魔法少女リリカルなのはFH   作:ワンダバ

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いよいよ初戦闘なのですが、なんかしょっぱく感じますね。
元もさほど動いていたわけでもないのですが・・・表現力が来い。


002 本当の意味での再会

「君はいったい・・・」

「ふふふ、驚いたでしょう? あまりのマスターのカッコよさに惚れないで下さいよ?」

「バカ言ってないで集中しろっての。あんたもだ、えーと、名前は・・・」

「な、なのは。高町なのはなの」

「ああ、んじゃ高町。あ、おれは咲良雪道だ」

「うん、知ってるよ。同じクラスで今日も夕方あったよね?」

「おう・・・って言ってる場合じゃないな。とりあえずこいつなんとかするぞ」

「え、ええええ」

 

 二人で並んで化け物を見上げる。さて、どうするか・・・

 

 

 002 本当の意味での再会

 

「うぅ・・・」

 

 怖気づいたように数歩後ろに下がる高町。

 

「怖いのは分かるが下がるのはよくないっていうかもう壁だし下がれないぞ!」

「でもでも、いったいなんなのこれぇ」

「っ! 二人とも、来ます!」

「なに!?」

 

 高町と話しをしていてよそ見をしていたため化け物の行動に気付くのが遅れた。

 高々と跳ね上がり、ここに追いかけて来たときのように急降下して攻撃を仕掛けてくる!

 ダメだ、行動がワンテンポ遅れた・・・間に合わない!

 

「ウォォォォ!」

「きゃっ!」

「Protection」

 

 彼女のデバイス、レイジングハートと言ったか? 攻撃に反応するかのように防御魔法を展開、攻撃してきた化け物を逆に弾き飛ばす。

 レイジングハートはどうやらインテリジェントデバイスみたいだな。デバイスが自分で魔法を使うなんてそれ以外は考えられない。

 しかしプロテクションはそこまで強固な防御魔法じゃないはずだ。おれがやってもここまで強力にはならない。

 これは高町の魔力の高さと出力の大きさからなせるのだろうと結論付ける。魔法の才能はおれより遥かに上、密かにちょっとへこむ。

 

「ふぇぇぇ・・・」

「と、ともかく、距離を取ろう」

 

 おれと高町は連れだって走り出す。その間にフェレットが魔法について説明している。

 

「それよりもだ。ありゃいったいなんなんだ?」

「あれは忌まわしい力によって生み出されてしまった思念体。あれを止めるには、その杖で封印して元の姿に戻さなくてはいけないんです」

「よく分かんないけど、どうすれば?」

「さっきみたいな防御や攻撃魔法は心に願うだけで発動しますが、より大きな力を必要とする魔法には呪文が必要なんです」

「呪文?」

「心澄ませて。あなたの中に呪文が浮かぶはずです」

「そう言われても・・・」

 

 なるほど、封印魔法を使うにはどうやら呪文が必要らしい。そしておそらくそれは高町とレイジングハートにしかできないのだろう。

 おれとエリスにはそんなことできるとは思えないし、やることは決まったな。

 

「それじゃ、おれが詠唱の時間を稼ぐよ」

「大丈夫なの・・・?」

「任せとけって、それより呪文の詠唱頼んだぜ!」

 

 化け物―――思念体だっけか? そいつに向き直る。バラバラになったはずだがもう元に戻っていた。

 こいつを止めとかなきゃいけないとなると、こっちもそれなりの装備をしなきゃな。

 

「エリス、武器を」

「Riot trigger」

 

 右手に円形の魔方陣が輝き、銀色の剣銃が現れる。

 ライオットトリガー。

 エリスとは別に用意されてるおれの武器だ。エリスはおれの魔法の制御などのサポートを主な担当としているため武器は別にあるのだ。

 持ち手部分はオートマチックの拳銃、銃身の代わりにそこは片刃のブレードとなっている。

 エリスとライオットトリガーはシンクロしており、収納などはエリスがやってくれる。

 ライオットトリガーに風が集まっていき圧縮されていく。これで準備は整った、後は……

 ちらりと後ろに目をやると高町が驚いたような顔でこちらを見ていた。少し笑ってみせると、彼女は頷いて目を閉じる。

 前に向き直り神経を集中する。大丈夫だ、こんな日が来るとは思ってもみなかったがやれるはずだ。

 思念体は今度は直接飛び込んでこず、触手のようなものを飛ばしてくる。狙いはおれの後ろの高町、本能があるかは知らないが危険だと判断したのだろう。

 触手に狙いを定め銃口を向ける。足を止めて撃つのはおれの普段の戦い方じゃないのだが、今回はこれでいい。

 

