迷宮城の冴えない男《ラビュリンス・イッパンジン》 作:入江末吉
小鳥遊 銀臣:LP4000
猿渡:LP4000
「先行はくれてやる!」
そう宣言し、わしは五枚の手札を見やる。
そしてこのデッキを使うということは、一つの事実を意味する。
「ボクのターン! ボクは【
【白銀の城の召使いアリアーヌ】 ATK/1800 DEF/1100
場に出てきおったのは、如何にも脆弱そうな小娘モンスター。小生意気にも
「ボクは手札から通常罠カードを一枚墓地へ送り、アリアーヌの効果を発動! デッキからレベル4以下の悪魔族を一人特殊召喚する! なにかありますか!!」
小鳥遊はデッキからカードをサーチする時、わざわざ大声でわしに確認を取ってきおった。
高速化した現代のデュエルモンスターズ、後攻プレイヤーが先行のプレイヤーを止めるための優秀なカードたちがこのデッキに搭載されていると思っとるようじゃが。
「好きにせぇ!」
「じゃあ遠慮なく! 【白銀の城の召使いアリアンナ】を守備表示で特殊召喚! その効果でデッキから【
鋼鉄の城の一部が崩れ落ち、新たに顕現するのは白銀の宮廷のような王城。
あまりに白く、神々しいせいで却って不気味に思うわい。あれが小鳥遊のテリトリー。
デュエルモンスターズは今この瞬間にも種類を増やし続けるカードゲーム、故に教師とて全てのカードを把握しているわけではない。
そしてあのカードは、わしの把握してない側のカテゴリーじゃ。
「カードを3枚伏せ、ターンエンドです」
TRUN1→2 銀臣→猿渡
銀臣:場 アリアーヌ アリアンナ 白銀の迷宮城 伏せ3枚 手札0枚
「わしのターン、ドロー!」
後攻プレイヤーは山札からカードをドローできる。わしはこのデッキを使うと決めた時から、後攻を狙っておった。
それは相手が如何に小細工を弄そうと、正面からぶっちぎるパワーがあるからじゃ。
「手札より、【
【古代の機械猟犬】 ATK/1000 DEF/1000
「このモンスターは召喚成功時、相手に600ポイントのダメージを与える! 《ハウンドフレイム》!」
「くっ……」
銀臣 LP4000-600→LP3400
機械猟犬の吐く炎により、小鳥遊のLPが削れる。
マスタールールであれば初期のLPは8000、削れるのは雀の涙程度のライフじゃが初期LP4000のデュエルでは600でさえ命取りの強火よ。
「【古代の機械】だって!?」
「俺、聞いたことあるよ! あのテーマはデュエルアカデミアのエリート教師しか使うことを許されてない伝統のデッキだって!」
「ドロップアウトへの落第通告用デッキって噂もあるよな、それじゃあアイツは……」
「負けたら終わり、ってことか」
ギャラリーの生徒たちが口々に騒ぎ出す。
如何にも、この【古代の機械】デッキはデュエルアカデミアの伝統を重んじるための象徴なんじゃ。
小鳥遊よ、栄えあるデュエルアカデミアの洗礼をその身で受けて去るがえぇ、ウキキ。
「さらに機械猟犬の効果を発動! 1ターンに1度、場ぁと手札から【古代の機械】融合モンスターによって決められた融合素材を墓地へ送り、融合召喚出来る! わしは機械猟犬と手札の【
場と手札、ニ体の機械が空中で混じり合う。部品が崩壊し、より複雑に乱雑に絡み合っていく。
「いにしえの魂受け継がれし機械仕掛けの兵士たちよ。今、隊列を組み交じり合い、新たな力と共に生まれ変わらん! 融合召喚! 現れろ、レベル8【
【古代の機械魔神】 ATK/1000 DEF/1800
機械仕掛けの大翼を広げ、機械魔神が降臨する。このモンスターはレベルの割にステータスは低いが、その分効果は非常に強力じゃあ!
「機械魔神もお前にダメージを与える効果を持つ! その数値は1000!」
銀臣 LP3400-1000→LP2400
機械魔神から発射されたミサイルの数々が小鳥遊に襲いかかる。そして小鳥遊のLPは【古代の機械】相手では既に危険水域まで減っちょる。
「さらにわしは手札から、永続魔法【
そのままメインフェイズを終了し、バトルフェイズへ移行!
