迷宮城の冴えない男《ラビュリンス・イッパンジン》 作:入江末吉
TRUN2→3 陽彩→銀臣
陽彩 場:【E・HERO エッジマン】【M・HERO カミカゼ】【M・HERO 剛火】 手札1枚
「ボクのターン、ドロー!」
残されたLPは50、どんな戦闘ダメージだろうと負けに直結する。安易な攻撃表示は避けなきゃならない。
「ドローフェイズに罠カード発動、【戦線復帰】! 墓地から【アリアンナ】を守備表示で復活させるよ」
『やれやれ、ターンを跨いでしまったのです』
墓地から現れたアンナがスカートについた汚れをはたき落として溜息を吐く。
「しょうがないでしょ、さっきのターン呼び戻したところで効果は使えないんだから。今度こそしっかり仕事してもらうよ」
『ガッテンなのです』
「特殊召喚されたアリアンナの①の効果を発動、デッキから【白銀の迷宮城】を手札に加え、発動!」
手札にホームを引き込んで、ようやく舞台は整った。
PDAのモニターによってフェイズが移行し、メインフェイズ1へと突入する。
音喜多くんの場に伏せカードはない。だからLPに7950の差があっても、ボクにとっては攻め時なんだ。
「ボクは【天獄の王】の効果でセットした【
『メイドの底力、見せてやるのです』
アンナが飛び出しカミカゼを鍵付きウィップで翻弄し、破壊する。カミカゼにはボクの攻撃を縛る効果があるから、真っ先に破壊しておかなくてはならない。
「カミカゼが、やるな……!」
「さらに対象のモンスターを破壊した後、ボクはデッキから悪魔族を一体墓地へ送ることが出来る! ボクが墓地に送るのは【白銀の城のラビュリンス】!」
デッキが自動的にシャッフルされ、デッキトップが選択した姫のカードになる。ボクはそれを墓地へ送った。
まだだ、まだ終わらない。
「さらに【白銀の迷宮城】の②の効果発動! 通常罠が発動したことにより、ボクは今墓地へ送った【白銀の城のラビュリンス】を特殊召喚する!」
【白銀の城のラビュリンス】 ATK/2900 DEF/1900
『オーッホッホッホ! 真打ち登場ですわ! ってLP50!? ダメージが発生したら負けじゃないの!』
出てくるなり高笑いとツッコミ、忙しいなキミ。
「そして罠カードの効果でモンスターが場を離れたことで、墓地の【ウェルカム・ラビュリンス】の効果を発動! このカードをセットし直すよ」
「いくよ、【白銀の城のラビュリンス】で【M・HERO 剛火】を攻撃! 《ミノス・エングレーヴ》!」
『そーれ、お覚悟なさいませ!』
剛火が形ばかりの抵抗をするが、攻撃力は姫の方が上。カミカゼを破壊していたので攻撃力はさっきのターンよりも高いが、問題はない。
陽彩 LP8000-200=7800
よし、音喜多くんにダメージを通せた。
加えて今、彼の手札は【融合】1枚で伏せカードもない。【分断の壁】もある、展開力が決め手のHERO相手なら戦闘で負けるということも無いはずだ。
「【白銀の城のラビュリンス】の②の効果を発動! 【悪魔の技】をセットし直すよ」
さらに【エッジマン】は今伏せた【悪魔の技】でターン開始時に倒せる。ライフ差はあれど、ボード・アドバンテージはボクが取っている……!
