迷宮城の冴えない男《ラビュリンス・イッパンジン》 作:入江末吉
十分の休憩時間の後、猿渡
と言っても、先生の授業はLP4000の時間制限有りのローテーションでデュエルを行っていくというもの。従って勝ち負けは直接ライフをゼロにする以外にも、エキストラターン無しのタイムリミットが来た時点でのライフポイントで勝敗を決める
もちろんそこで遅延行為なんてしようものなら、猿渡先生のキツ~い熱血指導が待っているだろうけど。
ボクが先生の授業を忌避してた理由の一つが、体力だ。先生はデュエルを見回りながら、良い盤面や覆し甲斐のある盤面なんかを見ると激しくヒートアップする。
基本ボクのデッキは罠ビートを主流にしていることもあって、そういった「たった一枚のカードが状況を覆す」といったドラマを生みやすい。
そのせいでたった一回しか参加してない最初の授業でそれはもう注目を集めて大変だった。期待されるほどボクはテンションが下がるんだ。
『あまのじゃくの呪いですわね』
「そうなんだよまさに。ボクにとって数値の上昇は下降なんだよ」
姫がボクのモノローグにツッコミを入れてくる。手札にいる時は結構積極的に話しかけてくるんだよね。
今は授業中で、流石に今日の授業をサボるわけにもいかないのでボクも授業に参加している。
「お前のターンだぜ、小鳥遊!」
「うん、ドローするよ」
カードを一枚山札から引く。ボクの場の伏せカードは三枚、全てが通常罠。加えてフィールド魔法の【白銀の迷宮城】がある。
対して対戦相手の彼の場には【スキルドレイン】と【獣神機王バルバロスUr】に【ガンナードラゴン】が二体。由緒ある【スキドレバルバ】というわけだね。
罠ビート大好きなボクとしては【スキドレバルバ】も通った道だ、それでもバルバロスUrは久々に見たけれどね。
「よし、リバースカードオープン! 【ウェルカム・ラビリンス】! デッキから【ラビュリンス】モンスターを特殊召喚──」
「おっとさせないぜ、手札からモンスター効果発動! 【灰流うらら】!」
ボクが発動したカードの立体幻像が起き上がった瞬間、相手の手札から現れた汎用デコッパチロリによって☓の字が刻まれる。
あー!! 今こそ【墓穴ホール】が欲しい! 二枚入れてるというのに!
どうせ来ないんだったらやっぱり一枚にすべきだよ、いやでもそれだと本当に欲しい時に引けなくなって……いやでもデッドウェイトじゃ……
一人でブツクサ言ってると、ボクの場から【ウェルカム・ラビュリンス】のカードが消滅する。残る伏せカードは【破壊輪】含む罠カード1枚。
ボクと彼のライフはボクが800、彼が3300。従ってボクの場の罠【破壊輪】でバルバロスUrを対象にすることは効果の都合上、出来ない。どのみち発動したらボクは負け確定だしね。
「昔の"破壊輪"なら自分のモンスターも吹っ飛ばせたんだけどな……」
『なんですって!? ちょっと聞き捨てならないのだけど!?』
本当に困った、姫はレベル8のモンスターだからリリースなしに召喚出来ない。加えて彼女を呼ぶ【ウェルカム・ラビュリンス】はデッキからの特殊召喚にしか対応してない。
ので、
「手札の
『いきなり酷いですわ!』
決闘盤の墓地スペースに吸い込まれていく姫を見送りながら、引き込んだ二枚を見る。
ふむ……暫し熟考させてもらえるだろうか。
『早く呼び戻してくださいまし~!』
墓地スペースから姫の手だけ出てくる、絵面が完全に【埋葬】系カードのそれ。
こういう芸は基本いつでも出来るわけじゃないらしい。墓地にいる彼女たちと繋がる必要がある。
繋がる、というのは
「もう一枚リバースカードをオープン、罠カード【強制脱出装置】! これで君の【バルバロスUr】には手札に戻ってもらうよ」
「防ぐ手が無い以上しょうがねえな……だがまだ【ガンナードラゴン】が二体残ってるぜ! 今しがた引き込んだその二枚でどうにか出来るかな!」
口には出さないけれど、出来る。
展開力に優れる【ラビュリンス】で使いやすく相手の場を埋めて展開を邪魔するカードと、【相剣】や【勇者】を相手にした時に役立つカードがこのタイミングで来てくれた。
「フィールド魔法【白銀の迷宮城】の効果で、【強制脱出装置】をトリガーに今墓地に送った【白銀の城のラビュリンス】を特殊召喚、守備表示! カードを二枚伏せてターンエンドだよ」
