襲い来る衝撃をラウンドシールドで受けながら様子をうかがう。光と衝撃が目の前を覆い尽くし、それが一度収縮する。
これは……でかいのが来る!?
「2人とも! 今すぐ離れろ!!」
直感でそう悟ったおれはとっさに声を上げながら、自分もシールドを切りながら後ろへと飛ぶ。
2人に叫んだ数秒後、鼓膜を破るような轟音と共に馬鹿でかい光の柱が空へと上がった。
008 3人目の魔法使い
なんて爆発だ。魔力の感じからしてシャレにならない威力があっただろう。なのはもフェイト、もちろんおれも共に大きく離れたので被害はないが……
2人のデバイスはかなり損傷している。これではまともな魔法は使えないだろう。
ジュエルシードは依然浮いたままだ。一番近いのはおれ、このまま回収するべきだろう。そうおれが状況を確認している間に、フェイトが素早く動きジュエルシードを手に収めてしまった。
だがジュエルシードは強い輝きを放ちフェイトを弾き飛ばしてしまう。
「フェイト!!」
アルフが人間の形態に戻り、素早く吹き飛ばされたフェイトを受け止め地面に降りる。
いったい何が―――いや、考えても見ればつい先ほど暴走かどうかは分からないが強烈な爆発をしたばかりだ。危険な状態であるのは間違いない。
「ありがとう、アルフ」
「まだ行く気かい!? ダメだ危ない!」
アルフの手を振り払ってジュエルシードを回収しようとするフェイト。だがその行く手を遮るように立ちはだかる。
「どいて」
「そうは行くかよっと」
ライオットトリガーを振るってフェイトを強引にバックステップさせる。当てるつもりは毛頭ない。
しかし先ほどの戦闘などで随分消耗していたのか、そのままふらふらと力なく後退していき、再びアルフの腕の中へ逆戻りする形になる。
「あんた!!」
「おい、アルフっつたよな。そのままフェイトをしっかり抱いとけ」
「え?」
「なのはとユーノも、こいつらが妙な真似しないようしっかりと見張っとけ!」
「雪道君? 一体何を……?」
ニッと笑って見せ、呆気にとられている3人を尻目にジュエルシードの所へ走り出す。
「まさか!? 止すんだ雪道!」
先ほどの様な危険な場面を見てしまっては、衝撃で吹き飛ばされ消耗している2人には任せておけない。ここは一番消耗の少ないおれが行くべきだと思う。
ユーノの静止の声が聞こえるが無視して走り、先ほどフェイトがやったようにジュエルシードを両手で包み込む。手の内側から光があふれ弾かれそうになるのを必死でこらえ、収まるように魔力で抑え込みにかかる。
「なんて無茶を!」
「ぐぅ!! エリス……細かい調整は任せる!!」
「了解です!」
「雪道君!!」
「来るな! もし失敗して爆発でもしたら巻き込まれる!!」
「そんな……!」
格好つけてやってみたはいいが、マジでシャレになってねぇ!
少しでも気を抜いたらフェイトと同じく弾かれてしまいそうだ。歯を食いしばって必死に魔力を注ぎ、抑え込む。あまりの膨大な力のせいで手からは血が滲む。最初は立っていたが次第に辛くなってきて、膝をつく。魔力の使い過ぎで徐々に気が遠くなり、手に力が入らなくなってくる。
くそっ……このままじゃ………
なのはやフェイトほどの力を持ってないおれじゃ、やはり荷が重すぎたのだろうか………意識が飛ぶか飛ばないかの瀬戸際、視界の隅に何かメッセージの様なものが出ていることに気付く。
これは一体なんだ……? 今までこんなものは見たことがない。エリスは特に何も言わない。でもこの状況で出たってことは何か、起死回生の一手である可能性は高い。
頼む……おれに力を貸してくれ、エリス!!
藁にもすがる思いで絞り出すように、告げる。
「アウェイクン!!」
「Awaken」
その言葉が紡がれた瞬間、自分の中に魔力が溢れ出てくるのがはっきりと分かる。普段ではありえないほどの―――明らかにおれの保有量を優に超える魔力が満ち満ちる。
どういう仕組みかは知らないが……これならいける!
