セレじょのデュエルトレーニング!   作:春色帝ナッシュ

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 お待たせしました。ハーメルンが行頭の空白を反映してくれるみたいなので編集してました。ありがたい。

 UIが更新した瞬間爆増したり感想が届いたりして結構嬉しくなっています。私はチョロいので。
 よければそこのあなたも感想やお気に入り登録をどうぞ。お返しに自分のフィールド・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、Sモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚します。

 この後の展開マジで考えてなかったんで振り返り回でお茶を濁します。


 え”ぇ”!”?”
 お”前”も”お”茶”を”濁”す”ん”か”ぁ”!”?”
 ワ”シ”も”濁”そ”う”!”

※10/3
《氷水帝コスモクロア》の③効果適用ミスにより一部改稿。勝敗には影響ありません。


#4 成果の決闘!~スピンゴ

 遊戯王が人々の生活に浸透した世界。バーチャル最先端企業『ANY COLORS』らが開発した『虹闘の間(バーチャル・デュエル・スペース)』は電脳空間で活躍する配信者たちに広く親しまれ、日々デュエルに打ち込む場になっていた。

 名門:世怜音女学院に在学しながら『にじさんじ』に所属する五人の配信者は夏休み期間を利用し、三日間のデュエル合宿を行っている。

 

 八月一日の昼からそれぞれ始まった配信にて。

 【コロン】デッキを作ろうと意気込んでいた周央サンゴと、【ティアラメンツ】の完成を目指していた朝日南アカネはそれぞれ多くの人々の協力あって無事に満足いくデッキを完成させることができたのだった。

 

 それからしばらく経ち、夜の九時ごろ。

 五人は家庭科室を借りて夕食の準備を整えながら成果を報告し合っていた。大鍋の中、コトコトと音を立ててカレーが煮込まれている。

 

「んでさ、ンゴちゃんすごいんだよ! 先輩に勝ってさ!」

「えへへ……」

「最後まですごくキレキレだったね! コロンちゃんで決めたのすごくかっこよかったよ!」

「あの、もしかして東堂さん、ンゴのこと好き……?」

「当たり前じゃん! うりうり~!」

「コハックのテンションなんかおかしくね?」

「ンゴのこと大好きだもんね〜」

 

 サンゴ本人よりいきいきとその活躍を話すのは間近で見ていた東堂コハク。包丁を使う仕事を終えてからずっとサンゴにひっついており、周りも“いつものことか”と流している。

 彼女が評価する通り、サンゴの完成させたデッキは《プリンセス・コロン》を使う上で非常によくできていて、【魔鍵】デッキを取り入れることで申し分ない展開力を獲得し盤面を強固にしながらコロンを活躍させることができるようになっている。

 

「ンゴちんもめちゃ頑張ったみたいだね〜。オレ嬉しいよ……!」

「そのキャラはともかく……あーこもおめでとう! らめ先輩に勝つって相当じゃよ!」

「えへへ〜ありがとう〜! これでようやくチグちゃんとひすぴともデュエルできる!」

「へぇ……! 楽しみにしてるわ」

 

 一方アカネも【ティアラメンツ】デッキを完全完成。【デスピア】と“芝刈り”に着目した構築で爆発力を生み出し、強力なモンスターを並べる力をより強くした。最終的には積年のライバルに見事勝利をおさめ、他にもベストバウトを生み出したという。

 目下の相手は決闘者としての先導たる同胞、西園チグサ北小路ヒスイ。にじさんじ内で見てもかなりの実力者である二人に並ぶため、確かな闘志を露わにした。それを受けた二人もまたアカネを歓迎するかのように笑う。

 実際歓迎しているのだ。新たな強者の登場を、決闘者としての感情が。

 そうこうしているうちにカレーも程よく完成し、いい香りを漂わせている。人参・じゃが芋・玉ねぎ・牛肉が甘口のルーによく馴染んだ王道のカレー。

 集まった五人のうちほとんどは自炊経験ありということもあって学生が家庭科室で作るものとしてはかなりのハイクオリティだろう。

 

「あ、これ入れてもいいかな?」

「なんやそれ……なんか危ない見た目してない?」

「レオスさんとオリバーさんがくれた、“エデンの白い粉”、だって。食べられるからみんなでどうぞって」

「面白そう! いれちゃえ!」

 

 ここでアカネが取り出すは、謎の白い粉。説明がなければどこかアウトな雰囲気があるものの、一応信頼できるライバーからのもらい物ということで不安感は薄れる。片方は名実ともに破天荒な“マッドサイエンティスト”だが、もう片方はエデンでも著名な大学教授。何か仕込まれているなど考えにくい。

 出来上がったカレーに、それをかけていく。匂いはおかしくなく、せっかくだからと全員が口に運んだ。

 

 彼女たちは知らなかった。それがエデンでは結構メジャーなジョークグッズであると。

 ……その後何が起こったかは、SNSへのコメントが全てだろう。

 


 

北小路ヒスイ 8/1 21:24

 口が地獄

 ┗返信 アクシア・クローネ 8/2 00:16

   (両手を合わせて謝罪するポーズ)

 

東堂コハク 8/1 21:24

 からい;;

 

西園チグサ 8/1 21:25

 レオスからもらった粉かけたカレー食べたあーこが「んん!?」って言って倒れた。あたしもヤバイ。

 とりあえずレオス、オリバー、後で話があります。

 ┗返信 オリバー・エバンス 8/1 22:11

   僕は悪くない。全部レオス君です。

  ┗返信 レオス・ヴィンセント 8/1 22:14

    共犯です

 ┗返信 レイン・パターソン 8/1 22:13

   先輩たちホントすみません!!!!あとでシメときます!!!!!!

