白衣を着た科学者がイラついたように目の前の書類とにらめっこをしていた。
どうにも最近の研究の成果が乏しく上からの圧力がかかっているらしい。
「あの老害どもがッ!__おいお前!」
「は!なんでありましょうか!」
通りかかった青年軍人を引き留め、鬱憤晴らしと言わんばかりに怒鳴りつけた。
「なんでありましょうかじゃねぇだろ!さっさとB棟756号室の掃除をしてこい!無駄に汚すんじゃねぇぞ!」
「…はっ!了解しました!」
科学者は書類を持ちすたすたと何処かへ消えていった。
残された青年は科学者の背中が見えなくなったのを確認すると近くの壁を蹴りあげた。
「何が無駄に汚すなだよ…汚してんのはてめぇらだろうが……」
ぶつぶつと愚痴を溢しながらも足はB棟へ向かっていた。
青年は軍に入ってまだ日が浅く、自分より階級が低い人物はいないのだ。先程の軍人でない科学者でさえ青年はその命令に従わなくてはならないほどに、だ。
「756……ここか…うわきったねぇ……」
756号室の中は書類や衣類、さらには食べかけの食事まで散らばっていた。
青年はあまりの汚さに顔をしかめた。
「よくまぁこんなところで研究なんざしようと思ったなぁ」
まずは食べ残しの処理から始め、皿ごと布袋に投げ入れていく。
中にはカビやら謎の光るキノコまで生えている皿があった。
極めつけは皿の中央で背中からキノコを生やしている虫の死骸があり、それを叫びながら布袋に投げ捨てた。
「マジで信じられねぇ……」
全て投げ入れたらそれを足で踏みつけ皿を粉砕した。
パキパキと音がならなくなるまで念入りに踏みつけた。
それはもう、数十分をかけて。
「皿洗いまでやるのはごめんだからな」
次に散らばっている書類に手を掛けるが、
「……これ、
中には機密と判子が押されている書類や、新兵器の設計図まで床に放置されていたのだ。
青年はとりあえず書類を捨てるのをやめ、棚奥にあった箱に全て入れることにした。
目につく書類を全て入れると、部屋の隅から光が漏れていることに気がついた。
部屋の照明とは違い、青い光だった。
「おいおい…まだ部屋あんのかよ…勘弁してくれ」
既に3時間程部屋の掃除をしていた青年はまだ掃除をしなければならないと言うことに気を落としながらもその部屋へ足を向けた。
「……んだよ、こっちはきれいじゃねぇの」
部屋は前の書類だらけの部屋とは違い、きれいな光沢のある床と壁に覆われていた。
更には精密そうな機械が大量に置かれていた。
「……もしかしてここって入っちゃダメなところじゃ…ん?」
青年は全ての機械のコードがある場所に向かっていることに気がついた。その奥からはコポコポと水の音が聞こえてきていた。
青年はこれだけ見たら出ていこうとそんな軽い気持ちでコードを辿っていった。そして、その先にあったのは
「……は…なんだよ、これ」
液体の入ったカプセルの中でコードに繋がれている少女だった。
いや、少女にナニかだ。
全身はアルビノを思わせる程に白く
太ももまで達する髪も白く
腕の先に爪はなく、手首から先が鱗のようなもので覆われ、指先は尖っている。
両足は鳥のような逆関節になっていて、足には鉤爪がありまるで恐竜のようだった。
そして何よりも目を引いたのが、ドラゴンのような尻尾だった。
「こいつ……ディルムか?」
青年は少女の特徴を全ての見た上でその答えを出した。
ディルムとは、恐竜の遺伝子を取り込みソルゲモス装備を扱う者の事だ。
しかし青年は首を捻った。
ディルムになるには成人した男女が軍に入り、長い工程を得てなるものだ。なのに、何故10代前半にしか見えない少女がディルムの特徴を持っているのか?
