セレじょのデュエルトレーニング!   作:春色帝ナッシュ

7 / 10
 不定期更新とはいえお待たせしすぎてしまいました。Sorry。今後も間が開くと思われます、詳しくは活動報告をご確認いただければ。
 にじさんじ遊戯王祭、なかなか楽しかったです。織姫星の皆さんも、経験者の皆さんもすごく楽しまれていたのが印象深いです。ライバーの皆さんに「いつかまたやりたい!」と思ってもらえたなら、いち“リスナー”かつ“決闘者”として嬉しい限りです。


 散々引っ張ったコハクのデッキお披露目となります。構築が一番難しかったです。私が盛りに盛ったからですけど。詳しくは読んでもらえれば。

 多くの方に読んでいただけているようで嬉しいです。感想など頂けたらさらに嬉しいです。
 どんな感じに嬉しいのかと言うと、《スケアクロー・ライヒハート》でサーチしながらドローすると手札がめちゃくちゃ潤うみたいな感じです。

※注意
 この話で行われるデュエルには、キャラクターの強さを引き立てるための演出として「追加のルール」が適用されます。
 『デュエルリンクス』における『スキル』のようなものだと思っていただいた上でお楽しみください。
 また今回のデュエルで登場するカードはシナリオ時系列を意識し、2022年8月2日時点でOCGで登場しているカードまでとなります。『DARKWING BLAST』からは登場しますが『PHOTON HYPERNOVA』からは登場しません。


#6 東堂堂々決闘中

 『虹闘の間』の裏側に触れた世怜音女学院演劇同好会。ハヤトからの“決闘精霊の調査依頼”の説明を受けている最中、突如として聞こえた爆発音の元へと向かうのだった。

 

『──!!』

「ん!? ()()()()()よなこの子!?」

「かわいい、けど逃げてるよね……」

「それらをゆうに上回る力を持った決闘精霊がこの先にいる、ということなのでしょう!」

「なんか思ったよりヤバそうなんだが?」

 

 必死で逃げる精霊の姿に異常事態を肌で感じる。電脳空間での移動とはいえ緊張感もあって息を切らす思い。

 たどり着いた爆心地に広がるのは地獄絵図。見るも無惨に燃えていく“森”らしき何か、暗黒の焦土に枯れ果てた木々が並ぶ()()()

 灼熱地獄の中央、口から火を放つ紅の巨体。とぐろを巻く長い姿は龍の如く、牙と爪を鋭く光らせ金の瞳が新たな外敵を見定めた。その口に炎が宿る。大気の異温、朽ちる木の煤けた匂い、それらが嫌でも連想させる“終わり”の光景。

 

「! えー何あれ!」

「ややややばいよ!?」

「来ます! 伏せなさい!! 防げ《レオニダス》!!」

 

 森が燃える攻撃をまともに向けられればどうなることか。ハヤトが即座に自身の決闘盤を操作し、一枚のカードを盤面へ。呼びかけに応じ現れた反骨王が大きな盾をかざした直後、それが襲い来る。

 

 劫火が視界一面を覆い隠し、盾に防がれて直撃はしないものの熱波が肌を焼き、チリチリと痛みが伝う。熱い、苦しい、この感触は『虹闘の間』でダメージを受けた時と同じようなもので、しかしそれ以上に自分の“存在”そのものに来る痛み。

 少女たちは理解する、精霊の力は自分たちにダメージを与えることができるものだと。受け続ければ危険だと。

 

 長い長い灼熱のブレスが途切れ、その名が明かされる。

 

「けは、喉が乾く……」

「社長さん! あれは……!」

神炎皇ウリア!! 幻魔が一柱、紛れもない厄災です!!」

 

 それは吼える。猛る炎、割れる大地、格の違いは言葉にするまでもなく。

 《神炎皇ウリア》。いま絶大な脅威として、矮小な人間の前に現れた。立ち向かわねば屠られるのみ、少女たちに過酷な選択が迫られている。

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 【幻魔】。強大な力を持つとされる三体の伝説のカード。一部地方の決闘神話に名が残され、いずれも災害級の脅威を持つと伝えられる。そのうち一体、神炎皇ウリアは罠の力をもって地上を黄泉へ送らんとした。

 伝説、空想上の話、そう思われていた【幻魔】の実在。その実害。畏れを感じるのも無理はない。

 そのウリアの胴の下、ニタニタと笑みを浮かべる悪魔の姿があった。骨格だけで作られた体に張られたコウモリを思わせる薄い羽、体表には青くよどんだ炎を纏う。

 

『ヒヒ……! まずはウリア様! そしてやがては全ての幻魔を!』

「なんやお前!」

『ぬぅ、人間か! 邪魔だぞ、ここはこれより我らが崇める幻魔の支配する地となるのだ!』

「うっわぁ……」

 

 その悪魔、幻魔を崇拝する()()()だろうか。ウリアを呼び出してこの場所を荒らしたのは彼のようで、現れたライバーたちに今にも襲い掛かろうとしている。

 醜悪な顔に、思わず後ずさりしてしまうのも仕方ない。まだ彼女らは若い学生で、ただの人間なのだから。

 

 

 

「社長さん! アレ倒せますか! というか倒したいです!」

 

 しかし彼女に関してはどうやら違うようだった。

 東堂コハクの目は爛々と輝き、崩れぬ笑みが“闘いたい”と雄弁に。

 

「こはたん!? 危ないよ!?」

「でも~、危ないのはみんな同じだし? あと私もデュエルしたいし?」

「……敗北すればどうなるかわかりません。それでもいいのであれば」

「大丈夫ですよ! 負けるつもりないんで!」

 

