迷宮城の冴えない男《ラビュリンス・イッパンジン》   作:入江末吉

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遊戯王の二次創作で2話もデュエルシーン無いってマジ???


第二話:はさみ撃ち

 

 翌朝、ボクはいつもより早く朝食を済ませるとアカデミアに向かうことにした。

 姫はというと相変わらずボクの後ろをついてくる。これまで一緒に生活しててわかったのは、精霊はボク以外の人間には見えないってこととその気になれば実体を持つことが出来るということ。

 

 だから彼女が話しかけてきても、ボクはだんまりを決め込まないと一人で喋ってる危ない男に見えてしまう。

 と言っても今はハンズフリーのイヤホンという文明の利器があるため一人で会話してても実は通話してました作戦が使える。

 

「ふぁ……」

『結局、あの後も寝付けずじまい。ベッドの上にデッキを拡げてあーでもないこーでもないとやってましたものね』

「寝はしたよ、一瞬だけどね。それよりデッキの調整したくてウズウズしちゃってさ」

 

 そう、結局寝るに寝れずデッキをバラしてバランスの調整を行ってた。と言っても、ボクの使うデッキにして姫を主力に据えるカテゴリ【ラビュリンス】は罠をメインに据えたデッキで今流行りのデッキほど魔法カードに割ける枚数はそう多くない。もちろん入っていないわけではないけれど、昨夜のような罠一枚増やすのにしたがってどれだけ削るか、という問題が発生したとき真っ先に削られるのは魔法の方だ。

 

 しかしデュエルモンスターズはモンスター、魔法、罠の三種類がバランスよく入っていてこそ真価を発揮する。

 

 

 ────なんて言えたのは、数年前までだ。

 

 

「そういえば、ボクより先に家を出た()()()()は、いったいどこをほっつき歩いてるのかね」

『あの娘たちならすぐ合流するでしょう。アカデミアも貴方の家も通学路もきっちり把握してるのだから』

 

 そうね、キャラに対して結構しっかりしているから心配はいらないか。

 誰の話をしているか、実はボクには姫以外あと二人……どころではない数の精霊が憑いている。けれどきっちり人の形をしてるのは姫を含む三人だけ。

 

 そしてその内の二人が、ボクが家を出るより先に出かけて────

 

 

 ──ゴォーーーーーーーーーーーーーン!! 

 

 

「ぐえぇー【ストライク・ショット】!!」

『攻撃力700アップに加え貫通付与ですわね』

 

 空から急に落ちてきた金たらい、そうこのご時世に空から金たらいである。

 それが脳天に直撃、ボクの頭の中がぐわんぐわんと回りだす。どっちが上だか分からなくなったけれど、たらいが落ちてきた方向から笑い声が響いてきた。

 

『アーッハッハッ、引っかかった引っかかった~! ぶいぶい!』

 

 電柱の上でくるくる器用に回る姫と同じ銀髪の美少女がそこにいた。彼女は満足そうに笑うとそのまま猫を思わせる身軽な動きでボクの目の前に降り立った。

 

『今日も()()()の勝ち~! ()()()()()ったら毎朝引っかかってくれるからアリア嬉しくなっちゃうなー』

「どこから持ってきたんだこんなの……頭が半分凹むかと思った。っていうかその、御主人たまっていうのどうにかならない? ボクこう見えて一般家庭の出なんだけど」

『安心なさい、どこからどう見てもパンピーの見た目をしてますわ』

 

 フォローになってないよそれ。ボクの頭にたらいを落として喜ぶ女の子は【白銀の城の召使い(ラビュリンス・サーヴァンツ)アリアーヌ】、ボクは彼女をアリアと呼び彼女はそれを気に入ったが、彼女はボクを御主人たまと呼ぶ。あまりにもクセが強い呼び方すぎる、メイド喫茶がランクアップしたかのような呼び方だ。

 

『ごめんなさい、アンナは今日も止めたのですが』

 

 そう言いながらアリアに続いて降りてきたのは彼女と瓜二つ、違うとすればパーソナルカラー。緑を基調としたデザインの少し大人しめの見た目をしたもう一人の白銀の城の召使い。

 

「気にしてないよ、アンナに止められてたら今頃ボクの頭にコブができてるわけないからね」

『むぅ、そう言われるのはちょっと心外です。(アンナ)ではアリアを止められない、みたいな言い方に聞こえます』

『実際アンナじゃ私に攻撃力で勝てないからね!』

『今の主流は守備表示での召喚なので、守備力が高い方が堅実なのです』

 

 仲良く喧嘩する二人を尻目に溜息をつく姫、本来二人は仲が良いんだけどちょっとしたことで衝突しがち。よくある姉妹喧嘩もそういう感じなんだろうね。

 その後も二人はやれ「1ターンにいずれかしか使えないくせに」だの、やれ「レベル4以下しか特殊召喚出来ないくせに」だの他愛もない喧嘩を繰り返していた。

 