ようやく決闘盤の墓地から姫が這い出てくる。万が一に備えて守備表示、だけど姫の守備力では【ガンナードラゴン】のスキドレ下の攻撃力2800で簡単に破壊されてしまう。
膝立ちの状態の姫が肩越しにボクを睨んでいるのが分かったので、とりあえずスルーしておく。
「大丈夫、君をあんな機械に破壊なんかさせない」
『銀臣……!』
熱の籠もった視線で姫がボクを見上げる。彼に攻撃などさせない。
バトルフェイズなんて、待つもんか。
「俺のターン、ドロー! スタンバイフェイズ──」
「フェイズ移行時に罠カード発動、【ナイトメア・デーモンズ】!」
「【ナイトメア・デーモンズ】!? なんだそれは!」
「このカードの発動には場のモンスター一体の生贄が必要! ボクは【白銀の城のラビュリンス】をリリース!」
『信じてたのに! また墓地行きですわっ! この薄情者~~~~~~~~~ッ!!』
起き上がった罠から三匹の悪霊が飛び出し、相手の残りのモンスターゾーンを全て埋め尽くしてしまう。ケタケタと笑う姿は悪魔族にふさわしい悪役っぷり。
【ナイトメア・デーモン・トークン】 ATK/2000 DEF/2000
「場が埋まっちまった……! だ、だがお前も場がガラ空き! ガンナードラゴンどころか、お前が寄越したトークンの攻撃で終わりだぜ!」
「そうなんだよね。だからボクは君の場にトークンが召喚された瞬間にさらなる罠を発動する! 罠カード【トークン謝肉祭】!」
「【トークン謝肉祭】だと!? トークンを破壊して、その数だけ回復するアレか!」
それは【トークン収穫祭】、しかもそれは魔法カード。古いカードだけど、意外と詳しいな彼。
「【トークン謝肉祭】の効果で、場に存在する全てのトークンを破壊しその数×300のダメージを君に与える! 今フィールドにはナイトメア・デーモン・トークンが三体! それらを破壊して900のダメージを与える!」
立体幻像で、収穫したトークンに感謝しながらワイワイやるゴブリンたちの姿が映し出される。このゴブリンの意思を継ぐのがかの有名な勇者殺しの【トークンコレクター】なんだろうか。
謝肉祭を搭載してる理由はなんといっても罠であることが大きい。再利用やリクルートが効きやすいのもある。
とは言うものの、どうやらアリアが友達らしく【トークンコレクター】自体もデッキに入ってはいる。【スケープゴート】からのリンク召喚なんかも多用されがちな現代ではとても重要なカードである。
つまり相手のトークン展開の抑制をコレクターで、カウンターで謝肉祭というわけだ。
ただ、この【トークン謝肉祭】は【ナイトメア・デーモンズ】とシナジーを生む。
トークンはエクシーズ召喚の素材には出来ない。従って退けようと思ったらアドバンス召喚やリンク召喚が現実的だ。デッキによってはシンクロ召喚でも可能だろうけど、そう都合よくレベルが合うとも限らない。
だからモンスターゾーンが急に三つも埋まってしまうのは相手にとってトラブルになりがちだ。【ナイトメア・デーモンズ】はそういう時に役に立つ。
まぁモンスターのリリースコストが必要な分、同じような
「さらにナイトメア・デーモン・トークンが破壊された時、そのコントローラーに一体につき800ポイントダメージを与える! つまり合計2400のダメージだよ!」
「【トークン謝肉祭】の効果も合わさると合計……3300ゥ!?」
破壊されたナイトメア・デーモン・トークンの怨嗟が形となって相手プレイヤーに突き刺さり、それがライフポイントを削り取る。
ジャストキル達成、決闘盤がデュエルの終了に従って立体幻像を解除する。
『よくも騙してくれましたわね……』
墓地スペースからカードを回収すると一番上にいた姫がボクを睨みつけながら再び這い出てくる。
「人聞きの悪い、ボクは破壊なんかさせないって言っただけだよ。相手に破壊されるくらいならボクの手で墓地に送るよ」
『怖いですわ~! 発言がメンヘラDV彼氏のそれですのよ~!』
マジで人聞き悪いこと言い出した、誰がメンヘラDV彼氏だ。
メンヘラでも彼氏でもないし、家庭を築いてないのでDVも適応されないぞ。
『でも破壊輪をつけるなら相手のモンスターにしてほしいのです……』
『そーだそーだ!』
その時、デッキの中からアリアとアンナが顔を出す。ふたりとも抗議の視線を送ってくる。そんなに破壊輪嫌なんだろうか、そりゃ首に爆弾括られたら嫌か。
