ばす。クロノはそのまま吹き飛ばされ、隣のビルのフェンスへ激突する。雪道は何か追撃を受けないようにするために、とっさにバックステップで後方へと下がる。
クロノを蹴り飛ばしたそれは男だった。青い髪に白い服、何より目を引くのはその顔にしている仮面。そのおかげで人相はまったく分からない。
「何者だ!! あんたも守護騎士か!?」
「そうではない。が、協力者……とでも言っておこうか」
「協力者……?」
それだけ言うと仮面の男はシャマルの方へと向き、何かを話し始める。まるで雪道の事は眼中にないとでも言うように。
「誰かは知らないけど、やるってんなら容赦はねえぞ!」
「やめておけ、少年。君では私に勝てない」
「なめんな!!」
「Type slash, activate!」
鞘からライオットバタフライのグリップを抜き放ち、引き金を引いてブレードを出現させる。できれば〝あれ〟を使いたいが、まだ完成にはいたっていない。今はこれまで通りに戦うしかない!
地面を蹴り、一気に距離を詰めて斜め上から左下に向かって切り下げる。男は慌てる様子もなく、それをプロテクションで弾く。その盾の硬さに雪道は顔をしかめる。
「硬い……!」
「早くしろ。仲間がやられてからでは遅いだろう」
「……………」
それを聞いたシャマルは結界がある方へと向き、闇の書を広げる。すると彼女の足元にベルカ式の魔方陣が展開し始める。
何をするつもりかは分からないが、みすみすここで逃がすわけには……!!
「気を散らしている場合か?」
「なっ!?」
男はプロテクションでブレードを弾いて雪道の態勢を崩すとそのままゼロ距離まで詰め、腹部へ向かって拳を繰り出す。
雪道は態勢を崩されているため、ここから回避はできない。だがそれでも防ぐことくらいはできる!
「ピンポイント!」
「Pinpoint protection」
「ほう」
男が繰り出してきた拳の先に小さなプロテクションが現れて攻撃を阻み、拮抗する。
ピンポイントプロテクションは、一ヵ所に小さなプロテクションを集中して出すプロテクションの派生魔法。小さくしているため防げる範囲はごく限られてしまうが、その分強度が増す。
砲撃などを防ぐのには小さすぎるため向かないが、打撃などの防御にはもってこいの魔法なのだ。最大の利点は、普通のプロテクションと魔力消費はほぼ変わらない点だ。むしろこちらの方が低燃費で済む場合もある。
「これだけ小さなものよく―――だが!」
「ただの拳になんでこんな力が……! うわああああ!!」
男はさらに拳に力を込め、強引に振りぬく。雪道はプロテクションごと吹き飛ばされ、ビルの屋上から外へと出てしまう。エリシュオンはとっさにイナーシャルウィングを展開させて姿勢制御を行い、雪道の落下を防ぐ。
「くっ……サンキュ、エリス」
「いえ。しかしあの人……強いですよ」
「ああ、それも尋常じゃない程にな」
ゆっくりとこちらへと飛んで近づいてくる男を睨みつけながら、雪道は態勢を整える。ダメージから復帰したクロノも同じく飛び、雪道の隣へと並んだ。
「クロノ、大丈夫か?」
「問題ない。それよりもあいつは……」
「さてな。協力者とか言ってたが」
2人で武器を構えながら男と対峙する。男は特に何をするでもなく、構えることすらせずにこちらを見ている。一見隙だらけにしか見えないが、何故かどこにも隙が見つからない。そしてなにより、仮面のせいかその不気味さが際立つ。
このままじっとしていては埒が明かない。雪道はクロノに耳打ちをし、仕掛ける準備をする。
「おれが前へ出る。なるべく隙を作るようにするから、クロノは射撃でダメージを取りに行ってくれ」
「分かった」
「エリス、カートリッジロード」
「マスター、お母様の言葉は忘れていませんね?」
「ああ、大丈夫だ」
「Magnum cartridge load」
雪道の手に持つライオットバタフライのシリンダーが回転し、撃鉄が自動で起こされる。そして撃鉄が元の位置へと戻り、シリンダーにセットされている5つのカートリッジの内の1つが消費される。するとライオットバタフライから伸びているブレードがより強く光り、その出力を上げる。