 

ローレン・イロアス 8/1 23:47

 先輩にエデンパウダー食わせたヤツいるマ~~~?

 


 

 そんなアクシデントがあったものの、どうにかカレーは完食。あとは寝るだけとなったが……夜型生活リズムの面々にとって、二十二時はまだまだ活動時間内。

 比較的早寝なアカネとコハクは先んじて寝袋を敷いた教室に向かい、残った面々で軽くデュエルする流れになった。

 

「あたしはちょっと調整したいから、二人で先やっといてや!」

「すぴちゃんとようやくデュエル出来るんだし、せっかくなら勝ちたいなーんて!」

「やってみ? 私もまあまあガチで行くから」

 

 対戦するのはサンゴとヒスイ。世怜音女学院中等部に在籍する両名はヒスイが転入生という事情もあって同年代のように仲が良く、何かと張り合うライバル的な存在でもある。

 決闘盤を構え、対するは桃と緑。片や新米、片や熟練。しかし肩書は同じだ、両者ともに決闘者。

 

-- READY --

-- SANGO VS HISUI --

-- DUEL --

 

――デュエル!!

 

TURN1 SANGO LP:8000 HAND:5

 

 先手はサンゴ。意気揚々とカードを並べていく。デッキを回す経験は多くないものの、手札の枚数からできることは限られているために扱いきれる。【コロン】デッキを作ろうと努力したかいあってのことだろう。

 

「まず、《魔鍵施解》を発動! バトスくんをサーチして、手札一枚を《魔鍵-マフテア》と交換! 《切り裂かれし闇》と《人形の幸福》も発動して、おもちゃ箱を手札に加えもいた!」

「ほー、それが新兵器?」

「まあね! んー……ここはこっち! 《人形の幸福》の効果、手札の《おもちゃ箱》を破壊してデッキから《ドール・モンスター 熊っち》を墓地に送る!」

「なるほどね……狙いはそれか」

「《おもちゃ箱》の効果! デッキから《ドール・モンスター ガールちゃん》と……ここは、水属性の《メガロスマッシャーX》を特殊召喚!」

 

 自分のカードを破壊することで繋がる展開。サンゴがチョイスしたモンスターは人形の少女と、発光するサメのような生物。わざわざ選ばれたからにはそれなりの理由がある。

 《切り裂かれし闇》で一枚ドローし、さらに続ける。場には通常モンスター、魔鍵の能力が解放される。

 

「魔法カード《魔鍵-マフテア》! デッキの《魔鍵銃士-クラヴィス》を墓地に送って、手札の《魔鍵銃-バトスバスター》を儀式召喚! さらに《大魔鍵-マフテアル》をサーチ!」

「儀式……あーいや、続くのか」

「そ! 《大魔鍵-マフテアル》を見せてから召喚! 墓地のクラヴィス君を特殊召喚! そして、ガールちゃんとメガロスマッシャーでエクシーズ召喚!」

 

 世界は繋がり、鍵は開く。すなわち道は相棒へと。

 光の渦の中から現れるのは、かわいらしくも勝利を掴むべく手を伸ばす童姫。

 

「みなさまにお届け! 天真爛漫のかわいい子! 《プリンセス・コロン》ちゃん!」

 

 意気揚々と現れて、サンゴと軽快にハイタッチ。続けて場に残ったマフテアルがクラヴィスの魔鍵に宿り姿を変える。

 少年が開く可能性の扉、青に染まった銃士は力を繋げる。

 

「来てっ! 《魔鍵慿霊-ウェパルトゥ》ンゴ!」

 

 召喚されるとともに、漂う光弾(エクシーズ素材)を打ち抜いて。デッキの《ライドロン》を手札に加え。

 《エクシーズ・ギフト》で手札を整えたサンゴは、出し惜しみなどせず主砲を呼び出す準備を整えた。

 

「通常召喚、《デメット爺さん》ゴ! 効果で墓地のガールちゃんと熊っちを魔改造召喚!」

「これは……来るねぇ?」

「闇属性・レベル8のガールちゃんと熊っちでエクシーズ召喚! 天衣無縫の拳で、全部ブチ抜け!

 

 それは魔人。フィールドを黙視し、己の拳を振るう相手を狙っている。

 それは圧力。最上級の攻撃力と一撃必殺の無効効果。

 召喚条件の重さも、効果に要求される消耗の激しさも、可能性が繋いだ今なら一切問題ない。故にそれは現れる。

 

「《No.22 不乱健(フランケン)》!!」

 

~ ~ ~ ~ ~

 

《No.22 不乱健》

 RANK8 闇属性・アンデット族 エクシーズ

 ATK4500/DEF1000

 闇属性レベル8モンスター×2

 このカードはX召喚でしか特殊召喚できない。

 ①:1ターンに1度、このカードがフィールドに攻撃表示で存在する場合、このカードのX素材を1つ取り除き、手札を1枚墓地へ送り、相手フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。

 このカードを守備表示にし、対象のカードの効果をターン終了時まで無効にする。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

~ ~ ~ ~ ~

 