「空圧弾」

「Air bullet」

 

 魔法名を告げると、銃口の周りに左右3発ずつの少し紅みがかった空気の塊のようなものが展開する。

 

発射(ファイア)!」

 

 展開して待機の状態から勢いよく触手めがけて飛翔する。そして狙った通りにこちらへ伸びていた触手へと当たり、それを弾き飛ばした。

 よし、やれる。母さんとの特訓の日々で得たものはしっかりと覚えてる。

 本来、普通の魔導師ならば魔力弾を作って飛ばせばいいが、おれはそれが苦手だった。ただ単に苦手というわけではなく、おれの魔力は『魔力変換資質〝風〟』という特異なものだからだ。

 魔力を炎や雷などに変換する場合、一定のプロセスを踏む必要がある。だが、魔力変換資質を持った魔導師はそのプロセスを踏む必要がなくダイレクトで発生させることができる。

 ただし良いことばかりではなく、魔力変換資質を持っていると純粋な魔力のみでの行使がうまく行えないことが多い。おれが純粋な魔力弾を苦手とする理由がこれだ。

 どうしたものかとエリスと一緒に考えた結果、弾殻(バレットシェル)に魔力の代わりに空気を圧縮して注ぎ、弾にするという方法を思いついた。

 これが『空圧弾(エアーバレット)』だ。

 

「オォォォ」

 

 低いうなり声を上げて再び攻撃態勢に入る思念体。

 

「やらせっかよ!」

「かなり魔法に慣れている……本当にいったい君は………」

 

 今は質問に答えてる余裕はないので無視させてもらい、空圧弾を連続生成し発射する。

 そうしていると後ろから声が聞こえる。高町が詠唱に入ったのだ。

 空圧弾で牽制をしつつ、邪魔にならないように脇に退く。

 

「リリカル! マジカル!」

「封印すべきは忌まわしき器、ジュエルシード!」

「ジュエルシード、封印!」

「sealing mode. set up」

 

 レイジングハートから桜色の翼のようなものが展開する。

 高町がそれを思念体へ向けるとロープのようなものが伸び、縛り上げ動きを封じる。

 

「stand by ready」

「リリカルマジカル! ジュエルシード、シリアルⅩⅩⅠ! 封印!」

「sealing」

 

 再びロープのようなものが伸び、今度は思念体の体を貫く!

 

「ォォォォォ………」

 

 うなり声を上げ、思念体は霧散していく。光が収まるとそこにはもう何もいなくなっていた。

 再び魔方陣が輝き、ライオットトリガーを収納する。

 

「やれやれ、終わったか」

「あっ……」

 

 さっきまで思念体がいた場所には何か小さな宝石のようなものが光っている。多分これが元になっていたものだろう。

 

「それがジュエルシードです。レイジングハートで触れて」

 

 高町がレイジングハートをジュエルシード(?)に近づけると磁石でも入ってるかのように吸い寄せられ、レイジングハートの中に入り込む。

 どうやらこれで本当に終わりのようだ。だがナンバーって……いかにももっとあります的な空気がするな。

 何気なしにレイジングハートを見ていると、急に高町の体が光だす。一体なにごとだ!?

 慌てて高町の方を見てみるとバリアジャケットが解除され、レイジングハートも元の赤い宝石の状態に戻り高町の手の中に収まる。

 うん、今度は見てはいけないものが見えなくてよかった。

 

「あぅ………」

「お、おいっ!?」

 

 ふらりとしたかと思うと急に倒れる高町。慌てて受け止めるが、急だったので上手く態勢を維持できずに尻餅をついてしまった。

 いくらバリアジャケットと展開していても痛いものは痛い。あと女の子の身体なんか初めて触ったのでちょっとドキドキする。

 

「格好よく決まらないところがいかにもマスターらしいですね」

「うっせ、おれの方も解除だ」

「りょーかいです」

 

 エリスに動悸を悟られないように、なるべく平静を保つように言う。

 先ほどの高町と同じくおれの身体も一瞬光が包み、収まると元のジャージ姿に戻る。

 

「ともかく落ち着いたか」

「はい、あなたたちのおかげで……ありがとう、うっ………」

「おいおい、マジかよ」

 

 今度はフェレットの方も倒れてしまった。どうするかなぁってなんだか随分と周りが騒がしいな。うん? これは、パトカーのサイレン・・・?