実際ボクもダメージを受けるから安易に使えないのは事実だし、デッキのウェイトを考えると実際罠の枚数を調整する必要も出てくるかな。
「しかし、精霊のオーダーでデッキのカードを調整する決闘者か」
ボクと同じ特異な人間がこの世に何人いるのか分からない。
でも彼らもモンスターの好みに合わせてデッキを組んだりしてるんだろうか、そう思うと案外「なんでそのカードを?」みたいなデッキしてる決闘者はボクと同じような人間だったりして。
さておき、ボクはデュエルを終えて次のローテーション待ちだ。といっても制限時間の都合、あと少しでまだデュエルが終わってない組も強制的に勝敗を決させられるわけだけど。
ふとボクは隣のスペース、同じレールでデュエルをしてる風舞さんが目に入った。彼女はまだデュエル中らしく、せっかくだから観戦させてもらうことにした。
「バトルフェイズいくよ! 【トロイメア・ユニコーン】で【
風舞さんの相手の男子生徒がリンクモンスター【トロイメア・ユニコーン】を奔らせる。流れるような攻撃で風舞さんのモンスターが破壊され、ライフが減る。
アズミ LP1500-400→LP1100
だけどLPの減り方がおかしい、【グラス・ベル】は攻守ともに1500、【トロイメア・ユニコーン】の2200に攻撃されたら700ポイント削られるはずだ。
その答えは風舞さんの場にあった。常に起き上がっている緑のカード、永続魔法【憑依覚醒】が確認できた。
「なるほど……【グラス・ベル】は風属性の分、300ポイント攻撃力が上がってたからか」
モンスターが破壊されて場がガラ空きになる風舞さん。相手は恐らくメイン2にさらなる攻めの布石を用意してくるはず──
しかし風舞さんのアクションは極めて静かに、かつ速やかだった。
「墓地の【ウィンドペガサス@イグニスター】の効果、この子が墓地にいる状態で私のモンスターが破壊された時、この子を除外して相手の場のカード一枚をデッキに戻す。【トロイメア・ユニコーン】をデッキに戻す」
「んぐっ……そういえば奴が墓地にいたことを失念してた……」
対戦相手が歯噛みする。相手が墓地から効果を発動してくると思わぬ罠を踏んだみたいな気持ちになるだろう、罠を多用するボクとしてはホクホクだけど。
どうやら風舞さんは【ウィンドペガサス@イグニスター】を素材に何か別のモンスターを呼んでいたみたいだ。でなければウィンドペガサスを退かすための【トロイメア・ユニコーン】だっただろうし、墓地にウィンドペガサスがいる説明がつかない。
「エンドフェイズに罠発動、【憑依連携】。墓地から守備力1500の魔法使い族を復活させる」
【憑依】カード! 【憑依覚醒】があったからもしやとは思ったけど、風舞さんが使っているのは憑依カテゴリーなのか、渋い!
と、ボクは早とちりしてしまったんだけど、彼女が墓地から蘇らせたのは憑依モンスターではなかった。
「さっき破壊された【
【
「この効果の発動後、私は風属性の子しか呼べない。でも今は貴方のメインフェイズ2だから関係ない」
「……カードを2枚伏せて、ターンエンドだよ」
相手の生徒がかなりまずい、という顔をしている。そりゃそうだろう、メインフェイズ2に自分が何も出来ない無い状態で相手がカードサーチ、明らかに次のターン仕掛けてくるのが嫌でも分かる。
風舞さんがドローフェイズに入りカードを引く。引き込んだ一枚を見つめて風舞さんは手札の一枚を切った。
「【金満で謙虚な壺】を発動、EXデッキから3枚を裏側で除外。その枚数だけデッキのカードを捲り、一枚を手札に加える。私が加えるのは、【簡易融合】。このターン、相手が受けるダメージは半分になる、けど関係ない」
関係ない、それはこのターン与えるダメージが半分になろうとこのターンで削り切る、そういう意味だ。
事実上のファイナルターン宣言、マナーの観点で言えば恐らく猿藤先生は☓をつけるだろうけど……ボクはその風舞さんの自信が見てみたくなった。
「私の場には【グラス・ベル】が一体のみ、よって【
【
【
【
流れるような特殊召喚、これがシンクロテーマ特有の速さ。対戦相手としては増殖するアイツか大食い隕石が欲しいことこの上ない状況だろう。
しかし風舞さんはまだ止まらない、むしろここからだ。