 《アシュタルトゥ》と双璧を成すサンゴの“エースアタッカー”。《コロン》の相棒として破壊力を発揮する用心棒といったところか。

 

『――!』

『――――』

 

 不思議なことに立体映像もそうした雰囲気を感じ取ったのだろうか、《コロン》が《不乱健》によじ登り肩車。寡黙な魔人を振り回す満面の笑みの少女という絵面はほほえましさすら感じさせる。

 カードを一枚伏せてターンを終了したサンゴは、ヒスイと共にその立体映像を眺める。

 

「……妙なシステムだなーこれ」

「んにゃ?」

「ああ。普通のプログラミングでこんな挙動が生み出せるもんなのかな、って思っただけ」

「ほえー。ンゴは“こういうもの”だって思ってたけど……確かにすごいね」

 

 博識なヒスイだからこその着眼点だろう。『虹闘の間』は確かに()()()()()()のだ。

 まずカードごとに3Dグラフィックが美麗に作成されているのがおかしい。さらに特定のカードが並んだ時の挙動を事前に設定しているなら膨大な量のデータになるはずで、それを普通のテクノロジーで制御できるはずがない。

 

「でもにじさんじならできそうじゃない? ここっていろんなライバーさんの関係者に協力してもらったって聞いたよ」

「そうなんだけど……うん」

「? さてンゴはー、これでターンエ()()!」

 

SANGO

LP:8000

HAND:2(うち1枚《ライドロン》)

FIELD

《魔鍵施解》

《No.22 不乱健》ATK4500

《プリンセス・コロン》DEF2200

《デメット爺さん》ATK0

《魔鍵銃ーバトスバスター》DEF2200

《魔鍵憑霊ーウェパルトゥ》DEF2000

《人形の幸福》

《切り裂かれし闇》

〈SET〉

 

TURN2 HISUI LP:8000 HAND:6

 

「ほんじゃ私のターン、ドロー」

「今のうちに! セットした《魔鍵錠-(ロック)-》を発動! ウェパルトゥンゴを墓地に送ってメガロスマッシャーを特殊召喚、さらにバトスバスターとメガロスマッシャーでシンクロ召喚!」

 

 青き銃士はその身を変える。闇を切り裂き、出でたるは雷光携えし赤鬼。

 

《魔鍵変鬼-トランスフルミネ》!」

「すごいねぇ……これは負けてられないな?」

「《切り裂かれし闇》でドロー! さ、崩してごらんよ!」

 

 口調は軽く、しかし盤面はかなり重い。カード効果を無効にする《不乱健》、連動してダメージを与える《デメット爺さん》、召喚されたモンスターを即座に破壊する《トランスフルミネ》。《切り裂かれし闇》によって戦闘にはめっぽう強く、《コロン》は自身の効果で、デメット爺さんは《人形の幸福》で守られている。

 セレじょのデュエルを見ていたサンゴは、ヒスイのデッキが水属性主体であることを知っている。【魔鍵】モンスターの中には墓地の通常モンスターの属性に応じた妨害を行えるものがあり、《トランスフルミネ》もその通り。真っ先に《メガロスマッシャーX》を選んだのはこういうわけだった。

 モンスターで()()()()のが遊戯王の基本戦法だとすればサンゴのスタイルはそのメタ。手札のカードでモンスターを展開できる回数は限られているがゆえに、それを止め切れば、乗り越えれば勝てる。だから単純に強い。

 

(ンゴがどこまで考えてるのかはわかんないけど……やってみっか、試したいこともあるし)

 

 それに立ち向かっていくのがヒスイのデュエル。彼女もまたモンスターに強いデッキを使うからか、今の手札での崩し方は見えつつある。

 相手が強かろうと、自分のデッキの強さを信じること。どんな決闘者にも言える勝負の神髄。

 まずは一手。確実に勝ち筋を狙う。

 

「召喚、《深海のディーヴァ》。デッキからレベル3以下の海竜族を特殊召喚する」

「それは……チグちゃんがいつも無効にしてたやつ!」

「さてどうする?」

 

 たおやかな桃色の人魚、《深海のディーヴァ》。召喚するだけでモンスターをさらに追加できる完全一枚初動。登場から現在に至るまでその強さを十全に発揮し続けている強者。ヒスイとチグサの対戦でもほぼ毎回使用され、これが通るだけで形勢逆転もあったほど。

 おぼろげな記憶の中からもそれを想起し、止めるならここだろうと判断したサンゴは手札を一つ切った。

 

「不乱健ゴの効果! 手札の《ライドロン》、エクシーズ素材のガールちゃんを墓地に送ってディーヴァを無効に! さらに爺さんゴの効果が発動して、破壊して2400のダメージ!」

「痛った……でもこれで一番の問題はどうにかなったな」

 

HISUI LP:8000-2400=5600

 

 ダメージ先制はサンゴ。しかしそれだけで決するわけではない。空気がわずかに冷え始めた。

 

「《おろかな副葬》でデッキから《氷結界》を、さらにその効果で《氷水帝コスモクロア》を墓地へ送って《深海のディーヴァ》を手札に戻す」

「うお~出た、氷水(ヒスイ)モンスター!」

「今からもっと見せるよ。フィールド魔法《氷水底イニオン・クレイドル》

 