改めてジュエルシードを抑え込みにかかる。
「止まりやがれぇ!!!」
少しずつ手の中の光が収まって行き、ついにその光が消える。それと同時におれの中に溢れていた魔力が嘘のように消え、おれはその場にうつ伏せに倒れ動けなくなる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
上手く行ったのか……?
消耗が激しすぎてしゃべることはおろか、指1本動かせない。やっとの思いで顔をジュエルシードを持っていた手の方へ向けると、すぐ傍にはフェイトが立っている。
なのははアルフに牽制されて動けないのか、近くにはいなさそうだ。フェイトはゆっくりとおれの手の中にあるジュエルシードを回収し、おれにだけ聞こえる声で呟く。
「ごめんなさい……」
そのままフェイトとアルフは去って行き、おれの意識はそのまま闇の中へ沈んだ……
高町 なのは Side
雪道君からジュエルシードを取った後、フェイトちゃんとアルフは何も言わずに去って行く。
また……分かりあうことができなかった……
しばらくそれを見送っていたが、ふと我に返って雪道君の傍まで慌てて駆け寄る。
ぼーっとしてる場合じゃないの!
「雪道君!? 大丈夫………じゃないよね、どうしよう!?」
「なのは落ち着いて! ともかく雪道の家へ運ぼう。結界を張りながら移動するから、なのはは雪道を抱えて飛んでくれる?」
「う、うん! 分かったの!」
なんとか雪道君を背中に背負い、フライヤーフィンを広げて飛ぶ。
雪道君の家へ飛ぶ途中で、彼の意識が戻る。
「うっ……?」
「あ、気が付いた?」
「おれは―――そうか、ジュエルシードを持っていかれた後に気を失って……」
「今お家に向かって飛んでるから、もう少し我慢してね?」
「悪い……」
「ううん。全然大丈夫」
そう言いながら彼の家へと急ぎ飛ぶ。
家へ到着するころには雪道君もなんとか立っていられるくらいには回復していた。
「運んでもらってありがとう、なのは」
「お世話をかけてしまって……」
「ううん。いつかは雪道君に運んでもらったし、いつも支えてもらっているから恩返しができてよかったの」
「別にそんなの気にすることじゃないけどな」
「それよりも、1人で大丈夫?」
「ああ、ここまで来ればなんとか。なのはも早く家へ帰ったほうがいい」
「治癒魔法はかけてはおいたけど、しばらくはあんまり無茶はしちゃダメだよ」
「分かってるよユーノ。それじゃまたな」
「うん、また明日」
私は手を振って家へ帰るために歩き出す。雪道君は手を振ろうとして、やめて家へと入って行った。
少し見えた彼の手は、ユーノ君の治癒魔法でだいぶマシにはなっていたけど、ボロボロだった。
帰宅して、家族の皆に心配かけたことを謝り遅めの夕飯を食べる。
お風呂に入って、お母さんからおやつをもらって自分の部屋へ。
机の上でレイジングハートを見ているユーノ君。今日の戦いでレイジングハートをひどく傷つけてしまった。
「ユーノ君。レイジングハート、大丈夫?」
「うん。かなり破損は大きいけど―――きっと大丈夫! 今、自動修復装置をフル稼働させているから明日には回復すると思う」
「うん」
「なのはは大丈夫?」
「大丈夫、レイジングハートが守ってくれたから。ごめんね、レイジングハート……」
そう呟きシートの上に乗せてあるレイジングハートを見る。私がもっと上手にできればレイジングハートも、それに雪道君もあんなにボロボロにならないで済んだかもしれないのに。
そう思うと胸が痛くて、自分が情けなくて、やりきれなくなる。
「ごめんね……雪道君……」
誰にも聞こえない声で、そう呟いた………
翌朝。普段なら起きないような時間にふと目が覚めてしまった。もう1度目を瞑ってみるが、とても寝れる気がしない。