 歩み行く。死を覚悟した者の足取りではない、むしろその逆、勝利を突きつけに行く勇気ある前進。

 それを見た悪魔も、不気味な決闘盤を構えコハクを勝負へ誘い込む。その姿を愚かだと笑いながら。

 

『まずはお前か、女ぁ! 貴様を叩きのめして幻魔への生贄にしてくれよう! そこのガキどもと同じくな!』

「あ、そう? じゃあやってみてよ! 私、負けるつもりないし!」

『その虚勢がいつまで続くか見ものだな! 我ら精霊の決闘、人間ごときが抵抗できると思うな!』

 

「コハクのデュエルが見られんのは久々やな、最近はずっと調整続きだったみたいやし」

「まさかその相手が幻魔とは思わなかったけどねぇ」

「…………」

「ンゴちゃん、怖いよね」

「だって……あんなやつの攻撃受けたら……」

「安心せぇ! コハクは強いんやからな!」

「私たちも何度か負けてるし……パワーならこの中で一番じゃないかな?」

 

 サンゴは、コハクが決闘する姿をあまり見たことはない。それでもチグサが自信満々に語るのを踏まえると、少なからず幻魔相手であっても瞬殺されることはないだろうと思えた。

 それでも心配だから、声を張り上げて応援するのだ。

 

「こはたーん!! 絶対、勝ってねー!!」

「任せろー!! それじゃ……行くよ!」

 

 あたりに闇が立ち込める。

 ――その中に、七色の光がきらめいて。

 

MARTYR(殉教者) VS KOHAKU

-- DUEL START --

 

『見ろぉ!! ウリア様の力をぉ!!』

 

“精霊法――THE SEARING FLARE”

ACTIVATE:《ハイパーブレイズ》《覚醒の三幻魔》

HAND→TRASH:《暗黒の召喚神》

 

 決闘が始まった直後、突如としてフィールドが割れ二枚のカードが現れた。ウリアを刻んだ二枚の永続罠カードが、何の前触れもなくフィールドに現れる。当然これはカードの効果ではなく、ゲームのルールを超えた異常事態。

 精霊を相手にする人間に、その常識は通用しない。

 

「はぁ、ちょ、ズルやろそれは!」

「精霊はルールまで変えられる、ってことですよね……?」

「これほどまでに無茶苦茶な存在だとは……!」

 

「決闘は“正々堂々”だと思いま~す!」

『黙って見ていろ! 今から貴様を絶望のどん底に落としてやる! 《暗黒の招来神》を通常召喚! デッキより《七精の解門》を手札に加え、発動! さらに《混沌の召喚神》を手札に加え、暗黒の招来神の効果によってこれを召喚! 精霊法によって墓地に送られた暗黒の召喚神を除外し、デッキよりウリア様を手札に加える!』

 

 それはこの世界では未だ見られぬ、【幻魔】のサポートカード。三幻魔が伝説上の存在であるこの世界ではその存在もカード化されておらず、サポートも作成されていない。故にこれはコハクにとって完全な未知との勝負。……それを怖がる様子はみじんもないが。

 

「面白い! 伝説のカードにもしっかりサポーターがいるんだね!」

『鬱陶しいガキが……! 貴様には見せてやらねばなるまいな、我らの主の姿を! 混沌の召喚神を生贄に、手札からおいでなされ! 《神炎皇ウリア》様!!』

「おおっ……!」

『さらに墓地の混沌の召喚神を除外し、フィールドを《失楽園》とする! ウリア様の恵みにより我は二枚のカードをドロー!』

 

 大地は枯れ果て、木々も萎れる終末の地。そこを根城とする幻魔には恵みがもたらされる。

 そして殉教者は笑みをさらに悪く吊り上げる。手をかける場所は、決闘盤のEXデッキ。

 

『我がウリア様のためにこの世界からかき集めたカードを使ってやろう! 通常召喚した招来神で《転生炎獣アルミラージ》をリンク召喚!』

「なんかよく見るやつになった!」

『さらに七精の解門によって、手札の《黒き覚醒のエルドリクシル》を捨てて墓地から招来神を特殊召喚! アルミラージとレベル2の招来神で《スプライト・エルフ》をリンク召喚する!』

 

 現代でも見られるリンクモンスターが姿を現してゆく。全てのカードが集う『虹闘の間』よりかき集められたらしいそれらを使って、彼はまだまだカードを叩きつける。

 

「【エルドリッチ】のカードと【スプライト】カードまで……!」

「めっちゃ最近のカードじゃないですか! 結構厄介なやつ!」

「注意してください! 何をしてくるかわかりません!」

 

『どれだけあがこうが無駄だ! 魔法カード《幻魔の殉教者》! 手札をすべて捨て、我が分身(殉教者トークン)三体を特殊召喚!』

「あ、増えるんだね!」

『やかましい! トークン一体で《リンクリボー》! さらに一体で《サクリファイス・アニマ》! この二体と最後のトークンで《ライトロード・ドミニオン キュリオス》を召喚! デッキより《呪われしエルドランド》と、三枚のカードを墓地に送る! 墓地に送られた《リミッター・ブレイク》の効果によってデッキより《スピード・ウォリアー》を特殊召喚! さらに七精の解門の第三の効果によって墓地の呪われしエルドランドを手札に加える! これを発動!』

 

 手札を投げ捨て、それでもリソースが尽きない恐ろしさ。次に選ぶのは、下劣なまでに輝く黄金の都。

 MARTYR LP8000-800=7200

 