「────と、考えてないかい? 小鳥遊くん」
その時だ、氷雨さんが腕を組みながら言ってきた。
「ナチュラルに思考を読むの、やめてくれません?」
「状況からの推測だ、そうカッカしないでくれたまえよ」
「いや怒ってるわけじゃ……」
氷雨さんの相手をしていると、不意に対面している音喜多くんが拳を震わせていた。
もしかして怒ってる? そう思ってビクビクしていると──
「手札は1枚、次のドローに全てが掛かってるなんて最っ高の状況だぜ! 燃えてきた!」
そう意気込んでいた、彼の目はまだ勝負を諦めてない。というか、当然だ。
この学校に通ってる生徒が、この程度で勝負を捨てるわけがない。心の底から決闘を楽しんでる彼のような決闘者なら、なおさら。
「……加えてボクはカードを2枚伏せ、ターンエンド!」
TRUN3→4 銀臣→陽彩
銀臣 場:【白銀の城のラビュリンス】【白銀の城の召使いアリアンナ】 【白銀の迷宮城】
魔法・罠:【分断の壁】【悪魔の技】【ウェルカム・ラビュリンス】伏せ2枚
手札0枚
「行くぜ、俺のターン! 運命のドローだ!」
裂帛、そう表現出来るほどの気合いでカードを捲った音喜多くん。そのカードを確認した音喜多くんの口角が持ち上がっていた。
これは仕掛けてくる、ボクはそう直感した。
「このドローフェイズに【悪魔の技】を発動、エッジマンを破壊する! さらにデッキから悪魔族を一体墓地へ送る!」
姫とアンナのコンビネーションアタックでエッジマンを撃破! さらにこれで終わらないのがラビュリンスだ。
「通常罠カードの効果でモンスターが場から離れたことで、【白銀の城のラビュリンス】と【アリアンナ】の効果発動! カードを1枚ドローし、魔法・罠をセット! 続けて音喜多くんの手札を1枚破壊する!」
二分の一、音喜多くんの手札を1枚姫が破壊する。PDAで破壊したカードを確認すると、そこには【融合】があった。
ニッ、と笑った音喜多くんがその手札を公開する。
「俺は手札から【HEROの遺産】を発動! 墓地からHEROを融合素材とする融合モンスターをEX2枚デッキに戻し、3枚ドローする!」
『嘘でしょう!? この土壇場で手札増強ですって!?』
姫が驚愕するがその驚きはボクも同じだった。ここで手札増強はあまりにも主人公力が高すぎる。
「さらに俺は魔法カード【融合回収】発動! 墓地の【HERO】と【融合】を手札に加える! 俺が選択するHEROは【ソリッドマン】!」
しかも、サルベージカードまで引いてるのか!
「続いて【E-エマージェンシー・コール】発動! デッキから【E・HERO リキッドマン】を手札に加える!」
「【ソリッドマン】を通常召喚! さらに魔法カード【融合】発動! 【ソリッドマン】と手札の【リキッドマン】で融合!」
二人のHEROが空へ飛び立ち、渦を巻く雲の中へ突入する。
直後、雲間から差す陽の光。
「見せてやるぜ、俺のエースHEROを!」
陽光の中、マントをはためかせ降りてきたのは緋彩のHERO。
「【E・HERO サンライザー】を融合召喚! そしてサンライザーと、融合素材として墓地に送られた二人のHEROも効果を発動するぜ!」
【E・HERO サンライザー】 ATK/2500 DEF/1200
「まずはソリッドマンの効果を処理するぜ! 墓地の【ブレイズマン】を蘇生! 続いてリキッドマンの効果! デッキからカードを2枚ドローし、そのうち1枚を墓地に送る!」
フィールドのカードが増え、さらには手札も徐々に増えていく。
ドローフェイズに【HEROの遺産】の方を破壊できていれば……なんて恨み言を言っても始まらない。現に青い顔をしているラビがフィールドにいる、責任を感じているのだろう。
「最後に【サンライザー】の効果でデッキから【ミラクル・フュージョン】を手札に加える!」
一連のチェーンが終了、音喜多くんの展開は一度止まった。
原因は恐らくボクの伏せてある【ウェルカム・ラビュリンス】だろう。確実に一体のモンスターを破壊されることを想定している。
「そして【ミラクル・フュージョン】発動! 墓地の【ソリッドマン】と場の【リキッドマン】で奇跡融合! 現れろ、【E・HERO アブソルートZero】!」
「【サンライザー】の効果! 俺の場のHEROたちは互いの属性の数×200ポイント攻撃力をアップする! 今、俺の場には光と炎と水のHEROがいる。よって攻撃力は600アップ!」
【E・HERO サンライザー】 ATK2500→3100
【E・HERO アブソルートZero】 ATK2500→3100
【E・HERO ブレイズマン】 ATK1200→1800
「バトル! 【アブソルートZero】で【アリアンナ】に攻撃、この攻撃宣言時に【サンライザー】の効果を発動!」
銀色のHEROが冷気を自身の腕に収束させ、それを放とうとした瞬間。
サンライザーが人差し指を天に向けて突き上げる。その指先から発される、眩く魔を滅する光。
「別のHEROが攻撃する場合、相手のモンスター一体を対象にし破壊する! 【白銀の城のラビュリンス】を破壊! 《
みるみる拡大していく太陽の光。ボクも姫もアンナも手で
ここから先はボクにとっても大博打、音喜多くんの残り3枚の手札次第だ。
「【アブソルートZero】の攻撃宣言時、トラップ発動! 【攻撃誘導アーマー】! 【アブソルートZero】の攻撃を【ブレイズマン】へと誘導する!」
「なんだと!? だが、【白銀の城のラビュリンス】は破壊させてもらう!」
「さらに、ダブルトラップ! 【闇霊術 -「欲」】! 闇属性モンスターの【白銀の城のラビュリンス】をリリースして、カードを2枚ドローする!」
チェーンが終了、効果処理が始まる。音喜多くんの残り手札は3枚……!
