呪いのベルトでやれるわけねぇだろ!   作:かかむりょう

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お久しぶりです。最後の投稿からいつの間にか約半年ほど過ぎていました。楽しみにしていてくださる読者の皆様、本当にすいません。

しばらく見ないうちにお気に入りの数が400件以上になっていて、めちゃくちゃ驚いています。思い付きで始まったこの作品ですが、どうかこれからもよろしくお願いします。

あ、タイトルに特に深い意味はないです。


嫉妬は時に人を狂わせる(諸説あり)

「ずいぶん楽しかったみたいだね……?」

「いやぁ……あれは流れでああなったっていうか……」

「それがその写真なんだ……ふ~ん?」

 

(どうしてこうなった……?)

 

 俺は今、とんでもない状況に立たされている。小日向が魔王を思わせるかのようなオーラを出して響を問い詰めているのだ。これは所謂、修羅場というものだろうか。

 

 何故このような状況になったのか、それは三十分ほど前に遡る。

 

 

 

 ~~~~~~~

 

 

 

 三十分前──

 

 今日は休日なので、俺はたまには外食で昼を過ごすのもいいだろうと街を散策していた。

 

(どっかいいところないかな~?)

 

 そうしてしばらく街の中を歩いていると、俺のポケットに入っているスマホから着信音が鳴り響いた。誰からだろうと思ってスマホを取り出して見てみると、立花響という名前が映っていた。

 

(一体どうしたんだろう?)

 

 スマホの画面を操作して電話に出ると、元気な声がスマホから聞こえてきた。

 

『あ、雅人さん! 突然なんですけど今日って時間空いてますか?』

 

「響か。今日は休日だし一日中暇だぞ? 今から昼飯食いに行こうとしてるところだ」

 

『そうなんですね! でしたら今から一緒に食べませんか? 未来も一緒に三人で!」

 

 どうやら響はこれから小日向と昼食にするようだ。思わぬ誘いがかかったが、おかげで店を探す手間が省けるので受けない手はない。ありがたく受けさせてもらおう。

 

「俺でよければご一緒させてもらうよ。どこで集合する?」

 

『このあいだの駅前でどうですか? そこで私たちは待っていますね!』

 

「わかった。すぐに向かう」

 

 俺は電話を切るとすぐに駅前に向かった。駅前に着くと、この間とはまた違った私服姿の響と、同じく私服姿の小日向がいた。響は俺を見つけると笑顔で手を振ってきた。

 

「あ、雅人さぁ~ん!」

「悪いな響。待たせてしまったか?」

「いえいえ! むしろ急な誘いだったのに来てくれただけでも嬉しいですよ!」

 

 俺は響と挨拶を済ませると、隣の小日向に声をかける。

 

「久しぶりだな小日向。また会えて嬉しいよ」

「お久しぶりです村上さん。私も村上さんとまた会えて嬉しいです」

 

 小日向も響と同じく笑顔で俺に話してくれる。響の時もそうだったが、一度話しただけの人にまた会えて嬉しいと言われるのは言われる側も嬉しいものだ。ましてやそれが響や小日向のような話していて楽しい奴なら特に。

 

「それじゃそろそろ行きましょう! お店は私たちで探して予約しておきましたから!」

「悪いな。何から何まで助かる」

「気にしないでください。私も響も村上さんが来てくれたことが嬉しいんです。今日はお互い学校もありませんし、ゆっくりお話しましょう」

「ああ。小日向と響の話をたっぷり聞かせてくれ」

「雅人さんの話もですよ!」

 

 それから俺たちは響の予約した店にたどり着くと、店員に案内されて席に着く。俺の隣に響が座り、そして俺の向かいには小日向が座った。

 

 俺たちがそれぞれ料理を頼んで待っていると、響が最近起こったことについて話し始めた。

 

「聞いてくださいよ雅人さん……私この間携帯壊れてからおかしなことに巻き込まれてるんです。机の中に入れていたはずの教科書がなくなっていたり、雨の日に車が近くを通り過ぎた時に水たまりの水が思いっきり体中にかかったり……もう散々ですよ」

 