ライオットバタフライに装填されているカートリッジは『マグナムカートリッジ』と言い、なのはやフェイトの物とは少し違う。彼女たちのカートリッジよりも一回り大きく、中に内蔵されている魔力も多くなっている。
だが大きい分装填できる数が少なく、なのは達の弾数が6発に対してマグナムカートリッジは1発少ない5発。さらには素早くリロードする方法も確定されていないため、少し問題が多い。とはいえ魔力出力がそこそこしかない雪道には、1発の威力が大きいほうが都合がよかった。
リロード方法については今いろいろ考えているものの、まだ確立しきれていない。そのため現状では手で1発1発入れるしかないが、そんな暇は戦闘中にはないだろう。実質この戦闘で使える回数は5回。それでなんとか勝機を呼び込まなければならない。
「行くぞ!」
「ああ!」
イナーシャルウィングを広げ、雪道は前へと出る。クロノはその場で魔方陣を展開、魔力弾を生成していく。男はそれを受けても特に動く様子はない。
距離を詰めた雪道は、左から右へとライオットバタフライを振って斬りかかる。バックステップで躱されるが、そのまま距離は離させずに矢継ぎ早に攻撃を仕掛け続ける。
雪道がライオットバタフライを左へと水平に振るった時、男は左腕を立てる様にして構えプロテクションを展開。エネルギーブレードを受け止める。先ほどと違いブレードの出力が上がっているため、簡単に弾かれるようなことはない。
男は空いている右手を振りかぶり、雪道へと打ち出す。雪道も負けじと左手にブレイクインパルスを乗せて放つ。拳と拳がぶつかり合うが、パワー差があるのか徐々に雪道の方が押され始める。
「ロードだ!」
「
雪道は再びマグナムカートリッジをロード。今度はブレイクインパルスに上乗せする形で、カートリッジの魔力を使用する。急激に上がった威力に耐え兼ね、男の拳が弾かれそのまま態勢を崩すことに成功する。
クロノはその隙を逃さず、待機させていた魔力弾を一斉に発射させる!
「くらえ!!」
「むっ!」
雪道の体の後ろから回り込むようにして、次々と魔力弾が男に降り注いでいく。雪道は巻き添えを食らわないようにクロノのところまでバック、グリップを鞘へと納刀。そのまま鞘ごと抜き放つ。
「Connect. Type
「こいつも―――」
雪道はライフルの形態―――タイプゲヴェーアとなったライオットバタフライを相手に向け、ダメ押しの一撃を加えるため魔方陣を展開。三度シリンダーが回転、今度はマグナムカートリッジを2つロードする。
魔力の塊が2つ、周囲の風を巻き込みながらライオットバタフライの先端へと集約されていく!
「持って行けぇ!!!」
「Dual Cyclone punisher!」
2つの紅い砲撃が仮面の男へと走り、直撃。凄まじい爆発音と爆煙を上げる。雪道はライオットバタフライを腰へ吊るし、グリップを再び抜きながら様子を窺う。
「どうだ?」
「分からない……」
徐々に煙が晴れ、男の姿が見えてくる。煙の中から姿を現した男は健在―――いや、それどころか無傷。攻撃をもらった様子は一切ない。
これにはさすがに雪道もクロノも驚きを隠せない。
「バカな!? あの態勢からどうやって!!?」
「なんて奴―――っ!?」
男の底知れない力に戦慄を覚えていると、後ろ……シャマルのいる方からとてつもない大きな魔力を感じる。雪道もクロノも一瞬そちらへ気を取られてしまう。それを敵が見逃すはずもない。
「はぁあああ!!」
「うわぁあああ!?」
「クロ―――」
「ふんっ!」
「ぐぁあああああああ!!!」
男は素早く距離を詰めると、クロノへと蹴りを入れ地面へと叩き落とす。その後雪道へと回し蹴りをし、クロノを飛ばした方向とは反対のビルの屋上へと叩き付ける。
クロノは地面ギリギリで姿勢を制御して激突を免れ、雪道は空気のクッションをとっさに作って激突の衝撃を和らげる。
「今は動くな! 時を待て。それが正しいとすぐに分かる」
「何!?」