「【闇霊術 -「欲」】は、相手が魔法カードを手札から開示すれば無効に出来る。音喜多くんが手札に魔法があるなら、止められるよ」
「俺の残りの手札に……魔法はない!」
その宣言に従い、チェーン処理が行われる。ボクがカードを2枚ドローする。
続けて【攻撃誘導アーマー】により、【アブソルートZero】が【ブレイズマン】へ襲いかかり、【ブレイズマン】が戦闘破壊。その攻撃力の差分だけ、音喜多くんのライフが減る。
陽彩 LP7800-1300=6500
さらに音喜多くんの場の属性の数が減ったため、サンライザーの攻撃力アップ効果が減少する。
【E・HERO サンライザー】 ATK3100→2900
【E・HERO アブソルートZero】 ATK3100→2900
最後、サンライザーの眩い光と爆発がフィールドを襲う。だが対象となっていた姫は既にリリースされているため対象は不在、効果は不発となる。
「そして、通常罠カードを発動したことで【白銀の迷宮城】の効果が発動! ボクの墓地の悪魔族モンスター一体を特殊召喚する!」
「【白銀の城のラビュリンス】が戻ってくるのか……!」
「ううん。ボクが呼び出すのは、別のモンスターだ!」
爆風の中からシルエットが浮かび上がる。姫のものだった。
しかしその影は綺羅びやかなドレスのふわりとしたシルエットとは打って変わり白銀に輝く騎士甲冑を身に纏い、身の丈ほどもあった大斧は二振りの細剣に姿を変えていた。
「【
【迷宮城の白銀姫】 ATK/3000 DEF/2900
「そんなモンスター、いつの間に墓地に……!」
「恐らくドローフェイズの【悪魔の技】、追加効果で予め墓地に落としておいたんだ」
氷雨さんが的確に判断する。そう、白銀姫はあの時デッキから墓地へ送られていた。
「【白銀姫】の守備力は2900……【アブソルートZero】と【サンライザー】の攻撃力とちょうど一緒かっ」
音喜多くんはそう言って手札の1枚を見て、ボクのフィールドを一瞥する。
確かに一見【サンライザー】の攻撃でアンナを戦闘破壊することは出来る。だけどボクの場の伏せカードは【分断の壁】、相手モンスターの攻撃力を相手モンスターの数×800ポイント永続的にダウンさせる。
攻撃したとして、攻撃力を削がれたHEROを攻撃表示で立たせることになる。
「くぅ~、あと50が削りきれねぇ! ターンエンドだ!」
TRUN4→5 陽彩→銀臣
陽彩 場:【E・HERO サンライザー】【E・HERO アブソルートZero】
魔法・罠:伏せ1枚
手札2枚
「ボクのターンだ!」
ドローし、手札が3枚になる。そして音喜多くんの場と見比べる。
今、サンライザーは攻撃力を元通りにし、自身のパンプアップも合わせて2900になっている。
どちらも【白銀姫】モードの姫なら破壊できる。だけど【アブソルートZero】の全体破壊効果は未だ馬鹿に出来るわけもない。
そして音喜多くんが手札に残した1枚、あれがもしも【E・HERO オネスティ・ネオス】だった場合、迂闊に攻撃出来ない。
【闇霊術】のおかげで音喜多くんの手札は少なくともモンスターか罠が確定している。罠カードであれば除去されるリスクはあれど発動するためにセットしておくはずだ。
つまり、ボクは【オネスティ・ネオス】を警戒するならこのターン、HEROを攻撃できない。
そしてそれがわかっているから音喜多くんも氷雨さんも、ポーカーフェイスを崩さないんだろう。
「ボクは、2枚目の【強欲で金満な壺】を発動!」
「2枚目だと!? EXが吹っ飛んじまうぞ!」
この正念場でボクが引いたのは、最初のターンも使った【強金】だ。
ボクのLPがせめてあと2000あれば、こんな無茶な賭けはせずに済んだ。そこはもう、音喜多くんのタクティクスによるものだからどうしようもない。
「ボクは────EXデッキからカードを6枚除外する!」
「また6枚!?」
「このターンでボクが音喜多くんを倒せるカードがあと1枚デッキに眠ってる、そいつを引き当てるためなら上等だ!」
音喜多くんも【HEROの遺産】の3枚ドローから、あれだけの逆襲を起こしてみせた。
