すべての僕たちに愛と勇気と記憶を贈ろう 作:airlinks
しょうもない思い出だったと思う。でもとても楽しかったのを覚えている。でもなんで急に思い出に浸ってんだ?おかしいな。
―――覚えている。まだ覚えている。覚えているよね?忘れないでね。
え?なにを?
―――大丈夫。
待って!わかんな・・・・
彼を閃光と爆音が飲み込んだ。跡形もなく。
「えあッ!?」
急な覚醒。どこまでが夢でどこまでが現実なのかわからない寝起き。自分が起きたことに気づいたのはあたりを見渡してそれが病院のベッドと認識した時だ。雷に打たれたかのように飛び起きて息を整える。
「フゥー・・・・」
「気が付いた?」
そういってきたのは、金髪碧眼、白いシャツに青いロングスカート。どこまでも美人なおねいさんに見えたが、幼馴染の彼女だ。あまり状況が飲み込めないがまぁでもあれだろう?超能力もらったんだろう?すっげぇよな。だって超能力だぜ。鬼に金棒。オタクに超能力。さてはて、どんな能力だったっけか。
・・・ッは!?身体になにか、今までなかった力を感じる。まさか・・・魔力!?
そういってそのもやもやとした何かに集中し、修行僧のように瞑想をしながらリラックス。そしてそのまま目を瞑っていると、なんかこう、不思議な浮遊感が自分を包んだ。
「え?」
「ん?」
隣で彼女が驚いたように声を出す。そして周りを見渡して天井が急に低くなり――自分がベッドから離れて空中を漂っていた。
すっげぇや!なんだこれ!人類の夢飛行能力を得た!!!!!
そして周りを見渡して―――
―――周りを見渡してしまった。主に、窓の外を。
―――彼の眼前に広がっていたのは18世紀ロンドンを彷彿とさせる知らない世界。煙があちこちであがっている。
絶句した。知っていたはずの世界が荒廃し知らないの世界になっている。なんだこれはどんだけリアルな夢だ?どんな展開だ?理解が追い付かない。急展開にも耐えうる自信があったがこれは聞いていない。寝て起きたら世界が終わっているなんて。どういうことだ。ふざけるな。意味が分からない。何をしたんだ。軍はどうなっているのか。家族は。いや世界は。知り合いは。学校は。圧倒的に情報量が足りない。わからない。心拍数が上昇し手が振れる。情報を飲み込もうとしている。が先ほどリラックスしたのがウソだったかのようだ。
「これ、は・・・?なんだこれ?まだ夢見てるのか?」
思考が追い付いてない頭で絞り出した。
「・・・君達が眠りについてから一週間。彼らは来た。人類を、世界を終わらせるために。世界の終焉っていう概念が物理的な形になって顕現したの。そして、いま君達が眠りについて・・・一カ月だよ。」
なにを・・・一カ月・・・?あの世界が?信じられないとかそういうレベルじゃ・・・もはや自分の異常だと思いたい。いやこれはさすがに―――。こんなに世界が変わるはずない。いや、終わるはずない。
「自分の知ってる範囲で説明するね。」
彼女の説明を聞けるような精神状況ではないが、聞かねばならないだろう。
彼女は困ったように話し始めた。
まず人類の生存状況に関しては意外と悪くないようだ。人類の八割は生存しているらしい。
そして敵について。彼女は〝世界のエンドコンテンツ的存在〟と言った。彼らはどうやら文明が今後発展していく際に発生する到達点である。何をもって到達点とするかはよくわからないが彼らは現時点で説明がつかないことをどこまでも説明できてしまうらしい。わかりやすく文明のレベルをいうと円周率を完全に把握してる程度の文明?らしい。いや、あれって終わりがないんじゃないの???そして何よりデカい。とてつもなくデカい。物理法則とか全部無視するレベルでデカいらしい。その圧倒的質量だけで地球一つに匹敵するレベルでデカいらしい。いやそれ隕石じゃん。無理やろ。
その敵と戦うため俺たちはあの日集められたらしい。でもひどくね?戦えなんて言われてなくね?ってまぁ世界の危機が迫ってて軍に能力を与えられてさせられることなんてまぁ戦うことだろうと見当はついていたけども。そうこう話しているうちに先ほどは思考も感情も体調もぐちゃぐちゃになっていたが徐々に落ち着いてきた。
「そういえば君、うなされていたけど嫌な夢でも見てた?」
「え。あぁそういえば、そんなような・・・」
夢とはやはり忘れてしまうものでどんな夢だったかさっぱり忘れてしまった。
「大丈夫そ?」
何やら大変だった記憶はあるがもう忘れてしまった。
「まだ少し休んでなよ。状況を飲み込んだだけでも十分だよ。流石。」
そういって彼女は振り返った。正直なところ一人になると思考が加速してメンタルがまた崩壊しかねないので誰か話し相手が欲しいがここにそんな人いるわけなく彼女も忙しいのだろうし。水があったので飲む。手に取って命の水を口にそそぐ。
「もう少し寝てて。明日から君の能力を確かめるわ。」
そういうとまた睡魔がきて、沈むように意識を手放した。
翌日、せわしなく戦いの準備が始まった。朝起きてすぐ身体検査が始まり、その後家族と連絡を取ることができた。どうやらそれなりに無事らしい。わが家族ながらたくましい。
「俺もこっちで頑張るから。」
と決意にこもった声で伝える。
「頑張んなさいよ」
と母上の声を聴き再び決意に燃える。
その後の昼食でアイツと再会した。アイツとは幼いころからの旧友でオタク仲間であり、気が合う友人である。もちろんあの軍に召集された時も一緒にいた。
「生きてたか」「おう」「よかったな」「無事で何より」
会話をし、まだ見ぬ午後へ向けて期待を募らせる。
大本命である能力の検査である。午前中ずっとソワソワしていた。いやもうだって全オタクの夢だろ能力。それに俺の場合飛行能力があるんだからな。Sだろ^^
「ちゃんと噛んでてね?」
「え?ふぁい。」
「えいっ」
「・・・・・?」
「なるほどね。今回の能力はこれか。」
「浮遊ですよね?」
「っぽいわね」
うおおおうおおうおうおうおwowowマジかぁああああああ!!!!!!!!こーれ勝ちです。最高に気持ちえぇ~~
「これ、どうやったら使えます?」
冷静を装い聞いてみる。
「イメージ通りにできるはずよ。基本的にあなたたちの思う通りにできるようにしてあるから。」
とな。ほう。じゃぁほな・・・
ふわぁっと。飛んだ。いや、浮いた。
すっげぇ!やっぱ午前中なんか出ちゃったけどちゃんと能力来てる!!
