前回のあらすじだよ!
“決闘精霊”の調査をすることになった“セレじょ”の朝日南アカネちゃん!
でも突然足元に謎の穴が空いちゃって、みんなとはぐれちゃった! これは大変! アカネちゃん、どこに行っちゃったんだろう〜?
その頃、他のみんなも何やら大変そう? 果たしてこの先どうなっちゃうのかな?
……頑張ってね、ふふ。あはは。
※登場カード・レギュレーション:2022/08/02時点
「…………」
「ンゴには悪いことしちゃったな……でも……」
緊急事態に撤退を選んだハヤト、チグサ、コハク、サンゴはひとまず騒動が起きていない安全そうな場所までたどり着いた。昨日まで使っていたライバー用デュエルスペースに入り一息つくも気分は優れない。特にサンゴはひどく落ち込んでしまっていて、ほろりとこぼれた涙の後がくっきりと見えてしまう。
しかし時間は進む。どうしようもなかろうが、“今”は無常に事実を伝える。スマホが鳴らす通知音が、心拍音と連鎖して。
「……ライバーの皆さんから、既に何件か精霊絡みと思われる連絡が来ています。規模が拡大していくのは避けられなさそうですね」
「すっごいですねこれ……」
「どうすれば、いいんだろ……」
「ンゴ……んーとりあえず、できることするしかないですよね!」
「しかし何をすれば……運営チームからできることも限られてますし……」
「いや〜わからんな〜……ウチらだけじゃ頭が回らん……!」
手詰まりに近い。
“何が”、“どこで”、“何を”、“どうやって”……ハヤトとセレじょ三人だけでは思考も手数も足りないというのは明確。かと言ってハヤトが運営権限で何かしようにもライバーにそれが明確に伝わる保証はなく、さらなる混乱を招きかねないのが難しい。下手を打てば影響はバーチャルだけに留まらず、繋がる現実すら侵食しかねない。
意気消沈しているサンゴ。難しい思考が苦手なチグサ。知っているからこそ動きづらさを感じるハヤト。……ここのメンバーだけではとうてい解決できそうになかった。
「――じゃあ、こういうのは?」
しかし、終わってはない。
こういう時にこそ試される力がある。彼ら彼女らならではの困難に立ち向かう力がある。
コハクがふっと口にした言葉は――。
(落ちてる……よね? やばいかな……)
朝日南アカネは、ほとんど意識を失っていた。足元に突然現れた穴に真っ逆さま、重力に従って闇に沈んでいく。
こうなってしまっては何もできない、ただ身を任せるしかなかった。
『あの道化、いくらなんでもやりすぎでしょう……!』
『私が出てこれなかったら今頃大変なことになっていましたよ!』
『昨日のデュエルの相手……確か“そらむー”さんでしたね。まずは彼女に……』
ふっと、落下の感覚が鈍る。背中に不思議な感触が伝わり、まるで誰かに受け止められているようだった。空中同然の闇の中で、誰がそうしたのかという疑問はあったが……今はそれを受け入れるのが先決だった。
『アカネさん……!』
『……アカネさん!』
ようやく覚醒した意識。まず朝日南アカネの目に入るのは、自分をのぞき込む顔だった。
自分と合う青い目に、青白い肌、自分を揺さぶる青い
「んんっ……あれ、ここは?」
『よかった、目を覚ましたんですね!』
「えっ、
アカネのデッキのキーカード、《ティアラメンツ・キトカロス》。状況からしてその決闘精霊のようだ。
落下から救ってくれたのもどうやらキトカロスらしい。水中の世壊に生きる人魚であれば、その精霊が空間を泳ぐことは容易いだろう。
「ありがとね! それで、ここは……」
『とても不気味な場所です。おそらくあいつが……』
「あいつ、って……というか……?」
落ち着いて周りを見渡せば、あたり一面が白くぼやけた異様な空間。
あちらこちらに浮かんでは消えていく影の手たち、ギロリとうごめく赤黒い眼、笑い声と泣き声が遠くに響く。そのどれもが慈愛と悲嘆に満ちているように思えてならない。
さらに目を凝らせば、うっすらと登っていく大量の文字列までもあった。それらは恐ろしい呪いの文言などではなく、むしろ見慣れたメッセージ。
――公式チャンネルが突発配信とは
――あーこやんけ!
――どうした?