 また一段、寒気が強まって。決闘者と名を近しくする透き通った体の水モンスターが姿を現していく。

 見ていたとはいえ“なにか起きている程度”の認識だったサンゴにとって、氷水カードは未知の存在。相手モンスターを破壊できる《トランスフルミネ》の存在はあれど警戒するに越したことはないと判断し、様子見の姿勢を取った。

 

「墓地の《コスモクロア》を手札に。《氷水のトレモラ》の効果、手札から《氷水のエジル》を特殊召喚……《フルミネ》の効果使う?」

「んー……どっちみち戻ってくるんだっけ……?」

「まーそうだね、《トレモラ》でそのまま蘇生するかな?」

「じゃあここじゃない……でいいのかな?」

「んじゃあ《エジル》の効果、《氷水呪縛》をサーチして――そのまま発動」

 

 そしてサンゴの陣営は()()()()()

 除去効果を持っていた《トランスフルミネ》が、守備体勢の《不乱健》が、その肩上の《コロン》が、一瞬にして呪縛される。

 さらにはサンゴの決闘盤にも霜が降り、体にまで浸蝕を始めつつあった。そんな状況に陥って混乱しないはずもなく。

 

「え、何これ!?」

「《氷水呪縛》の効果。自分フィールドに【氷水】モンスターと《イニオン・クレイドル》がある限り、相手はこのターンに召喚・特殊召喚した場のモンスターの効果を発動できない」

「ンゴのモンスターが!?」

 

 それはモンスター効果を奪う呪い。このゲームにおいてモンスターが持つ役割の、バリエーションを縛る術。

 ……しかしまだ、ヒスイの盤面は完成していなかった。

 取り出した飴を口に。それは礼節を欠く行動などではなく、彼女が持つ()()()()()姿()を引き出す鍵。

 

「さて、ンゴはこれを突破できるかな? イニオン・クレイドルがあることでこのモンスターは手札から特殊召喚できる」

 

 黒衣が世怜音の制服を塗り替え、伸びた髪は色素を濃く、()()()(すがた)を変貌させる。

 どちらも彼女(ヒスイ)であって、それもまた氷水(ひすい)であって、しかし感じる圧力はけた違い。

 

霊峰の神秘、世界を視る黒き魔女。不届きな敵を塗り潰せ――

 

 そうして()()()姿()となった彼女の背後より、それは現れる。彼女のエース。

 

「《氷水帝コスモクロア》」

 

 黒装束の魔女の優し気な笑みと、牙を見せる決闘者の笑みが重なり。絶対零度に満たされて――

 


 

「そいえばさ、ひすぴのデッキってどんな感じなの?」

 

 ところ変わって就寝スペースとして使われた教室。『虹闘の間』の拡張機材を置いた教室からは離れ、わずかに音が聞こえてくるのみ。

 その様子が気になっていたアカネが問うのに答えたのはよく対戦していたチグサ。

 

「どんな感じって、まあ【氷水】デッキじゃな」

「えーっと、そうじゃなくてね? なんというか、どう戦うのかなって?」

「なるほど! ()()()()()、って感じなんよな」

「わかる! ヒスイちゃんっぽいよね!」

「そうなんじゃけどコハック、ひすぴのことブッ刺さんといて」

 

 寝転がっていたコハクも会話に交じり、チグサの思い出し語りに耳を傾ける。

 どちらかと言えば負け越しており、しかしデッキとしての完成度を讃える戦士の感情は本物で、だから苦笑いで彼女のデッキを語る。

 

「ほー……どんなところが嫌だったとかある?」

「だいたい全部! モンスターの効果は使えんし、攻撃力も下げられるし、どんどんダメージもらっちゃうんよ!」

「え、モンスターの効果使えないってすっごく辛くない?」

「フィールドなら何も発動できない、ってえげつないんよ。舞元先輩の()()()()とはまた違うのもやらしいんよな」

「そうねー。私のドラゴンもすぴちゃんとは相性悪くって困ったなぁ」

 

 条件が整えばモンスター効果を“発動できない”【氷水】のロック盤面は、“無効になる”よりも面倒な場合がある。

 後者をすり抜けられるカードであっても前者には太刀打ちできず、防戦一方になりやすい。それに心当たりがありそうなコハクも笑っている。

 遊戯王の基本がモンスターで殴り合うことなら、ヒスイの戦法はそのメタ。自分にだけ有利な状況を作り出し相手を縛り付けて殴らせない。

 とはいえ、そんなデッキへの対抗策がないわけではないのは当然のこと。

 

「でもなんか魔法カードでそういうことしてるなら、それどかせばいいんじゃない?」

「……そういうことまで考えられるようになったんやな、ちょっと感動しちょるわ。ひすぴのデッキはフィールド魔法がなくなると厳しいから魔法カードでどけてやるとええんや」

「じゃああーこのデッキだと……《ハートビーツ》が使えるかな?」

「そんな感じじゃないかなー? ヒスイちゃんも()()()()()の対策カードは入れてるみたいだけどー、なかなか出せなくて困ってるって言ってたねー」

 

 遊戯王の基本、魔法罠で戦況をサポートすること。自軍を強化したり、相手を妨害したり、その妨害を超えたり。

 ヒスイが魔法罠を使ってロック戦術を仕掛けるのであればそれを超えるカードも存在する。どんなデッキも弱点がないわけではないのだから。

 そうして三人は戦場に思いをはせる。願わくばそのデュエルが、二人にとって良いものであることを。

 