『800LPを払い、デッキより《黄金卿エルドリッチ》を手札に加える! ドミニオンキュリオスとスピードウォリアーで《警衛バリケイドベルグ》をリンク召喚! 手札の黄金卿エルドリッチを捨てることでエンドフェイズに墓地の永続魔法を手札に戻す! そして墓地のエルドリッチは、自分フィールドの呪われしエルドランドを墓地に送ることで特殊召喚される! さらにデッキから《黄金郷のワッケーロ》を墓地へ!』

「攻撃力と守備力が1000アップして、効果破壊されない! エルドリッチは知ってる!」

『スプライトエルフの効果を発動! 墓地からレベル2モンスター《カプシェル》を特殊召喚! カプシェルと警衛バリケイドベルグで《スプライト・スプリンド》をリンク召喚! デッキより《ソウル・シザー》を墓地に送り、カプシェルの効果によって1枚ドローする!』

「なるほどねー! ほうほう!」

『墓地の《黒き覚醒のエルドリクシル》《白き宿命のエルドリクシル》を除外し、デッキより《黄金郷のコンキスタドール》《黄金郷のワッケーロ》の二枚をセット! 墓地の呪われしエルドランドを手札に戻し、ターンを終了する!』

 

 

MARTYR LP7200

HAND:2

 (うち《呪われしエルドランド》確定)

 

FIELD

《失楽園》

《スプライト・エルフ》ATK1400

 (リンク先:《スプライト・スプリンド》)

《神炎皇ウリア》ATK4000

 (※墓地に永続罠4枚)

《スプライト・スプリンド》ATK1400

《黄金卿エルドリッチ》ATK3500

 (効果破壊耐性)

《ハイパーブレイズ》

《覚醒の三幻魔》

《七精の解門》

〈黄金郷のコンキスタドール〉

〈黄金郷のガーディアン〉

 

 

『ふはははは!! どうだ!! これぞウリア様を迎えるにふさわしい盤石なるフィールド!』

「そうだねー、うん! なんか()()()なフィールド!」

『……何だとぉ?』

「なんか“強い動き”だけどー、色々混ぜててごちゃごちゃしてるよね!」

 

 揃ったカードは強い。しかしコハクが指摘した通り“いびつ”でもある。様々なカードで環境を整えられたウリアだけでも十分な圧力があるにも関わらず、混ぜ込んだカードによって元来の強みはむしろ薄れてしまっているようにも思われる。

 《失楽園》で効果に、《ハイパーブレイズ》で戦闘に強くなったウリア。高打点と破壊耐性を持つ《エルドリッチ》。《コンキスタドール》で破壊、《ガーディアン》で弱体化、《エルフ》から《ソウル・シザー》を蘇生して破壊。この盤面は“強い”。しかし……。

 

『黙れ!! 勝てぬ癖にほざくなよ人間風情が!!』

「いやー……言ってるんだけどな〜?」

 

 巡るターン、少女は勇む。引き抜くカードにかける期待は大きく、自らを信じる強さがあった。それはこの一言に集約される話なのだろう。

 

「私、勝つよ。──ドロー!」

『ッ!?』

「よしよし……いいね! ならこう行こうかな! 永続魔法《心の架け橋》!」

 

 そしてそれが明かされる。悍ましい闇を払う光の力、輝く世界を作るコハクのデッキ。その“架け橋”がひとつ、繋がった。

 

「このカードが場にあるとき、【宝玉獣】モンスターを追加で一回召喚できる! ということでまずおいで! 《宝玉獣 サファイア・ペガサス》!」

「【宝玉獣】……! あれが……」

「そ、コハックのデッキは【宝玉獣】……というか見てればわかるんやが【宝玉】やな」

 

「サファイアの効果! 場に出た時、デッキの宝玉獣を選んで永続魔法として場に置くよ!」

『同時に、《覚醒の三幻魔》によって1800のライフを得る! クソッ、なんなのだ貴様……!』

「デッキから置くのはねー、新しい友達! A(アドバンスド)宝玉獣 ルビー・カーバンクル》!」

 

 光が繋がる、その先に見えるのは闇を宿した赤の宝玉。大きな宝石の中には生き物が眠っているようにも見え、それからなんとなく凶暴そうな印象を受ける。

 彼女のデッキが【宝玉】と知っていたチグサもヒスイもこの“新しい友達”は知り得ていなかったのか、目を見開いている。

 

「宝石……って闇堕ちしちゃったよ!?」

「うぉっなんだアレ! 今まで使ってなかったよな!?」

A(アドバンスド)宝玉獣】ですか! 私も全てを把握しているわけではありませんが……確かマイナーチェンジのようなモンスターだったはず……?」

「最近の調整って、あのアドナントカ宝玉獣を使うためやったんかな……したら“あいつ”は……?」

 

 戦場では、引き続きコハクの展開が進んでいた。新顔を存分に活躍させてやると、惜しみなく全てを出し切ると、晴れ晴れとした顔で進めていく。

 

「《心の架け橋》効果発動! 手札・フィールドの宝玉獣モンスターを破壊して、デッキから宝玉魔法罠を手札に加える!」

『チィ……どうせつまらんカードだ!』

「あ、そっか……じゃあ遠慮なく! フィールドのサファイアを破壊して、《宝玉の絆》を手札に加える! この時フィールドで破壊されるサファイアは代わりに永続魔法(宝玉モード)になって、《心の架け橋》の更なる効果で、このカードと相手のカード一枚を手札に戻す! 《覚醒の三幻魔》!」

『何!? ならば《黄金郷のコンキスタドール》でそのカードを破壊する!』

「ふーん、いいよ! 破壊される! ……そっか、こんなもんか」

『……?』

 

 把握する、理解する、決断する。コハクに浮かんだ表情は果たしてなんなのか、殉教者にはわからなかった。

 決闘は止まらない。その先にある決着へ至るまで。

 

