迷宮城の冴えない男《ラビュリンス・イッパンジン》   作:入江末吉

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第十七話:戦いの殿堂 後編

 

 校舎裏のスタジアム。ここはエンタメコースの生徒やアクションデュエルクラブが朝や放課後に使う他、決闘の実技授業でも使われる場所だ。

 夏休み前、ボクと風舞さんの決闘は精霊の暴走が原因の実体化ではあったけど、質量立体幻像機のトラブルを疑った教師陣によって夏休み前に新型が購入されたらしい。

 

 全生徒に新型決闘盤を配布する辺り、やっぱりお金持ってるんだなぁうちの学園。

 

 スタジアムの中心、デュエルコートにやってくるとフリーデュエルや備品の整備などをしていたクラブメンバーたちが駆け寄ってきた。

 みんな格好が奇抜というか基本的にアクションデュエルクラブに入ってる生徒はエンタメコースの生徒だからショーデュエルの一環としてそういった衣装を着て練習することが多いんだろうね。

 

「副部長、おかえりなさい!」

「決闘盤磨いておきました!」

「はちみつレモン丸ごと漬けも用意してあります!」

 

 決闘盤磨くって、刀か。

 けれど実際、本人の亜麻色の髪に合う黄色の決闘盤が陽光を跳ね返してキラリと輝いたのを見て、備品の手入れは大事だと思った。ボクの決闘盤は特にカスタムしてない灰色のデフォルトパーツだから余計にくすんだ色に見える。

 

『部員に女が多いのは私の見間違いかしら……』

 

 言われてみれば縦上先輩を囲んでいるのは基本的に女子。かといって男子人気が無いわけではなくちゃんと慕われているように見える。

 つまりは、男女関係なくメロメロにする天性の人たらしってわけだ。

 

「小鳥遊くん、始めようか」

「よろしくお願いします」

 

 ボクと先輩はデュエリストコートに立ち、アクションデュエルクラブの面々と学生会の面々がセコンドとしてコートの後ろにスタンバイする。

 ちなみに先輩のホームで受けて立つ、とは言ったもののルールは普通のスタンディングデュエルだ。これは縦上先輩が「同じ土俵で戦わないとフェアじゃないから」と言い出したためだ。ボクとしても夏場に走り回りながらのデュエルは流石に御免被りたかったので断る理由もない。

 

 お互いの電子生徒手帳を決闘盤にマウントする。静かな起動音と共にプレート部分が起き上がり、モンスターゾーンが展開。

 デッキがオートでシャッフルされ、上から5枚がわずかに飛び出る。

 

 瞬間、電子生徒手帳に表示されたコインがボクと先輩、どちらが先行かを決定する。

 

「よし、ボクの先攻です」

「どうぞ」

 

 ボクと先輩がデッキトップ5枚を捲って宣言する。

 

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

 

 

 

 

 銀臣 LP:8000

 

 

 

 縦上 LP:8000

 

 

 手札を見る。まずまず、悪くない手札だ。

 だけど気になったことがある。現代のデュエルモンスターズにおいて、先攻は圧倒的有利とされている。

 

 縦上先輩はコイントスに負けてボクが先攻を取った時、どことなく安堵したような表情を見せていた気がする。

 まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そういう表情だった。

 

 であるなら、恐らく生半可な先攻盤面は突破されるとみて間違いない……! 

 

「ボクの場にモンスターがいない時、【SRベイゴマックス】は特殊召喚が出来る! さらにその効果でデッキから【SRタケトンボーグ】を手札に加える! 」

 

 フィールドに現れたのはレベル3のステータス自体は貧弱なモンスター。だけど効果はこのデッキにおける潤滑油そのもの。

 【SR】の有名なギミック、ちらりと後ろを振り返ると風舞さんは既に察しがついているようだった。

 

 縦上先輩にチェーンの様子はない。通った……? いや、()()()()? 縦上先輩のデッキが後攻特化だとするなら、先攻の展開を妨害するための手札誘発カードを多くデッキに入れていてもおかしくない。

 

「手札の【白銀の城の火吹炉】のモンスター効果を発動! 手札の【ウェルカム・ラビュリンス】とこのカードを捨てて、デッキから【白銀の迷宮城】をセットし発動! そして、【魔界発現世行きデスガイド】を通常召喚、効果を発動!」

 

 モンスターゾーンにおどろおどろしいバスが現れその中から現れるデスガイド、そしてデッキからバスに乗って現れるのはもちろんこのモンスター。

 

「デッキから【クリッター】を特殊召喚! 現れろ、白銀に輝くサーキット!」

 

 アローヘッド、確認。召喚条件はレベル3モンスター2体。

【ベイゴマックス】と【クリッター】の2体がリンクマーカーにセットされ、サーキットの中からモンスターが飛び出す。

 

「リンク召喚! 【彼岸の黒天使 ケルビーニ】!」

 

 

【彼岸の黒天使 ケルビーニ】 ATK/ 500 LINK-2

 

 

「リンク素材として墓地に行った【クリッター】の効果で【神樹のパラディオン】を手札に加え、更に【ケルビーニ】の効果! デッキから【シーアーカイバー】を墓地へ送り発動! そのモンスターの攻守分【彼岸】モンスターがパワーアップ!」

 

 

【彼岸の黒天使 ケルビーニ】 ATK500→800

 

 