 ふと周りを見てみると見るも無残な状態だった。

 ブロック塀は粉々になり、地面には無数のひび。電柱なんてポッキリと折れて倒れている。

 自分たちが起こしてしまった状況を理解していくうちに、顔が引きつっていくのが自分でも分かった。

 

「これはここにいてはやばいよな?」

「そうですね。でも彼女たちはどうするんです?」

「だよなぁ、どうするかな……」

 

 こんなとこに置き去りにするつもりはさらさらないが、どうやって運ぶかが問題だ。高町を背に背負う……はダメだな。それではフェレットを持つことができない。

 考えているうちにもパトカーはこちらへ近づいてきている。どうする? この際強引でもなんでもいいからなにか、1人と1匹を同時に運べる画期的な方法は……そうだ!

 

「すまん、ちょっとの間我慢してくれ」

 

 聞こえはしないだろうが、そう言いながら高町を地面に仰向けに寝かせる。

 続いてフェレットを両手でそっと持ち上げ、高町の腹の上にのせる。

 最後に高町の首と膝の裏に手を入れてっと。

 

「エリス、身体強化の制御を頼む」

「少々気に食わないですが、まあいいでしょう」

 

 魔法で自分の体を強化、制御をエリスに任せる。不機嫌にはなってしまったが引き受けてくれたようでなにより。

 しっかりと身体強化の魔法がかかっていることを確認して体に力を入れ、高町を持ち上げる。所謂お姫様抱っこというやつだ。

 普通ならば腕の長さや筋力などもろもろが足りずに持ち上げることなどできないが、魔法で体を強化していればそのあたりの問題はない。フェレットも運べるしなかなかいい案を考え付いたものだと自画自賛。

 ただ高町の素肌にちょっと触れているので悪いやら恥ずかしいやら。

 ともかくさっさとここを離れよう。そう思いおれは1人と1匹を抱えて走り出す。

 

「顔がイヤラシイですね」

「どこがだ、どこが」

「それで、どこへ向かってるんです?」

「ひとまず、そこまで離れてないからおれの家だな」

「やっぱいやら「黙れ」し………」

 

 近いし落ち着けるから自分の家に向かうだけだ。別に他意はない、断じてない!って誰に言い訳してんだか………

 

 

 

 

「やれやれ、とんでもない1日だったな」

 

 イスに腰を下ろしながら言う。今、おれは自分の部屋にいる。

 あの後家に着いたのはいいが、高町を抱えたままどうやって玄関を開けようと呆然としてまった。が、体術の鍛練の際に庭の窓を開け、そのままにしていたことを思い出しそこから入った。

 

「なんのために玄関の鍵を閉めたんだ……」

「いろいろと詰めが甘いですよね、マスターって」

 

 相棒に散々な評価を受けつつもひとまず、高町をおれの部屋に運びベッドに寝かし、フェレットも適当なクッションの上に置いて一度部屋を出る。

 お湯を沸かし紅茶を淹れカップを2人分用意、フェレット用に牛乳を皿に注ぎ、部屋に戻り今に至る。

 

「しかしこんな時まで紅茶を用意するとは……」

「温かい飲み物は気分を落ち着かせてくれるんだ」

 

 言いつつカップに注ぎ口をつける。高町も飲むかもしれないので甘めの味付けにしてあるが、うまい。自分で言うことじゃないか・・・でもうまい。

 そうしてしばらくして、先にフェレットのほうが目を覚ました。

 

「………ここは?」

「お、お前の方が先に起きたか。ここはおれの家のおれの部屋だ」

「あなたの……でもそんなところまで運んで?」

「魔法を使えばある程度はなんとかなるしな。詳しいことは高町が起きてから聞くから、今は休んどけ」

「えと、彼女は?」

「そっちのベッドだ。魔法とか戦いとか初めてのことばっかだった上に内容もハードだったからな、緊張の糸が切れて気を失っただけだと思うぞ」

「そうですか……」

 

 ほっと安堵したようにつぶやく。

 ちょっと思ったけどフェレットと会話してるって結構、いやかなりシュールな光景だな。シュールついでに牛乳でも勧めてみるか。

 

「一応牛乳とか用意してみたんだが飲むか?」

「ええ、いただきます」

 

 牛乳の入った皿を差し出すとちびちびと飲みだす。

 普通に飲めるようで一安心、ちなみに少し温くしてある。

 

「その……すみませんでした」

「急にどうしたんだ?」

「あなたには助けていただいたにも関わらず無碍にするような態度になってしまって」

「ああ、そのことな」

 

 確かにさっきの騒動で微妙にスルーされてる感があった。まあ完全におれは招かれざる客だったわけだし気にはしていない。

 