 話を聞く限りだと、響は最近自分の身に不幸がかかりすぎているらしい。今響が話した内容以外にも、響はいろんな不幸な目にあっているらしく、それを見かねた小日向が息抜きに二人で出かけようということになったのだそう。

 

「それは……なんというかすごいな。たまたまそうだったと片付けるには、余りに不自然なぐらいに」

「でしょう? もう色々ありすぎて疲れちゃいますよ……」

 

 響はため息をつくと、疲れ切った表情でそうつぶやく。一つ一つが小さなものでも、それらが積み重なると抱えきれなくなってしまう。その苦労はすごくわかるぞ。俺も大学のレポート提出の時よく教授から小言言われるし。

 

「はぁ……私って呪われてるかも……」

 

 ふと、響がそんなことをつぶやく。それを聞いた俺は今までの生活を振り返る。思えばこの世界に転生してきてからいろんなことがあった。転生直後は特典(押し付け)でもらったカイザギアをどうすればいいかを考えたり、大学に入ってからは教科書の中だけの存在だったノイズに実際に出くわしたり……いろいろ大変なこともあった。

 

 でもそれ以上にいいこともあった。なんやかんやカイザギアのおかげで生き延びられたり、響や未来といった友達もできたり、大学でも前世の時以上に充実したキャンパスライフを送れたり……楽しい日々を過ごせている。

 

 俺は今の響の現状に、俺が経験してきた出来事を無意識に重ねていた。そして気が付けば勝手に口が開いていた。

 

「心配するな響。呪いなんざそんな気にする必要ないって。確かに色々起こりすぎてるけど、きっとそのうちよくなる」

「そんな他人事みたいに言わないでくださいよ……。そのうちっていつですか……」

「それはわからん。でも今不幸が続くってことは、あとからいいことがいっぱい起こるかもしれない。いつまでも呪われたままなんてことはあり得ないから……多分」

「いや多分って……」

「とにかくだ、俺が言いたいのはあんまり気負いすぎるなってことだ。頑張り屋な響のことだから、多分今以上に無理して頑張ろうとするだろうからな」

 

 俺は響の顔をまっすぐ見る。すると響も俺の顔をまっすぐに見返してきた。

 

「それに、今日は小日向が息抜きで一緒に出かけようと響を誘ったんだろ? だったら日ごろの不幸が霞むぐらい、今日を楽しい日にすればいい」

「……そっか。そうですよね! 今日は未来と雅人さんが一緒なんだし、せっかくの休日を後ろ暗い気持ちで過ごしたらもったいないですもんね!」

「そうだ。今日は辛気臭い日を過ごすために集まったんじゃない。呪いなんて吹き飛ばすくらい楽しい一日にしよう」

「はい! ありがとうございます!」

 

 響は先ほどまでの疲れた表情をすっかりどこかへやったかのように笑顔で答える。

 

(……やっぱり響は笑顔が一番だな)

 

 響が調子を取り戻せてよかったと内心ホッとしていると、向かいの席に座っている小日向がどこか不機嫌そうな顔をしながら俺たちに問い詰めてきた。

 

「……ずいぶん仲が良さそうですね二人とも?」

「ん……まぁ初めて会った時よりかはだいぶ話すようになったな」

「そうだよ! それに、この間だって一緒にスマホ買いに行ったし、そのあとレストランで一緒にご飯も食べたんだ!」

「……え?」

 

 小日向は信じられないものを見たかのような目をしている。今の会話に何かおかしいところがあったのだろうか? 

 

「響……今なんて言ったの?」

「え? この間一緒にスマホ買いに……」

「村上さんスマホ買ったんですか!?」

「え? ……ああ、買ったぞ。響にスマホにしようしようって熱弁されたからな」

 

 俺はそう言ってポケットからスマホを取り出す。それを見た小日向は、今度は響の方へ顔を向けて問い詰める。

 

「もしかして、この間急にスマホが新しくなったのって、村上さんと一緒に買いに行ったから?」

「そうだけど……あ、そう言えばその日一緒に写真撮ったんだ! はいこれ!」

 

 響はそう言って、小日向に俺と響のツーショット写真を見せた。しかしそれがまずかった。

 

「…………へぇ?」

 

 写真を見た小日向の顔がだんだんと険しいものになっていく。心なしか、周りの空気が凍り付くかのような感覚に襲われる。

 

「……ねぇ響」

「な、なに未来?」

「その日のこと……詳しく聞かせて?」

 

 

 

