Cityの外よりも隠された場所   作:イエローケーキ兵器設計局

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『災獣の技術というものは時に人間の理解を凌駕する。』
『我々は自らの身体で以てその技術を獲得する。』
『死を恐れろ。喪失は人類にとっての喪失でもある。』
『我々が休んでいいのは作戦が終わったときのみだ。』


第二話 夜間飛行─上

 

 

 

 

隊長『それでは、本作戦を説明する。』

 ここは艦内、某所。プロジェクターによって地図が投影されている。場所は赤色十月学連領域内部。私の生まれ故郷。

隊長『依頼者は赤色十月の指揮官……"オペレーター"。我々は闇夜に紛れて低空を高速で侵入、正規軍と協力して地方過激派武装組織の無力化を図る。』

 

 作戦に参加するのは私と、MiG-15、隊長、そして……

Po-2『私用で遅くなった。済まない。』

 Po-2教官は……顔が微かに赤い?

隊長『二人にはどのARMSを使うか選んでもらう。Po-2教官、どうぞこちらへ。』

 

 ARMSのリストを見つつ、ひそひそ話が聞こえかけたのでちらりと垣間見ると隊長が教官にゲンコツを落としていた。うわー…痛そう……。普段は無敵の教官が頭を押さえて涙目になってる……。なにか反論しようとしてもう一発食らったらしい、鈍い音がまた……。

 

 気を取り直して。リストには実に様々なARMSが載っている。

・La-7 (主武装:連装20mm機関砲)

 先輩……か。無難ではあるなぁ。

・Yak-9K (主武装:45mm機関砲)

 うーん……他局のARMSなのは大丈夫なのだろうか?

・IS-2 (主武装:122mmカノン砲)(空輸)

 なぜ戦車型ARMSがリストに……空輸?

・Il-2M3 (主武装:23mm機関砲)

 ま、まあこれも無難なものではあるなぁ……?他局だけれども。

・P-39 (主武装:37mm機関砲)

 ……???レンドリース???

・Pe-8(武装:FAB-5000)(試作機大破)

 ……二重線で消してある。そもそも他局……。

 

 ふーーむ……参ったな。

15『どうする?ファング。』

私『どうしましょうかね。』

私『隊長、質問が。』

隊長『なんだろうか。』

私『IS-2はどのように輸送するのですか?』

隊長『ああ、輸送機を用意する。乗り心地はあまり良くないかもしれないがな。』

 ふむ……。

私『ファゴットは?』

15『うーん……決めかねてる。』

 

教官『私は輸送機に乗ればいいのね。』

隊長『はい、パラサイトファイターの投下後はそのまま近接航空支援に移ってください。』

教官『……てことは、守ってくれるのよね?隊長?』

隊長『……善処します。』

 彼は一度守れなかった。そして今度は立場が変わった上で再度挑もうとしている。今度は私達も居るが。

 

15『決めた。IS-2に乗る。』

私『地上戦力?』

15『エアカバーはよろしく。』

私『うーん……となると……』

 La-7かYak-9Kか……火力投射能力……弾幕で押すか、強力な一撃をお見舞いするか……

隊長『あ、そうそう。防御用の試作品も一種類積むから決まったら教えて。』

 防御用の試作品?何を積まされるんだろう?

隊長『これがスモーク缶。エンジン停止を誘発する成分が含まれるスモークを放出する。有効な濃度を維持できるのは……ざっと計算して1000m。5秒間だけ1000mの質量のない仮想上の帯を垂らして飛行するようなものだと思って。』

隊長『こっちはフラッシュライト。非常に強力な光を瞬間的に後方に向けて発生させて一時的に失明させる……まあ、超強力なストロボライトだね。』

隊長『極めつけはこれか。』

 発煙缶詰、ストロボライトの次は……何これ?

隊長『テスラコイル……私はそう呼んでいる。まあ、相手の制御を奪う放電兵器としか言いようがないのだけど。』

 一時的に制御が聞かない状態にする。機首上げ運動中だったならループしてしまうし、機首を下げての下降中ならそのまま地面に真っ逆さまだという。

 

 説明を聞きながら何を持っていくか悩んでいたら視界の端を蒼と白の何かが走り抜けていった。まさか……ね?

 

 私はLa-7のARMSを選んだ。ウイッグを着けてLa-7の制服を着る。今から私はLa-200やLa-11ではなくなる。

『……私はLa-7だ。』

 20mm機関砲に徹甲弾ベルトを装填。フラッシュライトをARMSの主翼下に2個括り付け、エレベーターで飛行甲板へ。

『……おぉ……。』

隊長『各隊員へ。君たちのコールサインを説明する。TB-3 bisのパイロット、君はルサルカAだ。』

Ra『了解。』

 姿は見えないけれど、教官が居る。

隊長『IS-2、君は……あー……あった、アンナC(クロス)。』

Ac『……了解。』

 少し不服そうな声が無線越しに聞こえる。

隊長『La-7、君は……えー…………ちょっと待ってね……この書類読みにくいな……』

 大丈夫なんだろうか……この隊長……。

隊長『あったあった。La-7、君はマドンナリリー(白百合)A。基本は単騎での偵察だがいけるな?』

私『はい、問題ありません!』

 反射的に答えたけど……一人?え?あと、そのコールサイン、少佐の……。(作者追記:詳しくは"第一章:鐘状期"の後半をご確認ください)

隊長『そして私は…………フランクI(インベーダー)らしい。侵略者(インベーダー)とは今回の作戦では嬉しくない名前だな。』

 笑えない冗談だが、笑っておくべきだろう。うん。フランクIの犠牲は忘れません。

Fi『では出撃は10分後。編成人数以外の質問は今のうちに頼む。解散。』

 暗闇の中を歩いてルサルカ(Po-2教官)とアンナC(親友)を探す。完全な暗闇ではないが、星と月が見えていなければ自分の位置を見失っていただろう。まだ日が落ちて間もないはずなのに。

『それ以上進むと落ちるよ。』

 それは確かに親友の声だった。しかし、ここは甲板の端ではない筈。それに遅れて私の腕を掴んだ手の力は彼女にしては強すぎる……折れそうなのでそろそろ離してもらえないだろうか?

