Cityの外よりも隠された場所 作:イエローケーキ兵器設計局
看守は改造DOLLSだった。鉄格子越しにこちらをしきりに見てくる。La-7はさっき連れて行かれた。私はベッドの上に腰掛けて帰って来るのを待っている。状況はあまり芳しくない。時折、要塞が激しく揺れている。揺れているが、看守たちは何事もないかのように振る舞っている。ああ、もう、こっちを見るな看守!
「……。」
あ、別の場所の巡回に行った。そうだそうだ、あっちへ行ってくれないと私は寝れないんだ。
廊下を歩く音が消えたので、鉄格子にもたれ掛かるように周囲の状況を調べてみる。
・傷ついた者は治療を受けている。
・さっき治療を受けていたDOLLSがバイザーとドリルを取り付けられて走っていった。
・看守姿の、小柄で蒼髪の少女がこそこそ活動している。
……ん?
『( う ご く な )。』
手話でこう伝え、廊下を走る少女。ナロードナヤがなぜここに?……まさか、あの時忍び込んだのか?作戦開始前に教官機に乗り込んでいたのはこのため?
『( や つ ら が き た ま た あ と で く る )。』
そう伝えてまた巡回に戻るナロードナヤ。
戻ってきた看守に今度は出るように言われた。
「名前は?」
『La-7。』
「所属は?」
『……
廊下を歩いているうちに"101号室"と小さな看板のある部屋の前に着いた。
「君の尋問はここで行われる。幸運を。」
『そりゃどうも。』
優しそうな顔をした老人。元凶はこいつか。それともこいつ以外か。
「いらっしゃいませ、かな?とりあえず座り給え。」
『ここは店舗ですか?』
「……(´・ω・`)」
『それで尋問とやらは?』
「……おっほん。看守のLaGG-3君から所属は聞いているよ。君も大変だったんだね。」
『……おかげさまで。貴方方が居なければ壊滅することもなかったはずですが。』
「途中から正規軍がやってきて私達ごと潰していただろう?目撃者を潰して事件を隠蔽しようとするように。」
「それに対し、私達はどうだった?クレバーで、スマートだっただろう?」
『前線の押し上げのためには同胞を踏み潰させることも辞さないことが?』
「あれは現場指揮官の暴走だった。勿論、あのあと現場指揮官は更迭、今は代わりのものが就いている。」
『ふむ……兵士の姉を購入し、改造して妹と戦わせる……これもスマート、ですか?』
「スマートと呼ばずしてなんと呼ぶ?彼女は売られて来た。捨てる神あれば拾う神あり、私達は買ったんだ。あの娘の未来を。」
『買ったからには何をしても良い、と?』
「かくなる上はDOLLSと人間のより良い未来のためだ。多少の犠牲は伴うことを覚悟せねばなるまい。」
『それで……私の前のLa-7にも同じことを?』
「私もそこまで愚かではないよ。」
「君の目は明らかに慈悲で一杯だ。」
『はあ?』
「殺戮は救済の手段である……そうは思わないかい?」
『思うと思います?』
「君は慈悲を持って敵を殺す、違うかい?」
『慈悲も何もありません。』
「では何を?何を持って敵を撃つ?」
『ですから、何も持っていません。』
「驚いた……。彼女を教育室に。」
部屋に入ってきた"看守"に席を立たされ、廊下に出るよう指示される。
「グッドラック。」
『……何がグッドラックだ。』
看守が周りを見渡して、一言。
『逃げるなら今だ。』
私一人で逃げろというのか。申し訳ないがそうは行かない。
『申し訳ないけれど、そのつもりはまだない。』
「わかった。」
(後頭部に強烈な衝撃と痛みが走る)
『っ!』
鎮圧作業をしたことにするにはそうするしかなかった。と言うが、何もそんな強烈な一撃を加えなくても……。
ナロードナヤに廊下を歩かされ、
「遅かったじゃないか。」
「申し訳ありません。脱走を試みられたので鎮圧作業を。」
「そうか。それはご苦労。」
「電磁くすぐり棒は知ってるかな?」
通電部同士を接触させてバチバチと音を出させる老人。悪趣味なやつだ。
「君にはこれを受けてもらおう。」
『なんのために?』
「君の改心のため以外にあるかい?」
『ただの嗜虐趣味だろう?』
「嗜虐趣味ならこんなに回りくどいことをするかい?」
『劇場型だろう。』
「私は……!嗜虐趣味など持っていない!」
通電部を押し付けられる……!