「古代の機械魔神で、白銀の城の召使いアリアーヌを攻撃!」
「攻撃力の低い機械魔神で!? ともかくアリア、迎撃だ!」
メイドの小娘は燭台で出来た斧槍で機械魔神を正面から迎撃する。
衝撃でバラバラに砕け散った機械魔神、わしのLPも減るが今から減る小鳥遊のLPに比べりゃ可愛いもんよ。
猿渡 LP4000-800→LP3200
「この瞬間、機械魔神の効果が発動する! このモンスターが戦闘で破壊された場合、デッキから古代の機械モンスター一体を、召喚条件を無視して特殊召喚出来る!」
機械魔神の残骸が蠢き出し、その中から新たな古代の機械モンスターが這い出てくる。
それは巨人、その腕に持つのは凶悪な鋭さを携えた
「現れぃ、【
【古代の機械巨人 -アルティメット・パウンド】 ATK/3000→3300 DEF3000
全身の歯車をキリキリ言わせ、機械巨人がその派手な拳を振り上げた。
「なら、機械巨人の召喚に対して罠を発動!!」
「罠じゃと!?」
確かに、古代の機械の大半が持つ伏せ封じは攻撃する場合に発動する効果。それ以前であれば発動が可能。
尤も、【アルティメットパウンド】は本家機械巨人に対してその効果を唯一持っちょらん、厄介なところを突かれた。
「──【マジカルシルクハット】! アリアーヌをシルクハットの中に隠す!」
小鳥遊のデッキから現れたモンスター扱いのシルクハットが3つ、メイドの小娘がそこへ隠れるがわしは笑いを堪えきれんかった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「笑ォ止! 小鳥遊よ、おおかた守備表示で防御を重ねるつもりじゃろうが浅はかじゃったのぉ! 古代の機械巨人は貫通効果を持つモンスター! わしがシルクハットのうち、2つの当たりを引いたらお前はそれで終いじゃ!!」
猿渡が銀臣のプレイングを一笑に伏すが、銀臣は答えなかった。
なおも機械巨人はキリキリと稼働音を響かせ、拳を振り上げていた。
「猿渡の言う通り、攻守が0のシルクハットを攻撃されたら貫通効果で3300のダメージだ……!」
一人の生徒が言った。全員が見守る中、アズミは冷静に対局を見ていた。
アズミから見て、銀臣は機械巨人の効果を知っていた。
「行くぞォ、わしから見て右のシルクハットに攻撃じゃあ!! 《アルティメットパウンド》ォ!」
機械巨人の振りかぶった拳がその凶悪な爪を伴って、シルクハットを攻撃。その拳は帽子を軽々と貫通し、銀臣の身体へ突き刺さる──
が、銀臣のライフポイントは残っていた。
「なにぃ!?」
「ボクは戦闘の瞬間、【体力増強剤スーパーZ】を発動していた! その効果で2000ポイント以上ダメージを受ける攻撃に対し、一度ライフを4000回復してからダメージ計算を行う!」
銀臣 LP2400+4000-3300→LP3100
連鎖爆発で機械巨人の攻撃をいなしたのはかなり古典的な罠カードだった。
シルクハットに仕込んでいた罠カードは機械巨人の攻撃でシルクハットごと破壊され、墓地へ行く。
「命拾いしたのォ! だが【アルティメットパウンド】は手札の機械族を一枚捨て、続けて攻撃が出来る! 手札の【
ワンツーパンチの要領で繰り出される追撃、それが銀臣の眼の前のシルクハットを攻撃する。
すると攻撃対象にされたシルクハットからアリアーヌが顔を出した。それを見た猿渡が舌打ちをする、このターンで決めきれなかったのがよほど悔しかったのだろう。
「このダメージステップ! リバースカードオープン、速攻魔法! 【ハーフ・シャット】! アリアーヌの攻撃力を半分にし、このターン彼女は戦闘では破壊されない!」
「猪口才! だが、戦闘ダメージは受けてもらうぞ!!」
銀臣 LP3100-2200→LP900
速攻魔法の加護により、アリアーヌは戦闘破壊を免れた。それを受け、アリアーヌがやたら感動したような仕草で銀臣の方を見る。
「追撃してこない、ということは先生の手札に、もう機械族モンスターは存在しない。そうですよね?」
「んぐ……!」