「魔法カード《宝玉の絆》! デッキの宝玉獣一体を手札に加えて、違うやつを宝玉モードで置く! 《A宝玉獣 コバルト・イーグル》を手札に、《究極宝玉獣 レインボー・ドラゴン》を宝玉モード! さらに宝玉モードの宝玉獣レインボードラゴンを除外することで、デッキから《宝玉獣 エメラルド・タートル》を今度は特殊召喚! さらにデッキからこの子を手札に加えるよ……!」

 

「私のエース! 《究極宝玉神 レインボー・ドラゴン》!」

 

 そのカードが、手札に引き込まれると同時。彼女を取り巻く世界が一変する。()()が選んだ決闘者を後押ししているように、彼女の勝利を()()もまた疑っていないように。

 暗く澱んだ雲に覆われた空を突き破る日差しが彼女にスポットライトを当てるかのごとく。足元には七つの丸を結んだ魔法陣らしき何かが浮かび上がり、その丸の三つに光が灯っていた。明るい青、暗い赤、明るい緑。

 

「見えましたね……!」

「あいつがコハクのエース、レインボードラゴン……」

「綺麗なモンスターだったな……今のこはたんも、なんかかっこいい」

 

「じゃあ、続けていくよ! Aコバルトを手札から捨てて、デッキから《アドバンスド・ダーク》を手札に!」

『光がまた……いや、そのカードは闇の力……?』

 

 足元の光がひとつ、暗い紺色が増える。これで四つ。

 

「さらに続けてー、自分フィールドに表側の魔法カードがあるときこのモンスターを特殊召喚できる! おいで、《水月のアデュラリア》!」

『そのモンスターは……魔法カードと罠カードによって強化されるモンスターか! 我のライフを4600回復する! そして即座に消えてもらおうか、スプライトエルフによって墓地よりソウルシザーを特殊召喚し、その女モンスターを破壊する!』

「ここに使うんだねー……うんうん、わかったよ。《おろかな副葬》《救いの架け橋》を墓地へ、さらにそれを除外して《A宝玉獣 サファイア・ペガサス》と《虹の古代都市-レインボー・ルイン》をデッキから手札へ」

 

 高打点の《アデュラリア》を即座に破壊されたものの、コハクに動揺は一切見られない。残る手札から次の手数が足されるアドバンテージ継続。もはや打てる手が限られる悪魔と違い、今後明確に響くもの。

 《覚醒の三幻魔》でライフを得ようと、除去を使おうと、幻魔の殉教者は対面の彼女がどこか恐ろしくて堪らなかった。

 

「じゃあ……もういいかな。フィールド魔法《アドバンスド・ダーク》! フィールド・墓地の宝玉獣は闇属性モンスターになる!」

 

「暗くなった!」

「おおっ、宝石が光ってる〜! 綺麗〜!」

「これは……」

 

 そして、コハクの周りの影が濃くなる。舞台照明は落ち、その中に宝玉の彩りが一際輝いて。

 

A(アドバンスド)宝玉獣】は、《アドバンスド・ダーク》がある時に場に出せる! Aサファイアを召喚! 効果で、今度はA宝玉獣をデッキから宝玉モードで置く! 《A宝玉獣 エメラルド・タートル》! さらに宝玉モードのAルビーは、自分と宝玉モードのA宝玉を全部特殊召喚できる! Aルビー、Aエメラルドを特殊召喚!」

 

 足元の陣に増えたのは暗い緑。フィールドには三体のA宝玉獣が並ぶ。そしてコハクはまだ、そのEXデッキを使っていなかった。

 ここからが始まりだ、とコハクはさらにカードを操る。

 

「行くぞー! 闇属性になったエメラルドとAエメラルドでリンク召喚! 《暗影の闇霊使いダルク》! そっちの墓地から闇属性モンスター、暗黒の招来神を私のフィールドに特殊召喚!」

『チッ……! いい気になりやがってぇ!』

「魔法カード《宝玉の恵み》、墓地からAエメラルドとAコバルトを宝玉モードにする! そしてリンク2で魔法使い族モンスターのダルクと暗黒の招来神でさらにリンク召喚! 私たちの光を繋ごう! 《神聖魔皇后セレーネ》! お互いのフィールドと墓地の魔法カードの数だけ魔力カウンターを乗せておくよ」

『何故、何故展開できる……!?』

「じゃそろそろライフ回復もめんどくさいしー……AサファイアとAルビーでリンク召喚、《トロイメア・フェニックス》! 手札のレインボールインを捨てて覚醒の三幻魔を破壊する!」

『フン……! だが貴様がモンスターを出し続けたことで、今の我のライフは膨れ上がっている……!』

「確かにねー! まあ……どうにかしてみせる! フェニックスと魔皇后セレーネが相互リンクなので一枚ドロー!」

 

MARTYR LP:22500

 

 合計ライフ22500。元々8000からスタートするデュエルで、三倍に迫る数値というのはあまりにも暴力的だ。しかし、やはりコハクに恐れは見えない。

 この場にいる者に彼女は状況を理解できない愚か者か……と問えば、それは違うと答えられる筈だ。なぜなら。

 

「いっつも思うんだ、コハクってすっごく楽しそうにデュエルするの」

「あんなにも自信に満ち溢れた方はなかなか見ないですよ。東堂さんの何よりの強さはアレでしょう」

 

「魔皇后セレーネの効果! 魔力カウンター三つを使って墓地から魔法使い族・アデュラリアを特殊召喚!」

『戻ってきたか……しかし守備表示では攻撃には参加できまい!』

「そうなんだけどね〜、この子はこっちの方が使うから! 効果発動して、自分フィールドの表側の魔法カード二枚とデッキのレベル4以下のモンスター一体を墓地に送る! 宝玉モードのAエメラルドとAコバルト、デッキから《宝玉獣 アンバー・マンモス》を墓地へ!」

 

 そしてデッキから琥珀の宝玉獣が墓地に送られる。魔法陣に灯る明るい橙色の光が、七つの丸の最後の一つ。

 フィールドには宝玉モードの《サファイア》、墓地に《Aサファイア》《Aルビー》《Aエメラルド》《Aコバルト》《エメラルド》《アンバー》。

 影の中、枯れた大地に溢れんばかりの光が満ちる。

 

「これで揃ったー! 私のフィールドと墓地に宝玉獣が合わせて七体だけいる時、このカードは手札から特殊召喚できる!