「【SR】、【パラディオン】、【シーアーカイバー】とは、いきなりラビュリンスらしくない動きで来たな」

 

 氷雨さんが呟いた。確かにボクのデッキを知っている人なら、まずありえないカードたちだろう。

 このデッキはEXデッキを使う、リンク召喚主体に調整してみたラビュリンスだ。故に、普段では入っていないような展開補助のカードが幾つかデッキに投入されている。

 

「【クリッター】の効果で手札に加えたモンスターは、同名カード含めこのターン効果を発動できない。けど!」

「【神樹のパラディオン】はリンクモンスターのリンク先に特殊召喚が出来る。言わば効果の発動を伴わない()()()()()()()()()であるため場に出ることが出来る、やるね」

 

 さらに、それだけでは止まらない。

【ケルビーニ】の効果で墓地に送っておいた【シーアーカイバー】はリンクモンスターのリンク先にモンスターが特殊召喚された時、手札・墓地から特殊召喚が出来る。

 これでボクの場には、リンク2とその他のモンスターが二体。展開はまだ続く!

 

「再び現れろ、白銀に輝くサーキット! アローヘッド確認、召喚条件は『カード名が異なるモンスター2体以上』! ボクはリンク2の【彼岸の黒天使 ケルビーニ】と【シーアーカイバー】、【神樹のパラディオン】をリンクマーカーにセット!」

 

 サーキットの奥から羽撃きの音がする。紫水晶のような薄く透き通った獅子の胴と鷲のような頭。

 額に月と幻想を表すオブジェクトを携えた悪夢の魔獣。

 

 

「白銀の城で夢と幻を司る悪夢の化身よ、今こそ姿を現せ! リンク召喚! 制圧せよ、【トロイメア・グリフォン】!」

 

 

【トロイメア・グリフォン】 ATK/2500 LINK-4

 

 

 決闘盤のEXモンスターゾーンが飛び出し、そこへ【トロイメア・グリフォン】を召喚する。

 自身の効果で特殊召喚した【シーアーカイバー】は場から離れた時、除外される。

 

「【トロイメア・グリフォン】のモンスター効果発動。このモンスターがリンク召喚された時、リンク状態であれば手札1枚をコストに墓地の魔法・罠カードをフィールドにセットすることが出来る! ボクは【火吹炉】の効果でコストとして墓地に送った【ウェルカム・ラビュリンス】をセットする!」

 

 墓地から【ウェルカム・ラビュリンス】がフィールドにセットされる。ただし、この効果でセットしたカードは魔法カードであってもこのターン発動は出来ない。

 だけどまだ終わらない! 

 

「そしてたった今【トロイメア・グリフォン】の効果コストで墓地へ送った【EM五虹の魔術師】の効果を発動。このカードが墓地にある時、魔法・罠がセットされたことでこのカードをPゾーンに置く! 最後に、残ったデスガイドを素材にリンク召喚!」

 

 召喚条件は通常召喚された攻撃力1000以下のモンスター!

 

「【転生炎獣アルミラージ】をリンク召喚! これでターン終了!」

 

 

「大型モンスター一体と【アルミラージ】……銀臣にしては少し大人しすぎやしないか?」

「いいや、手札コストを多用した割に無駄が一切無い、良い先手だ」

「えぇ、それに【トロイメア・グリフォン】に【EM五虹の魔術師】。強力な面制圧モンスターとP効果だわ、出てきたモンスター一体一体を丁寧かつ確実におもてなしする気ね」

 

 ボクのセコンドがこのターンを評する。確かに【火吹炉】以外のラビュリンスモンスターが顔を出していないから、大人しめといえばそうかもしれない。

 

 

 TRUN1→2 銀臣→縦上

 

 

 

1️⃣【トロイメア・グリフォン】

2️⃣【転生炎獣アルミラージ】

【ウェルカム・ラビュリンス】

4️⃣【EM五虹の魔術師】

5️⃣【白銀の迷宮城】

 手札:1枚

 

   銀臣

 □□□4️⃣

 □2️⃣□□□5️⃣

  1️⃣ □

□□□□□□

 □□□□□

   縦上■■■■■

 

「思ったよりは消極的なターンだね」

 

 縦上先輩がそう言い、手札と盤面を交互に見やる。

 

「【トロイメア・グリフォン】の永続効果で俺たちはリンク状態でなければ特殊召喚したモンスターの効果を発動できず、また【EM五虹の魔術師】の効果でセットカードも無ければ効果を発動できない、か」

 

 そして状況を冷静に分析し、柔らかく微笑んだ。その微笑みに、セコンドの部員たちが盛り上がる。

 ターンが渡り、ボクは深く吸い込んだ息をゆっくりと吐き出す。

 

 ここからは防衛ターン。妨害は永続的なものが2つ、そして【迷宮城】がある状態での【ウェルカム・ラビュリンス】の追加効果による破壊。

 よって総妨害数は1回……ロック盤面と合わせても決して盤石とは言い切れないけど、出来ることをやるだけだ。

 

「俺のターン、ドロー!」

「このドローフェイズに【アルミラージ】の効果を発動! このモンスターをリリースして【トロイメア・グリフォン】に破壊耐性を付与します!」

「ふむ……効果破壊は出来ないか。ひとまず、カードを2枚セット!」

 

