Cityの外よりも隠された場所 作:イエローケーキ兵器設計局
15『そのようで。』
何かがおかしい。何が起きているんだこの戦艦の内部で。
ここは食堂。今日はカレーで私は中辛、ファゴットは甘口を選んだ。引き換え札を貰ってレーンを離れ、机に座る。
『サイクロプス大尉、捕虜のヲ級について報告が研究班から。』
『ありがとう、ベルタ大尉。研究班、報告内容は?』
食堂の中には内線機が設置されていて、今はサイクロプス大尉……少佐の副官と、ベルタ大尉……こちらも少佐の副官が休憩中によっていたところであった。
『……ベルタ……捕虜が変異した……だと?』
『私も耳を疑ったのだがね。見知らぬ女性が1名、記憶を失った状態で収容房に座っていたらしい。』
『はあ。』
『取りあえず隔離して、調査。伝染性なら気密室へ。』
『了解した。』
その晩は珍しく夢を見た。青白い光を伴って肩に載せた長い筒からピンク色の何かを撃ち出す
私達は戦争に生まれ、戦争に死んでいく。いつだって兵器はそうである。いつかその身体を地獄の業火に焼かれる審判の日が来るとしても、私達は戦争に生ける屍で有り続けるだろう。
そう思うようになったのは偏に隊長と知り合ってからだった。こうして書くと、隊長が悪者に見えるが隊長はどちらかといえば兵器は兵器であるが、生き方はそれぞれであることを指し示そうとしていたと思う。今は行方不明なのだが。
食堂で今日食べるのは親子丼。極東重鋼学連の郷土料理とも言える料理の一種であり、極東重鋼学連出身者が少ないこの食堂では作れるスタッフはまだ少ない。よって……予約式になっている。3日前に予約してようやくありつけたのだ、ゆっくり食わせてほしい。フラグなんて建てたくない。
結果から言えば、親子丼を食べることはできた。食べ終わるまで色々なものが私を待ってくれたのかと思うくらいには静かだった。例えば食器を返しに行くときに脱走した捕虜が食堂に飛び込んでくるとか。脱走した捕虜を追いかけてきた看守達が
15『いったい何が……』
私『ファゴットが……二人……?』
看守『そこの二人!手伝って!』
看守に身動きを封じられた黒尽くめの捕虜。"戦艦レ級"だったか。
レ級「離セ!」
レ級「モウ耐弾試験ハ嫌ダ!」
看守と私、ファゴット、ファゴットそっくりの少女で四肢を抑え込む。
看守『助かりましたわ。なんとお礼を言って良いものか……。』
友人そっくりの少女は機械的に右腕を振ると、廊下に走って、行ってしまった。
15『何だったんだろうね。』
私『さぁ……?』
意外と冷静。ドッペルゲンガーを見かけても動じないタイプなのか。……まあ、確かにエリートのDOLLSには同位体と呼称される分身が配属されるらしいが……。
翌日。夜は特に夢を見ることもなく、朝食を手早く済ませ(珍しく寝坊したファゴットを起こしていたら遅くなった)訓練へ。
『今日は近接戦闘訓練を行う。格闘戦ではないが、閉所で急に敵役が現れるから注意しろ。』
周囲のDOLLSたちとは違って少しは分があるだろう。校舎内での戦闘を経験してしまった後なのだから。
……そう思っていた時期が私にはあった。
私『所構わず撃ってくる……!』
壁を貫通する演習弾。頑丈なはずの壁も連続射撃で赤熱し、耐えられなくなったみたいだ。
15『あのDOLLS……武器は……………退避!』
あと1秒、ファゴットの叫びが遅かったら私達は挽肉にされていたかもしれない。
(元々穴が空いていた壁にチェーンソーの都市迷彩ガイドバーがいきなり現れ、静かに、しかし切るように壁が切られ、崩れる)
『こんにちは、お嬢さん方。』
15『Bf110……"イーダ"、こんなところで会うなんてね。』
私『お知り合い?』
110『かつてはチェスの試合で意気投合したものだ。』
15『10戦8勝2敗……恐ろしいコマンダーだった。』
110『しかし……この壁は硬いな。想像以上に時間がかかってしまった。』
コンコンと壁を叩くBf110。でも硬いと言う割には溶けかけのバターを切るように……いや、言わないでおこう。余計なことを言って粉微塵にされては困る。
私としてはさっさと演習弾で気絶願いたい。思い出話に花を咲かせるのは訓練が終わったあとで……
110『おっと……時間が過ぎてしまうところだった。申し訳ないが気絶して頂きたい。』
チェーンソーをさっと上げると左手と下腹部で保持し、右手で太腿のホルスターから拳銃を取り出すBf110。通称"イーダ"だったか。
私『堅物の癖に見せパンするようなやつに負けたくはない!』
110『なっ……!これは制服だ!見せたくて見せてるわけじゃない!』
15『……はぁ。やれやれ……。』
訓練が終わるまで口論は続き、Bf110と私はそれぞれ独居房で一晩過ごすことに……。
私『失敗したなぁ……。』
時刻は23時42分。独房の外の時計にはそうある。消灯時間は既に過ぎているからとても暗い蛍光塗料が塗られた時計だけが薄暗く光っている。
私『お腹すいたなぁ……。』
昼夕と食事抜きである。まあ私としてもやりすぎたと思う。たかが制服……まあ、されど制服とも言えるが。
(鉄格子を軽く叩く音)
私『どちら様……ファゴット?』
赤いフィルムを貼った懐中電灯片手に鉄格子の前で座っているファゴット。
……えらく物静かだな?まさか……
15?『(・∀・)』
何の用だ……?