「そして手札に加えた【簡易融合】を発動、1000LP払いEXデッキから【
アズミ LP1100-1000→LP100
次に現れたのは風属性の鳥獣族テーマ【
それはあまりにデッキが取っ散らかる。アンチシナジーとまでは言わないけれど噛み合いは微妙なはず。
つまり、あの【LL】モンスターは簡易融合前提のカード、ボクはそう考えた。
「そのままリンク召喚を行う。召喚条件はレベル1モンスター一体。【インディペンデント・ナイチンゲール】をリンクマーカーにセット、EXモンスターゾーンに【リンクリボー】を特殊召喚」
簡易融合で呼ばれたインディペンデント・ナイチンゲールを元手に、風舞さんが呼び出したのはリンクリボー。
だけどリンクリボーの効果は相手の攻撃などに反応する、従って今呼び出す必要は特に無い。
であれば、彼女の狙いは
「フィールドに属性が増えたことにより、【憑依覚醒】で上がる攻撃力が600に上昇する」
風舞さんの場のモンスターたちがさらにパワーアップ。風属性のみのデッキであればあのカードはせいぜい攻撃力300アップ止まりだと思ったけれど、属性統一デッキでもああいった使い方があるのか。
「次、私はレベル3の【フリーズ・ベル】に、レベル4の【グラス・ベル】をチューニング」
【
=
「【
【グラス・ベル】のレベルは4、つまり800ポイントのダメージ。
じわじわと削っていく、真冬の風のようなバーンダメージが【WW】の持ち味だ。
「さらに私はレベル7の【ウィンター・ベル】にレベル1の【スノウ・ベル】をチューニング」
【
=
「レベル8、【
【
「効果発動、墓地の【WW】一体の攻撃力の半分のダメージを与える。私は攻撃力2400の【ウィンター・ベル】を選択、1200ポイントのダメージを受けてもらうね。でも【金満で謙虚な壺】の効果で、ダメージ量は半分になる」
【ダイヤモンド・ベル】が墓地のウィンター・ベルを模した氷像を作り出し、それを風圧で砕く。そしてその破片が相手プレイヤーにダメージとなって襲いかかる。
この時点で既に1000ポイントのバーンダメージ。LP4000のデュエルでは既に雲行きの怪しさを感じるラインだ。
「さらに相手プレイヤーがダメージを受けた時、ダイヤモンド・ベルは相手の場のカード一枚を対象として、破壊する。私から見て右の伏せカードを破壊する」
対戦相手の伏せていたカードは【神風のバリア-エア・フォース】。かなり優秀なバウンス効果を持つ罠カード、ボクもサイドデッキに入れている。
ただし攻撃宣言時にしか発動できないため、発動を待たずに氷漬けにされ破壊されてしまう。
「さらにリバースカードオープン、【氷風のリフレイン】発動。墓地の【WW】モンスターを一体守備表示で特殊召喚、シンクロ素材としたフリーズ・ベルを蘇生して彼女の効果を発動、1ターンに1度レベルを1上げてレベル4とすることが出来る。そのままレベル4となった【フリーズ・ベル】にレベル5の【ブリザード・ベル】をチューニング」
【
=
二体のモンスターが作り出した風から電子線が幾つも飛び出し、やがてそれは徐々に骨子を作り上げていく。
このモンスターは【WW】のモンスターじゃない、だけど彼女のデッキが"風属性"をテーマにしているなら、十分採用があり得るカード。
「レベル9、【
【電脳堺狐-仙々】 ATK/2900→3500 DEF/2400
別カテゴリの【電脳堺】のカードではあるけど、仙々はシンクロ素材に縛りの無い比較的出しやすい風属性のシンクロモンスター。
加えて場から墓地行きのカード限定ではあるけど、【マクロコスモス】のような除外効果を持つ。けど手札から捨てるカードなどは墓地へ行くため、手札誘発のカードは腐らない。
そして仙々には墓地の属性や種族が異なるモンスターを必要とする効果があるため搭載率の高い【灰流うらら】や【増殖するG】を再利用しやすいのも強力だ。
「最後、魔法カード【ミラクルシンクロフュージョン】発動」
そう言って風舞さんが掲げた魔法カードを見て、もう溜息を吐くしか無かった。
正直この時点でリーサルだ、だけど相手にはまだ一枚
だから風舞さんは完膚なきまでに相手を叩きのめす択を選んだ。
静かだけど、だからこそ底知れない恐怖がある。
「墓地のウィンター・ベルとスノウ・ベルをゲームから除外し、この二体で融合をする。おいで、【