「わちょっと!」
彼女もびっくりである。彼女の手を取りともに飛ぶ。
「すごいだろ!」
「あえ・・・あ・・・!」
流石の彼女もびっくりである。
興奮も冷めないままとりあえず彼女から注意事項の確認
※貴方みたいな広範囲に影響を及ぼす能力は仲間にも危険。使い方はしっかり確認して。
※使い方は基本的にあなたのイメージに依存している。
※エネルギー切れとかもある。しっかり見極めて。
※あなたは人を殺せる力を手に入れてしまった。力に溺れることがあったら首のチョーカーで死にます。
さらっとすごいこと書いてあったぞ。まぁでも妥当かこれ。そりゃそうだよな。
「しかしこの能力なら明日にでも前線に・・・!」
「そうだな。今は一人でも何人でも前線にほしいところだ。」
「いやしかしまだ一日ですよ??」
等々大人の事情が聞こえてくるがまぁ従うしかないだろう。みんなうんざりだろうけど。戦場なんて行ったことないし。いざ戦うってなったらなにするかわかんないし。正直な話?そりゃもちろんいやだね。現代社会では特殊な能力って夢見られてるけどこんな世界じゃ能力なんてもってない方が長生きできるだろうし。雑魚狩りだけしていたい。命なんて張りたくない。が、まぁ従うよ。まぁでもそれなりに気合を入れて覚悟を決めて、ね。いきたいとは思ってる。
波乱の能力検査の後はすぐに能力の試し打ちや使い方のアイデアを考えさせられた。それを全部やったら急に倦怠感が来た。これが限界か。思ったより何もできなくなった。歩くことで精いっぱいになった。すぐに医務室に運ばれてまた身体検査。異常なしとされ解散となった。
連れてこられた新しい寮の部屋に行くとアイツが待っていた。
「聞いたよ。お前浮遊の能力だったらしいじゃんか!」
「ふふふふ拙者、浮遊の使い手でござる。頭にコプターしなくても飛べます。あとバッテリーもいりません」
「タケコプターもびっくり?」
22世紀な会話である。そして少しためらったがまぁこの様子なら大丈夫だろうと、
「お前はどうだったん?」
と尋ねる。
「俺か?・・・実は・・・」
ゴクリ・・・と。奴はオーラをまとってさもDBの舞空術のような・・・いや・・・これは??
「おまっ!!もしやぁぁ!!!!!!!」
「実は俺も浮遊だったんだよなぁぁぁぁ!!!!!!!」
「ま!じ!か!」
うおぉおおおおおおおおおおおお!!!!これに関してはシンプルにうれしい。うれしすぎ。
「これが・・・運命・・・ッてコトォ!?」
「いやキモ」
「アッ・・・スミマセン・・・」
いつものノリやんけ。でも・・・・最高だった。
何でもできそうな気がした。自分にこんな素晴らしい能力が発現し、親友もなんと奇跡的に同じ能力に目覚めたのである。そりゃ誰だってテンションアガるだろ。オタクならなおさら。そのまま夜まで能力の話やオタク話を繰り返し大いに笑った。
その翌日、結局戦場入りを告げられ、アイツとは離れることになった。初めてのヒリヒリした〝戦場の空気〟に身を焦がしながらの初陣に彼は―――
―――彼が帰ってくる事はなかった。
そうして、世界が終わりを迎える。今ではその質量を観測不能なサイズまで膨らせた敵を前に私は―――
―――試行・・・回目失敗。次の個体へ引継ぎを開始。彼には優しく接するように。
―――了解です。試行・・・回目を開始します。貴方の思いは私が。また、私以外の私が。必ず。
君には申し訳ないけど、まだまだ付き合ってもらうよ。