「別にいいさ。状況が状況だったからな」

「ですが……」

「高町の強さは見たところ本物だったからなぁ。おれがいてもいなくてもなんとかなっただろ」

「マスターが完全に無駄に首を突っ込んだ形ですからね、無駄に」

「無駄ってところを強調すんじゃないよ」

「そういう訳ですから、あなたは何も気にする必要はないですよ」

「スルーかよ……何はともあれそういうことだ」

「は、はあ」

 

 あまり釈然とはしてないみたいだがひとまずはいいだろう。

 しかしエリスがおれか母さん以外に普通に話しかけるのはこれが初めてだな。人じゃなくてフェレットだが。

 

「ぅん……」

「お?」

 

 フェレットと言葉を交わしている間に高町が目を覚ました。

 もう一つのカップに手を伸ばし、紅茶を注ぎながら聞く。

 

「あの後急に気を失ったんだが、大丈夫か? どこか痛むとことかあるか?」

「ううん、平気なの。えーと……」

「あぁ、ここはおれの家のおれの部屋。倒れたから運んだんだ」

「そうなんだ。迷惑かけちゃったかな?」

「おれが好きでやってることだし、気にしなくていいぞ。さらにいえば父さんも母さんも家にいないから特に何か言われるとかは考えなくていい」

「え? 咲良君のお父さんとお母さんは……?」

「あ、別に亡くなってたりはしてないから安心してくれ。出張とかそんな感じだから」

「ならよかったの」

 

 安心したという感じでにこりと笑う。不覚にもドキリとしてしまった、可愛すぎるねしょうがないね。

 

「一応落ち着けるように紅茶淹れて来たんだが、飲む?」

「うん、ありがとう。いただきます」

 

 頷きながらカップを受け取る高町。

 飲み物でも飲んだら落ち着くだろうし、それから聞きたいことを聞くとしましょうかね。

 

 

 

 

「ごちそうさま」

「お粗末様っと」

「これすごく美味しかったけど、高かったりするの?」

「いや、そこまでの物じゃないよ。茶葉から淹れたからそこら辺のインスタントよりは遥かにうまいとは自負してるけどな」

「え!? これ咲良君が自分で淹れたの!? すごいね!」

 

 カップを受け取りつつ会話を交わす。

 おれの淹れた紅茶を他人に飲んでもらうのは母さんを除けば初めてだったが、好評のようでなにより。

 

「紅茶はさておきだ。一息ついたところで、本題に入りたいんだが」

「ん、そうだね。そういえば傷は痛んだりする? かなり乱暴にしちゃったと思うんだけど……」

 

 そう言いつつフェレットに視線をやる。高町は少し申し訳なさそうだ。確かに思念体との戦闘中は結構走ったりしてたしなぁ。

 

「それについては大丈夫です。けがはもうほとんど治っているから」

 

 自分で器用に包帯をほどいていく。確かに、夕方見てた時と比べて傷はほとんど無くなっていた。

 

「ほんとだ。けがの跡がほとんど消えてる……」

「お二人が助けてくれたおかげで残った魔力を治療に回せたんです」

「なるほどね。道理で」

 

 治癒魔法を使ったのなら納得がいく。魔法といっても自然回復を促すもので、一発で全部治ります!ってわけではない。魔法といえど、万能じゃないのだ。

 

「そうだ。あの時はバタバタしてたし、改めて自己紹介していい?」

「あ、うん」

「えへん。私高町なのは、小学校3年生。家族とか仲良しの友達はなのはって呼ぶよ」

「僕はユーノ・スクライア。スクライアは部族名だからユーノが名前です」

「ユーノ君かぁ、可愛い名前だね」

 

 ユーノね。名前や声からして男―――オスと言うべきか?―――と判断して間違いないだろう。

 続いて二人の、ああいや一人と一匹の視線がこちらを向く。

 ………いやまあこの流れで知らんぷりってわけにはいきませんよね。こういうの苦手なんだがなぁ。

 

「咲良雪道。高町と同じ学校の同級生だ。名前の書き方は空から降る雪に道は道路の道だ」

「雪道さんですね」

「別にさんは付けなくていいぞ」

「えと……じゃあ雪道で」

「おう」

 

 名前で呼び合う友達?第一号ができたおれにとっては世紀の瞬間である。人でないことには目をつむっていただきたい。

 ふと別の方向から視線を感じてそっちを見てみると、高町がおれのことをすごい見ている。

 なんだろう、おれ今の短時間の間に何かしたろうか?