私は布団を抜け出し、ユーノ君起こさないように気を付けながら着替えて部屋の外に出る。家を出てそのまま道場へ向かう。特に理由はないけどなんとなく行きたくなった。
しばらくすると、お姉ちゃんが朝のロードワークから帰ってきた。
「あれ? なのは?」
「あ、お姉ちゃん」
「どうしたの? すっごい早起きさんだ」
「あはは……うん。ちょっと目が覚めちゃって」
「そうなんだ」
何気ない会話を交わす。そういえば、いつも一緒に稽古しているはずのお兄ちゃんの姿が見えない。
「あれ? お兄ちゃんは?」
「うん、今朝は父さんと一緒に少し遠くまで走りに行ってる」
そういいながら壁に掛けられている短めの木刀を手に取るお姉ちゃん。これから稽古をするのだろう。なんとなく、見ていたくなった。
「あの……お姉ちゃんの練習、お邪魔じゃなかったら見ててもいい?」
「あっはは! あんまり面白いものじゃないと思うけど。いいよ、別に」
「うん、ありがとう」
壁際に正座して見学する態勢を整える。少ししてお姉ちゃんの素振りの練習が始まった。
その間に考えてしまうのはやはり、フェイトちゃんのこと。しばらくするとユーノ君から念話が入ってきた。
《なのは?》
《ユーノ君?》
《どうしたの? こんな朝早く》
《うん。ちょっと目が覚めちゃったから》
お姉ちゃんの練習を見ている間に考えていたことを、話したほうがいいと思った。
いや、聞いてほしいのかもしれない。
《それでユーノ君……私、考えたんだけど》
《ん?》
《私、あの子のこと……フェイトちゃんのことが気になるの》
《気になる?》
《うん―――あ、これって雪道君にも話した方がいいよね。もう起きてるかな?》
《結構早起きするって言ってたし、多分》
《じゃあちょっと話しかけてみるね。えと……雪道君? 聞こえる?》
《なのは? こんな朝早くに念話なんてどうした?》
無事通じたことに安心する。2人には自分の考えを聞いてほしいとそう思った。
だから、今考えていること話し始める。
Side out...
早朝、いつも通りの時間に目が覚めたはいいものの、完全に時間を持て余していた。
昨日のジュエルシードを抑える時にかなり無茶をした自覚はあったので、ユーノに言われたとおりに今日の朝はゆっくりとするつもりだったのだが……
「いつもの習慣ってなかなかに抜けないもんだな」
「毎朝この時間に起きていましたし、仕方ないでしょう。でも訓練するのは」
「分かってるって。さすがにそこまで自分の体を苛め抜く趣味はないよ」
洗濯などの家事はすでにやり終えてしまって、リビングの椅子に座ってぼーっとする。そうだ、エリスには昨日の〝あれ〟のことを聞いておく必要がある。
「なぁエリス、1つ確認したいことがあるんだけど」
「なんです?」
「昨日ジュエルシードを止める時になんかボイスコマンドとか出てきてさ、それを実行したらおれの魔力が一時的に大幅強化されたんだけど」
「あれ? そんなことがあったんですか?」
「いやいやあったんですか?って、あれエリスがおれにやるように出したんじゃないの?」
「申し訳ないのですが……実はジュエルシードを止める時の前後の記憶が不明瞭で……」
「そうなのか?」
つまりあれはエリスの意思とかとはまったく関係なく出て来たってことになる。
だがそうなれば実験してみるのみだ。上手くいけばおれもなのはとそう変わらない強さを身につけることができる。
フェイトとだっておれだけでも渡り合えるはず。これはかなりでかい。
「無茶するなって言われてるけど、これだけは少しやらせてもらうかな」
「あまりおススメしたくないのですが、仕方がありませんね」
エリスの了承を得て、庭に出る。念のためにバリアジャケットを展開して準備万端。いざ!!