「ん、コハックってドラゴン使うの?」

「あーまあねー? ふふふ」

「見たことないんじゃっけあーこ? コハックのドラゴンはヤバイぞ」

「え”」

「も~おちぐちゃ~ん、アカネちゃんビビってるじゃん~」

 


 

「キングフィッシャーを装備したコスモクロアで、攻撃力が合計2500下がったトランスフルミネを攻撃! 《氷水呪縛》でさらに2800ダメージ!」

「っ……(ライフが“さんご”、とか言ってられない……!)」

「私はこれでターンエンド。さあ、ひっくり返せる?」

 

SANGO LP8000-2700-2800=2500

 

HISUI LP5600

HAND:1(《深海のディーヴァ》)

FIELD

《氷水底イニオン・クレイドル》

《氷水帝コスモクロア》DEF3000

 (装備:《氷水艇キングフィッシャー》)

《氷水のエジル》DEF2000

《氷水呪縛》

 

 戦場は荒れていた。残った《不乱健》を《氷水艇キングフィッシャー》の効果で突破されると、すぐさま連続ダメージを受けて追い詰められる。不幸中の幸いか《コロン》は自身の効果、《デメット爺さん》は《人形の幸福》によって攻撃されないため場に残ることができたが、この状況下では()()()()()()()としか言えず。

 

「どうだろ、ひっくり返せるかな……」

 

 サンゴが見る先、ヒスイの盤上のカードは全てサンゴが確認できる状態。罠などはなく、それで十分に強い。

 

 《氷水帝コスモクロア》。守備力3000で、《イニオン・クレイドル》と連動し相手モンスターが召喚されたターンにしか効果を発動できなくさせる。氷水の戦闘時に打点が1000下がるのも嫌らしい。次のターンまで残せば装備されている《氷水艇キングフィッシャー》によるバウンスも待ち構える。

 《氷水底イニオン・クレイドル》。発動時に墓地・除外の氷水を回収し、モンスターの召喚時に自分場の水属性と相手全モンスターの攻撃力を下げる効果。

 《氷水呪縛》。《イニオン・クレイドル》と連動し相手モンスターが召喚されたターンに効果を発動できなくさせる。氷水を含む戦闘で破壊されたモンスターの元の攻撃力だけダメージを与える効果は氷水が破壊されても使用可能。

 《氷水のエジル》。召喚時に氷水魔法罠をサーチ、攻撃か効果の対象になると一度の破壊耐性を持ちながら手札・墓地の水属性を特殊召喚することもできる。

 墓地の《氷水のトレモラ》。水属性が破壊されると氷水モンスターを蘇生でき、実質氷水に復活能力を与えている。

 

 通常モンスターを素材としてエクシーズ召喚したことで《切り裂かれし闇》が適用されるコロンの攻撃力はわずかに上昇するが、コスモクロアとエジルの守備力の高さが突破できない。うかつに攻撃表示にすれば《イニオン・クレイドル》の弱体効果に絡め捕られることは明白。

 このターンで一体幾つの妨害を踏み越えなければならないのだろうか。そして除去を優先した動きで勝てるのだろうか。不安が重くのしかかり、デッキトップにかける腕を鈍らせる。幼い少女に堪える極寒の戦場は、無情な判断を迫っていた。自分の心音が焦りを招く。

 

(このドローが、全部決める……どうしよ……)

「……諦めるなっ!」

「!? すぴちゃん……」

「ンゴがここで諦めないでよ、私はンゴなら頑張ってくれるって思ってるし、頑張ったンゴを倒したいって思ってる!」

「……頑張って、ダメだったら?」

「それはそれ! 死ぬときは死ぬんだから、終わる最後の一瞬まで決闘(デュエル)しようよ!」

 

 対面からの叱咤は、彼女から“決闘者(デュエリスト)”として信じられている証に他ならない。

 どこかで諦観していたのかもしれない。“自分は初心者”で、“相手は上級者”、“強固な盤面”で“勝ち筋は薄い”。だが終わっていないのだ。

 

「…………」

 

 自分の手札を眺める。《切り裂かれし闇》が相手ターンでも増やした二枚の手札は自分の武器で、ならばこれからも戦える。次の一枚を信じれば倒せる。

 ぐっと力を込めて、デッキトップを……引き抜いた。

 

「ドローッ!!」

 

 そして、それを一瞥。突破口が見えた。

 

「すぴちゃん、やるよっ!! 《超自然警戒区域》!!」

「さあ来いっ!!」

「魔法発動――《思い出のブランコ》っ!! 墓地の通常モンスターを特殊召喚する! おいで《クラヴィス》くん!!」

 

 可能性は繋がる。魔鍵銃士が舞い戻り、瞬間、強烈に二発の銃声。恩恵と抵抗の力を宿し、一弾ずつ、それぞれの決闘者へ。

 ――通常モンスターの特殊召喚に成功したことで、サンゴのフィールドの二枚の永続魔法の効果が発動。

 モンスター効果をどれだけ封じられようと、今の盤面は魔法カードを阻むものはない。冷え切った空間にヒビが入り、開放的な音を立てて砕け散った。

 

「《切り裂かれし闇》で一枚ドロー! そして《超自然警戒区域》で、すぴちゃんの《イニオン・クレイドル》を破壊するっ!!」

「はっ、いいじゃん……!! 好きなだけモンスター効果使いな!!」

「《魔鍵施解》の効果で手札一枚を交換し、加えた《魔鍵-マフテア》を発動! フィールドとデッキからクラヴィスくん一体ずつを墓地に送って融合召喚! 《魔鍵召獣-アンシャラボラス》!」