 縦上先輩の場にカードが2枚伏せられる。これで【EM五虹の魔術師】の効果ロックが解除された。仮に出てきたモンスターに妨害を当てたとしても伏せカードは1枚残ってしまうから、使い所はむしろあれらのカードがこのターンに使用され、伏せカードの枚数が減ったときが狙い目だ。

 

「残りの手札が気になるけど、積極的に動かなきゃね――セットした魔法カードを発動する! 【星遺物へ至る鍵】!」

 

 場にセットされたカードが開かれる、永続魔法だ。

 しかしそのカードは、恐らくボクにとって一番厄介な魔法カードだった。

 

 【星遺物へ至る鍵】は発動時の効果処理として除外されている()()()()()()()()()()を手札に戻すカード。だけど縦上先輩には当然除外されているカードは無い、よってこの効果はなんでもない。

 このカードの本領は、そのあるカテゴリに属するモンスターと「同じ縦列で発動した相手の罠カードの効果を無効化する」というボクのデッキにとって凶悪な効果だ。

 

 どうする、【ウェルカム・ラビュリンス】を発動して破壊しておくか……だがそれはこのターンの妨害がこれ以上無くなることを意味する。

 

 チェーンを挟むかどうかの選択時間の限界がやってきた。

 ボクは熟慮の末、チェーンしなかった。

 

 刹那、【トロイメア・グリフォン】の眼前に煌めく蒼を携えた騎士が出現した。

 発動しない特殊召喚、やっぱりこれは……!

 

「同じ縦列にカードが2枚以上ある時、【蒼穹(そうきゅう)機界騎士(ジャックナイツ)】はその縦列に特殊召喚出来る! さらに特殊召喚した【蒼穹】のモンスター効果! デッキから同名以外の【機界騎士】を手札に加える! 俺が手札に加えるのは【紫宵(ししょう)の機界騎士】と【翠嵐の機界騎士】!」

 

 

【蒼穹の機界騎士】✪5 ATK/2000 DEF/2500

 

 

 【ジャックナイツ】……! 「同じ縦列にカードが2枚以上存在する場合」という条件で特殊召喚が可能な展開テーマ!

 さらに、ボクは自分の浅慮を呪った。【トロイメア・グリフォン】と同じ縦列に【ウェルカム・ラビュリンス】はセットされている。そしてその縦列に【蒼穹】が着地した。

 

 つまり発動こそ出来るが、効果処理時に【星遺物へ至る鍵】の効果が適用され【ウェルカム・ラビュリンス】は敢え無く無効化されてしまう。

 

「ふふ……実は君のことは知っているよ。猿渡先生を倒したっていう実力者のようだからね!」

「――――ッ!」

 

 得意げな表情を浮かべる縦上先輩、ボクは思わず眉を寄せた。

 なるほど、ボクが【ラビュリンス】使いだと最初から知っていたんだ。つまり、あのデッキは他にもきっと大量の罠メタが積まれているに違いない。

 

 だけど悪いことばかりじゃないはずだ。

 ボクが把握している限り、メインデッキに入る【ジャックナイツ】モンスターは最大攻撃力が【グリフォン】と同じ2500。

 

 現状、ボクは【蒼穹の機界騎士】に【ウェルカム・ラビュリンス】の発動を封じられてはいる。だけど【グリフォン】がいる限り、リンクモンスターとリンクしていなければ効果は発動できない。

 従ってさっき縦上先輩がサーチした【紫宵の機界騎士】で追加のサーチを行おうとしても現状縦上先輩が使えるたった1つのリンク先を【蒼穹】が埋めてしまっている。

 

 だから、縦上先輩は自身もリンクモンスターを呼び出してリンク先であるスロットを用意しなければならない。

 縦上先輩の手札は残り5枚。通常召喚出来る下級モンスターがいれば、リンク2のモンスターを召喚してくるだろう。そうでなくとも、【EM五虹の魔術師】の縦列に合わせて手札にいる【紫宵】か【翠嵐】を特殊召喚すれば、効果は使えずともリンク素材には出来る。

 

 【ジャックナイツ】モンスターの素の攻撃力では【グリフォン】を突破するには良くて【紫宵】との相打ち。だけど、そうすれば縦上先輩はリソースを大きく消費することになる。

 縦上先輩の残りの手札次第だけど、まだ勝負は分からない。

 

「ボクは【夢幻崩界イヴリース】を通常召喚!」

 

 現れたのはレベル2のサイバース族モンスター。攻守は0とステータス自体は貧弱だけど、効果は凶悪そのもの。

 このモンスターが場にいる間、そのコントローラーはリンク召喚でしかモンスターを特殊召喚出来ないというもの。一見デメリットだが、このモンスターの効果には続きがある。

 

「輝け、星を導くサーキット! アローヘッド確認、召喚条件は『カード名が異なるモンスター2体』! 俺は【蒼穹の機界騎士】と【夢幻崩界イヴリース】をリンクマーカーにセット!」

 

 表示されるリンクマーカーの位置は、上と右!