「アウェイクン!」
………
………………
………………………
「何も起きませんね」
「そうだな」
何も起きない。
昨日の爆発的な力の片鱗すら見えない。これでは朝っぱらから庭先で叫んでる変な奴だ。結界のおかげでご近所には迷惑は掛かってないと思うけど。
謎を解明するつもりがより一層深まってしまった。分かったことと言えばあの時の再現ができないことぐらいか。バリアジャケットを解除してとぼとぼと家の中へ入り、再び椅子に座る。
そうして無駄な時間を過ごしていると、なのはから急に念話が入ってきた。
《えと……雪道君? 聞こえる?》
《なのは? こんな朝早くに念話なんてどうした?》
《あ、やっぱり起きてたんだ。おはよう》
《おお、おはよう》
《おはよう雪道》
《ユーノもか、おはよう》
《おはようございます、お二人とも》
それぞれが挨拶をし終える。こんな時間に念話をもらうなんて初めてのことだ。何かあった―――と言えば昨日の事しかないか。
《もう手は大丈夫?》
《ユーノの治癒魔法のおかげでなんとかな》
《雪道、分かってるとは思うけど》
《だーもう分かってるって! エリスにも散々釘刺されてるし!》
《そういう事ですので》
《あははっ》
なのはの笑い声が聞こえる。多少は元気を取り戻してるようでなりより。
《それでね。ユーノ君にはさっき言ったけど、私やっぱりフェイトちゃんのことが気になるの》
《話したい内容はそれか》
《うん》
昨日の戦いでフェイトはおれ達に自分の事情を話そうとしてくれた。
全部教えるつもりなんてなかったとは思うが、聞く耳持たずに斬りかかってきたことを考えればかなりの進歩だ。
話の通じない相手ではないと、そう確信するには十分だった。
おれは黙ったままなのはに話の続きを促す。
《すごく強くて、冷たい感じもするのに……だけど綺麗で優しい目をしてて。なのになんだかすごく……悲しそうなの》
なのはもやはり気付いていたのか。おれも、彼女の悲しそうな目には初めて会った時から気付いていた。最初に会った時、ボロボロのおれ達を見つめてきたあの目。やり遂げなければならないという使命感の奥底にある、悲しい感じ。
きっとあの目を見ていなければ、おれはなのはのこの意見を切り捨てていただろう。あいつは敵以外の何物でもないと。そう単純に考えることができたら、どれだけ楽だっただろう。
《きっと理由があると思うんだ、ジュエルシードを集めてる理由。だから私、あの子と話をしたい。だから、そのために……!》
《そっか》
話を聞きながら、おれは微笑んでることに気付く。彼女は明確な敵じゃない。その考えのおかげで随分と苦労する羽目になってはいるが、今はむしろそれでよかったと思ってる。
《なら、もう一度ちゃんと向き合わないとな》
《え?》
《どうせジュエルシードを探してたらまた会うんだ。機会はまだまだある》
《……そうだね。あの子たちがジュエルシードを集める理由も知りたいし》
《なんだユーノ。素直じゃないな》
《べ、別にそういう訳じゃ……》
《そうやって茶化すマスターも素直じゃないですよ》
《ぐっ……》
《ありがとう、2人とも》
まだおれ達は3回しか会っていない。どんなに反発し合ってもいい。もっと会ってみないと見えてこないことだってあるはずだ。おれ達とフェイトとの関係はまだ、始まってすらいない。
そしてきっと、なのははフェイトと……いや、言うまでもないか。
《さて、話してる間に随分と時間が経ってるな。そろそろ学校の準備をするか》
《あ、うん。そうだね》
《じゃあまた後でな》
《うん、学校でなの》
なのは達との念話を打ちきり、立ち上がって準備を始める。これからどうなるなんて分からないけど……ともかく、おれも気合を入れて行かないとな。
??? Side
時空間内のとある船。そのブリッジに1人の女性の声が響き渡る。
「みんなどう? 今回の旅は順調?」
「はい。現在第3船速にて航行中です。目標次元には、今からおよそ160ベクサ後に到着の予定です」
「前回の小規模次元震以来特に目立った動きはないようですが、2組の捜索者が再度衝突する危険は非常に高いですね」
「そう」
彼女の言葉でクルーの男性陣が次々に答えてゆく。彼女はブリッジの一番上、つまりは艦長席に腰をおろす。
「失礼します、リンディ艦長」
1人の女性クルーがカップを持って彼女……リンディの近くまで歩いて行く。リンディの前にカップを置き、そのまま後ろへ下がる。
「ん、ありがとねエイミィ」
カップを手に持ちゆっくりと傾けて飲む。それだけの仕草だが非常に様になっている。
「そうねぇ、小規模とはいえ次元震の発生はちょっと厄介だものね。危なくなったら急いで現場に向かってもらわないと。ね、クロノ?」
そう言いつつ彼女は彼らの中でも小さめの彼、クロノ・ハラオウンに目を向ける。見た目で騙されてはいけない。これでも彼はれっきとした管理局員の執務官なのだ。
ちなみにクロノとリンディは親子だ。
「大丈夫、分かってますよ艦長。僕はそのためにいるんですから」
そういいながらクロノは手に持ったカード―――彼の待機状態のデバイスを掲げて見せた。
Side out...