ならボクもやってやる。
────ボクのデッキに眠る、HEROを呼び覚ます。
決闘盤がランダムで吐き出すEXデッキの6枚、そして1ターン目に除外した分も合わせて除外された数は12枚。
それらを確認して頷く。たった1枚だが、彼はEXデッキに残っていた。
「続けて2枚ドロー!」
デッキトップから2枚のカードを捲りあげ、ちらりと確認する。
「──来たッ!」
頭の中で、高速に処理される勝利への道筋。
「ボクは【迷宮城の白銀姫】を攻撃表示に変更し、手札から【白銀の城の狂時計】の効果を発動、ボクはこのターン伏せた罠を一度だけこのターンに発動できる! ボクは手札から罠カード【ギブ&テイク】をセットし、発動!」
「【ギブ&テイク】……っ!?」
「この効果でボクは墓地の【白銀の城の火吹炉】を、音喜多くんの場に守備表示で特殊召喚する! そしてその特殊召喚したレベル分、ボクの場のモンスターのレベルをアップする。ボクは【アリアンナ】のレベルを2アップさせるよ!」
【白銀の城の火吹炉】 ATK/0 DEF/2000
【白銀の城の召使いアリアンナ】
「レベル6……"シンクロ"か、"エクシーズ"か!」
「思いつく限りでは、ランク6の【セイクリッド・トレミスM7】か? 【アブソルートZero】はデッキに戻ってしまったときだけは効果を使えないからな」
音喜多姉弟が口々に言うが、そこまで難しい話じゃない。
なぜならアリアンナのレベルを上げたのはあくまでおまけで、この【ギブ&テイク】の本来の使い方じゃないからだ。
「そして通常罠が発動したことで【白銀の迷宮城】の効果発動、手札から悪魔族を特殊召喚出来る! ボクが呼ぶのは【白銀の城の召使いアリアーヌ】!」
『ジャジャーン! クライマックスにお呼ばれして颯爽登場~!』
ようやく呼び込めたアリアーヌを呼び出し、【ラビュリンス】の布陣が出来上がる。
だけどこれでゴールじゃない。
「──現れろ、白銀に輝くサーキット!」
白銀の城門前に現れる特殊な電子回廊、それは一つの召喚法を意味していた。
「なっ、リンク召喚だと!?」
「ボクは【アリアンナ】と【アリアーヌ】を、リンクマーカーにセット!!」
召喚条件は、効果モンスター二体!
アンナとアリアが手を繋ぎ合い、揃って空中に現れた電子回廊に突入する。
決闘盤のモンスターゾーンが拡張され、EXモンスターゾーンが出現。ボクはそこにキーカードを召喚する。
「──【
【捕食植物ヴェルテ・アナコンダ】 ATK500 LINK-2
「【ヴェルテ・アナコンダ】……! だけど、銀臣のLPは50! 融合カードの効果をコピーする効果は使えないぞ!」
確かにその通り、だけどボクが使いたい効果は②ではなく①。
「ボクは【ヴェルテ・アナコンダ】の①の効果を発動! 音喜多くんの【アブソルートZero】を闇属性に変更する!」
「【アブソルートZero】の属性を!? っ、そうか……【サンライザー】の攻撃力アップ効果を減らすために……」
【E・HERO アブソルートZero】 属性:水→闇 ATK3100→2900
【E・HERO サンライザー】 ATK3100→2900
【白銀の城の火吹炉】 ATK600→400
「これで準備は整った! 手札から魔法【ダーク・コーリング】発動! これはボクにとっての【ミラクル・フュージョン】! 融合素材は墓地の【天獄の王】と【白銀の城のラビュリンス】!!」
その効果は墓地のモンスターを除外して融合召喚を行うという効果、そしてそれで呼び出せるモンスターも【HERO】なのだ。
「闇統べる覇者が眷属、今ここに交わりて終焉をもたらせ!!」
そして現れる、巨大な火柱。
迷宮城の庭から立ち上る灼熱の中から現れ出たそれはまさに覇王の化身。
ソリッドビジョンだと分かっていても震えるほどの迫力。
始まりは【ラビュリンス】が悪魔族で統一されていることと、伏せカードを守れる【天獄の王】とのシナジーだった。
「────現れろ、【
火柱の中から現れたその悪魔はその禍々しい見た目に反し、HEROの名を持つ。