 その位置にマーカーのあるリンク2のモンスターはボクにも覚えがある。というか、このデッキにも入っている。

 

「【トロイメア・フェニックス】をリンク召喚! 召喚時効果、手札を1枚捨てて【EM五虹の魔術師】を対象として発動、さらにリンク素材となって墓地へ送られた【夢幻崩界イヴリース】の効果をチェーン2で発動!」

 

 

【トロイメア・フェニックス】 ATK1900 LINK-2

 

 

 こいつの召喚時効果は手札を1枚コストに魔法・罠を一枚破壊する効果! そして【イヴリース】の墓地効果は、相手の場に特殊召喚されるというもの。

 ボクのデッキはリンク召喚に特化したラビュリンス、だからイヴリースのリンク召喚ロックは大した問題ではない。

 

 だけどボクの場には【トロイメア・グリフォン】がいる。そして、このモンスターの制圧効果はボクも受けるんだ。

 つまり【イヴリース】が【トロイメア・グリフォン】のリンク先である真下に出されたら、今度は【ウェルカム・ラビュリンス】の発動自体が封じられる。

 

 間違いなく妨害を吐かされている。だけどやるしかない!

 

「【イヴリース】の効果にチェーン! 【ウェルカム・ラビュリンス】! デッキから【ラビュリンス】モンスターを特殊召喚する! デッキより現れよ、【白銀の城のラビュリンス】!」

 

 使用できなくなる前に姫を着地させる。さらに、【白銀の迷宮城】があることで追加効果が炸裂する。

 

「【ウェルカム・ラビュリンス】に付与された破壊効果で【トロイメア・フェニックス】を破壊!」

 

 姫が出てきた城の扉から臣下と家具が現れ、【フェニックス】に一撃を加え離脱していく。

 【フェニックス】は破壊されるものの、発動した効果は残滓としてフィールドに残っている。

 

「チェーン2、小鳥遊くんの場に【夢幻崩界イヴリース】が特殊召喚され、最後に【トロイメア・フェニックス】の効果処理で【EM五虹の魔術師】を破壊、さらに発動時に【グリフォン】と【フェニックス】が相互リンクだったのでカードを1枚ドローするよ!」

 

 【グリフォン】と【フェニックス】は同時に上向きのリンクマーカーを持つ。故に相互リンクになり、【フェニックス】の効果を十全の状態で使用された。

 相手のリンクマーカーまで利用するのは巧い証拠だ。氷雨さんに言い寄る姿がちょっと軽薄な感じだと思ったけれども、この人は強い。

 

「恐らくあのデッキには同じリンク2の【トロイメア・ケルベロス】も入っているはず。【フェニックス】と同様上向きのリンクマーカーを持つから【グリフォン】と相互リンクを狙えるモンスターで効果破壊耐性を付与出来る。小鳥遊くんがラビュリンス使いだと知りながら敢えて【フェニックス】を呼び出したのは、【EM五虹の魔術師】が面倒だったのもあるだろうが小鳥遊くんに【ウェルカム・ラビュリンス】をこのタイミングで使わせるためか」

 

「それだけじゃないわね、【アルミラージ】の効果で守られているとはいえ除去手段はまだあったはず。彼は【トロイメア・グリフォン】を()()()()()()()。あのロック効果は強力な反面コントローラーさえ縛られる。【ラビュリンス】が特殊召喚されれば必然的にこの後効果を使用できるモンスターがいなくなるから、縦上くんが銀臣ちゃんを縛る目的でも残す意味があるのよ」

 

 流石の二人だ、ボクが考えている以上のことを既に思いついていた。

 それを勘定に入れた上で、この後の選択は重要だ。

 

「通常罠カードの効果でモンスターが場を離れたことで【白銀の城のラビュリンス】の効果が発動! 手札か場のカード1枚を破壊できる! ボクが破壊するのは――」

 

 本当ならば【火吹炉】も蘇生出来たが、ボクの場にいる【イヴリース】がそれを許さない。

 

 ボクの逡巡を、縦上先輩は見逃さなかっただろう。効果処理の直前まで来て、ボクはまだ決断出来ずにいる。

 姫が戦斧を構えながらちらりとボクを見る。その透き通るような銀の瞳に射抜かれて、弾かれるようにボクは指を差した。

 

 

「――【星遺物へ至る鍵】を破壊する!」

 

 

 ハンデスで【紫宵】と【翠嵐】を破壊できる確率は極低い。そして恐らくまだ後続の【ジャックナイツ】が出てくるはず。

 だから【星遺物へ至る鍵】を破壊した方が次のターン以降の罠の妨害を無くせる。

 

 姫が片目を瞑りながら指で銃を作って、小さく「バン!」と唱える。

 指弾が奔り、それが場の【星遺物へ至る鍵】を撃ち貫いた。

 

「――俺は【紫宵の機界騎士】を特殊召喚! その効果により自身を除外し、デッキから【紫宵】以外の【ジャックナイツ】を手札に加える! 俺が加えるのは【紺碧の機界騎士】、そのまま特殊召喚!」

 

 【紫宵】はその能力から、自身を退かすことで縦列を開けることが出来る。こうしてまた【グリフォン】のリンク先の縦列が開き、今しがた手札に加えられた【紺碧】が場に出てくる。

 

「【紺碧の機界騎士】の効果で縦列を移動し、さらに空いた縦列へ【翠嵐の機界騎士】を特殊召喚! そして、2体のモンスターをリンクマーカーへセット!」

 

 紺と翡翠、2つの輝きが巨大な渦となってサーキットを形成する。

 

「召喚条件は【ジャックナイツ】モンスターを含む2体! 星の脅威へ立ち向かう、原初の機械騎士! 【明星(みょうじょう)機械騎士(ジャックナイツ)】リンク召喚!」

 