 言うて、アンナの()()()()には困らされたこともあるけど、救われた場面も多い。

 アリアだってそうだ。レベル4以下しか持ってこれないとはいえ、それ以下における制約の無さは万能といって差し支えない。

 

『『御主人たまはどっちの味方?』』

「え? うーん……狂時計(クロ)かな? 口答えも喧嘩もしないし!」

 

 ぐにぃぃぃぃぃぃぃ。

 

「いふぁいいふぁい、両側から抓るなほっぺが取れる、物理的に」

 

 二人の召使いに頬を抓られ真っ赤に染まるボクの頬、恥ずかしいことなんてないのに。

 ちなみにボクに呼ばれた【白銀の城の狂時計(ラビュリンス・クックロック)】、通称クロが手のひらサイズでデッキから出てきた。まるで『呼んだ?』と言わんばかりだ、ちなみに彼はコウモリと時計本体両方に意思があるらしく、一心同体人馬一体といった関係らしい。

 

 そんな風に賑やかな、端から見れば一人で騒いでる通学中ボクはみんなに意識を向け続けたせいで曲がり角からやってきた人に気づかなかった。

 

 ──ドンッ。

 

 ぶつかった挙げ句、お互いに尻もちをついてしまった。しかも、困ったことにデッキケースが転がってカードがばら撒かれてしまった。

 

「あぁ、ごめんなさい! ボクの方はお気遣いなく!」

「……平気」

 

 ボクはデッキのカードを拾うのに忙しく、相手の顔を見る余裕も無かったけれどどうやら大した怪我なんかはしてないらしい。

 幸い昨夜デッキを確認しておいたお陰でどのカードが何枚あるか、をきっちり把握できていたので飛んでいったり紛失したりはなかった。

 

 ただ、散らばったカードの中にボクのデッキのものではないカードが幾つか混じっていた。

 

「あっ、アカデミアの生徒だったんだ……」

 

 改めてぶつかった人を見る。その人はボクと同じデュエルアカデミアの制服を来た女子。

 物静かな雰囲気で、感覚としてはアリアに似ているなぁと思った。

 

 だけど、初めて見る子だった。ボクの通うアカデミアの制服は胸ポケットにあしらわれた刺繍で学年が分かる。

 ボクと同じ赤色の刺繍だから一年生のはずだ。だけどボクたち一年生はつい先々月入学したばかりだけど、実践授業で結構他のクラスとも交流が生まれやすい環境で彼女を見たことは一度もない、とはっきり言えた。

 

「もしよければ学校まで、案内してほしい」

 

 彼女は消え入りそうな声で言った。綺麗な翡翠色の瞳がボクを見つめていた、日本人じゃないのかな。

 案内、と言ったことで納得した。彼女の制服も、よく見ればまだ真新しいところから転校生と推測できる。

 

 ぶつかってしまった負い目もあるし、何より断る理由がない。

 

 

「もちろんいいよ。ボクは──小鳥遊 銀臣(たかなし しろおみ)、よろしくね」

風舞 アズミ(かざま あずみ)、よろしく銀臣」

 

 

『わぁいきなり呼び捨て! ラブコメ始まっちゃうのかな!? かな!?』

 

 うるさいよアリア、よく見ればアンナまで口元を手で隠しながら『ひゅーひゅー』と囀っている、おのれ小娘ども……

 言い返してやりたいところだけど、風舞さんには彼女たちの姿は見えない。それを良いことに言いたい放題言っているわけだけども。

 

 ふん、冷蔵庫の中のシュークリーム。『アリアの』『アンナの』などと貼ってあったが今夜ボクの胃袋に放り込んでやるぞ。

 

 

 

 

 




この創作の執筆理由

アリアンナとアリアーヌに「御主人たま」って言わせたかったから。
ノルマ達成、ターンエンド、失踪します。


簡単なキャラ紹介

・小鳥遊 銀臣

本作の主人公、友達の前だと饒舌な典型的陰キャ。
デュエルの腕前はそこそこ。愛用デッキは【ラビュリンス】などの罠ビート。


・風舞 アズミ

本作の人間ヒロイン、友達の前でも物静かな陰キャ。
好むカードは風属性とシンクロモンスター、時折リンク。



【挿絵表示】



・白銀の城のラビュリンス

本作の真ヒロイン。ツッコミ担当。
お姫様なのに世俗に塗れすぎてジャージ姿でいることがあまりにも多くなった。
勇者ちゃんが城にTASしに来ると通知が来るので時折精霊界に帰る。


・白銀の城の召使いアリアンナ&アリアーヌ

本作のサブヒロインズ、しかし昨今の創作はサブヒロインが横から素早く掻っ攫っていくことも多いので姫様も油断は禁物。
寡黙系メイドとメスガキ系メイド。アリアンナも顔には出さないがいたずら好き。
得意技は強制脱出装置と魔法の筒。


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