 

「…………(じー)」

「あーっと、何か質問でも?」

「質問と言うか、ちょっとした提案なんだけど……いい?」

「あ、ああ」

「その、私も……名前で呼びたいなぁなんて」

「へ?」

 

 そういえば互いに名字で呼んでたな。ユーノとは名前で呼び合う仲となり、成り行きとはいえ一緒に戦った仲だ。名字は他人行儀すぎるか。

 

「そだな、じゃあ雪道でいいぞ」

「うん! 私もなのはでいいの!」

「分かった、なのは」

 

 これで全員の自己紹介は無事終了だろうか。

 あ、待て、まだいたよ大事な奴が。

 

「そうそう、それからこのペンダントになってるやつはおれの相棒のエリュシオンだ」

「まるで思い出したかのように紹介しだしましたね」

「悪かったよ。タイミングがなかなかなかったんだよ」

「まあ忘れなかっただけいいです。んん! ご紹介にあずかりましたマスター雪道のデバイス、エリシュオンです。マスターからはエリスと呼ばれているので皆様もどうぞそうお呼びください。あ、さんは付けなくてよいので」

「うん、よろしくね、エリス」

「よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします」

 

 今度こそ全員自己紹介を終えたな。つかまだ肝心な部分の話してねぇぞ。

 だが、その話を聞き出そうと口を開く前にユーノは俯いてしまった。

 

「…………すみません」

「どうした? 急に」

「僕はお二人を巻き込んでしまいました……」

「あ……その………」

 

 そうの口調から随分と気に病んでいることが見て取れる。

 実際多少魔法に関わり合いがあったおれはともかく、なのはは完全に関係のない人間だった。

 それを自分の勝手な都合で引き込んでしまったのはなかなかきついものがあるか。

 ここまではそんな素振りは見せていなかったが、緊張感がない自己紹介で気が緩んで隠しきれなくなったのだろう。どうフォローしたものか・・・

 

「えと……多分私平気!」

 

 ちょっとフォローにしては強引ではあるがなんとか続いてみる。

 

「平気かどうかはともかく、関わっちまったからにはもう知らんぷりはできないしな。できることがあれば協力する」

「どうかお気に病まないでください。マスターは自分から首突っ込んだだけですし」

「………はい」

 

 声をかけてみるが重傷の様子。

 こりゃちょっと時間を置いた方がよさげだな。いろいろ聞きたかったんだが仕方あるまい。

 あと夜で随分と時間がいい感じになっているし、そろそろなのはを家に帰さないとまずい。

 

「心の整理ができるまでは待つよ」

「すみません」

「いいって。それから今日はもう時間も遅いしなのはは家に帰らないとだろ?」

「あ、うん。確かになの」

「そいじゃ今日はお開きだ。家まで送ってくよ」

「ううん、悪いからいいよ」

「そういう訳に行くかって」

「ええ、先ほどもあんなことがあったばかりですし一人は危険ですよ」

「分かった。ありがとうなの。雪道君、エリス」

「よしってそうだ、ユーノはどうすっかな」

「あ、それならアリサちゃんとすずかちゃん・・・夕方一緒にいた友達と話したんだけど、私が預かるってことになってるんだけど・・・」

「そか、じゃあ連れて行ってやってくれ」

「うん」

「じゃ、行こうぜ」

 

 なのははユーノを抱え、おれも今度こそ戸締りをきちんとしなのはの家に向かって歩き出した。

 

 《マスター》

 《どした?》

 《なのはさんのご家族への言い訳は考えておいた方がいいですよ。私もフォローできませんし》

 

 念話でそういうエリス。

 夜遅く外出し帰ってきたときには見知らぬ奴が隣に………これは確かにまずいな、下手な誤解を招きかねない。おれが連れ出してよからぬ遊びをとか思われては堪ったものじゃない。

 

 《そうだな……考えておくよ》

 《私も一緒に考えます》

 《おうよ》

 

 

 

 

 

 

「あ、あれが私の家なの」

 

 なのはの家族への言い訳をあれこれ考えている間にどうやら着いたらしい。外から見た感じかなり和風といった感じで格式がありそうというか、随分と立派だ。

 

「へぇ、ここなのか。うちの普通の一軒家なんかよりすごいな」

「にゃはは、そんなことないよ」

 

 そう言いつつ門に手をかけたところでなのはの手が止まる。理由はなんとなくわかっちゃいるが聞いてみる。

 

「どうした?」

「………お父さんやお母さんになんて言えば」

「やっぱですか」

 