「このバトルフェイズ終了時、シルクハットは自壊する。そして、モンスター扱いのシルクハットが、【マジカルシルクハット】の効果でフィールドを離れたことにより墓地の罠【ウェルカム・ラビュリンス】とアリアンナ、アリアーヌの特殊効果発動! デッキからカードを1枚ずつドローし、手札に悪魔族モンスターあるいは魔法か罠があれば場に出すことが出来る。ボクはカードを一枚セットし、墓地から【ウェルカム・ラビュリンス】を場に伏せる」
「な、なにぃ!? 墓地から罠だと!?」
『墓地から、罠!?』
お約束のように、猿渡とギャラリーが口を揃えて驚く。銀臣のデュエルディスクから飛び出す一枚の罠がフィールドにそのままセットされる。
「【ラビュリンス】は、モンスターが通常罠の効果で場を離れた時に効果を発揮するカテゴリー。【マジカルシルクハット】は防御と同時に攻めの起点……あいつ、面白いな!」
一人の生徒が沸き立つ。明るい赤毛の生徒だ、転校したてのアズミは最初の休み時間に質問攻めにあったがその中に彼もいたと記憶している。
他の人間が「どこから来たの?」とかアズミ本人に興味がある質問をする中、彼だけは「どんなカードが好きなの?」と尋ねてきた。
そして今の言動、アズミは確信した。生粋のデュエルバカだと。
「でも、かなり危ない橋だった」
「だよな、もし猿渡にもう一枚機械族が手札にあったなら最大ニ回追撃出来るアルティメットパウンドの攻撃でもう一つのシルクハットを攻撃されてそこで終わってた」
LPが8000あっても下手をすればアルティメットパウンドなら1ターンで削りきれる。それをLP4000で相手取り、あれほどの危険な賭けに出る重圧は並大抵ではないだろう。
事実、銀臣が掻き上げた前髪は徐々に垂れつつ有り、額には汗が滲んでいる。
「だけど、流れは完全に小鳥遊に傾いてる気がするぜ」
「そうかな」
「あぁ、猿渡が元プロデュエリストっていうのはこの学校じゃ結構有名だ、そんなヤツが落第通告用なんて物騒な噂のあるデッキ使って、しかもライフは初期値の半分。そんなめちゃくちゃな状況を、アイツは往なしている」
男子生徒の言葉に、周囲の生徒はこぞって銀臣に視線を送った。
かなり集中しているからか、周囲のガヤはもはや耳に届いていないようにさえ見えた。
対して、猿渡はメインフェイズ2に以降し、手札のニ枚を険しい目つきで睨んでいた。
手札を見つめ、次に銀臣のフィールドへ視線を送る。それを数十秒間繰り返して、猿渡は顰め面を崩せなかった。
「──わしは、カードを2枚伏せ、ターンエンドじゃ」
TURN2→3 猿渡→銀臣
猿渡:場 古代の機械巨人-アルティメットパウンド 古代の機械城 伏せ2枚 手札0枚
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ボクのターン!」
1枚1枚、カードを捲るたびに心臓が爆発しそうな緊張感を伴う。自分を鼓舞するため、敢えて目を逸らしているけどきっと指先は震えてる。
ドローしたカードを確認し、ボクは猿渡の場を見た。
機械巨人の攻撃力は【古代の機械城】の効果で3300になっている。ボクのライフはたった900、アリアとアンナのどちらであっても攻撃されれば貫通ダメージでボクは負ける。
そして、あの2枚の伏せカード。あれが攻撃反応型のトラップであったなら、迂闊に攻撃出来ない。
だけど、ボクがラビュリンスを使っているからだろうか、あの伏せカードが見えるような気がしていた。
理由はあのカードを伏せる前の猿渡の様子だ。かなり顔を顰めていた、手札のカードを2枚
ボクは知っている限りの、古代の機械に関するデータを頭から引っ張り出す。
そして有り得そうなシチュエーションを模索しては、消去法で片っ端からありえない可能性を排除する。
考えをまとめるより先に、猿渡が動いた。デュエルディスクのスイッチを操作する。
紛れもなく、伏せたカードを発動する動きだ。
「このスタンバイフェイズ! 罠カードを発動じゃあ! 【
「死魂融合……!」
通常罠だから、ボクもあのカードのことは知っている。
墓地から融合素材のモンスターを裏側で除外し、融合召喚を行うカード。猿渡の墓地に眠る古代の機械は……4枚!