……びっくりするぐらい弱いんですが……その……。
『あのー?通電してます?』
"看守"が電圧を上げて、それを確認するふりをして老人の脇腹へ。
「ぎゃぁぁぁ!」
おお……記述しろ、ともし言われたら拒否したくなるなぁ……この惨状は。
「あー……これが電気椅子で死刑にされた者の末路……といったところかな?」
ニコニコでエグいこと言わないでくださります?
「あーあ……血がついてしまった。」
『銃剣で刺したりすればそうもなるでしょう?』
「警報を鳴らされる前に始末しないといけなかった、だから刺した。はぁ……。」
彼女は独房に居た。俯いて、ベッドの上で小さく座っている。
「ほら、出るよ。」
「……何処にも行かない。LaGG-3姉さんはここに居る。生きてた。生きてたんだ。」
『残念だけれど貴女も行かないと。』
「やっと会えたのに……どうして……どうしてまた離れ離れにならないといけない!」
『これが仕事だから。』
胸ぐらを掴まれたが、こればかりは譲る訳にはいかない。
「La-7、わからんか。」
「ええ。」
『……ナロードナヤ。』
「私には妹が居た。」
……?初耳だな。
「名前はオリョール。生きていたなら私より背が低かっただろうな。」
それって身長約120〜140くらい……?
「彼女は生まれてすぐに死んだ。栄養失調でな。」
ナロードナヤが元人間だという話は聞いたことがない。……しかし、即席の嘘にしてはできているような気もする。
「私と違って……貴女の姉はまだ生きている。」
『ここを出ないと。』
「……私も行く。またいつか会える。」
『ええ。』
外の連続した爆発にようやく対処を始め、走って何処かへ行く改造DOLLS達。私達もそれに乗じて逃げようとした。したのだけれど……。
「危ない!」
LaGG-3が出口で待ち伏せをしており、危うく死角から飛び出した彼女に腹を貫かれるところだった。
ナロードナヤが通路に放置されていたZiS-2 57mm対戦車砲を砲撃準備状態にする間にLa-7を守りながら時間を稼いでいる、やることが多い!
『おっ……と!』
「回避!回避!」
「砲撃準備完了!動きを遅くしてくれ!頼む!」
シザーズを地上でやるとこんな感じになるんだろうなと思いながら高速ですれ違い、LaGG-3がLa-7に釘付けになった瞬間、LaGG-3は盾を破壊され、爆発音(57mm対戦車砲の発砲に伴うもの)が響き、そのまま数mは吹っ飛んだ。
「姉さん!」
しかしまあ……現実というものは非情なもので、LaGG-3は生きていた。正気には帰らずに。
呆然としたLa-7を抱え、いつの間にか壁に空いていた大穴を通って出てみれば改造DOLLS達の一部がこちらに向かってきていた。いや、様子がおかしい。正規軍も居るが……?
……!何が起こっている!
『ナロードナヤ、もしかして。』
「……死体が動いている。超現実的。」
どこからか聞こえてくるホイッスルの響き。
要塞の外に出ても私達とLaGG-3は踊っていた。致命傷になったと思った対戦車砲の一撃も盾を破壊したに過ぎず、本体はまだまだ元気だった。死体の軍隊がまっすぐに突っ込んでくる。避ける。避ける。LaGG-3がバラバラにする。これを繰り返してお互いに疲れてきた。少なくとも自分の目で見る限りは。
「姉さん……ごめんなさい。」
La-7がスキを狙って抱きつき、LaGG-3の動きがピタッと止まる。
「今まで……守ってくれてありがとう。さようなら。」
吐血するLaGG-3。背中からはLa-7の銃剣が突き出した。
「La-11……ありがとう。私は……あの世で待ってる。」
何も言えず、銃剣を今度は自分の胸に刺すLa-7を止められなかった。
ナロードナヤは作戦が終わっても魂が抜けたようにただ呆然とガンシップの中で座っていた。泣いてみたり、一人怒ってみたり、感情爆発を起こしたようでもある。
『……!ナロードナヤ、あれって……。』
「隕石。数ヶ月前から迎撃の準備はしてきたけれどこの周回でも駄目だった。」
『周回って何?』
「もう説明する時間はない。あと1分で私の船体に直撃してCityごと消える。」
「次のループで逢いましょう。」
そう言うとナロードナヤは歌い始めた。
「We’ll meet again, Don’t know where,don’t know when. But I know we’ll meet again, some sunny day.」
輸送機が光の洪水に飲まれるまで。
終了条件1を達成。
WE LL MEET AGAIN.