 やはり何も言い訳を考えていなかった様子。まさかバカ正直に『魔法使って化け物退治してきました』と言えるわけがない。

 うむ、いろいろ考えておいて正解だったな。エリスに感謝感謝。

 

「一応言い訳を考えておいたから、そいつに合わせてくれ」

「う、うん。分かったの」

「よし、じゃあGOだ」

 

 おれの言葉にコクリと頷き門の扉をそろ~っと開ける。なんか不法侵入してるみたいだな……

 そのままなるべく足をたてないように歩く、がだ。

 

「おかえり」

「「っ!?」」

 

 右から声がしてそちらに向くと、おそらく兄だろう大学生くらいの凛々しい顔立ちをした男性が立っている。

 速攻で見つかったな。というか待ち構えてた感があるし、ずっと待っていたのだろう。

 さっきの緊張感はなんだったんだ………

 そして何故ユーノをとっさに隠すんだなのは。おれの計画が崩れそうだ。事前に話しておくべきだったか?

 

「お、お兄ちゃん」

「こんな時間にどこにお出かけだ? それにそっちの子は?」

「あの…えと……その………」

「えーっと、実はですね」

「あーら可愛い!」

「お、お姉ちゃん?」

 

 なのは兄に言い訳を敢行しようとした矢先、今度はいつの間にか背後に立っていたなのは姉にセリフを食われる。

 ますます話しにくい状況になってしまった。

 

「あら? なんか元気ないね? なのははこの子のことが心配になって様子を見に行ったのね」

「ええと、あの……」

 

 こいつは渡りに船! 元より考えていた言い訳とほぼ同じことをなのは姉が言ってくれたのでそいつに乗っかることにする。

 

「いやぁ実はそうなんですよ」

「雪道君?」

「それで、君は?」

「あ、自己紹介が遅れました。おれは咲良雪道、なのはと同じ学校でクラスメイト……友達です」

「ほほぅ、それで?」

 

 なのは達とこのフェレットを見つけたこと、夜になってなんとなく心配になってしまったこと、見に行ったらなのはと偶然合流したこと、フェレットが外に出ていてなのはの家で保護しようということになったこと、さすがに夜道を女の子一人で返すのはどうかとここまで送ってきたことと、考え付いたでっち上げ話をここぞばかりに披露する。

 嘘とは完全に出まかせを言うのではなく、本当と嘘を半々ぐらいで話すのが一番いい。その方が信憑性も増してそれっぽく聞こえるものだ。

 小3のうちからこんなことを思い描いて果たしておれはまともな大人になれるだろうか……

 

「気持ちは分からんでもないが、だからと言って内緒でと言うのはいただけない」

「ぅぅ」

 

 もっともなことを言うなのは兄。さすがにこればっかりは申開きようがない。

 

「まあまあいいじゃない。こうして無事に戻ってきたことだし、ナイト君もついてたし! それに、なのははいい子だからもうこんなことしないもんね?」

 

 そう兄を抑えてくれるなのは姉、あなたは女神か。

 

「うん、そのお兄ちゃん……内緒で出かけて、心配かけてごめんなさい」

「ん」

「はい、これで解決!」

 

 どうやら丸く収まったようだ。いやぁよかったよかった。さて、長居するわけにもいかないのでこの辺でお暇させてもらいましょうかねっと。

 

「それじゃあおれは帰りますんで」

「む? よければちょっと待ってくれないか? 折角なのはをここまで送ってもらったんだ、何かお礼がしたい」

「そうねぇ、折角のナイト君を手ぶらでってわけにもいかないか」

「いやいや、自分が勝手にやったことですしそこまでしてもらわなくても」

「まあ時間が時間だし、親御さんも心配するだろうから無理にとは言わんが」

「いや、うちは両親は出張的なので家にいないんでその辺は大丈夫なんですが……」

「じゃあ一人暮らしなんだ。ならなおさら手ぶらじゃ返せないなぁ」

「私も雪道君にはお礼がしたいし、ダメかな?」

 

 言いながら引き留めに掛かってくる高町3兄妹。

 ここまで言われてはあまり無碍にはできないよなぁ……それに最後のなのはの小首傾げながら微笑むのは反則だ。

 何がってそれ聞く? 言うまでもないでしょ察してください。

 

「んじゃ、お言葉に甘えて……」

「よしよし、そうこなくっちゃ!」

「そう時間は取らせないつもりだから安心してくれ」

「それじゃこっちなの!」

 

 そう言いつつ家の中へ案内される。

 

 《マスターって押しに弱いですよねぇ》

 《うむ、自覚してる》

 