ボクは反射で動いていた。それはまさに、タッチの差でこの場に伏せられていたボクの
「チェーンしてリバースカード、オープン! 罠カード【ロスト】!」
「ろ、【ロスト】じゃとぉ!?」
周囲からどよめきが聞こえてくるのが分かる。それはそうだ、今このカードをデッキに搭載する意味が殆どのデュエリストには無いからだ。
その効果は「相手の墓地からカードを1枚除外する」というシンプルなもの。そう、かの有名な【D.D.クロウ】と全く一緒。
【D.D.クロウ】は手札から捨てることでこの効果を発動でき、さらに魔法には【墓穴の指名者】といった、同名モンスターの効果を1ターン封じる速攻魔法がある。
現代デュエルモンスターズにおいて、この【ロスト】を搭載するメリットなど無いのだ、
「ボクは先生の墓地から【古代の機械魔神】をゲームから除外! これで融合素材を減らします!」
「なん、じゃとぉ……わしの墓地融合を、読んでたとでもいうんか……!? だが、墓地の3体の古代の機械モンスターを除外し、【古代の機械超巨人】を融合召喚!!」
墓地から湧き上がってくる、廃材のような歯車たちが組み合わさり機械巨人よりも一回り大きく、歪な巨人が姿を見せる。
【古代の機械超巨人】 ATK/3300→3600 DEF/3300
「で、でけぇ……!」
「攻撃力3600! ここに来て、まだ強いのが出てくるの!?」
周りの生徒たちが恐々としている。彼らは一様にボクを見ていた。きっと自分がボクの立場だったら、と思って恐れ慄いているんだろう。
確かに、
『御主人たま』
アリアだ、ボクの方を見て笑顔を浮かべていた。ちょいちょい、と指先でボクの手札を指す。その2枚の手札を今一度見る。
彼女の言いたいことが、心で理解できた。
『あの方をお呼びしましょう』
アンナが言う。スカートの裾を持ち上げて、仰々しく一礼する。
そのカーテシーは、フィールドに伏せられていたカードに向けられている。
「そうだね、仕掛けは完璧だ。始めよう、白銀のパーティータイムを」
二人が頷き、こちらを不気味に睨んでいる超巨人へと向き直った。
攻撃力3600は確かに強力だ、だけど恐れる必要はない。
「メインフェイズ! トラップ発動、【ウェルカム・ラビュリンス】!」
「さっき墓地から伏せられたトラップ……!」
「その通り! 最初のターン、アリアーヌの効果で一番最初に墓地に送っておいたカードです」
ボクの後ろに佇む、白銀の城の門が開かれた。扉の奥には光が溢れており、その奥を伺い見ることは適わない。
だけどその先にいる、彼女と目が合ったのが理解った。
「──白銀の城統べる魔の姫よ、その叡智で張り巡らせし罠で仇なす尽くを打ち払え!」
ガツン、彼女が手に持ったラビュリスの柄で大理石の床を穿つ。
「デッキより現れよ、【白銀の城のラビュリンス】!! 攻撃表示で特殊召喚!」
それが合図だ、鏡が割れるように溢れ出る光が弾け飛びその中から姫──【白銀の城のラビュリンス】が降臨する。
【白銀の城のラビュリンス】 ATK/2900 DEF1900
キレイだ、と思った。
初めて彼女に会った時もあのドレス姿だった。当時のボクは女性に免疫なんかなくて、かなり挙動不審だったのを覚えている。
『呼ぶのが遅いのではなくて? 見れば、もうクライマックスじゃありませんの』
「だから呼んだんだよ、キミにあれを攻略してもらうためにね」
『戦うのであれば、
「じゃあそうした方が良かった?」
ボクが尋ねると、姫は手の甲を口元に寄せて高らかに笑ってみせた。
『まさか、こんな良き舞台を整えてくださったのだもの。誰にだって譲りませんわ』
そう言って笑う顔は、目元のくまのせいでちょっと不気味だったけれど心に火がつくのには十分なガソリンだった。
「さらに、フィールド魔法【白銀の迷宮城】の効果! 【ウェルカム・ラビュリンス】トラップカードを発動した時、そのカードに「フィールドのカードを1枚選んで破壊する」効果を加えることが出来る! この効果で、アルティメットパウンドを破壊する!」
「通常罠に、効果を加える効果だとぉ!?」
姫が斧槍を振るうと、それに従って白銀の城から
続いてアンナとアリアも飛び出し、姿勢を崩した機械巨人目掛けて得物を振るう。
『さっきはよくもぶん殴ってくれたなー!!』
『特に恨みはないですが』
アリアに関しては恨み節満々だった。二人の連携技《デーモングリッチ》により、機械巨人は粉々に爆砕する。
「【古代の機械巨人-アルティメットパウンド】が破壊された時に発動できる効果は、墓地に古代の機械モンスターがいなければ発動できない!」
「ぐ、ぬぬ……!」
尤も、手札に加えたところで姫がそれを許さない!