 

 闇の魔鍵が繋がり合い、扉の先から牙剥く獣を呼び覚ます。騎乗する銃士の手には、再びあの魔鍵が。

 目まぐるしく戦況は移り変わる。《魔鍵施解》は、扉を開き別の世界へ。そこは……彼女のエースたちの暮らす場所。

 

「効果で墓地のマフテアを手札に! そしてフィールド魔法を《人形の家》に変更! 自分の墓地のドールモンスター二体を選んで同じモンスターをデッキから魔改造召喚(闇属性・レベル6)する! おいで、《ガールちゃん》《熊っち》!」

「これで、また通常モンスターが……なるほど、《マフテア》!」

「うん! マフテアを発動! 自分場のアンシャラボラスと、デッキの最後のカード《火炎木人18》を融合!」

 

 《魔鍵-マフテア》はその追加効果の使用権限として場に通常モンスターを要求する。そこを新たなフィールド《人形の家》で補い、サンゴはデッキのモンスターを素材に融合召喚を行う。

 緑の鱗、翼で舞い上がる息吹と共に現れし異界の生物。それを人は……竜、と呼ぶ。

 

「羽ばたけ、画竜点睛! 《魔鍵召竜-アンドラビムス》!!」

 

 さらに続く。異なる力を得た二体の人形が重なって(エクシーズ)

 アンドラビムスが竜なら、その美しい存在もまた竜と言えるだろう。黄色の翼は天より舞い降り、その恵みを告げる。

 

「六道輪廻を見守る存在! 《告天子竜パイレン》!!」

 

 二体のドラゴンが並び現れるフィールドに、もはや弱気なサンゴは見えない。攻める、攻める、勝利に向かって。進軍を阻む呪縛は解かれている。

 

「アンドラビムスの効果発動! 自分の墓地の通常モンスター(メガロスマッシャーX)同じ()属性の相手をすべて破壊する!」

「ん……! でも《トレモラ》の効果を発動、除外して《エジル》を蘇生! さらに二枚目の《イニオン・クレイドル》をサーチ!」

「そこに合わせてアンドラビムスでさらにドロー! っ、今しかない!! 《エクシーズ・インポート》を発動! エジルちゃんを対象に、パイレンゴの素材にする!」

「なっ、厄介な……!? 対象になった《エジル》の効果、墓地の《コスモクロア》を特殊召喚、するけどその効果は通る……!」

「よし! うおおおいくぞー!!」

 

 怒涛の攻勢。《氷水のエジル》の効果を使わせながらその除去に成功し、あと一歩というところまで辿り着いた。

 残る壁は《氷水帝コスモクロア》のみ。その突破の算段も見えている。ライフを詰める最後の一手は相棒(コロン)を進化させること。

 彼女が高く跳躍し――天から高速で飛来した()()に勢いよく搭乗した。

 

「コロンちゃん、バトルフォーム!! 乗り込めぇー!!」

 

「《旋壊のヴェスペネイト》!!」

 

 雀蜂のような姿の機械兵器、その頭上に操縦士のように乗りこなすコロンの姿が見える。彼女をアタッカーにする方法の一つであり、攻撃力は2500。

 

「バトルフェイズ!! パイレンゴで、コスモクロアを攻撃! 《切り裂かれし闇》で、1000下がっても突破できる!!」

「いいね……!! 《氷水呪縛》で1500ダメージお返しするよ!!」

「でももう、すぴちゃんにモンスターはいない!! アンドラビムスとヴェスペネイトでダイレクトアタック!! これで、ターンエンド!!」

 

HISUI LP5600-2800-2500=300

SANGO LP2500-1500=1000

 

 激闘。お互いに大きくライフを減らし、決着が近いことを明らかにする。

 サンゴにとっては惜しくも勝利まで持っていけなかったことが悔やまれる展開だ。EXデッキに《リンクリボー》がいれば残り300を削れた。あるいは《天霆號アーゼウス》がいれば次をしのげたかもしれない。それらを嘆いてもどうしようもないのだ。

 ヒスイにとっては発見ばかりの展開だった。自分のデッキの弱点を的確に打ち抜き、残した手数を押し切ってひっくり返したのは紛れもなくサンゴの強さだった。

 ……脳裏によぎるのは、『虹闘の間』の不思議なオカルト。『この世界』の決闘にまつわる奇妙な伝承。

 

(“真の決闘者は、ドローカードで戦況をひっくり返せる”……プログラム段階でイカサマしてるとかそういうものじゃない、ここには何かある)

 

 どんな状況でも、勝ちたいと願った決闘者の元にはそれに応じて適切なカードが来る。荒唐無稽な法螺話程度にしか思えなかったそれは、現状を見るに嘘でもないのだとわかる。

 かつて『この世界』が生まれたばかりのころ、創始者主催で開催された大会の決勝は追い込まれたライバーがラストターンのデッキトップ一枚で逆転勝利したとして伝説となっている。

 その話はいったん置いておいて。自分に勝ちたいと思ってくれたサンゴに、自分は何ができるのかと考え。

 

 ――ならば自分も、本気のドローで。

 

 それが答えだった。今まで以上に感情を込め、目の前の相手を打ち倒す確かな決意と共に。

 

「私のターン――ドローっ!!」

 