しかし【E・HERO】ではない、【E-HERO】だ。その全てを悪魔族で統一したダークヒーローたち。
「【ダーク・ガイア】の攻撃力は、融合素材にしたモンスターの攻撃力の合計!」
「つまり攻撃力は、5900……!」
【E-HERO ダーク・ガイア】 ATK/? →5900 DEF/0
「このモンスターたちで、音喜多くんを倒す! いくよ、バトルフェイズ! 【ダーク・ガイア】で【火吹炉】を攻撃!」
「ッ、そうか! 【サンライザー】の効果はHEROが戦闘を行う時しか発動できない……!」
「さらに! 【ダーク・ガイア】の効果発動! このモンスターの攻撃宣言時、相手フィールドの守備表示モンスターを全て攻撃表示にする! 【ギブ&テイク】の効果で守備表示で特殊召喚された火吹炉は攻撃表示になる!」
音喜多くんの場の【火吹炉】が音喜多くんの方を向き直り、背後で【ダーク・ガイア】が流星群を構えている。
「《ストービー・カタストロフ》!」
「ぐぅぅぅぅっ!」
陽彩 LP6500-5500=1000
【ダーク・ガイア】が放った隕石を【火吹炉】が飲み込み、それを火炎放射で一気に放出するコンビネーションアタック。
しかし火力が高すぎて【火吹炉】は目を回してダウンしてしまう、なかなか凝ったソリッドビジョンだ。
「だが【迷宮城の白銀姫】の攻撃力じゃ、どっちのHEROを倒しても俺のライフを削り切ることは出来ないぜ!」
「ふふん、それはどうかな」
瞬間、フィールドに巨大な機械が出現する。それはボクのフィールドと音喜多くんのフィールドの中間地点に位置しており、蒸気を噴き出して最大稼働を行っていた。
「な、この機械は……」
「【時の機械-タイム・マシーン】を発動! モンスター1体が戦闘で破壊された時発動し、そのモンスターを
「なにぃ!?」
タイムマシーンの扉が開き、そこから再び【火吹炉】が現れる。
「【迷宮城の白銀姫】で【火吹炉】に攻撃! 《ストービー・タイラントセイバー》!」
『火吹炉、骨は拾いますわ!』
ばっちこいと言わんばかりに火吹炉が姫を迎え入れ、姫の細剣が火吹炉を切り裂いた。
刹那、大爆発が起き爆風が音喜多くんのLPを削り取った。
陽彩 LP1000-2600=-1600
銀臣 Win
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「よし、ボクの勝ちだ!」
「LP50から逆転……マジかよぉ」
我ながら鮮やかな逆転劇だった。昨晩のデッキ調整で罠の調整をしてライフ回復系の罠を減らしたせいで一向に手札に来なかったというのもあるけれど。
PDAを外すと決闘盤のプレートが自動で収納される。これからこれが全校生徒に支給されると思うと、授業に対するモチベーションもすごい。
プレート部分がソリッドビジョンで構成されてるアクションデュエルモデルなんかもそのうち見られるだろうか、楽しみだなぁ。
肩を落とす音喜多くんの方から火吹炉がぴょんぴょん跳ねてくる、本日のMVPを労わなくては。
「グッジョブ、火吹炉」
『ケプッ』
小声で言うと火吹炉はしっぽの先でボクの拳にコツンと合わせてくれる。ダークガイアの隕石を取り込んだせいか、時折煤がゲップみたいに出てくる。
『全く、褒められた戦術じゃありませんわね』
「そうは言うけど、火吹炉は納得してるよ。ねぇ?」
尋ねると火吹炉は迷いなく首を縦に振った、チーム全員で勝利を掴んだとも言えるわけだし。
「それにダークガイアの攻撃力は姫が半分、天獄の王が半分。それにフィニッシャーも姫だし、ボクより姫が謝るべきでは?」
『物は言いようですわねぇ! 申し訳有りませんわ火吹炉、よしよし。許してくださいまし、後生ですわ~!』
火吹炉に抱きついておいおいと喚き出した姫を後目に、アリアとアンナを見やる。
二人共なんかすごい嫌なものを見るような目でボクを見ていた、なぜ。
『まさかまたアリアとアナコンダにされるとは思わなかったのです』
『同感~、アンナとセットだといっつもアナコンダだのシーザーだの』
どうやらリンク素材にされたのが不満らしい、どうしろと。