「今の破壊は【白銀の迷宮城】によって【ウェルカム・ラビュリンス】に付与された効果。従って、罠カードの効果でモンスターが場を離れたことで彼女たちの効果が再び発動! カードを2枚ドローして、先生の手札か場の伏せカードを破壊する! 先生の手札はゼロ、従ってその伏せカードを破壊します!」
表向きになり、破壊されたカードは【
猿渡は、豪胆なキャラとは裏腹に堅実なデュエルをする。
だから手札に【整備場】と【死魂融合】があったさっきのターンのメインフェイズ2、どうするか迷ったんだ。
場には攻撃力3300の機械巨人がいる。そう安々と突破される壁ではない。
だから整備場を発動し墓地の【古代の機械猟犬】をもう一度手札に加え、EXにもう一枚の【古代の機械魔神】がいればそれでゲームセット、そういう戦法を取ることも出来た。
だけど猿渡はそうしなかった。古代の機械モンスターを4体も素材に指定する超弩級の切り札を召喚することを選んだ。
それは彼が、ボクの可能性を警戒しているという意味でもあった。
本当にボクを舐め切ったままデュエルを続けていたなら、あんな顰め面で悩んだりしない。
「調子づいてるようじゃがのぉ、小鳥遊! お前がせっかく出したそのモンスターも攻撃力は2900! 超巨人の3600には一歩及ばんぞ!」
確かにその通り、だけどボクはアリアとアンナがくれた2枚のカードを見やり
「手札から【
ボクが伏せたカードに対し、クロが力を注ぎ込む。本体の時計の針が1ターン分進み、この罠はこのターンに発動が可能になった。
「バトルだ! 【白銀の城のラビュリンス】で【
「攻撃力の低いラビュリンスで攻撃!? ということは──」
「今伏せられたあのカードは十中八九、彼女をサポートする罠カード!」
さぁ、叫べ! ボクたちは勝つんだと、咆えろ!!
「リバースカード、オープン! 罠カード【プライドの咆哮】!!」
「プライドの咆哮!? 攻撃力の劣るモンスターが戦闘を行う際、攻撃力の差をライフで埋め、300ポイントプラスする罠!」
銀臣 LP900→LP200
【白銀の城のラビュリンス】 ATK2900+700+300→ATK3900
ボクのライフが、彼女の力になる。彼女の振るう斧槍が白銀の閃きと紅い軌跡を以て超巨人を両断した。
真っ二つに切り裂かれ、再び残骸に姿を変える古代の機械郡。その破片が猿渡を攻撃しダメージを与える。
猿渡 LP3200→LP2900
「超巨人は効果で破壊されなければ後続を呼べない。猿渡のフィールドはがら空き……!」
「決まったね」
「白銀の城の召使いアリアンナ&アリアーヌで、プレイヤーにダイレクトアタック! 《デーモン・グリッチ》!」
先程、機械巨人を沈めたように二人の連携攻撃が猿渡に炸裂する。
この直接攻撃によって、猿渡が受けるダメージは3400。猿渡はいつもの熱血ぶりが嘘のように静まりかえり、ただ沙汰を待つように瞑目した。
『はああああああああああああああああああっ!!』
『チェックメイトなのです……!』
猿渡 LP2900→LP0
銀臣 Win
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
スタジアムを揺らすような大歓声は起きなかった。
ざわめきだけが徐々に大きくなっていった。
「猿渡先生が、負けた……!?」
「おい、あいつ何モンだよ……!」
「強いて言うなら、バケモン……か!?」
誰が上手いこと言えと。というか誰がバケモンだよ、きっちり人間だよ。
ただ、普通の人には見えないものが見えるけど。
「お疲れ」
メガネを掛け直すと、いつの間にか近くに来ていたアズミさんが労いの言葉をくれた。
決闘盤を外すと肩の荷が降りてスッと軽くなった気がした。
視線を感じたので振り返ると、そこには姫とアンナとアリアの三人がいて、三人揃って親指をグッと立てている。