 ~~~~~~~

 

 

 

 それから俺と響は、スマホを買った日のことを小日向に説明した。俺たちが話している間、小日向はそれをただただ無言で聞き続けるだけだった。

 

 そして現在、響は小日向に問い詰められている。響はわかりやすいほどに顔から冷や汗を出している。

 

 今の小日向は完全に、浮気した彼氏の言い訳を聞く彼女のようなオーラを出していた。いや、もはや魔王というべきかもしれない。

 

「村上さん?」

「は、はい? 何でしょうか?」

「今何か失礼なことを考えていませんでしたか?」

「い、いえなにも?」

 

 小日向は俺に対しても魔王のオーラを浴びせてくる。正直めっちゃ怖い。背筋が凍るとはこういうことなのか。……でもよくよく考えたら、なんで俺たち今問い詰められてんだ? 

 

「なぁ小日向、もしかして響と一緒に行ったことがそんなにまずかったか?」

「えっ? ……いやそんなことはないですよ!?」

「……未来、そんなに私が雅人さんと出かけるのが嫌だったの?」

「だからそんなことはっ……あぁ、もうっ!」

 

 今度は小日向が問い詰められる形になった。小日向は何やら返答に困ったような顔をしていたが、少しして観念したかのように言葉を発した。

 

「……私はただ、村上さんのスマホを一緒に見たかったなと思っただけです」

「えっ?」

 

 俺は思わず呆けた声を出してしまう。

 

「それってどういうことだ?」

「だから、私も村上さんのスマホを一緒に見たかったと言ってるんですよ! 今まであんなどう考えても使いにくそうな携帯を使っていた村上さんが、とうとうスマホデビューするというのだから、どんなスマホにするのか気になるじゃないですか!」

「そ、そうだったのか……」

 

 さりげなくカイザフォンをディスられたのは置いといて、要は小日向は自分だけ仲間外れにされたことが嫌だったのか。なんだか悪いことしたな……。

 

……それに、響だけ村上さんと一緒に写真撮るなんてずるいし……

「小日向?」

「な、何でもないですっ」

 

 小日向はそう言って拗ねたように顔を背けてしまった。響はそんな俺たちを見て困ったようにあたふたとしている。

 

 どうにかして機嫌を直してもらえないかと考えた俺は、少しして小日向に話しかける。

 

「……小日向、もしよかったらおすすめのアプリとか教えてくれないか?」

「えっ?」

「使い方とかは響から教わったから、小日向からは何か面白いアプリでも紹介してもらおうと思ってな。小日向ならいろんなアプリを知ってそうだから……ダメか?」

「い、いえ! 私でよければ是非っ!」

 

 小日向は先ほどまでの魔王のオーラをすっかり潜めると、俺にいろんなアプリを教えてくれた。その後は連絡先の交換も済ませた。これで小日向ともいつでも話せるようになった。

 

 その様子を響は、どこか不機嫌そうな顔をしながらじっと見つめていた。

 

「……むぅ」

「……なんだか不機嫌だな響」

「だって私だけほったらかしで未来と仲良くしてるんですもん……」

「悪い悪い。あ、そろそろ飯が来るようだぞ」

 

 しばらくして、俺たちのテーブルに料理が運ばれてきた。俺がヒレステーキセット、響がオムライスとサーロインステーキとグラタン、小日向がエビドリアとペペロンチーノのセットだ。

 