学校も終わり夕方、なのはと共に帰路を歩く。今日もアリサと口をきいてもらえなかった……自分の蒔いた種とはいえ結構きつい。少し板挟み状態のすずかには申し訳ない限りだ。
特に会話もなく歩いていると、ユーノが曲がり角から顔を出す。その首には、レイジングハートがかけられている。ユーノはなのはの肩に乗り、レイジングハートが治ったことを伝えてくれた。
「レイジングハート、治ったんだね……よかったぁ」
「Condition green」
光りながらそう告げるレイジングハート。なんとも頼もしい限りだ。
「よかったよ、本当」
「また、一緒に頑張ってくれる?」
「All right, My master!」
「ありがとう」
そう言って胸に大切そうに抱く。なのはの肩を叩きながら、おれは先に歩き出す。彼女も微笑みながらついてくる。
そうしてしばらく歩いていると後方から魔力を感じ、おれはなのはと共に振り返る。
「ジュエルシード……」
「ああ、この方角だと公園の方か?」
互いに頷き合い、その方向へと走り出した。
公園に到着するとともに、ユーノが封時結界を展開する。今度の暴走はどうやら木を媒体にしたらしい。手が生えて顔ができて、まるでおとぎ話に出てきそうな木の化け物って感じだな。
おれとなのはもバリアジャケットを展開して、それぞれの武器を構えて向かい合う。後方から金色の魔法弾が飛んでくる。どうやらフェイトも来たらしい。
足が無いためそのまま直撃するかと思われた魔法弾は、少し手前に展開したバリアのようなものに遮られ届かない。
「ほぉ、生意気にバリアまで張るのかい」
「いままでのより、強いね。それに……あの子もいる」
フェイト組のそんな会話が聞こえてくる。今回はいつも以上に気合を入れる必要がありそうだ。
一番初めに動いたのは木の化け物。地面を盛り上がらせて木の根で攻撃してくるつもりか。
「ユーノ! 今回は隠れてろ!」
その言葉にユーノはすぐさま近くの茂みに体を隠す。木の化け物の標的は、一番近くにいるおれとなのは。
地面を突き破り出てきた木の根はおれ達を叩き潰そうと上から振り下ろされる。おれはクワイエットウィング、なのははフライアーフィンを展開して上空へ回避。
「翔んで、レイジングハート――もっと高く!」
「All right!」
「エリス、おれ達はあれの後ろに回り込む!」
「了解です!」
翼を羽ばたかせなのははより上空へ、おれは少し遠目に離れながら後ろへと移動する。フェイトはバルディッシュを構え正面に立つ。どうやらバルディッシュも治ってるみたいだな。
「アークセイバー……行くよ、バルディッシュ」
「Arc saber」
バルディッシュから光の刃が放たれ、地面の木の根を切り裂きながら本体へ向かう。が、やはりそれはバリアに阻まれる。
「Shooting mode」
「いくよ、レイジングハート!」
レイジングハートの形状が変化し砲撃を撃つ体制になる。あのバリアを貫くにはそれ相応の攻撃がいるだろう。よし、実践では初めてだがおれもここはあれを使うとしよう。
ライオットトリガーを向けながら魔力を集め始める。
「エリス、スタンバイ!」
「はい!」
おれの前に魔方陣が輝く。だが撃つにはまだ若干の時間がかかる。先になのはの準備ができたのか、レイジングハートの先に魔力の塊ができる。
「撃ち抜いて――ディバイン!」
「Buster!」
桜色の砲撃が放たれ上からバリアへ衝突する。砲撃の重みのためか若干地面へと沈む木の化け物。苦しそうに呻いている。おれも放つまで……あと少し!