 

「勝利へ向かって七色の橋を架ける! 今、虹臨!」

 

「《究極宝玉神 レインボー・ドラゴン》!!」

 

 その龍は、白銀の体に七色の宝珠を宿し天より来たる光の神。

 東堂コハクのエース《レインボー・ドラゴン》。大いなる闇へ立ち向かう輝きとして、今舞い降りた。

 雄々しく咆哮を上げ、決闘者を包むように陣取る勇姿からそれに宿る精霊の魂を感じられる。

 

『攻撃力……4000……! だがいくらその精霊が強くともっ』

「さらに魔法カード《虹の架け橋》、デッキから宝玉魔法をサーチする! これで手札に加えた《宝玉神覚醒》を発動! 二枚目の《心の架け橋》を手札に加えて《宝玉獣 ルビー・カーバンクル》を特殊召喚! その効果で宝玉モードのサファイアを特殊召喚し、《宝玉獣 アメジスト・キャット》を宝玉モードに!」

『なっ……!?』

 

 まだ続く。エース召喚では止まらない。

 悪魔が揺らぐ。対面の敵が止まらない。

 

「ここで、ルビーとアデュラリアでリンク召喚! 《I:Pマスカレーナ》! さらにリンク3の魔皇后セレーネとマスカレーナで連続リンク召喚! フェニックスのリンク先に現れろ! 閉ざされた世界を貫く黄金の槍! 《アクセスコード・トーカー》!! 攻撃力を3000アップさせる!」

『な、ならぬっ!! その後《黄金郷のガーディアン》を発動!! その大型リンクモンスターの攻撃力をゼロにする!!』

「焦ってるなー? でもまだ終わってないよ、フェニックスとサファイアでリンク召喚! リンク3、《トロイメア・ユニコーン》! 手札の《宝玉の奇跡》をコストに、コンキスタドールをデッキに戻す! アクセスコードとユニコーンが相互リンクなのでさらに一枚ドロー! さらにアクセスコードの効果で、墓地からフェニックス、ダルク、魔皇后セレーネを除外! 失楽園、ハイパーブレイズ、七精の解門を破壊する!」

『おのれ、おのれェッ!! よくもやってくれたなァ!! ウリア様を迎えるこのフィールドをォ!!』

 

 連続するリンクが盤面を貫く。モンスターこそ残りつつ、防衛手段を失った悪魔の表情は怒りに満ち満ち、あまりにも無様に見えた。

 容赦のないコハクのプレイングに、“自分がこれを受けていたら”と考えるのも決闘者の性。同じ時を過ごしてきた世怜音の面々でも震え上がってしまうほど、

 

「やーば……ユニコーンとアクセスで四枚除去って、普通なら何も残らんて」

「コハック、なんか怒ってるよね……?」

「……貴方達のためかもしれませんね」

「えっと……何かしてたっけ?」

「ん〜? ンゴたちに関係ありそうなこと……?」

 

 ハヤトの指摘で思い出されるのは、悪魔の決闘前の言葉。

──『貴様を叩きのめして幻魔への生贄にしてくれよう! そこのガキどもと同じくな!』

 彼女がそれを受けて何を感じたのか、正確には掴めずとも……同じ立場の自分だったらどう思うか、それが答えのようなものだった。

 

「……あ」

「貴方達という大切な人を失いたくないために、コハクさんは戦っています。少なくとも私からはそう見えました」

「や、コハック〜! ありがとうな〜!」

「そしてそんな感情にしっかりと彼女の精霊は応えているようですね……!」

 

 友を想う優しさが、何よりの武器となってデッキに宿り手札に至る。

 レインボードラゴンの精霊はコハクを間違いなく導いている。勝利へ、希望ある未来へ。

 

「さらにリンク召喚! アクセスコードとユニコーンで《クロシープ》!」

『なっ、大型リンクを捨てただと!?』

「むしろこっちが本命だー! そして、レインボードラゴンをリリース! この輝きと一つとなれ!

 

 虹龍が羽ばたき空へ行く。光芒に照らされ、光そのものと融合したかのように存在感はより強く。伸ばした手に見えるのは()()の新たなカード。

 

「天龍、光の海へ舞い上がりその翼で翔る! 今再び、虹臨!」

 

「《究極宝玉神 レインボー・オーバー・ドラゴン》!!」

 

 新たな姿、レインボーオーバードラゴン。より神々しくなったその姿で、狙うは更なる展開。

 

「来た! コハックの切り札!」

「融合モンスターなのに、一体リリースするだけで出てくるの? はて、()()って……?」

「そういうことあるある……なんかまだ続きそうだよ?」

 

「リンク先に融合モンスターが特殊召喚されたクロシープの効果発動! 墓地からサファイアを特殊召喚! 墓地のルビーを宝玉モード! さらに宝玉モードになったことに反応した墓地の《宝玉の奇跡》を除外して、デッキの《宝玉獣 トパーズ・タイガー》も宝玉モードにする! ここで《レア・ヴァリュー》発動! 相手は私の宝玉モードのカード一枚を選んで、それを墓地に送って二枚ドローする!」