 早速食べようとフォークとナイフを手に取る。すると響が俺のヒレステーキを見てこんな提案をしてきた。

 

「雅人さんのヒレステーキ美味しそうですね~! もしよければですけど、ヒレステーキの一切れと私のサーロインステーキの一切れを交換しませんか?」

 

 響はそう言ってサーロインステーキの一切れを差し出してくる。響のサーロインステーキもよく焼けていて美味しそうだ。是非とも食べてみたい。

 

「いいぞ。響のサーロインステーキも美味しそうだと思ってたんだよな」

「本当ですか? えへへっ、それじゃあ交換ですね!」

 

 俺と響は互いのステーキの一切れを交換する。なんだか高校時代にあった弁当のおかず交換みたいで懐かしい気持ちになるなこれ。

 

 そして俺たちは今度こそ食事にありつける。

 

「ん~っ!? このヒレステーキお肉が柔らかくてすごく美味しいです!」

「響のサーロインステーキもジューシーさがあふれ出してて美味いな。ヒレの肉って感じも好きだけど、サーロインの脂の甘みもたまらない!」

「あ、わかりますよそれ! やっぱりサーロインはステーキの王様なだけあって最高ですよね!」

 

 俺と響はいつしか肉について語り始めていた。どの部位が一番好きなのか。焼き加減はどのくらいが好みかなど、およそファミレスでは話さないであろう話題を互いに熱く語りあった。

 

 しかし俺は、ここで重大なミスに気が付く。

 

「それでそこのステーキがとても美味しくって……あっ」

「………………」

 

 そう、小日向が俺と響をさっきよりもヤバいオーラを纏いながら睨みつけていたのだ。ついさっき仲間外れにされたことに怒っていたのに、全く学習していない自分を呪う。

 

(というか、さっきよりも怒ってないかこれ……?)

 

 もはや魔王通り越して魔神のようなオーラに、響は完全に怯えた表情で俺にしがみついてくる。

 

「ひぃぃ! ま、雅人さぁん!」

「ま、待て落ち着け小日向! これは決してお前を仲間外れにしたわけではなくてだな!」

「………………」

 

 俺は必死に小日向に弁明するも、小日向は何も言わず、ただただ俺と響を笑顔で見つめてくる。しかし目は全く笑っておらず、深淵の底のような目をしていた。怖い。怖すぎる。もはや目力だけで人を殺せるんじゃなかろうか。

 

 どうにかして機嫌を直してくれないものかと俺は思案する。……ついさっき同じようなことを考えた気がするが、気にしてはいけない。

 

「そ、そうだ! お前もこのヒレステーキ食ってみるか? 結構美味いぞこれ!」

「………………」

 

 俺の言葉を聞いて、小日向は俺のヒレステーキをじっと見つめてきた。

 

(よしよし……うまく食いついてきた……!)

 

 ここがチャンスと思った俺は勢いのまま小日向にさらに提案する。

 

「お前が良ければだけど、ドリアの一口とステーキの一切れを交換しないか?」

「……いいですよ」

 

 ふぅ……なんとか危機を乗り越えられそうだ。餌付けで機嫌が直るなんて漫画か小説の話だけだと思ってたけど、あながち間違いでもなかったかもしれない。

 

「でしたら私が食べさせてあげますね」

「え?」

 

 しかし次の瞬間、あろうことか小日向は、スプーンでドリアを掬って俺に差し出してきた。

 

「…………」

 

 これは俗に言う、『あ~ん』というやつか。前世でもそんなことされた経験ないのに、いきなり『あ~ん』はハードルがいささか高すぎる。普通に俺が一口ドリアを食べるだけでいいのではなかろうか。 

 

「いやちょっと待て。いくらなんでもそれは」

「……」

「……いえ、ありがたくいただきます」

 

『私のドリアが食べられないのか』と言わんばかりの視線を受けて、俺はおとなしく小日向に食べさせてもらうことにした。……念のために言うが、決して小日向の顔が怖いからじゃない。単純に無碍にするのはよくないと思ったからだ。