イケメン二人からキメラフレシアが出てくるんだから、美少女二人からアナコンダが出たっていいじゃないか。
逆に言えば、音喜多くんはここまでしないと勝てない強敵だった。
「やられたぜ、またデュエルしような!」
「うん、授業でもフリーでも」
差し出された手を握ると、ぎっちりと握り返された。
握手しあうボクたちを見て、パチパチと拍手の音が聞こえる。見れば氷雨さんと風舞さんだった。
「お見事、とても良いものを見させてもらったよ。まさか【タイム・マシーン】にあんな使い方があるなんてね」
「ど、どうも! お眼鏡に適ったなら幸いです?」
氷雨さんはしきりに頷きながら近づいてくる。しかしながら、氷雨さんの制服の着こなしは副会長としてどうなんだろう。
「どうだろう、小鳥遊くんも学生会のメンバーに入らないかい? 陽彩に勝ったわけだし条件はクリアしている。あぁそうそう、陽彩はクビだ」
「おぉい!」
「冗談だ。だがキミをスカウトしているのは本当だ、今年の学生会メンバーもあと一人定員が空いているわけだし」
そう言われても、正直困ってしまう。
まだ一年の春の終わり目だし、まだ学校に慣れてない。そんな状態で生徒の代表たる学生会のメンバーだなんて荷が重すぎる。
「ちなみに風舞くんも学生会入りした」
「転入したの昨日なのに!? あまりにも早すぎる……」
「特待生にならなくても学食の利用料が免除されると聞いて」
「なん……だと……?」
学食の費用免除……! これはあまりに大きい。
特に自宅通いのボクはお昼を確実に学食に頼らなければならない都合上、お昼代が節約出来れば新弾を多く買える……
「どうだろう?」
「わかりました、お引き受けします!」
「即決だね、それじゃあ陽彩はクビだ」
「姉ちゃん!!」
なるほど、こうやって氷雨さんの手玉に取られていくのか。
安易に決めてしまったけれど、学生会入りを後悔する日がいつか来ないことを祈ろう。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
予鈴がなり、銀臣たちが校舎の中に戻っていく。
その背中を見送るアズミ、彼女が気にしているのは銀臣の周囲に漂う靄のような歪み。
「もしかしたら……」
初めて会った時、十字路でぶつかった時からずっと気になっていた。
身体の周りにいつも靄を作っていた。そして銀臣もまた、それを目で追ったり話しかけたりしている。
アズミはケースに収められたデッキを取り出し、トップを捲り上げた。
そのモンスターと目が合う、そんな感覚がある。
しかしそれ以上は何も感じない。
「デュエル、してみたいの」
そんなアズミの独白は誰にも届かない、独り言として空に溶けていく。
実はデュエル全部詰め込むと長すぎたので分割しただけでした。
今回のデュエルは
・HEROと戦わせる
・ダークガイアを出す
・陽彩の初デュエルなのでサンライザーは破壊しない
・タイムマシーンを決め手にする
を目標に書いてました。そしたら超偶然にもダークガイアが出るデュエルでLPが50になる、というなんだか因果な展開になりました。
しかしかなり難産でした、それこそ一ヶ月かかるくらいに。
シミュレーションするとどう頑張ってもHEROが勝っちゃうんですよね、デッキパワー江口。
結果、禁じられた聖槍とか汎用魔法でサンライザーを守る羽目になりました。
でも実はM・HEROといえば闇鬼が禁じられた聖杯の方と相性が良いので無くはないかな、ということで。
そして執筆に難儀している間にまさかラビュリンスでメタル化が採用され話題に。
この作品でやろうとしてたことが一つ先出しされてしまい、困ってしまいました。
そこは世界が俺に追いついたということにしておきたいと思います(ポジティブ)。
それとさらっと出てますが、本作はヴェルテアナコンダみたいな紙で禁止喰らってるやつも出ます。リミットレギュレーションなんてあってないようなものです。
ボツ稿では陽彩が逆転前に貪欲な壺を使ってたくらいです。
でも悪夢の蜃気楼と非常食はさすがにぶっ壊れてるのでやりませんでした、温情です。