『どれでもいいッ!! 右端のカードを捨てろ!!』

「じゃあ選んだアメジストを墓地に送って二枚ドロー! 《宝玉の契約》でルビーを、合わせてトパーズを特殊召喚! サファイアとクロシープで《ブルートエンフォーサー》を、ルビーとトパーズで《アンダークロックテイカー》をリンク召喚!」

『どうして、そこまで精霊に選ばれているというのだ!?』

「勝ちたいって本気で思ってるからっ!!」

『ッ、どこまでも我を愚弄しやがって!! 許さんぞ、次のターンが……』

「いや、このターンで決めるよ!! 墓地のレインボードラゴンと宝玉獣七体を除外し、宝玉融合召喚!!

 

 龍の魂に集う、七色の宝玉。

 《サファイア・ペガサス》。《ルビー・カーバンクル》。《エメラルド・タートル》。《Aコバルト・イーグル》。《アメジスト・キャット》。《トパーズ・タイガー》。《アンバー・マンモス》。

 全ての光は一点に至り、最高の光へ進化する。

 

「このカードに、私の全力を賭ける!! 伝説を超える究極の龍よ、今、虹臨!!」

 

「《究極宝玉神 レインボー・ドラゴン オーバー・ドライブ》!!」

 

 世界が光に包まれる。直視するには眩しすぎるそのモンスター──レインボードラゴンの極み、オーバードライブ。

 龍が光を纏ったのではなく、光が龍となっていると言うべきか。電脳世界の全てを光と影とで二分してしまいそうなほどの圧力。そして、それを背後に決闘盤を構える金の髪の決闘者。

 

「うおっまぶしー!」

「なんやあのレインボードラゴン……! 初めて見る姿や……!」

「こはたん……!」

 

『ぐおぉッ……な、なんだ、そのモンスターは……!』

「オーバードライブ、私とレインボードラゴンの新しい力! その攻撃力は宝玉獣七体以上が除外されているなら7000アップする!!」

『……は?』

 

《究極宝玉神 レインボー・ドラゴン オーバー・ドライブ》

ATK:4000 + 7000 = 11000

 

 尋常でない攻撃力に、誰もが言葉を失った。()()()()、太刀打ちできるモンスターは本当に限られる。仮にいたとして、それがここまでの猛攻で生き残っていられるものか。

 

「は、はははっ! 凄いですねえこれ!!」

「えっ社長さんが急に笑い出しちゃったよ!?」

「あー……脳筋だなぁ……」

 

『バカな、バカな……』

「アンダークロックテイカーの効果、リンク先のオーバードライブとエルドリッチを対象にして、オーバードライブの分攻撃力を下げる!」

『ひっ!?』

「なんでエルフのリンク先にエルドリッチがいないのかわからなかったけど、結果オーライ! そしてブルートエンフォーサーとアンダークロックテイカーでリンク召喚! 怒りに満ちた黒き獣、暴虐非道の限りを尽くせ! 《破械雙王神ライゴウ》!!

 

 更なる恐怖が追加される。牙を剥き出す破壊の象徴。打点3000、妥協はない。

 

「レインボーオーバーの効果発動! 墓地のAサファイアを除外してその攻撃力を得る! これでこっちは攻撃力5800!」

 

 一万超えがいながら、なお攻撃力が追加されていく。

 

「そして! これで最後だよ!! 自分の墓地から《アンダークロックテイカー》《ブルートエンフォーサー》《I:Pマスカレーナ》《アクセスコード・トーカー》《トロイメア・ユニコーン》《A宝玉獣 ルビー・カーバンクル》《A宝玉獣 エメラルド・タートル》、以上七体の闇属性モンスターを除外!!

 

「闇の世界に、虹の龍の姿は翳る! 今、荒臨!!」

 

「《究極宝玉神 レインボー・ダーク・ドラゴン》!!」

 

 そして現れるのは、このデュエル四体目にもなる究極宝玉神。闇を照らす黒虹の龍。その攻撃力もまた他の宝玉神に同じく4000。

 

 《破械雙王神ライゴウ》、攻撃力3000。

 《究極宝玉神 レインボー・ダーク・ドラゴン》、攻撃力4000。

 《究極宝玉神 レインボー・オーバー・ドラゴン》、攻撃力5800。

 《究極宝玉神 レインボー・ドラゴン オーバー・ドライブ》、攻撃力11000。

 

 どれだけライフを増やしていようと、この猛威の前には時間稼ぎにしかならなかった。

 東堂コハクの獰猛な笑顔が、真っ直ぐに、敵をとらえた。逃がさないと。

 

「……みんなには嫌な思いしてほしくないから、全力で相手したよ。結局パワーが一番だからね!」

『ヒィッ!?』

「バトルフェイズ! ライゴウでエルフを攻撃!」

『グッ!!』

「戦闘破壊によってライゴウの効果! ガーディアンを破壊する!」

 

 暴力的な勢いの嵐が守りを剥がす。

MARTYR LP:22500 - 1600 = 20900

 

「続いてレインボーダークでスプリンドを攻撃!」

『ガァッ!?』

 

 黒と虹が混ざった光線が薙ぎ払う。

LP: - 2600 = 18300

 

「レインボーオーバーで、攻撃力をゼロにしたエルドリッチに攻撃!」

『グォォオッ!!!』

 

 輝く虹が一条、力を奪われた死者の王を貫く。

LP: - 5800 = 12500

 