 

「あぁ~っ!?」

 

 響が何やら騒いでいるが気にしない。今俺は目の前の危機から脱却するのに精いっぱいなのだ。

 

「美味しいですか?」

「あぁ。美味いよ」

「ふふっ、それはよかったです」

 

 小日向は満足そうな顔を浮かべている。それと同時に魔神のオーラも鎮まっていく。どうやら小日向は機嫌を直してくれたようだ。

 

「じゃあ今度は俺が食べさせなきゃな」

「えっ? いやそこまでは……」

「いやいや。俺だけ食べさせてもらうのもなんだか気が引けるし。でも嫌なら……」

「い、嫌じゃないですっ。お願いします」

 

 小日向は顔を赤くして顔を近付けてくる。俺は小日向の口にフォークでステーキの一切れを運ぶと、小日向はパクっとそれを食べた。

 

「どうだ? 味の方は?」

「……美味しいです」

「それはよかった」

 

 小日向に食べさせてもらっておいて、自分は何もしないというのはなんか違う気がしたから俺もお返ししたけど、どこか様子がおかしい。

 

「どうしたんだ小日向? さっきから顔が赤いぞ?」

「き、気にしないでくださいっ。ほら、冷めないうちに早く食べましょう!」

 

 小日向は顔を赤くして矢継ぎ早に話を断ち切った。なぜそんなに慌てているのか気になるが、あまり深く聞くのも良くないと思い、俺もこれ以上の追及はやめて再び食事の手を動かす。

 

「ま、雅人さん!」

「ん? どうした響?」

「わ、私のステーキ、もう一切れいかがですかっ!?」

「え? いやもう大丈夫──」

「いえいえ! どうぞ遠慮なさらずに!」

 

 その後、なぜか響が必死にステーキを食べさせようとしてきたので、響とも互いに食べさせあった。そうして昼飯を食べ終えて店から出た後、響と小日向と俺の三人で話をしながらしばらく街を歩き回り、途中立ち寄った公園で記念撮影をした。

 

「今日はわざわざありがとうございました」

「こっちこそ楽しかったよ小日向。また誘ってくれたら嬉しい」

「……未来です」

「ん?」

「未来って呼んでください。いつまでも苗字呼びは他人行儀な感じがするので」

「わかったよ。じゃあ未来、改めてよろしくな」

 

 俺が未来に向かってそう言うと、未来はポケットからおもむろにスマホを取り出す。

 

「雅人さん、もしよければ私と写真を撮ってもらえませんか?」

「え? 別にいいけど」

「ありがとうございます」

 

 そう言って未来は、俺のすぐ横に体を寄せてくる。響もそうだけど、ちょっと近すぎやしないか? 

 

「なんだか近くない?」

「いいんですこれで。じゃ、押しますよ?」

 

 未来はスマホのシャッターボタンを押す。写真にはピースサインをしている俺と、その俺に体を預けるように寄り添う未来の姿が映っていた。それを見た響が頬を膨らませて未来を睨むように見ていたが、未来はそれに対して煽るような笑みを向けた。なんであの二人あんなにバチバチになってんの? 

 

「それじゃあ雅人さん、私たちはそろそろ行きます」

「おう。二人とも気を付けて」

 

 二人が街の中へ消えていくのを見て、俺も二人とは反対方向に歩き始める。俺は今日二人と一緒に過ごして学んだことが一つある。

 

(……未来だけは怒らせないようにしよう)

 

 あの恐ろしい様子の未来を思い出し、俺は内心震えながら帰路に就いた。

 

 