 現れたのは今までの【ジャックナイツ】モンスターと違い、色を持たないプレーンなマシン。

 その胸部中央にあるコアが強い輝きを放った。

 

「手札の【ジャックナイツ】か【星遺物】カードを捨て、デッキから【星遺物】カード1枚を手札に加えることが出来る! 手札から【星遺物の囁き】を墓地へ送り、【星遺物に潜む深層】を手札に加える」

 

 EXゾーンにいる【グリフォン】とリンク状態になれる相手モンスターは1体が限界のはずなのに、先輩はあの手この手で縦列を開けては効果を通してくる。

 【グリフォン】の効果で縛られているのは、もはやコントローラーであるボクの方である。

 

「さらに、手札から速攻魔法を発動!【星遺物の機憶】! デッキから【黄華の機界騎士】を守備表示で特殊召喚し、三度現れろ! 星を導くサーキット!」

 

 現れる電子未来回路。【明星】と【黄華】、さらには墓地へ行ったり除外されてる他の機界騎士たちのパーツがフィールドに出現する。

 それら全てが合体していき、やがて1つの合体モンスターへとなる。

 

 

「悠久の時を超え、星を守護すべく脅威に抗う七賢人。今ここに集いて救済と裁きを為せ!」 

 

「リンク召喚、執行せよ! リンク3【星痕(せいこん)機界騎士(ジャックナイツ)】!」

 

 EXモンスターゾーンに現れたそいつは、神々しささえ持っていた。

 【ジャックナイツ】が集結し合体した、真の姿。

 

「このモンスターは同じ縦列にカードが無い場合、相手プレイヤーに直接攻撃が出来る! さらにリンク先である自軍フィールドにモンスターがいなければ対象耐性と効果破壊耐性を持つ!」

 

 それはまるで鎌首を擡げるようにして、ボクたちを睥睨していた。

 決闘盤にセットされているPDAがフェイズの移行を告げていた。

 

 

「【星痕の機界騎士】でプレイヤーにダイレクトアタック! 《七彩の星痕裁量子砲(オーロラ・ジャッジメント)》!!」

 

「うわあああああああああああっ!!」

 

 

 銀臣 LP8000-3000=5000

 

 

 全ての機界騎士のコアがまばゆい光を放ち、充填したエネルギーをボクのモンスターたちを貫通してボクに直撃する。

 立体幻像だから痛みはない。だけど一気に3000ものライフが削られたプレッシャーがまるで痛みを実体化させてるみたいに感じた。

 

「メインフェイズ2! セットしていたカードを発動! 【星遺物を継ぐもの】! これにより墓地の【紺碧の機界騎士】を【トロイメア・グリフォン】のリンク先へ守備表示で特殊召喚する! カードを1枚セットし、ターンエンド」

 

 

 TRUN2→3 縦上→銀臣

 

 

1️⃣トロイメア・グリフォン

2️⃣白銀の城のラビュリンス

3️⃣夢幻崩界イヴリース

4️⃣白銀の迷宮城

 手札:0枚

 

   銀臣

 □□□□□

 □2️⃣□□3️⃣4️⃣

  1️⃣ 5️⃣

□□6️⃣□□□

 □□□□

   縦上

 

5️⃣星痕の機界騎士

6️⃣紺碧の機界騎士

セットカード(星遺物に潜む深層)

 

 長かった縦上先輩の攻勢が終わり、セコンドの女子が黄色い声援を上げる。

 セコンドの人数がそもそも違うから余計にアウェー感に苛まれる。

 

「銀臣! 焦るな! ライフはまだ5000も残ってるぞ!!」

 

 音喜多くんが負けじと応援してくれるけれど、状況ははっきり言って最悪だった。

 相手の場には【ジャックナイツ】と同じ縦列のモンスター効果を無効化する【星遺物に潜む深層】がある。

 

 現状、【ジャックナイツ】モンスターは【星痕】と【紺碧】の2体のみ。だからロック自体は緩いかと思いきや【深層】には墓地のレベル5以上のモンスターを蘇生する効果がある。

 これによって墓地の【蒼穹】、【黄華】、【翠嵐】のいずれかを蘇生させればもう1つスロットが埋まる。さらに【紺碧】には【ジャックナイツ】モンスターを移動させるという効果がある。

 

 つまり、次のターンで少なくともモンスター効果無効が2回増えるようなものだ。そしてボクの手札は0枚。

 

 正直、絶望だった。氷雨先輩には申し訳ないけど縦上先輩とデートしてもらうことになるかもしれない。

 そうして捲ったデッキトップ。

 

 

 ――どうやらこのデッキはさすがボクのデッキというか、負けず嫌いで。 

 

 

「魔法カード、【強欲で貪欲な壺】! デッキトップからカードを10枚裏側で除外して発動! カードを2枚ドローする!」

 

【バウンドリンク】

【彼岸の悪鬼グラバースニッチ】

【ウェルカム・ラビュリンス(2枚目)】

【天獄の王】

【彼岸の悪鬼スカラマリオン】

【ラビュリンス・セッティング】

【絶対王 バック・ジャック】

【白銀の城の竜飾灯】

【迷宮城の白銀姫】

【ダメージ・コンデンサー】

 

 よし、飛ばなかった! 第一条件はクリア!