「そして、オーバードライブ!! 神炎皇ウリアに、攻撃ぃ!!」

『ゥ、ウリア様の攻撃力は墓地の……』

「《アドバンスド・ダーク》の効果!! 究極宝玉神の攻撃対象の効果は無効化される!! 攻撃力ゼロのウリアを、焼き尽くせ!!」

『そんな、そんな馬鹿なァァァアアアッ!?!?』

 

 虹の光を受けたウリアの背後にできた大きな影が、その身動きを止める。そうして無防備な姿を晒した赤き幻魔を、莫大な煌めきが消し去った。

LP: - 11000 = 1500

 

 防ぐこともできない閃光をまともに受けた悪魔が地を転がり、焼け付いた肉体から白煙が昇る。

 残すはほんの僅かな命。もはや腰は抜け、みっともなく逃げようとする哀れなそれは、もう決闘者とすら呼べなかった。

 

「すごいすごい! あんなに回復されてたのに!」

「いいぞコハックー! やっちゃえー!」

「コハクさん! トドメを!」

 

 声援を受け、コハクは柔らかく笑う。下劣な悪魔の思惑通りにさせまいと全力を尽くした甲斐があるものだと満足し……この決闘を終わらせる、最後のカードを使う。

 一対の虹龍が渦を巻く。次元の扉(オーバーレイ・ネットワーク)が開く先、地面に引かれるレールウェイ。

 

『や、やめろ……!』

「メインフェイズ2! レインボーダークとレインボーオーバー、二体のレベル10モンスターでエクシーズ召喚! ダイヤのもとに大地を走る最後の兵器! 《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》!! その効果で、エクシーズ素材一つを取り除き、2000ダメージを与えるっ! いっけぇぇえ!!」

『ヴ、ヴォオアアアア!!!!!』

 

 現れたエクシーズモンスターは巨大で無骨な機械兵器。

 車両に積まれた砲台の先から、レインボードラゴンの力を宿した射撃が──悪魔を消し去った。

LP: - 2000 = 0

-- DUEL END --

 


 

 気がつけば、周囲は元の景色を取り戻していた。ウリアの炎を受けた場所は燃えてしまっているものの、それ以外は青々と自然が茂る平穏な大地。既にちらほらと小さなモンスター達が戻ってき始めている。

 悪魔の姿はもうどこにもなかった。グスタフマックスの砲撃を受けた地点に散らばったカードをハヤトが拾い上げる。先のデュエルで見えたウリアやそのサポートのみならず、おそらく今後解放されていくはずだった他の幻魔のカードもあった。

 ここで止められなければ惨状はもっと広がっていたであろう、と身震いを覚えるハヤトは同時に安堵も感じていた。一つの脅威を防いだ強き決闘者に感謝を込めて、彼は幻魔たちのカードをどこからか取り出した黄金の箱に封じ込めた。

 

「……あー!! 疲れたー!!」

「コハック〜! ナイス〜!」

「よかった……!」

 

 激戦を制した彼女は晴れやかな顔をしていた。仲間の暖かさに触れ、安らぎを取り戻す光景を俯瞰する存在が一体。コハクの後ろに控え、巨体をゆっくりと休めている。

 

「レインボードラゴンも、お疲れー! 頑張った!」

「いや、凄かったよ。コハクのデッキがここまで進化してるなんてね」

「前はレインボードラゴンってどれか一体出てきたらよかったくらいだったんにな!」

 

 チグサらの言葉を受け、どことなく満足げなレインボードラゴン。人への敵対心などは今は感じられず、少女たちがコハクと仲がいいということをしっかり理解しているようだ。

 

「コハクさんがそこまでレインボードラゴンの精霊と良い絆を結べているとは……お声がけして正解だったようですね」

「あー、確かに社長さんが()()に来た時そういう話してましたね! あの時はありがとうございました!」

「こちらこそ、そちらの方々には常々お世話になっております……!」

「ちょいちょい待って……? もしかしてコハックのお家……」

「んー、私はあんまり関わってないんだけどね! ウチとして『虹闘の間』プロジェクトに協力してるって言ってた!」

「……こういうところがお嬢様なんだよな」

 

 『虹闘の間』は、にじさんじのあらゆる存在が関わって成り立つプロジェクト。その一部に“東堂家”がいても不思議ではない……がしかし、お嬢様らしさを感じさせない普段の様子ばかり見ていると気がつけないものもあったということか。

 

「いやそうじゃなくて!!」

「どうしたのおチグちゃん? 急に大きい声出して?」

「そもそもなんで、あたしらは精霊と意思疎通できてるんですか!! そこんとこどうなんですか社長さん!!」

「あ〜そうだ……まだ説明してなかったですね……?」

「でもなんとなくわかるよ、あたしたちが今まで立体映像だって思ってたカードの動きが、精霊ちゃんたちが動いてたりしたってこと……だよね?」

「精霊は多分ンゴたちのデュエルを見てて、自分たちもデュエルが大好き……いいドローができたりしたのは精霊が何かしてるってことかな?」

「アカネちゃんとンゴちゃんの言う通り! “決闘精霊”は本能的にデュエルが好きで、勝ちたいって気持ちを受け取ると協力したくなるんだって! ドロー運がよくなったりするのはそういうのもあるらしい! 最終的に決闘者次第みたいだけど!」

 

 さっきも助けてもらったよ、とレインボードラゴンの体を撫でるコハク。デュエルが好きな決闘精霊という未知の存在がいることはもう疑いようがない。

 

「加えて言うなら、“ライバー”は精霊と違う存在……精霊たちの興味を強く惹きやすいようですね。大半のライバーにそれぞれの精霊が確認できますし、コハクさんのようにそれを知っている方もいらっしゃいます」