「どういうことだ!」
男は質問には答えず、遠くの方……結界がある方を見やる。つられて雪道もその方向を見る。結界の上に黒い球体の様なものが出現しており、それがどんどんと大きくなっていく。
シャマルは闇の書を広げたまま詠唱を続け、最後に言葉を放つ。
「撃って! 破壊の雷!!」
「
黒い球体が弾け、漆黒の雷が撃ち下ろされる。結界と衝突してもなおその雷の放出は止まらず、管理局員が強化しているはずの結界に罅を入れていく。
そしてとうとう雷は結界を貫き、衝撃が辺り一帯を揺らす。
「くっ!? なのは……フェイト……!!」
「でわな」
「ま、待てっ」
雪道の静止を聞くわけもなく、男とシャマルはその場を離脱していく。追い詰めたというのに、とんだ乱入者のおかげで捕まえることはおろか話しすらできなかった。
追いかけて行きたいのはやまやまだったが、なのは達の安否も気になる。雪道はクロノと共になのは達の元へと向かうことにするのだった。
結界が撃ち抜かれる少し前。フェイトはシグナムと戦いを繰り広げていたが、頭上から凄まじい衝撃が伝わってきたため一度それを中断する。
どうやら時間切れのようだ。シグナムはレヴァンティンを鞘へとしまい、フェイトへと向き直る。
「魔導師にしてはやるな……我はヴォルケンリッターが烈火の将、剣の騎士シグナム。貴様は?」
「時空管理局嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサ。この子はバルディッシュ」
「そうか……すまんな、テスタロッサ。この勝負、預ける」
本当に済まなそうな顔をしながら、シグナムはフェイトに背を向け飛び去って行く。
一方なのははヴィータと対峙していたが、フェイト達の方と同じく戦いは中断していた。
「ヴォルケンリッター鉄槌の騎士、ヴィータ。あんたの名は?」
「なのは。高町なのは!」
「高町なぬ……なにょ……ええい! 呼びにくい!」
「逆切れ!?」
「ともあれ勝負は預けた! 咲良とかいうやつにも言っておけ!」
「雪くんに?」
「次は殺す! ぜってぇだからな!」
「あ! えと……ヴィータちゃん!」
なのはの静止を無視し、飛び去って行くヴィータ。追いかけようとするが、より大きくなった衝撃に体がすくみ動けなくなる。
次の瞬間、雷が結界を貫き辺りを揺らす。視界が眩い閃光で埋まり、目を開けていられない。ダメージも覚悟したが、不思議と体にはなんの痛みも走らない。
ようやく光が収まったので目を開けてみると、自分の周りを緑とオレンジの膜のようなものが覆っていた。少し離れた場所のフェイトも同じようになっているのが見える。なのはは、この膜はユーノとアルフが作った防御魔法だということに気付く。
「はぁ~……」
《なのは、フェイト! アルフも大丈夫?》
《うん。ありがとうユーノ君》
「アルフもありがとう」
空を見ると、管理局員が張っていた結界が解けていくのが分かった。今回はやられはしなかったが、ヴィータ達を逃してしまった。
そんなことを考えていると、少し遠くの方から人影が2つ飛んでくる。もちろん、雪道とクロノだった。地上に降りていたユーノも合流してくる。
「なのは、ユーノ! フェイトにアルフも! 無事か!」
「うん、私たちは何とも」
「雪達はどうだった?」
「すまない。闇の書を所持した騎士は見つけたんだが、逃げられてしまった」
お互いの安否を確認して一息つく。ほどなくしてエイミィからの通信が入り、全員一度雪道の家へと行くことになるのだった。
その日の雪道の家。リビングにて雪道となのはとフェイトは、管理局本局から帰ってきていた春美とエイミィから改めてデバイスについての説明を受けていた。
一度聞いた内容だが、カートリッジシステムにはまだまだ分からない部分がある。説明を聞きすぎるなんてことはないのだ。
「とりあえず、今回の戦いでは上手く使えたみたいね」
「本当にとりあえずだけどね」
「じゃあモードや機能の説明をするね」
「「はい」」
雪道達のデバイスのモードはそれぞれ3つある。