 10枚の膨大なコストを払いデッキの枚数が目に見えて減る。だけどここからなんだ、ここまではあくまで前提条件でしか無い。

 

 

「氷雨先輩、どうにか出来るカードがあります。引けなかったらすみませんけど……」

「ふむ……じゃあ引けたなら小鳥遊くんとデートすることにしよう。腕組みはもちろん、お昼ご飯は「あーん」で食べさせてあげるし、お腹が一杯になったら膝枕でお昼寝つき、どうかな」

 

「よし、引きます」

『銀臣~?』

『ちょっと、ご主人たま? ガチトーンすぎない?』

 

 ガチにもなる、ボクだって男だし、美人の先輩とデートは男の夢だ。姫やアリアが睨んだって、ボクは怖じない。

 右手が輝いているような気がした。今なら望み通りのカードが引けそう、なんならデッキトップのカードを好きなカードに作り変えられるという気持ちまで沸いてくる。

 

 ゆっくりとカードに指をかけた。シンと冷たい感覚が指先に走る。それはまるで大理石で出来た扉に触れた時のような冷たさ。

 しかしじんわりと、確実に熱が広がっていく。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ボクのターン、ドロー!」

 

 

 

 

 

 ――――来たッ!

 

 

 

 

 ボクはフィールドのモンスターに目をやった。条件クリア、まずはボクを縛るロックを剥がす!

 その時、ふと場の【夢幻崩界イヴリース】がちらりとボクの方を見ていた。だけど瞬きの隙に視線が外れていたから、気のせいだと思うことにした。

 

 

「現れろ、白銀に輝くサーキット! 召喚条件は『効果モンスター2体』! ボクは【トロイメア・グリフォン】と【夢幻崩界イヴリース】をリンクマーカーにセット!」

 

 

 このデッキは罠よりモンスター効果を多用する以上、対象耐性や破壊耐性があったりそもそもモンスター効果を受けないというモンスターに弱い。

 だからそういうモンスターを処理するためのモンスターが、このEXデッキに1枚だけ眠っている。

 

 

「リンク2、【閉ザサレシ天ノ月(サロス=ナンナ)】リンク召喚! そして【白銀の城の召使いアリアーヌ】を通常召喚し効果発動! 手札及びセットされている通常罠1枚をコストにデッキからレベル4以下の悪魔族モンスターを特殊召喚する!」

 

「ドローしたカードはアリアーヌか! でもそれは通さないよ! 永続罠【星遺物に潜む深層】を発動! 墓地の【黄華の機界騎士】を対象、これを蘇生し! このカードが存在する限り【ジャックナイツ】モンスターと同じ縦列で発動した相手のモンスター効果を無効化する!」

 

 やはり止めに来た、ジャックナイツの数を増やして妨害を敷くつもりだ。

 だけどその効果こそ、ボクが通さない!

 

「チェーンして、今アリアーヌのコストで墓地に捨てた【ビッグウェルカム・ラビュリンス】の②の効果を発動! このカードをゲームから除外し、ボクの場の悪魔族モンスター1体を手札に戻す!」

「起死回生の1枚、でも【深層】がある限り同じ縦列で発動してしまったらたとえ手札に戻ったとしても無効化する――」

「ただし! ボクの場にレベル8以上の悪魔族モンスターがいる場合、相手のカードを対象にできる! ボクは【星遺物に潜む深層】を手札に戻す!」

 

 墓地から、人形のシルエットが2つ飛び出し1つの影がカードの立体幻像を鋏でぶった切り、もう1つの影がそれを弾き縦上先輩の手札へ戻した。

 この罠は姫がボクに【迷宮城の白銀姫】の姿を見せてくれた時、彼女から溢れたカード。たった1枚しかボクのデッキに入っていないけれど、この土壇場でボクの元へ現れてくれた。

 

「逆順処理によって、永続罠の【星遺物に潜む深層】はバウンスされ効果は不発! 【深層】が不発になったことでアリアーヌの効果は有効! ボクはデッキから【白銀の城の召使いアリアンナ】を特殊召喚! その効果でデッキから【白銀の城の狂時計】を手札に加える!」

 

『ジャジャーン!』

『主役は遅れてやってくるのです』

 

 たった1つ、何かを間違えるだけで形成は逆転する。

 それがこのデュエルモンスターズの醍醐味であり、決闘者が抱く恐怖の本質だ。

 

「さらに【閉ザサレシ天ノ月】のモンスター効果をリンク先の【紺碧の機界騎士】を対象に発動! このターン、ボクは【閉ザサレシ天ノ月】と対象に取ったモンスターをリンク召喚の素材にすることが出来る!」

「相手モンスターをリンク素材に……!? しかも、リンク先のモンスターだって!?」

 

 今度はボクがリンク先の相手を利用し返す番だ。今更【紺碧】を横に移動させてももう遅い。

 【紺碧】の胴体に冥界の使いと思しきモンスターの証が刻印される。これで準備は整った。

 

 

「現れろ、白銀に輝く冥府回路(サーキット)! 召喚条件は『効果モンスター4体以上』! ボクはリンク2の【閉ザサレシ天ノ月(サロス=ナンナ)】に【白銀の城の召使いアリアンナ】と【紺碧の機界騎士】、さらに【星痕の機界騎士】をリンクマーカーにセット!」

 

「【星痕】までリンク素材に!? そんな効果の発動は確認して――――ハッ!?」

 

 そう、そんな効果は発動していない。

 ()()()()()()()、今から呼ぶのは俗にそう呼ばれる効果を持つモンスター。

 