15?『(・ _ ・)クイクイ』
手招き……?近う寄れ、ってところか。
15?『髫企聞縺悟クー繧』
えーーー…………と?
15?『繝ッ繝ャ縺ォ邯壹¢,謌代↓邯壹¢』
ファゴット似の少女は、そう言うと……
少女『……。』シッシッ
明らかに離れていろ、というジェスチャーをした後、鉄格子を蹴り一発で曲げてしまった。
少女『繧ヲ繝舌じ繝。縺悟クー繧。霑弱∴縺ォ陦後%縺?°』
少女『縺輔≠縲√♀辷カ縺輔s縺ォ謖ィ諡カ縺励↓陦後%縺??』
何を言っているのか全くわからないが、付いてこいということだろうな。
私『貴女、名前は?』
15?『繝翫Ο繝シ繝峨リ繝……驥崎穐遨コ謌ヲ濶ヲ繧……雋エ螂ウ縺ョ螯ケ』
足音が聞こえる。巡回に来たのだろうか。
…………ということは、私は怒られるな?
憲兵『……む?貴様、鉄格子はどうした?』
15?『遘√↓莉サ縺帙※』
憲兵を優しく抱き締めると、そのまま頭を撫でる少女。
15?『繧医@繧医@縲√f縺」縺上j縺贋シ代∩。』
憲兵が力無く倒れ込むように少女に身を任せ、そのまま眠ってしまった。
少女『鬚ィ驍ェ縺ォ豌励r縺、縺代※。』
壁にも垂れ込むよう、座らせる少女。
少女『縺輔≠縲∬。後″縺セ縺励g縺。』
こうして私は脱獄を果たした?いや、まあ、果たしたと言っていいのかわからないが。
飛行甲板で一休み。少女は船体の後ろの方をじっと見ている。……確かになにか聞こえる。小さいが甲高いプロペラが回る音……。
火を吹かせながら落ちてくる巨体、いや、まあ……降りてくるとも言えるかな?傷だらけの巨体で、翼や胴体前部、双ブームの最後端にある垂直水平尾翼に大小様々な穴が開いてて、だけど多少ふらつきながらも安定して飛んでいる。一目見ただけで只者ではない、そう感じる。
少女『縺顔宛縺輔s縺悟クー縺」縺ヲ縺阪◆』
ゆっくりと少しずつ、飛行甲板に近づき静かに、降着。アレスティング・ワイヤーの張力と逆ピッチにしたことにより通常の逆方向に反作用をもたらすプロペラの回転で巨大な機体が減速、停止した。
少女『縺翫°縺医j縺ェ縺輔>』
少女『縺顔宛縺輔s』
腕を振って何かを静かに言う少女。
機体から降りてきたのは隊長だった。
私『おかえりなさいませ、隊長。』
敬礼の姿勢を取りながら返答を待つ。
隊長『ただいま戻りました、ファング。』
返礼の終わりと同時に敬礼の姿勢を解く。
隊長『ああ、そんなに固くならなくても。』
隣りにいた少女が隊長に飛び込むように抱き着いた。
隊長『ナロードナヤ、ただいま。』
ふむふむ……あの少女はナロードナヤという名前なのか。
隊長『そんな怪訝そうな顔で見ないでくれ。ファゴットとは容姿が似ているだけだ。』
私、そんな顔してました?親友そっくりの少女が上官に抱きついているのを怪訝そうな顔以外で見るのって難しいと思うのですが。
隊長『ファング、君は口が硬いかい?』
硬いかと言われると……何とも言えないところ。
私『硬いとは……言い切れません。』
隊長『よろしい。この娘はナロードナヤ。ナロードナヤ級重航空戦艦1番艦……まあ、ネームドシップといったところか。』
私『隊長、2つ疑問が。なぜ少女に船の名前がついているのですか?そして……』
隊長『なぜMiG-15、ファゴットに酷似しているか、だろう?』
図星である。
隊長『まあ、まず……彼女は人間でもDOLLSでもない。この間、鹵獲した連中と同じような種族……艦娘と呼ばれる存在だ。』
私『かん……むす?』
隊長『そうだ。人間サイズの躯体にミニチュアサイズで、しかし実物とほぼ同じ性能を持つ"艤装"を装備させたもの、それが艦娘。ナロードナヤ、艤装展開。』
ナロ『……謇ソ遏・』
突如として背中と肩で保持する四つ折りの連装砲(まるで4分割したバンガロール爆薬筒2本。)、飛行甲板のような盾が現れる。
隊長『彼女に関してはCityにおいて最高機密(知ったが最期)……とも言える。というのも……彼女がどこから現れたのか私達は知らないんだ。』
ひそひそ話の声の大きさでさらっと重要なことを言わないでほしい。気がついたら居る……とは……。
隊長『まあ、私の娘たちの一人だと思ってくれ。』
私『はぁ……。』
面倒なことに巻き込まれたものだ。いや、まあこれを面倒だと言うなら私はもういなくなっているだろうが。