『おっと、これは失敬。折れてない?』

 振り返ってみれば親友…………いや、彼女はアンナFやMiG-15"ファゴット"ではない。ナロードナヤ(この船そのもの)だろう。

『私も同行するよ。あの土地は危険過ぎる。』

 行ったことがあるような話し方をしている。

『砲撃支援要請の無線の送信元は戦火の真っ只中。火砲や砲兵が戦場の神であり、航空機は天使だった。』

 地味に説得力のある言葉。少しばかりは信じるべきだろう。

『私が君たちの言葉を話せるようになったのは彼ら正規軍のお陰だった。お父さんは圧縮言語を理解できたし、話せたけれど周りはそうでもなかった。』

『今回行くのはピクニックじゃない。強固な要塞の攻略。大隊どころじゃない。師団が動く規模。お父さんも緊張してる。死傷者を自分の隊から出したくないから。』

 

 そうこうしているうちに単垂直尾翼から双尾翼に改造された輸送機の尾部にスロープが掛けられ、IS-2に扮したMiG-15がARMSごと胴体上部を慎重にゆっくりと踏みつつ固定位置へ。

『そろそろ出撃だ。ARMSは……La-7を装備してるね。よし、行こう。』

 この父あって、この娘あり……そういった感想を抱いた。本人には伝えなかったけれど。

 

 エンジンを取り替えられ、機体構造も強度が異次元の方向性で上昇…………この輸送機、パイロットは大丈夫なのこれ?昔、流行ったR-T〇〇EのBY〇〇戦闘機みたいなことになってない?……なんてことを考えながら後ろにつく。

Ra『えーと……これが3cm……これが5cm……』

 今確認します?もっと早くに確認しません?それ。

Ra『これが12.8cmね。』

私『え?』

 

 胴体の左側面に火砲やら機関砲やらを生やした輸送機が先に発艦する。飛行甲板は強風が吹き荒び、カタパルトとRATOの加速で輸送機の履帯式降着装置が高速回転……無事、発艦できた。

 

 次は私の番。機銃のセルフチェック、正常に装填されていることを確認。護身用フラッシュライトは6回分で、砲撃要請用発煙ロケットは4発一ポットが2つ合計8回分……意外と重武装だな?

 

 飛行甲板のカタパルトに脚をかける。翼を擦らないよう迎え角に気をつけてスキージャンプの姿勢に。右手を挙げて発艦準備が整ったことを知らせ、加速を待つ。3……2……1……急加速に伴う加速度に姿勢が崩れそうになるけれどぐっと堪え、飛行甲板を離れる。

 

 輸送機と編隊を組み、目的地へ。合流が進む戦力……ここは先鋒の一個大隊であった。

 左を見ればFi率いる戦闘機小隊、私の右後ろには偵察仕様の戦闘機群。揃いも揃ってみんな同じ顔をしている。なるほど?

 

「マドンナリリーA、こちらマドンナリリーB。」

『こちらマドンナリリーA。マドンナリリーB、感度良好。』

「今作戦ではよろしくお願いします。」

『こちらこそ。よろしくお願いします。』

「単騎での作戦は不安です。マドンナリリーA、そちらは?」

『私も不安だ。マドンナリリーB、生きて帰るよ。』

「了解。職務を全うしないと。」

 

 

 

 

 激しい対空砲火。一人、また一人と落伍者が発生していく。地上が煉獄なら、ここも地獄だろう。

「」

『マドンナリリーG、シグナルロスト。』

「各機、怯むな!前進!同志のために道を切り拓け!」

「「「「『Урааааа!』」」」」

「進め進め進めー!!」

 敵は対空砲や高射砲のみならず戦車砲や歩兵の火器すらも動員して観測機を排除したいらしい。その分、地上から目が向いている…………ん?じゃあ地上部隊は?

 

『地上は何をしている?私達だけでは制圧できないぞ。』

『こちらアンナC!マドンナリリーA、仕事中か!?』

『アンナC、こちらは絶賛仕事中だが!?』

『敵は当初の想定を上回る対人対戦車攻撃能力を保有している!』

 通信のバックで聞こえる砲爆撃音。

『ああクソ!おい!しっかりしろ!アンナB!……空中からは何か見えるか!?』

『見えていたら既にスポットしている!』

 阿鼻叫喚。地獄も地獄。一方的……とは言いたくはないがほぼ一方的な攻撃に晒されている。

「……マドンナリリーA、敵は鹵獲したDOLLSを運用している。」

『何だって?』

「ここまでは想定通りだ。ガイガーカウンターが反応するのは聞いていないぞ。」

 フランクIか……?

『こちらマドンナリリーA、フランクI、聞こえますか?』

『フランクI、感度良好。』

『ガイガーカウンターが反応しているそうなのですが心当たりは?』

『無いね。今回、放射線が出るような機材は持ってきていない。』

 となると……

『核を持っているやつが居る……もしくは核がそこに存在する……ということかもしれないね。』

 原子爆弾……もしくはそれに相当する兵器を保有している……

『今からそっちに行く。耐えてて。オーバー。』

『了解……。』

 一方的な通信終了。フランクIというDOLLSはいつもこうである……自分の知っている範囲では。




 次回に続く
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