「調整中なのか?……ま、俺には関係ねぇ……!?」
立ち去ろうとした瞬間、とてつもない衝撃が部屋を襲った。
まるで爆発でも起きたかのような爆音と共に部屋が揺れ、天井から瓦礫が崩れ落ちた。
「ッ!な、なにが起こった!」
青年はなんとか落ちてくる瓦礫をよけ、カプセル近くの机の下に潜り込んだ。
暫くして振動が収まり、瓦礫も落ちてこなくなると青年は這い出した。
『ソルゲモスの襲撃だ!総員退避しろ!二度は言わねぇぞ!特にB棟にはもう入り込まれた!ディルムが来るまでどうにか生きてろ!』
突然の放送はその一度きりで放送は終わった。
これからどうしようかと困り果てていると何かが外れる音がした。
「……はッ?」
振り返った青年目には転がった少女のカプセルがあった。
ガラスの部分からは液体が漏れて床を濡らしていた。
そして、ガラスにヒビが入りその一瞬でガラスは砕けた。
「うお!?」
液体が勢いよく飛び出し青年の靴を濡らした。
どうにか濡れないようにと足をバタつかせているとびちゃびちゃと変な音がした。音はカプセルの中から聞こえあることを思い出した。
「ッ!そうだあいつ!」
カプセルの中の少女だ。ガラスが割れているのだから怪我をしていてもおかしくない。
そう思い、カプセルのそばに寄れば苦しそうに口から液体を吐き出している少女がうずくまっていた。
「おい、大丈夫か?」
「ッ~~…?」
青年が声をかけながら背中をさする。
暫くすると少女は液体を吐き出し終えたのか青年を不思議そうに見つめた。
そして青年は気づいた。
こいつ服着てねぇ!!
少女は長い濡れた髪が身体に張り付き扇情的な見た目となっていた。いくら年下であろうと青年にとっては刺激が強すぎたようで、少女を見ないように自身の上着を羽織らせた。
「?」スンスン
「な、なんだよ、別に臭くないだ…ッ!?」
少女は上着の匂いを嗅いだかと思えばしゃがんでいた青年を押し倒した。
突然押し倒された事と背中の痛みで悶えている。
一方少女はそんな事を気にする様子もなくただ青年の腹の上に股がり顔を見つめている。
「いってぇ…な、なんなんだよ急に!て言うか降りてくれ!」
「…?」
少女は首をかしげるだけで腹の上からは退かなかった。
どうにか無理矢理にでも退かせられないかと努力はしたが、少女は足で床の突起物を掴んでいるのかまだ筋肉が足りていない青年の身体では身体を浮かすこともできなかった。
「はぁ…はぁ……力つっよ…レックスタイプかこいつ…?おい、なぁおいって!……ダメだこいつ…聞こえてねぇのか…?」
少女は青年が退かそうとしている間も青年の顔を見つめているだけだった。
抵抗をやめたあとは上下している胸を見ていた。
不意に少女が喉に手を置いた。
「お、おい」
少女の鋭利な指先が喉に当たりチクリと痛んだ。
もしやこのまま殺されるのではと不安がよぎった青年は少女を凝視する。
そして視線に気づいた少女の瞳と目があった。
瞳孔は縦に裂け、瞬きをすると横からも膜が閉じた。爬虫類特有の強膜輪だ。
強膜輪に驚き身体をさらに強ばらせると、心臓がバクバクとなり始めた。
少女は喉に置いていた手を胸にスライドさせると心臓の位置で止めた。
青年はこのまま心臓を抉り取られ殺されるのだと絶望していた。
青年をちらりと見たあとに少女はゆっくりと胸に顔を近づけ__顔を埋めた。
「……ん?お、おい?」
「~~♪」
拘束が緩み、起き上がった青年は混乱していた。
(何故はこいつは俺に抱きついてるんだ??)