 

「月()む冥府の女神、(くら)き希望喰らいて降臨せよ!! リンク召喚! 現れろ、リンク5! 【閉ザサレシ世界ノ冥神(サロス=エレス・クルヌギアス)】――ッ!!」

 

 

 中空に浮かぶ、巨大な円。それが陰り、やがて漆黒の球体となる。

 端々に微かに溢れる希望の光を全て奪い尽くすように、深淵を世界が飲み込むように。

 

 光と闇が逆転する。その輝く闇の中に、彼女はいた。

 微睡みの中、開眼する彼女の冷徹な瞳が縦上先輩を射抜いた。

 

 

【閉ザサレシ世界ノ冥神】 ATK3000 LINK-5

 

 

「【閉ザサレシ天ノ月】は本来リンク先のモンスターしか効果の対象に取れないが、【ジャックナイツ】が妨害のために縦列を合わせてくることを逆手に取るとはな……!」

 

「縦上くんの場はがら空き、手札も今しがたバウンスされた【深層】のみ。対して銀臣ちゃんの場の総攻撃力は7700、わずかに届かないけれど……」

 

「銀臣の手札には【狂時計】がある」

 

「よっしゃ行けーッ! 銀臣ーっ!!」

 

 セコンドの温度差が逆転する。

 ボクが腕を振りかぶると同時、姫が弧を描くよう靭やかに腕で空を撫でる。

 

「【白銀の城のラビュリンス】の効果で墓地の【ウェルカム・ラビュリンス】を場にセットし直し、【白銀の城の狂時計】は手札からこのカードを捨てることで、【ラビュリンス】モンスターがいる時そのターンに伏せた罠を1枚だけ発動可能にする。【ウェルカム・ラビュリンス】を発動! 来い、【白銀の城の魔神像(デーモン)】!」

 

 魔神像の攻撃力は2400になり、総攻撃力は10100となる!

 

「ウソでしょ……」

「副部長が」

「負けるなんてイヤーっ!!」

 

『やっちゃえご主人たま~!!』

「【閉ザサレシ世界ノ冥神】でプレイヤーにダイレクトアタック! 《冥界ノ主人ノ嘆キ(コキュートス・ラメンテーション)》!!」

 

 

 漆黒の月から溢れ出した冥神の慟哭に従い使い魔たちが縦上先輩へ殺到する。

 続く攻撃も、彼に防ぐ手立ては無い。姫の戦斧と魔神像の大剣が残るライフポイントを全て刈り取った。

 

 

 縦上 LP8000-3000-2900-2400=-300

 

 

 銀臣 Win

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

「対戦ありがとう、音喜多さんがボディガードにするだけのことはあるね」

「こちらこそ、ありがとうございました」

 

 縦上先輩、なんとか勝つことが出来たけど強敵だった。

 ボクのデッキがリンク召喚に特化したラビュリンスでなければ【夢幻崩界イヴリース】の特殊召喚封じを解除するために自爆特攻を仕掛けるしかなかった。

 

 そうなった場合、【星痕の機界騎士】へ攻撃を仕掛けボクのライフは5000から2000へ。返しのターンの直接攻撃でボクは負けていた。

 先輩の決闘はそういう選択を迫り、気づいた時には【星遺物】永続罠による縦列無効で雁字搦めにしていくスタイルなんだろう。

 

 握手を交わすとその手からは無念が伝わってきた。

 先輩のことは辛うじて知っていたくらいで話をするのは今日が初めてだけど、氷雨先輩に対して全力なんだなっていうのがわかる。

 

「奥手過ぎたかな、俺は」

「強いて言うなら【トロイメア・グリフォン】のロック効果を利用することを徹底しすぎた、永続罠と違い小鳥遊くんはいつでもそれを解除できたのだからコントロールを奪うなりして掌握しない限りは残したままターンを跨ぐ真似は避けたほうが良い」

 

 いつの間にかボクたちの側まで来ていた氷雨先輩がそう言った。

 尤も【イヴリース】ロックを解除出来たのもデッキタイプが偶然合っていたから出来ただけで、EXデッキがコストや弾丸だけで出来ているタイプのラビュリンスだったなら正直勝てなかったはずだ。

 

「音喜多さんの言う通りだ、これではまだまだだね……もっと腕を磨くことにするとしよう」

「その意気だ、私はしつこい男は好きじゃないが諦めの悪い男は別さ。頑張ってくれよ」

 

 そう言って微笑みを浮かべる氷雨先輩。なんとなく、なんで彼女がモテるのか理由が分かった気がする。

 縦上先輩は顔がいいけど、ボクには目の前に人参をぶら下げられた馬に見えてしまった。

 

「今度は一緒にアクションデュエルしよう。小鳥遊君ならきっと良いパフォーマンスと良いデュエルを両立出来ると思うよ」

「いや~それは……考えておきます」

 

 爽やかイケメンのオーラに当てられながら、視線を逸らす。

 アクションデュエルか、運動神経無くても大丈夫かな。

 

『少なくともあの家からアカデミアまでの極短距離でさえ走って息切れするようなら向いてませんわね』

『ご主人たま、見た目通りのもやし少年だもんね~』

 

 酷い言われようだった、事実は人をボコボコにするんだぞ。

 尤もアクションデュエルの授業が無いわけじゃないし、今のうちから走り込みとかでもして体力をつけておくのはありかもしれないなぁ。

 

