Cityの外よりも隠された場所 作:イエローケーキ兵器設計局
島流し
気がついたら私は日がカンカンに照る砂と草と偶に木とコンクリートの島に立っていた。暑い。木は鬱蒼と茂っているわけではなく点々と生えていていかにも南の島といった感じがする。かつて夢で見た島もこんな感じだっただろうか。
「お父さん……?」
うん?ナロードナヤ?いや、違うか……。
「なんでお父さんがこんなところに……?」
『お前こそ、なぜ……?』
「私のことは……うーん……ノヴァヤゼムリャと呼んでほしいな。」
『ごめんよ、ノヴァヤゼムリャ。』
「なに、泣いてるの?お父さん。」
『私がもっとしっかりしていれば……。』
「お父さんのせいじゃない。ナロードナヤも元気にしてるし。」
ノヴァヤゼムリャは水子である。ナロードナヤの姉にして、予算の都合で産まれることのなかった本来のノヴァヤゼムリャ型航空戦艦一番艦。
「この島は綺麗だね。他の島を見てきたけれど、どこも焼け野原だった。」
『ここだけ、か。』
「そう。ここだけ。」
灼けた滑走路の上を歩く。ボンヤリとした記憶……Vの字ともUの字とも取れる特徴的な島の形、ここはウェーク島かもしれない。
「これはこれはお客さんかな?」
「トーレス艦長、私の父です。」
『どうも、ニューマコーニオシス少佐です。』
「これはこれはどうも、少佐。私はマティアス・トーレス。改シンファクシ級潜水航空巡洋艦アリコーンの艦長をしております。ほら、アリコーン、挨拶しなさい。」
「ど、どうも……少佐。」
住人が居なくなってあまり時が経っていない、そういった印象を受ける住居内には1つのコミュニティが形成されていた。ノヴァヤゼムリャはやや混ざれていないようだったが。
マティアス・トーレス……初老の男性といった印象を感じるが……なにか裏にありそうだ。
「お父さん、ちょっと話が。」
『ん?』
「いいから、いいから。」
背中を押されて簡素な住居を後にする。
「誰も聞いて無い……よね?」
『まあ、見える範囲では。』
だいぶ離れたものだ。滑走路の端まで来たのだろうか。
「お父さん、伝えておかないといけないことがあります。」
『うむ。』
「トーレス艦長とアリコーンには警戒してください。」
『……うむ。』
「一千万人……」
『しーっ……。』
奴ら、何か感づいたか……微かに足音がする。
「…………これから雨が降りそうなので、その連絡を。」
建物の影から両手を挙げてゆっくりと姿を表す背の低い少女。潜水巡洋艦アリコーン。トーレス艦長の娘……ではないとは思うが、そう見て取れなくもない銀髪で色白の華奢なセーラー服姿の少女、きっと彼女も艦娘とやらなのだろう……は警告に。
『それは困ったな。傘を用意しないと。』
「お父さん……!」
「……それだけですので。失礼します。」
雨というのはこの場合、本当の雨を指すのかもしれないし、雨に例えられるものを指しているのかもしれない。例えば……戦火や死の灰など。
『おぉ……怖い怖い。』
「潜水艦はソナーが鋭い……。」
『特に
『いけない、風が出てきたな。』
雨の予感……本当の雨だったか。
コンクリートとレンガ、木材の住宅で雨宿り。外は激しい風雨が吹いている。
「それで……」
『言いたいことはわかる。』
表情豊かな奴だ。コロコロ表情が変わる。
『私に任せろ……とは言えないが、お前は守ってやる。私の娘だからな。』
人の頭を撫でる癖を治さないといけない。そう思った。
記録者:サイクロプス
彼は安らかに眠っている。まるで死体のように。思考能力はある植物状態……それが的確な表現だろうか。
ホルニッセはどこか落ち着かない様子で部屋の中を行ったり来たり。私も行ったり来たり。二人で行ったり来たり。
仕事が終わって帰ってきても頭を撫でてくれる人が居ない。寂しい。娘の頭を撫でておく。不思議そうな顔をされる。怒り出す前に止める。
咳をしても二人。私達、副官組も彼が居なければ鳥合の衆ですらなかったのかもしれない。
身寄りも本名もない私に隻眼の巨人(サイクロプス)と名付けたのは、貴方よ……ほら、起きて。起きてよ……。
……もう時間が。また来ます、ニューマ。