Cityの外よりも隠された場所   作:イエローケーキ兵器設計局

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 これは火力と装甲、機動力のインフレーションが激しい、まだ代理人達すら知らない世界のお話。そして、また一人、志願者が現れた。彼女は望んでこの地にやってきた。彼女は……この地に適応できるのだろうか。


固定気流
プロローグ


 

 

 新人はみんな3回、"固定気流"での訓練を受ける。基地上空に常に発生している固定気流はいわゆるジェット気流なのだが、その位置と向きは固定であった。東西南北に張り巡らされた固定気流への進入に都合がいい地点が私達の基地である。

 

『しっかりついてきて!』

『は、はい!』

 今日はLa-11 "ファング"の入隊試験2日目。随伴するミーミルとハルペスに左右を挟まれながら先行する嚮導機についていく彼女。攻撃してこないどころか随伴してくれるとはいえ、災獣に左右を挟まれるのは、慣れるまであまり心地が良くないかもしれない。

『嚮導機は今日も隊長かぁ……』

『どうした、サイクロプス。』

『いや、彼が心配で。』

『新人が彼を巻き込んで事故るかもってことか?』

『それはないとわかってはいるんだけどね……』

『彼なら巻き込まれるどころか助けるだろうな。』

 固定気流の中はとても早い流れができている。通過すると持続的に速度がかさ増しされる……のだが、速度に耐えられずに空中分解する機が多く、私達"ATLAS部隊"だけが通行許可を得ていた。

『よーし、エンジンを切って!』

『はい!?』

『過回転を起こして壊れるようなチューンはしていないが、それでも危険が伴う。調整が終わるまではエンジンを切ってフェザリングしておくように。』

『了解!』

 ハルペスとミーミルを背に彼とファングが固定気流に入っていく。災獣たちは外で待機。

『うわ!あわわ!』

『落ち着いて。まずは安定。』

 

 遠くから哨戒飛行しつつ見ているがあのLa-11"ファング"、この部隊に志願する前は赤色十月にとって軽戦闘機型DOLLSの秘密兵器だったらしい。温存されて出番が回ってこないからと修行のつもりで来たらしい。そういえば……赤色十月のある教官が一枚噛んでいると聞いたような。

『あの子も大酒飲みだったりするのかしら?』

『さあな……予算確保が大変になるから、できればよしてほしいのだが……』

『うーん……あの安定感……部隊員としての素質はあると思う。』

『確かに悪くないとは思う。まあ、彼が彼女と決めることだからなぁ……』

 

 

『訓練終了、お疲れ様。格納庫でARMSを所定の位置に戻した後、宿舎で休んで。』

『了解……』

 ヘロヘロになった新入りを、先に着艦してして見ていた。

『隊長、もう本訓練させるんですか?』

『見込みはあると思うけれど?』

『まだ仮採用ですし、本人がやるとは……』

『赤色十月はこの部隊のことを知っていて、その上で送り込んできたんだ。本人が望んでやってきたならそれ相当の行動を取らないと。』

 彼女も黒い制服を着る日が来るのだろうか。来るだろうな。きっと。

 

 訓練時の教官機用ARMSはF4GやA-26X、Ⅷ号戦車F型等が採用されている。飛行空母型と重戦闘機型の両方を使える人材はそもそも彼しか居ない。

 

『お疲れ様です隊長!』

『お疲れ様。』

 廊下から聞こえる彼の部下たちの声。作戦計画室兼執務室でパイプ椅子に座りながら事務机に向かう私と、パイプ椅子にこれから座り、事務机に向かう彼。密室ができようとしていた。

 

 黒い制服の少女。これでもれっきとした男性であり、私の夫でもある。

『お疲れ様、隊長さん。』

『お疲れ、サイクロプス。』

『二人っきりのときは姉さんって呼んでほしいな。』

 同時に弟でもあったりして。

『お疲れ様……姉さん……』

『ん、それでいい。』

 

 

 ここは湖に浮かぶ巨大航空戦艦。半ば水没した遺跡のような様相を呈する施設こそが本拠地だけれど、出撃頻度が高いから普段はこの船、浮き要塞に居る。

 

『1番から6番、砲門開け!』

『あれ?作戦前なのに砲門を開くの?』

 翌日、今日も非番なので執務室で読書をしていた。事件はこういうときによく起きる。

『目標、0-4-5(北東)!距離12500!高度3000!対空榴弾よーい!』

『サイレンくらいは鳴らしてよね!』

『撃てぇ!』

 爆風。レールガンと火砲のハイブリッドだからどうしても爆風は発生する。窓を閉めておかないと……想像するだけで恐怖だ。




 各章一回はこのようなプロローグを挟む予定です。そして次回は、唐突ながらLa-11"ファング"がこのATLAS部隊に志願した理由を紐解いていきます。
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