Cityの外よりも隠された場所   作:イエローケーキ兵器設計局

11 / 15
 鋼鉄の雨が吹き荒ぶ中、死体の山を私達は越えていく。


第三話 夜間飛行─下

 

『ふーむ……誰かが一枚噛んでいるかもしれない。』

 戦場で呑気に話す暇はないが無線で傍受される訳にはいかないからこうするしかない。

『というと……?』

『一人心当たりがある。まあ正規軍将校クラスの人員だがな。』

 指揮は的確で能力があると高く評価されているが、ここ最近動きが怪しい者が居るという。言われてみれば確かに防御の薄い部分を何度も的確に突けており、たまに読みが外れて猛攻に晒される部隊もいる。情報が漏れているのかもしれない。

 

マドンナリリー(La-7)隊、フランク(Yak-9K)隊、こちらフランクI(Yak-9K 隊長機)。聞こえるか?』

「感度良好。」

『総員、私の側に寄れ。話がある。』

 生き残った戦闘機型が集まってくる。数はかなり減った。常に回避機動を続ける。狙い撃ちにされないように。

 

『私が道を切り拓く。君たちは突破口を広げてくれ。』

「了解。マドンナリリー隊、フランクIの指示で吶喊します。」

 フランクIは地上に降りていって生き残った戦車型(IS-2等)にも話をつけていった。

『作戦開始まであと10秒……。』

 運命のカウントダウンとか、そういった例えを昔の人達はしていたのだろうか。

Fi『……作戦開始!我ニ続ケ!』

 急降下して速度とエネルギーを稼ぎ、白刃用の近接武器で敵DOLLSを切り裂きながら超低空飛行を続けるフランクI。遅れずについていかないと孤立してしまう。

吶喊(とっかん)!進めぇぇぇー!」

 銃剣を展開し、軽戦車型(鹵獲BT-7)を突き刺して流れ作業のようにまた急加速をするマドンナリリーB(La-7 2番機)

 それを見守る私も気がつけば誰だかよくわからない何かを刺し殺していた。

 重戦車が徹甲弾で重戦車を葬ってくれるお陰で私達は前進できる。もう塹壕を2つ越えた。

「押せー!押し通れ!」

 誰かが叫ぶ。誰も聞いてはいない。聞かなくても私達は既に押し込んでいた。

『梱包爆薬を投擲!離れろ!』

 特火点の銃眼に爆薬を投げ込み、内部から爆破する者。

「ガンシップ!ここだ!」

 発煙ロケットをマーキングに使い、空からの鉄槌(ガンシップ 12.8cm砲)を食らわせる者。

 そして……

『この壁、脆いな……。罠か?』

 体当たりで突き破る者。

 

 数百mは前進できただろうか。もしかしたら全く進んでいないのかもしれない。

「……!何だあれは!?」

 奇妙な航空型DOLLSが超低空を高速でこちらに向かってくる。左手があった場所にはドリルが鎮座、右手には大きな盾を持っていて応射を全て弾いてしまった。

『当たれ!』

 122mm徹甲弾があのDOLLSに向かって放たれたが盾で弾かれてしまった。

『なっ……!』

『退避ー!!迂回するぞ!!』

「くっ……!早い!」

『全機、敵は現場指揮官()の存在に気がついたようだ。喜べ、飛んでくる弾が減ったぞ。』

「フランクI、貴官はどうなる!」

 無線封止中だから互いに声が届く範囲でしか話せない。

『さあな、天使とダンスでもしてるか。』

 ふと上空を見るとガンシップ(TB-3だった何か)が戦闘機型DOLLSと格闘戦をしているのが見えた。敵側のDOLLSが燃えながら墜ちていったから勝ったようだ。

 

 迂回し、距離を取っても取っても追い詰めてくる航空型改造DOLLS。他のDOLLSには目もくれず、フランクI(指揮官)だけを目指して追いかけてくる。まるで誘導弾(地対空ミサイル)みたいだ。

 フランクIは上へ上へと逃げているが、どこまでも追いかけてくる敵機に手を焼いている。支援攻撃しようにも盾で跳弾した弾がどこへ飛ぶかわからないから撃とうにも撃てない。かなり詰められた。あと数秒……もう……間に合わない……ドリルに貫かれる、凄惨な光景が予想できて思わず目を閉じる。

「危ない!」

 激しい衝突音。声の主はLa-7、マドンナリリーB……現地で知り合った同志であった。

 空中衝突し、ARMSのエンジンをドリルで刺し貫かれたLa-7型は微かな笑顔を貼り付けたまま高度を落としていく。対称的に改造DOLSはドリルを引き抜いてまたフランクIに向かっていく。

『高度を上げろ!早く!』

「推力がもうない!」

「だけれど……もうそんなもの必要ないのかも。ほら、天使の羽根が……。」

 

 

『重い……!』

 自分一人を支えるだけなら十二分なエンジン出力も、完全にエンジンが破壊されたもう一人の自分の重量分を支えるには力不足で……私達は塊となって墜ちた。

『こちらマドンナリリーA、敵が近づいてきます。どうやら捕虜にされるようです。』

『マドンナリリーA、B!必ず救助に向かう!』

『必ず、ですよ。』

 

 こうして私達2人は落伍者として地に墜ちた。体制を整えるために部隊が帰っていく。すぐに来てくれると良いのだが。

 

 帰っていく部隊で一番最後に戦場を後にしたのは意外にもガンシップ(教官機)だった。明らかに航空劣勢であるにも関わらず、トーチカを上空から正確な攻撃で破壊し、縋る敵機を戦闘機型の助けを借りることなく爆破していたのが見える。

「……まだ生きてる。くそっ……天使は天国にも地獄にも連れて行ってくれなかったか。」

『悪いけれど今は死なないでくれる?』

「…………戦況は?」

『私達の一時的撤退です。すぐに戻るとは言っていましたが……。』

「どうせ帰ってきたりはしないさ。」

『?』

「ここに送られる前の指揮官がそうだった。いわゆる……内通者か?汚職か……どっちでもいい。」

「とにかくあれは陳腐化して使い物にならない戦力を敵に売っていた。残り物には福があり、これはそこまで古くない、使い物になると。」

「私はまだ新鋭機だったから売られはしなかった。」

「……LaGG-3(姉さん)が連れて行かれるのは見た。」

「売り文句はこうだった。"黒十字帝国学連のBf109F("主力"戦闘機)にだって勝てるし、小競り合いではいつも勝ってきた。こんな優良機を活用しないのは勿体ない。"。」

『……。』

「あんな絶望した顔は初めて見た……。在庫が払底してからは見ていない。」

『指揮官は更迭されましたか……?』

「更迭こそされなかったが……今は土の中で眠ってるよ。背後から撃たれて、な。」

「それでこの有り様だ。まともじゃないところから、よりまともじゃないところへ送られて死ぬのを待つ。それが赤色十月同盟学連なんだろうな。同志La-9……いや、La-11(ファング)。」

『……!なぜそれを!』

「La-7にしては雰囲気が違うし、それに……軽量化し過ぎ(あまりにもぺったんこ)だろ。」

 殴り合いになった。

 

 ドン引きする改造DOLLSが私達を包囲していたことに気がついたのは5分くらい後。お互いに満身創痍だった。

 

「ご同行願いたい。すまない。」

 意外と声音は優しめで出せるのね、ドリラー。

 

 

 

 

 

 




 ややこしいコールサインは次回か、もしくはその次回で使い終わり、もっと簡単な呼び方に戻ります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。