 

 

 

 

 家へ通され案内されたのはリビング。

 外からの見た目とは裏腹に中は普通に現代の感じだった。当たり前と言われればそうかもしれんが……

 

「お母さーん、なのは帰ったよー」

「はいはーい」

 

 はのは姉に呼ばれて出てきたなのは母。

 腰のあたりまで伸ばしたなのはと同じ色の髪にすらっとした体。他にも語るべき点はあるが一言に要約すると、めっさ綺麗です。

 

「帰ったのかなのは」

 

 その後ろから出てきたのはなのはの父だろう。

 ふむ、なのは兄とかなり似ているな。兄と姉の髪の色はこの人の遺伝か、それにしてもまたかっこいいな。

 なんだなんだ、この家は美男美女しかいないのか? あれ、この感想になにかデジャヴを感じる。

 なんかこう、思い出せそうで思い出せない。もどかしいぞ。

 

「あ、うん。ただいま。お父さん、お母さん」

「まったく、心配したんだぞ」

「そうね。でもその様子だと二人が解決してくれたのよね?」

「ん、ちゃーんと叱ったから、ね?」

「うん、ごめんなさい」

「それならいいさ」

 

 自分の記憶を必死にたどっているうちに話が進んで行っていることに気付く。

 やばい、挨拶するタイミングを逃してしまった。ここは話題を自然に振ってくれるようになのはにアイコンタ―――「あら、そのなのはが抱えている子は?」―――ユーノてめぇ………!

 計らずしてユーノに話題をかっさらわれてしまう。なのはのご両親はすっかりユーノに夢中のご様子。あ、一応けがしてるんでほどほどでおなしゃす。

 いやいやそれはともかく……これはもう自分から出ていくのは至難の業だ!

 どうする? このほんわか空気をぶち壊してでも出るべきか?

 

「それで、さっきから難しい顔をしているそちらの子はどちら様?」

 

 おお、なのはのお母さん、おれの存在は見えてないわけじゃなかったのね・・・!

 ユーノのほうが先に気になってちょっと保留になっただけだったんだね! それはそれで涙出そう、泣かないもん。

 

 

 そんなわけで事情説明である。もちろんさっきのでっち上げ話。

 ついでにケーキなんかもごちそうになる。なにこれすごい美味い。

 

 

「なるほど……なのはがお世話になったね」

「たまたまでしたし、大したことでは……」

「ううん、それでもありがとう」

「いえ……」

 

 普段人とあまり話さないからかこう褒められるとなんか居心地が悪い。

 なんか隣でなのははニコニコこっち見てるし、照れくささアップなんだが。

 

「そうだ、ここまで話しておいて自己紹介をしてなかったね。僕はなのはの父、士郎だ」

「私は母の桃子です」

「兄の恭也だ。長男、兄妹の中で一番上になる」

「姉の美由希。長女で真ん中になるね」

「はい、よろしくお願いします。あ、自分を呼ぶときは名前のほうで構わないので」

 

 名前を覚えるのは得意ではないが、頑張って覚えなきゃな。顔さえ見てれば覚えれる……はず!

 しかしこの母の名前、やっぱりどこかで………

 

「……うーん」

「お母さん? どうかしたの?」

「いえね、なーんか雪道君とは初めて会った気がしなくて」

「お母さんもそう思ったの? 実は私もなの」

「あら、なのはとは気が合うわね♪ でも思い出せないのよねぇ」

 

 どうやら向こうもおれに見覚えがあるらしい。偶然にしてはできすぎているし、会ったことがあるのは間違いなさそうだ。

 オレンジ色の髪、ツインテ、女の子、両親に3人兄妹………ん? 待て、ちょっと思い出してきたぞ。

 しかしおぼろげでいまいち自信が持てない。ここは話す前にエリスに確認を取ってみよう。

 

 《なあエリス。おれ達ってこの人たちに前に会ってないか?》

 《む、そう言われれば。少し待ってください》

 《おう》

 

 エリスは心はあるがデバイスだ。人間とは記憶の仕組みが違うし、もしかしたらエリスなら覚えているかもしれない。

 

 《ふむ、確かに会ったことがありますね》

 《マジか! いつだ?》

 《数年前、小学校に上がる前です。覚えていませんか? スーパーの帰りに話しかけた女の子のこと》

 《えーと…………あっ!?》

 《思い出されました?》

 《ああ、思い出したよ。いっちょまえに他人の家庭事情に口出したあれな・・・》

 《そうです。しかし随分と奇跡的な再会をしてますね》

 《それはそうだが、気まずいなこれ》

 