HISUI LP300

HAND:3(うち2枚《深海のディーヴァ》《氷水底イニオン・クレイドル》)

FIELD

《氷水呪縛》

 

 デッキトップが輝きを放ち、勝利を渇望する決闘者に応える。

 

-- ACTIVATE --

 

 その瞬間に()()が発動した。

 

「何が来るのかわかんないけど……ンゴは最後まで戦う! スタンバイフェイズにパイレンゴの効果でクラヴィス君を特殊召喚! 《切り裂かれし闇》でドローして《超自然警戒区域》で《氷水呪縛》を破壊する!」

 

 身構えるサンゴだったが――それでも、これは防げない。

 天に瞬く星々を繋ぎ、それが混沌(カオス)の力を振り下ろす。

 

「私がドローしたカードは……RUM(ランクアップマジック)七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)!! このカードの効果でエクシーズ召喚を行う!!」

 

~ ~ ~

 

《RUM-七皇の剣》

 通常魔法

 このカード名の効果はデュエル中に1度しか適用できない。

 ①:自分のドローフェイズに通常のドローをしたこのカードを公開し続ける事で、そのターンのメインフェイズ1開始時に発動できる。

 「CNo.」モンスター以外の「No.101」~「No.107」のいずれかの「No.」モンスター1体を、自分のEXデッキ・墓地から選んで特殊召喚し、そのモンスターと同じ「No.」の数字を持つ「CNo.」モンスター1体を、そのモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてEXデッキから特殊召喚する。

 

~ ~ ~

 

「深淵の一等星、魂を導く方舟より出でよ!!」

 

-- DIRECT CHAOS XYZ --

 

「《CNo.(カオスナンバーズ)101 S(サイレント)H(オナーズ)DarkKnight(ダークナイト)》!!」

 

~ ~ ~

 

《CNo.101 S・H・DarkKnight》

 RANK5 ATK2800/DEF1500 水属性・水族 エクシーズ

 レベル5モンスター×3

 ①:1ターンに1度、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターをこのカードの下に重ねてX素材とする。

 ②:X素材を持っているこのカードが破壊され墓地へ送られた時に発動できる。

 このカードを特殊召喚する。その後、このカードの元々の攻撃力分だけ自分のLPを回復する。

 この効果で特殊召喚したこのカードはこのターン攻撃できない。この効果は自分の墓地に「No.101 S・H・Ark Knight」が存在する場合に発動と処理ができる。

 

~ ~ ~

 

 そのモンスターは、今までのヒスイの静かな印象があるモンスターとはどこか違う武骨な黒騎士。

 召喚難易度から考えるに、《七皇の剣》を的確にドローしなければいけないはず。それをこの場所で、確実に召喚したのは何の因果か。

 

「おわ、初めて見たんだけどその子……!」

「そうね、私もなかなか出せたことなかったよ……じゃあ行くよ! ダークナイトの効果発動! パイレンを吸収する!」

「っ、やり返された~!」

 

 先ほどの《エクシーズ・インポート》の意趣返しと言わんばかりの吸収効果。まずは厄介な破壊耐性を持つ《告天子竜パイレン》を取り込み、突破口を一つ空ける。

 

「続いて《イニオン・クレイドル》を再発動! 墓地のコスモクロアを手札に戻して、そのまま特殊召喚! これで《アンドラビムス》の効果は封じた!」

「でも、その子は魔法カードは無効にできない! ンゴに《切り裂かれし闇》がある限り、ビムスンゴは戦闘では突破されない!」

「わかってる!! 召喚、《深海のディーヴァ》!!」

 

 最後の一枚。最初のターンに残していた歌姫は、妨害されない今確実にその効果を使える。その一枚が通ることが重大な意味を持つ。

 

「デッキから《黄紡鮄(きほうぼう)デュオニギス》を特殊召喚! 効果でンゴのデッキトップ四枚を除外! さらに効果発動、ディーヴァのレベルを倍の4にする!」

「除外されたカードは《ガレスヴェート》《魔鍵闘争》《切り裂かれし闇》《マフテアル》……どれもちょっとキツイけど、何してくるの?」

「こうするよ、レベル4のディーヴァとレベル3のデュオニギスでシンクロ召喚! 《深海姫プリマドーナ》!」

 

 歌姫は新たな舞台へ。明るい海の都に歌声は響く。

 

「効果発動、除外されている《魔鍵闘争》をそっちの手札に戻して、デッキから《深海のアーチザン》を特殊召喚! デッキの一番上のカードを墓地に送って墓地のエジルを効果無効で特殊召喚!」

「手札が戻ってきた……? すぴちゃん、何かするつもりだね?」

「うん、これからンゴを確実に突破する! 私は、レベル3《氷水のエジル》・レベル1《深海のアーチザン》に、レベル7のシンクロチューナー《深海姫プリマドーナ》をチューニング!!」

「レベル……11!?」

 

 歌は静かに、荘厳に。その存在を呼び覚ます。レベルの高さがシンクロモンスターの格なら、レベル11にまで上り詰めたそれは一体何なのか――そう、終焉だ。

 

「命を絶やす災厄の鼓動! 絶対零度の吹雪よ(すさ)べ!! 《氷結界の還零龍 トリシューラ》!!」

 

~ ~ ~

 