「そんで私たちに頼みたい“精霊の調査”っていうのが、さっきのアレみたいに怪しい精霊がいないかを見て止めることかな」

「……ついて来れてないの、あたしだけなん? いやまあわからんこともないな……」

 

 深い理解はできずとも、“決闘精霊はいる”“ライバーと関わっている場合がある”“中には凶暴なものがいるかもしれないので、それを探して止める”くらいの要点は掴める。先程のようにいつ何が起きるかわからない現状、それだけでも情報が掴めていればいい。そう判断し、早速メンバーが動き出す。

 

「しゃあ、とりあえずやべぇ精霊をデュエルでぶっ倒せばええんやな! やるでぇー!」

「デュエリストデビューしたばっかのンゴ、なんかすごいこと巻き込まれてますが……?」

「平気平気〜! ンゴちゃんは強いよ!」

「私も、管理者の側からできることがないかを探っています。随時連絡いたしますので……どうか、ご武運を!」

 

 気持ちを固め、拳を握り、セットしたデッキを信じる。

 

 

 

 ……その矢先のことだった。

 

「よ〜し頑張るぞ〜! あーこも、みんながいるから大丈夫!」

『うんうん、そうだねぇ。じゃあ頑張ってね? あはは!』

「え、今の声……ひゃっー!?」

「あーちゃん!?」

 

 少年らしき声が聞こえたとともに、皆の視界からアカネが消えた。

 驚いて先程まで彼女がいた場所に目を向ければ、足元には大きな()()()()。黒と紫が凶々しく混ざり合うそれは果てしなく、どこまでも続く()()()()のようにも見えた。

 こんなにも早く事態が変動するとは思っておらず、友を見失った不安と先の見えない緊張が肌を伝う。特にサンゴは強く動揺していて、表情はすっかりこわばり体も固まってしまっている。

 

「おーい!! ……流石に遅いか」

「え……どうしよ……」

「この穴に落ちちゃったのかな……?」

「朝日南さんが狙われた……彼女のデッキに、そういう類の精霊が潜んでいたのでしょうか。皆さんはこちらへ! 一度安全な場所へ……」

「下がって!!」

『 A T T A C K 』

「どしたひす……うわっなんや!?」

「今度はなんだー! 武器だー!」

 

 黒衣に転じたヒスイが持つ短刀が、“それ”とぶつかり重い金属音を鳴らす。

 最前線でツノ型の剣を振るった()()()()()と、それらが引き連れ群れをなす()()()()()()()の襲撃者軍団。“怒り”にも近しい雰囲気が漂う謎の一団が、圧力を隠そうともせず続々と迫っていた。

 

『 I N V A T I O N 』

【クシャトリラ】……!」

「みんなは、先に行ってっ! 私が食い止める!」

「いや、すぴちゃんがっ……」

「いいから行けっ!!!」

「っ……!」

「普通に武器持ってるし、明らかやばいですよねこれは……」

「こいつらを相手するには準備が足りません! ここは一時撤退です!」

「……ンゴちゃん、行くよー!」

「待って、みんな……!! あーちゃん、すぴちゃん……!!」

 

 手を伸ばせど何もできない。コハクに抱えられサンゴはその場から遠ざかっていく。

 アカネを飲み込んだ奇妙な穴の影も、【クシャトリラ】と呼ばれた軍勢にたった一人で立ち向かう大人の姿のヒスイの姿も、どんどん小さくなっていき……やがて、涙で霞んで見えなくなった。

 





幻魔の殉教者【一の幻魔・罠の皇】
精霊法“THE SEARING FLARE”
 自分の最初のターン開始時に適用される。
 デッキから《ハイパーブレイズ》一枚を選んで自分フィールドに表側表示で置く。
 さらに手札から罠カード・攻撃力0/守備力0の悪魔族モンスター・《神炎皇ウリア》いずれか一枚を墓地に送ることで、デッキから《覚醒の三幻魔》一枚を選んで自分フィールドに表側表示で置く。
 この効果を使用する場合、自分の初期手札のうち1枚を《幻魔の殉教者》にする。

 《神炎皇ウリア》特化デッキ。
 精霊法によってサポート罠を展開し、ここに【エルドリッチ】の動きを取り入れることによってさらに妨害と手数を増やす。
 レベル2の招来神と《リミッター・ブレイク》を起点にしたスプライトリンクによる拡張性も備える。


東堂コハク【光重なる宝玉】
 【宝玉獣】と【A宝玉獣】、【究極宝玉神】を全て採用。《アドバンスド・ダーク》を要求する【A宝玉】に寄せつつサポートを共有し、リンクで展開を伸ばしながら脳筋火力を叩き出す。闇属性を増やして宝玉獣を墓地に残すことで究極宝玉神を複数種並べるのも不可能ではない。
 ハマれば《アストラム》や《万物創世龍》、【邪神】すらも屠る一撃は並の防御では避けられない。


 恐怖! 【炭酸エルドウリア】!
 何でこんなデッキになっちまったんだ……いや《エクスピュアリィ・プランプ》で無限リミッターブレイクしないだけマシか……?

 今回のデュエルの目標は《アドバンスド・ダーク》の効果で相手の効果を封じて勝つことでした。その相手としてウリアはちょうどよかったですね。
 なんかこの世界だと幻魔の扱いがすごくなってるんですが、オリカにするレベルでもないかなって思ってOCG効果で実装しました。最近だと耐性も火力も十分なので。その分今後に繋がる『精霊法』を実装したんですけど。

 次回以降のデュエルもできる限り楽しんでもらえるように頑張ります。まずは怪しげな穴に飲み込まれたあーこから……一体何ベルの仕業なんだ……
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