 

 ~~~~~~~

 

 

 

 雅人と別れた後、響と未来は再び街を歩き回っていた。響はいまだにふくれっ面になりながら、未来の横を歩いている。

 

「ねぇ響……そろそろ機嫌直してくれない?」

「……私も、雅人さんと写真撮りたかったなぁ」

「また撮ればいいじゃない。もう二度と会えないわけでもないんだから」

「そんなこと言って! ほんとは雅人さんと二人で写真撮れて嬉しいんでしょ!」

「別にそんなことないよ……ただ私を置いて雅人さんと楽しそうにしてる響が羨ましかったから、私も混ぜてほしいなと思っただけ」

 

 口ではそう言いつつも、未来はどこか勝ち誇った様子で笑みを浮かべる。それを見た響はますます機嫌を悪くしてしまった。

 

「むぅ~! 未来ばっかりずるい!」

「あはは……ごめんごめん。今度美味しいスイーツ奢ってあげるから、それで許してくれない?」

「……うん」

 

 そんなやり取りをしながら街を歩いていると、ある店が二人の目に映る。その店はスーパーの前に位置しており、店員がメガホンを持ちながら大きな声で集客していた。

 

「いらっしゃい! 一回300円のくじはいかがですか? 今なら1等で豪華賞品が手に入りますよ!」

「あ、なんかくじやってるみたいだよ! 一回引いてみない?」

 

 すっかり機嫌を直した響が店員に300円を支払い、箱の中に手を入れる。少しして、響は箱の中から手を引いてくじの中身を見た。

 

「あ、やった! 1等だ!」

「おめでとうございますお客様! こちら、来週行われるツヴァイウィングのライブのペアチケットです! お受け取り下さい!」

「嘘!? やったぁぁぁぁぁ!」

「よかったね響!」

 

 響は店員からチケットを受け取ると、舞い上がる気持ちを抑えきれずに未来に抱き着いた。響はツヴァイウィングの大ファンで、特に風鳴翼のCDは入荷日に即買いに行くほどである。しかし、大人気であるがゆえにライブのチケットの争奪戦も凄まじく、響は一度もライブに行ったことがない。だからこそ、響はいつかライブに行くことを夢見ていた。

 

 それがこんな形で実現するとは思ってもみなかったのか、響はいまだに信じられないと言った様子だった。

 

「私……本当にライブに行けるんだ……」

「本当によかったね。雅人さんの言った通り、いいことあったじゃない」

「……うん」

 

 響は先ほどまで一緒にいた雅人の言葉を思い出していた。

 

『でも今不幸が続くってことは、あとからいいことがいっぱい起こるかもしれない。いつまでも呪われたままなんてことはあり得ないから……多分』

 

(雅人さん……ありがとうございます! あなたの言った通り、いいことが起こりました!)

 

 響は今この場にいない雅人に心の中で感謝の気持ちを伝える。それを察したのか、未来がある提案をした。

 

「ねぇ響、雅人さんと一緒に行って来たら?」

「え? でも……」

「私はその日家の用事でいけないし、せっかくのペアチケットなのに一人で行くなんてもったいないでしょ? それに……」

 

 未来は響に近づいて、耳元で囁くように言葉を続ける。

 

「雅人さんと距離を縮める、絶好のチャンスだよ?」

「ちょ!? もうっ未来ったら! 何を言ってるの!」

 

 響はからかうように笑いながら話す未来に顔を真っ赤にして抗議する。しかし言葉とは裏腹に、響が嬉しそうな顔をしているのを未来は見逃さなかった。

 

「どうせ響の事だから、雅人さんに感謝の気持ちを伝えたいんでしょ? なら直接伝えた方がいいんじゃない?」

「……そうだね。ありがとう未来!」

 

 響は未来に感謝の言葉を言いながら、チケットを眺める。

 

(雅人さん……来てくれるかなぁ)

 

 どうか来てくれますように。そんな思いを抱きながら、響は雅人にメールを送る。響の心は今、まるで恋する乙女のようにときめいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかしその夢にまで見たライブで、自分の心が粉々に砕け散ることになるのを、この時の響は知る由もなかった。そして雅人もまた、そのライブをきっかけに、自分の運命を大きく狂わされることになる。




今回は響と未来と交流を深める回でした。今回はノイズどころかカイザフォンすら出てきてませんが、次回は登場します。

そして次回、いよいよ雅人に転機が……
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