「なかなか面白いデッキだったなぁ、今度そのデッキで俺とやろうぜ!」

「うん、反省点も見つかったし今度調整に付き合ってよ」

 

 音喜多くんはこういう時すぐに声を掛けてくれるからありがたい。実際、夏休みが始まって間もないけど何度か夜中にリモートでの決闘に付き合ってもらったくらいだ。

 

 その後、ボクたち学生会メンバーは午前中でほぼほぼ仕事が終わってしまったのもあり、その後はせっかくだからアクションデュエルクラブの練習を見学させてもらうことにした。

 縦上先輩はやっぱりアクションデュエル畑の人間で、【紺碧の機界騎士】がモンスターゾーンを移動する効果を使う時に掴まることでフィールド内をジャンプしたりとかなりアクティブだ。

 

 加えてアクションマジックを上手くセットして縦列を調整することで【ジャックナイツ】モンスターの特殊召喚をスムーズに行っている。

 相手は走り回りながら同じ縦列を避けるように注意してプレイングを心がけなければいけないが、

 

 

「行くよ、【星痕の機界騎士】でダイレクトアタック! 《七彩の星痕裁量子砲(オーロラ・ジャッジメント)》!!」

 

 

 相手がEXモンスターゾーンと同じ縦列を避けたならば、【星痕】の奇襲ダイレクトアタックが相手プレイヤーを襲う。

 なるほど、先輩が副部長ながらエースと呼ばれる所以が分かった。

 

「いつか、本当に氷雨先輩とのデート権勝ち取りに来るかもですね」

「それは無いだろう、私は強いからなぁ」

 

 あくまで氷のように辛辣だった、縦上先輩の未来に幸あれ。

 

「負けるつもりがないのは、そうだがもう1つ理由があるのさ」

「そうなんです?」

「あぁ、私は――」

 

 先輩はちょいちょいとボクを手招きした。内緒話だろうか、耳を寄せた時だった。

 

 

「年下が好みなんだ」

 

 あー、そういう……

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

「ふぅ、熱いお風呂はどんな季節でもいいよね」

 

 夜、かぽーんと聞こえてきそうなくらいボクは自宅の湯船で寛いでいた。

 ちなみに姫とアリアリ姉妹はというと相変わらずクーラーの利いた部屋でファミリーパックのアイスでも食べてるはずだ。

 

『――邪魔するわね』

 

 その時だ、スッとお風呂場のドアをすり抜けて誰かが来た。姫たちはボクの家では基本的に実体化しているから入ってくるなら扉を開けるはずだった。

 突然の闖入者にボクは素っ頓狂な声を上げそうになった。というか「キャー!」くらい言っても良かったと思う。

 

「【夢幻崩界イヴリース】……? あの、一体どういった用? 見ての通りボクお風呂中なんだけど……」

 

 闖入者の正体は日中の決闘でも活躍(?)したイヴリースだった。

 

『このタイミングじゃなきゃあの三人娘に邪魔されそうだったし、一人になってくれるタイミングを待ってたってワケ』

 

 イヴリースが指先でボクの頬を撫でながら言った。細くてひやりとした指先が熱くなっている身体に奔り、まるで蛇の腹が身体を這っているようなこそばゆさだった。

 

「一人に、ってもしかして重要な話?」

『そ、今日の決闘中フィールドから貴方のことを見ていたのよ。一瞬、目が合ったでしょ?』

 

 やっぱり気の所為じゃなかったんだ、あれ。

 イヴリースはまるで湯船に浸かるようにボクの隣に腰を下ろすと身を寄せてきた。

 

『ねぇ、私をずっとデッキに入れてくれない? 私、役に立つと思うケド……?』

 

 ニヤリ、扇状的な笑みだった。姫やアリアリ姉妹、さらには氷雨先輩で女性慣れしてなかったら即座にオーケーを出していただろう。

 だけど侮ったな、ボクだってそうホイホイデッキに女の子を招き入れるような節操なしじゃないんだよ。

 

「いいよ、これからよろしくね」

『へぇ良いんだ? お城の主に相談も無し?』

「ボクの判断ならきっと姫は尊重してくれると思うし、イヴリースは役に立ってくれるんでしょ?」

 

 ボクがそういうと思ったより簡単に籠絡出来た、という顔でイヴリースはネコのようなイタズラな笑みを浮かべる。

 

『マスター、名前は?』

「小鳥遊銀臣、銀臣って呼んで」

『いいわよ、これからよろしく銀臣』

 

 細めた目でボクを見つめるイヴリース、とりあえずそろそろ湯船から出てほしい。じゃないとボクも出るに出られない。

 しかし思わぬ収穫というか、アルベルといい今まで仮組みしてきたラビュリンスデッキのキーカード達が続々ボクの前に現れる自体にちょっとだけ胸を踊らせてるボクがいた。

 

 

 実際問題、イヴリースが味方になってくれたのはすごいありがたい。

 

「【クリッター】や手札でダブついた【彼岸】モンスターからキミ(イヴリース)を経由してアンナたちをサーチ出来るからね、【スモールワールド】で」

 

『……はぁぁぁぁあああああああああああああああああああっ!?』

 

 

 




今回デュエルパートに際し縦列の整理がしやすいようターンの終わりに盤面の俯瞰図をそれっぽく出してみました。

これどうですか?



盤面の俯瞰図

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