【
そうして作られた風舞さんのデッキのエース三体揃い踏みという盤面にボクはただただ感嘆する他無かった。
小さな風舞さんを守る守護神のように三体のモンスターが対戦相手を存在感で圧倒する。
「クリスタル・ベルの効果。私か相手の墓地のモンスターを対象に発動、エンドフェイズまでその名と効果を得る。私は簡易融合で呼び、リンクリボーの素材にした【LL-インディペンデント・ナイチンゲール】を選択。その効果により、クリスタル・ベルは自身のレベル×500ポイント攻撃力をアップし、他のカードの効果を受けない。【憑依覚醒】の効果対象の外になるけど、攻撃力は4000ポイントアップ」
【
ATK/3400→2800→6800 DEF/2400
「さらに、メインフェイズに一度自身のレベル×500のダメージを相手に与える。攻撃力の上昇値と同じ4000ポイント、【金満で謙虚な壺】の効果で半分の2000ポイントダメージを与える」
クリスタル・ベルが氷風を迸らせ、相手のライフポイントを一気に1000まで減らす。
すると沈黙を保っていたダイヤモンド・ベルが再び動き出した。
「ダイヤモンド・ベルはシンクロ素材がどちらも【WW】モンスターだった場合、場のカードを破壊する効果を二度まで使うことが出来る。よって、残った伏せカードを破壊する」
伏せられたカードがチェーンされることは無かった。ブラフだったのか、発動タイミングの厳しいカードだったのか。
どちらにせよ風舞さんのバトルフェイズを待つまでもなく対戦相手のフィールドは更地と化す。加えて言うと、手札もゼロ。
「バトル、【
たとえ戦闘ダメージが半分になろうと、LP1000では攻撃力6800の半分も受け止められない。
絶対零度の息吹が鈴の音と共に吹きすさび、相手のLPを消し飛ばす。
立体幻像が消え去った後、その場の静寂は呼吸音さえ聞こえてきそうなほどだった。
やがてみんなが口々に「すげぇ」だの「おっかない」だのと呟き始めた。風舞さんはというとそんなみんなの反応を特になんとも思ってないみたいだった。
『ひえ~、あれは強敵だよ~』
『珍しくアリアと同意見なのです』
姫の影に隠れながらアリアとアンナが言った。主を盾にするとはなんとも情けない、姫も若干顔が引き攣っている。それは緊張というより真っ先に主を売る家来の存在が理由っぽい。
ボクはというと遠藤先生とのデュエルから連戦連勝でちょっと気分が良くなっていたんだけど、それが一気に萎んでしまった。
なんとなく、戦ったら勝てないだろうなっていうのがすぐ想像できるというか。
「戦う相手に勝つビジョンを見せないっていうのかな」
「分かるなぁ、それ」
いつの間にかボクの隣に来ていたのは、さっき友達になったばっかりの音喜多くん。
どうやら音喜多くんでもそう思うみたいで、風舞さんのぽわっとした雰囲気を包むビリッとしたプレッシャーがわかるみたいだ。
「それはそうとさ、ようやく俺の番が来たぜ! さっそくやろうぜ銀臣!」
「急に来た!」
実はさっきのデュエルの最中からずっと視線を感じてたけどやっぱり音喜多くんだった。
生粋のデュエルバカだと思ってたけど、ボク相手でもそう思ってくれるのは純粋に嬉しい。
決闘盤のオートシャッフルが作動し、ボクと音喜多くんのデッキが先ほどとは違う形に振り直される。
五枚の手札を引いて、先行後攻を確認。
よし、いざ決闘! と思ったその時だった。
キーンコーンカーン……
「嘘だろ!? もう終わり!? あと一戦だったのに!!」
鳴り響くチャイムの音、五限と六限セットの時間だったのに思ったよりあっという間だった。
だけどそれだけ、時間を忘れるくらいに。
久しぶりに楽しく決闘出来たな、ってボクはそう思った。中断させられた決闘、流れで引いてしまった五枚を見る。
【白銀の城の召使いアリアンナ】、【白銀の城の召使いアリアーヌ】。
そして【白銀の城のラビュリンス】。
どれもボクのデッキには一枚しか入ってないのに、もう手札に来ている。
きっと君たちも同じ気持ちなんだよね。照れくさいから確認はせずに、デッキに戻した。
3000文字くらいにするつもりだったのに気づいたらデュエルしてた。
2022/09/08
破壊輪周りのテキスト確認が甘かったため、銀臣のセリフを変更しました。
この世界にもエラッタがあるということで。