やり遂げたという達成感からボクはボクらしくもなく、同じように親指を立てて返した。
「お前、やるなぁ! 実践授業の時、いつもサボってるからどんなデュエルするのか気になってたけど、面白いデッキじゃん! 今度は俺とやろうぜ!」
「えっと……キミは」
「同じクラスの
すごいグイグイ来るなぁ、だけどその興奮した様子から分かるのはとてつもないデュエルバカ。
きっと勝っても負けても笑顔でいられるようなハートの強い決闘者なんだって思うと、なんだか少しだけ羨ましいと思った。
新しい友達とわいわい話していると、後ろからヌッと猿渡先生が現れた。
ボクはギョッとした、負けられないデュエルだからかなり生意気な口とか聞いたんじゃないかって今思うと何を言われて怒られても文句言えない気がした。
「小鳥遊ぃ」
「ひ、ひっひぃ~……」
亡霊みたいにゆらゆら近寄ってくる猿渡先生は正直ホラーよりも怖かった。
しかし先生が伸ばした手はボクの肩にぽん、と置かれた。
「良い、デュエルじゃった……現役時代を思い出すようじゃった」
「それって、今じゃ見ないような古いカードばっかだったからか?」
「茶化すな音喜多ァ! じゃが、確かにそうじゃのぉ。小鳥遊のデュエルはイマドキとは少し違う、懐かしさを感じるのは本当じゃな」
それは、褒められてるんだろうか。
ボクのデュエルは時代遅れだと、猿渡先生までもが言い出すのではないか。
そう身構えてしまったけど、それは杞憂だった。
「授業をサボっていたことは確かに看過できん! が、それはそれとして懲罰デュエルの結果を話さねばなるめぇよ」
懲罰デュエル、そういう名目だったのか。
出来るだけ受けない方がいいのは誰でも分かる、内申に響くこと間違いなしだからね。
「タクティクス、
それだけ言い残し、バシバシボクの肩を叩いた猿渡先生は「十分休憩の後、授業を始めるぞ!」と言って教職員室に向かっていった。
たった3ターンとはいえ、ボクもかなり疲れた。十分休憩がもらえるならもらっておくことにしよう。
しかし一度横になってしまうと、食後ということもあって眠気に抗い難く困っていた。
『食後すぐ横になると牛になりますわよ』
「牛ってことは、【ミノタウロス】みたいな牛魔人?」
ボクが寝ないように、姫が話しかけてくれる。頭のすぐ上に逆さまに映る姫がいて、その声が降り注ぐ。
ミノタウロスって確か、古代ギリシャに出てくる牛の化け物で迷宮の奥に潜む魔物だったはずだ。
ふと思う。ボクが牛魔人になったとしたら、ボクはキミの何になれるんだろう。
口には出さないけど。
デュエルシーンって書くの難しいんだなぁ。
カードの発動タイミングやら、ライフ調整やら。
特にライフ調整、キャラクターがその場で使ってもまぁおかしくない説得力を持ったカードでいなさないといけない辺りが。
そういう意味では今回のデュエルで銀臣がハーフ・シャットを使ってるのは別のカードとのコンボも兼ねてなのでご容赦くださいませね。ちなみに銀臣のデッキに(レシピに需要があるかはさておき)似た効果を持つハーフ・アンブレイクも入っていはいます。
偉大なる先達がガードブロックのお世話になりまくってる理由がよくわかりました。
ちょっとしたキャラ紹介
・猿渡
ゴリラ教師、モチーフはGX65話のマッドドッグ犬飼。
赤いジャージを腕まくりする筋肉もりもりマッチョマンのスライム使いかもしれない。
今回は諸々GXモチーフで話を進めてましたね、一番最初のデュエルが教師相手で古代の機械だったり。
やりようによっては猿渡先生は初手でカオスジャイアントにつなげる事も出来たでしょうが、本作における古代の機械は5D'sみたいなアカデミアの講師でも高実績な人物しか使えない感じの設定なので、効果をきっちり把握出来てないとかいう事情です。
人のデッキとか一回で使いこなせって言われても無理ですし!
その割に主人公とか効果よく知ってるなって? 知ら管