 そうだ、あの時の女の子だ。どうして今の今まで思い出せなかったのか、言い出しにくさMAXだ。

 余談だがその時のことはおれの中では黒歴史のひとつだ(忘れてたけど)。思い上がりもいいバカな行動だったなぁ………

 

「あっ! 思い出したわ! 前になのはを連れてお店まで来た男の子!」

「「「「あぁ!!」」」」

 

 あう、こいつはバッドタイミング。

 桃子さんの一言でどうやら他の皆さんも思い出したらしい。できることならそのまま忘れててほしかった。

 

「雪道君、君は覚えているか?」

「ええ、つい先ほどおれも思い出しました」

「あの時はすぐに君が出て行ってしまって言えなかったが今あらためて言わせてくれ、ありがとう」

「ええ、本当に。すごく助かったわ」

「いえそんな! むしろおれみたいなのが出しゃばった真似をしてしまって申し訳ないというか……」

「そんなことないよ! もし雪道君がああ言ってくれなかったら、私たちは今もなのはの気持ちに気づいてあげられなかったと思うし」

「ああ、感謝してもしきれないくらいさ。その時といい今日といい、かなり世話になってしまっているな」

「にゃはは、そうだね。本当にありがとう」

 

 そのあともしばらく感謝の言葉が続き、雑談などもそこそこに時間が時間なのでそろそろお暇することにする。

 高町一家総出でお見送りしてくれるらしい。

 

「本当に送らなくてもいいの?」

「はい。それにさっきも言いましたがこれでも体は鍛えてるほうですし、大丈夫ですよ」

「ほぉ。それだけ自信満々に言われると気になるな。今度手合せしてくれ」

「お兄ちゃん、さすがにそれは」

「いえ、恭也さんの強さにはおれも興味あるし是非」

 

 おっと、ここで話してたらさらに遅くなってしまうな。

 

「それじゃ、いろいろとごちそうさまでした」

「いえいえ、お店の方にもぜひ来てね。サービスするから」

「あはは、ありがとうございます。ではそろそろ」

「ああ、また遊びにおいで」

「はい、それじゃ」

 

 挨拶を交わし門を出る。すっかり遅くなってしまったので走って帰るとしますか。

 

「あの・・・雪道君!」

「ん?」

 

 走り出そうとしたその瞬間、後ろから呼び止められて振り向くとなのはが立っていた。

 なんだろう、忘れ物でもしたろうか?

 

「どした?」

「あ、えと……その……」

「?」

「あの時のは本当にありがとう。雪道君が引っ張ってくれて、すごく嬉しかった」

「まあ、どういたしまして?」

 

 お礼は先ほどから散々言われていたし、今さら否定するのもあれなのでそう返す。

 しかしまだ言いたいことがありそうだ。

 

「あのね……私、ちゃんと笑えるようになったかな?」

「あぁ……」

 

 この質問、あのセリフについて聞いてるのだろう。

 今の今まで忘れていたが、今日でバッチリ思い出している。

 

 

『今度笑うときは、心から楽しいときだけにしてくれよ』

 

 

 それが今実行できているかどうか、おれに確認してほしいって感じか。

 ………もちろんそんなものは決まっている。

 

「文句の付けどころがないくらい、いい笑顔だよ」

 

 言いながらサムズアップしてみせると、なのはは輝かんばかりの笑顔を見せてくれる。

 もうあの悲壮な感じも、ぎこちなさの欠片もない本当の意味で完璧な笑顔だった。

 

「それじゃ」

「うん! 雪道君、また明日!」

「おう、また明日。ユーノのことは頼んだ」

「任せてなの!」

 

 そう言葉を交わし今度こそ背を向けて走り出した。

 

 

 

 

 帰りの途中、今日のことを思い返す。

 まさかあの子と再会することになるとは思っても見なかった。

 出しゃばってしまったといろいろ後悔はしていたが、結果的にはよかったのだろう。黒歴史であることには変わらないが。

 

 《いいご家族でしたね》

 《うん、あれなら出しゃばった甲斐があったって感じだな》

 《マスターのお人好しもたまには役に立ちますね》

 《うっさいよ》

 

 エリスと会話しながら帰路を急ぐ。

 今日だけでいろいろ起こったが明日からはもっと大変そうだなと、考えながら走る。

 あと絶対明日は寝不足だ……

 

 

 




ご意見、ご感想のほどお待ちしております。
今回から段落下げを使用してみました。面白いのはもちろん、読みやすいものを作っていければと思っています。
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