フェイトは何度か手を前に出して動かし、魔方陣を展開する。
「貫け轟雷!」
「Thunder smasher!」
その魔方陣へバルディッシュを向けると、金色の砲撃が放たれ正面からバリアに激突。より一層苦しそうに呻き、バリィン!!というという音と共にバリアが崩壊する。
2人の攻撃は本体までは届いていない。だが今度はおれの準備が整った!
「駆け抜けろ旋風!」
「Cyclone punisher!」
魔方陣から紅の閃光が走り、木の化け物へと向かう。少しでも砲撃の勢いを弱めようと木の根を出すが、木の根は近づくだけでバラバラに切り刻まれて進行を阻むことができない。
サイクロンパニッシャー。
なのはのディバインバスターを見て思いついた、おれの砲撃魔法だ。魔法ダメージはもちろんのこと、風による斬撃効果のおまけ付きだ。そのため、木の根はおれの砲撃本体に触れることは敵わずに切り刻まれたのだ。
一切阻まれることなく突き進んだおれの攻撃は見事直撃、本体を消滅させるとともにジュエルシードが中に出る。
「Sealing mode, set up!」
「Sealing form, set up」
レイジングハートとバルディッシュが共にシーリングモードに移行する。おれも参加したいが、サイクロンパニッシャーを撃った反動ですぐには動けず出遅れた。今さら起動させても2人に追いつけそうにないので、ここは静観することにする。
なんとも情けねぇ……
「ジュエルシード、シリアルⅦ!」
「封印!」
しかしジュエルシードはそれを拒むかのように、目を開けていられないほどの強い光を発する。昨日の爆発前のそれに似ているが、今回は発光するだけで爆発の気配はない。
光が収まった後、おれはなのはの傍まで行く。フェイトも空を飛び、おれ達の正面まで来る。
「ジュエルシードには、衝撃を与えたらいけないみたいだ」
「うん。昨夜みたいなことになったら私のレイジングハートも、フェイトちゃんのバルディッシュも可哀そうだもんね」
「それに、おれももうあんな無茶な真似は2度とごめんだ。いくら命があっても足りないぜ」
「………だけど、譲れないから」
「私達は、フェイトちゃんと話をしたいだけなんだけど」
レイジングハートとバルディッシュがデバイス状態に戻る。ここで戦っては今日の朝に話し合ったことが無駄になってしまう。なんとか話を聞いてもらう態勢に持ち込まないと―――
「私が勝ったら……ただの甘ったれた子じゃないって分かったら、お話聞いてもらえる?」
「ああ、そうだ。なのはが勝ったら……………は?」
首を真横に向けなのはを思いっきり見てしまう。表情は真剣そのものだ。
うん、聞き間違いか? 今なのはのやつ、勝ったらって……いや確かに普通に話しても聞いてもらえないかもしれないけど。
何? 朝のあれはそういうことを言いたかったの? いや確かにおれなのはの言葉遮って最後まで聞かなかったけどさ。拳で語り合うってやつ? でもそれって男同士でやるもんじゃないの?
一応フェイトの反応も窺う。特に了承した感じではなさそうだが、やる気は満々ですって顔をしてる。お、おかしいな。これっておれが間違っているんだろうか……誰か教えてくれ。
無駄な思考に囚われているうちに、いつの間にか動き出して距離を縮める両者。
「あっ! ちょっ!!」
静止する暇もなく、2人の距離はみるみる縮まって行く。なんか置いてけぼりにされた気分・・・じゃなくてだな! 慌てて追いかけるが間に合うはずもない。2人のデバイスがぶつかる!
―――が、それは敵わずに終わる。
2人の間に青色の魔方陣が現れ、そこから1人の男が出てくる。片手でレイジングハートをつかみ、もう片方の手に持ったデバイスでバルディッシュを受け止める。
「ストップだ!」
おれも翼を羽ばたかせて緊急停止する。なのほもフェイトも驚いた表情だ。多分おれも似たような顔をしているだろう。
「ここでの戦闘は危険すぎる―――時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ! 詳しい状況を聞かせてもらおうか!」
「時空……管理局………?」
まさしくそれは予想だにもしない、3人目の魔法使いの登場だった。
それと時空管理局って………なに?
ご意見、ご感想のほどをお待ちしております。
いつまでこのペースを保てるだろうか………