《氷結界の還零龍 トリシューラ》

 LEVEL11 ATK2700/DEF2000 水属性・ドラゴン族 シンクロ

 チューナー+チューナー以外のモンスター2体以上

 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:このカードがS召喚に成功した時に発動できる。

 相手フィールドのカードを3枚まで選んで除外する。

 ②:S召喚したこのカードが相手によって破壊された場合に発動できる。

 自分のEXデッキ・墓地から「氷結界の龍 トリシューラ」1体を選び、攻撃力を3300にして特殊召喚する。

 相手フィールドに表側表示モンスターが存在する場合、さらにそれらのモンスターは、攻撃力が半分になり、効果は無効化される。

 

~ ~ ~

 

 そして次の瞬間、サンゴのフィールドが凍り付き――はじけ飛んだ。

 何をされたのか理解した時には既に、《旋壊のヴェスペネイト》《魔鍵召竜-アンドラビムス》《切り裂かれし闇》が除外されており。残るカードは《デメット爺さん》《魔鍵銃士-クラヴィス》と《超自然警戒区域》《人形の家》《人形の幸福》のみ。

 

「……やば」

「あはは! こんなに頑張ったの久々だわ! すごいフィールド!」

「笑い事じゃないんですけどー!?」

 

 黒の混沌の騎士。白の極地の龍。翡翠の最奥の魔女。立ち並ぶフィールドは、北小路ヒスイという決闘者を語る。

 これでも彼女のデッキの全てではないだろう。一面に過ぎないそれらは、バラバラのモンスターでも一つの軍。中学生でも大人でもある彼女に似合う多面性の盤面。

 

「じゃあ、今回は私の勝ちってことで! バトルフェイズ!」

「あーマジで悔しい!! 次は絶対勝つからね!!」

「うん、待ってる。――コスモクロア、トリシューラ、ダークナイトで攻撃!!」

 


 

「それじゃ、次はもっと強くなってくるから! おつかれさーんご!」

「はーい、ばよばよ~

「やっぱりマジで似てない……」

 

 デュエル終了。間一髪の勝利を掴んだヒスイはいくばくかの振り返り談義を終え、内心の思考を巡らす。友には軽々しく話せない、裏側の思考。

 まず、三ターン目のサンゴ。あそこで折れていてもおかしくないはずだったが、自分が()()()()()()ことで再起。たちまちまくってみせた。《超自然警戒区域》と《思い出のブランコ》、《エクシーズ・インポート》……いずれもこちらを崩せる的確な札で、そう多くは採用されていないだろうそれがここまでうまく作用するのは()()()()()

 そして四ターン目の自分。あの場面、《七皇の剣》以外のカードをドローしていてもおかしくなかった。しかし手元にそれは来て、結果勝利に繋がった。《還零龍トリシューラ》では突破しきれないのはわかっていたから、それは奇妙な巡り合わせ。

 この世界のオカルト、“的確なドローが導かれる”現象。それが関与しているとしか思えない。黒の戦衣の上に外套を羽織り、闇夜に潜むエージェントらしい姿で暗躍を始めた。ひとたび、世怜音からは離れて。

 

「“ちょっと夜更かししてくる”、っと……さーて、聞いてみようかな」

 

――Prr...Prr...Prr...

 

 コール音が三度。電話口から聞こえるのは若い男の声。それがこの『虹闘の間』を作り出した第一人者であることを知っているからこそ、電話をかけるべき相手としてふさわしい。

 

「あ、もしもし? 北小路です」

――もしもし。こちら『虹闘の間』運営の加賀美。どうかされましたか?

「ちょっと聞きたくって……“ドローについて”なんですけど、大丈夫ですか?」

――ほう……なるほど、やはりいい眼をしている。こちらからお話したいことがありますので明朝特設デュエルスペースまでお越しいただければ。

 

 そして彼女は、電脳世界の謎に一歩踏み込んだ。




周央サンゴ【みなさま~(魔鍵童姫)】
 実はアーゼウス非採用。永続魔法でのサポートが多いため、それらを失うのはアーゼウスが除去されたシチュエーションを考えると圧倒的に不利。アーゼウスが《切り裂かれし闇》の影響を受けないのも考慮。
 浮いた枠にはリソース回復に《ダイガスタ・エメラル》など。今回のデュエルの経験からさらに改良していく決意をした。

北小路ヒスイ【深海の氷水邸】
 《深海のディーヴァ》から始まる展開は、かの《ハリファイバー》を失った今でも健在。ネプトアビスで手札を増やすもよし、デュオニギスでレベルを整えてシンクロするもよし。《承影》《還零龍》といった大型モンスターはディーヴァからの展開が通ればほぼ確実に召喚できるため安定した高出力が出せるのが強い。終着点はシンクロだけに留まらないとか……?
 【氷水】の盤面が完成すると実質スキルドレインに近い状態となり、バーンも合わせて大変厄介。相手する際は魔法罠除去が重要。
 隠し玉のダークナイトは継続除去とLP管理を兼ねる切り札。

 エデンパウダーの出典はオリバー3Dです。
 草案だともうちょいひすぴがボコボコにしてましたが気まぐれで軌道変更したから遅くなったりしました。
 最後の最後までンゴを勝たせるかを悩んでました。パイレンが他のランク6ならあるいは……って感じでしたがまだ早かった。次の登場時ははたして……?

 次回の本編はおちぐのデッキ見せる回の予定ですが番外編を挟むかもしれません。あーこにティアラメンツ使わせたばかりにとんでもないことに……
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