まずレイジングハート・エクセリオン。中距離射撃のアクセルモードと砲撃のバスターモード、フルドライブのエクセリオンモード。フルドライブは破損の危険もあり、なるべく使わないでほしいとエイミィは言う。
続いてバルディッシュ・アサルト。汎用のアサルトフォームと鎌のハーケンフォーム、フルドライブのザンバーフォーム。こちらのフルドライブもレイジングハート同様、使用は控える様にと言われる。
最後にエリシュオン・ゲヴェーア―――正確にはライオットバタフライのモードになる。近中距離のタイプスラッシュと中遠距離のタイプゲヴェーア。近接特化のタイプバタフライエッジ。タイプゲヴェーアとバタフライエッジは鞘と合体させることで使用が可能になる。
ここで一つ、雪道に疑問が浮上する。
「おれにはフルドライブはないのか?」
「エリスは雪ちゃんの能力支援に特化させてるからね。フルドライブがなくてもエリスが出力を上げれば同等の力がでるのよ。危険だから普段はやらないように言ってあるけど」
「なるほど」
「あとなのはちゃん。フレーム強化をするまでエクセリオンモードは起動させないでね」
「はい」
明日は日曜で学校もない。そのため休養も含めて、明日はまたもう一度雪道の家に集まろうという話になった。
今日のところは夜も遅くなってきたため、これでお開きとなる。といっても、雪道の家から帰るのはなのはとユーノだけなのだが。
さすがに2人(1人と1匹?)で夜道を帰らせるのは危険と言うことで、雪道が付き添いで途中まで送って行くことになる。
「ごめんね。折角家に帰ってたのに、また外に出る羽目にさせちゃって」
「気にすんな。さすがに騎士たちは今日は襲ってこないだろうけど、何があるか分からないからな」
冷え込む夜の道を2人で歩いて帰る。なのはは口では謝りはしたものの、隣に雪道がいてくれることに不思議と安心感を覚えていた。
どうしてここまで安心できるのだろう? 疑問を感じはしたがこの感覚がとても心地よく、すぐにその疑問は気にならなくなった。
しばらく歩いていると、なんとなくなのはは騎士たちの事―――ヴィータの事を考えてしまっていた。それが表情出ていたのか、雪道はどうしたのかと声をかける。
「あの闇の書の騎士の人達……ヴィータちゃん達は、どうしてあそこまで闇の書を完成させたいのかなって。また考えちゃって」
「そうだな……結局今回も知ることはできなかったからな。ユーノはどうだ?」
「さすがに僕も分からないよ。でもその顔、雪道は何か気付いているんじゃない?」
「本当?」
「別に気付いてるってわけじゃないよ。ただあの目を見てると、なんとなく思うところがある」
騎士たちの目からは、前にもフェイトが言っていたように特に悪意などは感じなかった。そこにあるのはやり遂げなければならないという使命感のみ。
雪道はそれを、友達になる前のフェイトと重ねていた。フェイトと敵対していた時、彼女も同じような目をしていたから。だから騎士達にもきっと何か訳があるんじゃないかと、そう思っていた。
「思うところ……」
「まあおれが勝手に思ってるだけだから。やっぱりちゃんと聞かないことには始まらないさ」
「うん、そうだね。あ、ここまででいいよ」
「分かった。じゃあまた明日な」
「うん! また明日!」
なのはとユーノに手を振り、来た道を戻る。またその内、騎士達とは戦わなければならなくなるだろう。騎士だけでなく、あの仮面の男とも。
「早く、完成させないとな」
「そうですね。頑張りましょう」
エリシュオンの言葉に頷きながら、雪道は帰路を急いだ。
いかがだったでしょうか?
何やら雪道が無駄にフラグっぽいのを立てていますが、こうご期待ってことで。
ちなみにはやては今回が初登場。基本的に雪道視点で進んでいるので出す機会が・・・はやてファンの方には申し訳ない。
さて、次回はアニメ、漫画版、それから若干のオリジナルの複合回になる予定です。
少し時系列が前後するかもしれませんが、ご了承いただければと。
それではここまで読んでいただきありがとうございました!
また次回!