少女は混乱していることなどお構いなしに青年に抱きついていた。さらには青年の腕に尻尾を巻き付けご機嫌そうに喉をグルグルと鳴らしている。
「……はぁ…驚かせんなよ…」
青年は思わず少女を大きな犬のように感じていた。
(いやディルムだからな?まぁ俺もディルム……の予定だけど)
青年が離れない少女の頭を撫でると少女はよりいっそう強く抱きついてきた。暫くそうしていると少女は突然離れ部屋の出口を睨み付け始めた。
「お、おい?どうしたんだ?」
「ッフシュゥゥウ!ッ」
「お、おい!?見えてるぞ?色々見えてるぞ!?」
青年は四つん這いになった少女はから必死に目をそらしながら言うものの、少女は今度は威嚇をするように喉を鳴らしている。
「急にどうし……!」
青年が視線を少女に戻すとその先には
グギュルルルル…
小型のソルゲモスがいた。
(忘れてた!そう言えば襲撃を受けたからこいつはカプセルから!」
「よりにもよってラプトルかよ…!」
ラプトル型ソルゲモスは主に斥候や急襲等の役割を持った厄介な敵である。
ソルゲモスは少女の後ろの青年に気付き少女を飛び越えて青年に飛び掛かろうとした。
「弱そうな奴からってことかよくそが!」
「グギュウ!」
青年は間一髪で身体を捻り攻撃を逃れた。
逆に攻撃に失敗したソルゲモスは床を滑り壁に身体を打ち付けた。
(逃げるんなら今のうちに!」
「おい!いく…え?」
青年が少女に呼び掛けようと後ろを振り返った瞬間に少女は四つ足でソルゲモスに向かって走っていた。
一瞬のうちに距離を詰めた少女は鋭利な指をソルゲモスの胴体に突き刺し、首もとに噛みついた。
ソルゲモスはバタバタと暴れ金切り声のような叫び声をあげるが、それも一瞬で静かになった。
少女がソルゲモスの首を食いちぎったのだ。
少女は食いちぎったソルゲモスの肉を咀嚼し、飲み込んだ。
青年は目の前の光景が夢なのではないかと思っていた。
少女がソルゲモスの装甲を食い千切り、それを一心不乱に食べているのだ。
放心状態でその光景を見ていると少女は満足したのか、ソルゲモスの紫色の体液で汚れた身体をペロペロと舐めとっている。
青年の視線に気づいた少女はソルゲモスの腕を噛み千切りかけより、青年の足もとにそれを落とした。
青年を見上げるその瞳は縦に避けているが、きらきらと輝いていた。まるで、子供が親に誉めて欲しいと言うように。
「あ、あぁ、たすかっ…た?」
「ッ~~♪」
頭を撫でてやるとキュルルルと可愛らしい声を出しながら青年の腹に顔を埋めた。
青年が腰を抜かして尻餅をつくと少女は股の間に身体をねじ込み青年に再び抱きついた。
「いって……ガラスで切ったか…]
左手を見れば親指の付け根から手を横断するように傷口が開いていて血が垂れていた。
なにか縛るものは無いかと辺りを見回していると少女に左手を掴まれていた。
少女の視線は傷口に向いていた。そしてペロペロと傷口を舐め始めた。
「ちょ、くすぐったいって、やめろって!」
「ッ!……」
猫のようにザラザラとした長い舌で舐められくすぐったかった青年が思わず声を荒げると少女はビクリと身体を震わせて舐めるのをやめた。
「あ、その…ごめん。心配…してくれたんだよな?」
青年の股の間でシュンと縮こまった姿を見て青年は罪悪感を感じた。
自分を心配してくれたというのに、感謝ではなく怒鳴り付けてしまったのだから。
謝罪の意味も込めて頭を撫で、笑うと少女の表情も明るくなり、また押し倒され顔を舐められた。
「顔は勘弁してほしいなぁ…」
この世界の感覚はゴッドイーターを想像して貰えると分かりやすいです。
この世界の軍=アナグラ&ゴットイーターの感じで。
続きは書きたくなったら書きます。
まぁ需要ある人は少ないだろうし…