『これらは一体……?』
「コメントだ! でも誰が配信してるの?」
『そりゃもちろん、ボクだよ♪』
声の先から地面に伸びる一つの長い人影。自分たちのものではない、別の場所から照らされている長身のシルエット。その方向に目をやれば、カツカツと足音を立てながら歩いてくる男が見えた。
『ようこそ、ボクの特別ステージへ! よろしくね、アカネちゃん?』
「アル太郎……」
《デスピアの導化アルベル》、昨日完成したアカネの新たなデッキのモンスター。道化らしくにやにやと笑いながら舞台に現れた。彼こそアカネをここに招いた張本人。
キトカロスが宙を泳いで詰め寄る。目じりは吊り上がり、怒りの感情をあらわにする様子は《ティアラメンツ・キトカロス》のカードイラストからは考えにくい、彼女に意思があることの証左。
『アルベル……! あなたが余計なことをしてくれたのはわかっているんです!』
『ヒドいなぁ~キトカちゃん~? デッキの後輩にそんなツンツンしなくてもいいじゃ~ん?』
『黙りなさい! そもそも、なぜこんなことを!』
『え~~~っとね、面白いことがしたいから! それだけだよ!』
「……どういうこと?」
嗤いと怒りに挟まれた困惑。そもそもアカネは自分がここに落とされた理由を知らない。アルベルがそれを伝えていない。
『虹闘の間』で活発になり始めた精霊は何を考えているのか。《デスピアの導化アルベル》は何を思うのか。彼の口が回り出す。
「教えてほしいな、アル太郎が何を思ってるのか」
『いいよ~! さて、まずは……ありがとう、ボクらを見つけてデッキを作ってくれて!』
「お? それはこちらこそだよ! デスピアのみんながいたから、あーこのデッキは完成したんだ……!」
『悔しいですが、私たちから見てもあなたたちの働きは素晴らしいものでした……そこだけはあなたたちに感謝させていただきましょう』
【デスピア】のカードパワーはとても高かった。【ティアラメンツ】と互いを補い、巧みな融合召喚の連続でリソースを獲得していく華麗な戦術。展開の難易度がさほど高くないのも、ゲームが元来苦手なアカネをサポートしてくれる優秀なところ。
アカネは自分のデッキを誇りに思っている。もともと好きで使っているティアラメンツも、新しく使えるようになったデスピアも大切に思っている。
『ボクらデスピアも、面白い決闘者に見つけてもらえて満足! ティアラメンツっていう人魚さんたちは初めて会ったけどなかなか面白くって良かったよ!』
「うん、これからもよろしくね!」
『……でもね、ボクはキミがどこまでやれるのか気になった。ボクら深淵の使徒を扱いきれるのか……試させてもらうよ』
「わっ!?」
ぱちん、と彼が指を鳴らす。
アカネのデッキが紫の光に包まれ、カードがひとりでに宙へ飛び出す。それはいずれも【デスピア】【烙印】のテーマカード。
やがてアルベルの手元に集まったそれは、彼のデッキとひとつになった。深淵のひし形を模した決闘盤を構え、深淵の導化は笑い続ける。
『ボクは楽しいことが好き! 面白いことが好き! だからゲームをしよう!』
「っ、カードが……」
『キミのデッキからデスピアのカードを没収した! そのデッキで、ボクとデュエルしよう! 面白かったら合格、そうじゃなかったら……これは没収させてもらうね?』
『なっ、勝手なことを!』
「えっと……つまり、デスピアなしのデッキでデュエルすればいいってこと?」
『そういうこと! ボクらに勝てる決闘者こそ、ボクらを扱うに相応しい力の持ち主!』
「よし、頑張るぞ……!」
意気込むアカネ、しかしキトカロスが心配げな瞳で袖を引く。
『アカネさん、気を付けてください! 今のアカネさんのデッキは枚数が……!』
「……それは、やばいんじゃ?」
『あーキトカちゃん! 教えなくって良かったのに!』
指摘されなければ気が付かなかっただろう。二テーマをミックスしたデッキから一テーマをごっそり抜いてしまえば、デッキのクオリティは非常に不安定になる。
六十枚のメインデッキから十枚以上のカードを失い、デュエルを始めることはできても機能する初手になるかはわからない。《隣の芝刈り》のように、役目が十分に果たせなくなったカードもある。
さらにEXデッキは被害甚大。デスピアの融合モンスター全てを奪われアタッカー不足に陥りかけている。このままデュエルしても、全力のアルベル相手に立ち回るには不十分。
『ボクは手を抜かない! 今あるだけの烙印の力を存分に開放して、キミと楽しいデュエルをする! さあ、始めよう!』
「ちょっと待ってもらいたいんだけど……?」
『んー……ボクは今すぐデュエルしたいなー?』
「むむむ……!」
――予告なしでこういう企画珍しくね?
――というかキトカロスとアルベル誰?聞き覚えない声
――流石アルベル、いじわる
――ん?
――変な音した
――上か?
「なんか聞こえた!!」
『何が起きて……!』
『よかった、来てくださったんですね!』
『キトカちゃん、キミ何やったのかなぁ?』
『援軍要請ですよ! 頼もしい決闘者を知っていましたので!』
「ちょっとまったぁぁあああ!!!」
空気を突き破る大声が聞こえた。
真っ白な空間のはるか上空、ヒビが入ったそこから見える青一条の光線。轟音を引き連れて天を劈く機竜の影。
「あーちんー!! 来たぞー!!」
「そ、そらむーだ!」
アカネの親友、空星きらめが突如現れた。足元には円弧の翼を広げる超巨大機竜《竜儀巧-メテオニス=QUA》の姿。
『キミは、確かアカネちゃんのライバルみたいな子だったよね? どうしてここに来れたのかな?』
「なんかQUAに任せたらうまくいった!!」
『あ、そう……せっかく《命数》も用意したのに、そのモンスターは魔法カードに強かったか……』
この事態は把握済みなのだろう、閉ざされた空間に突入したきらめは既に決闘盤を装着している。後ろ目にアカネを見て、そしてアルベルと対峙する。
「っ……今のうち! 急げ急げ……!」
「配信経由で話は聞かせてもらったっ! あーちんがピンチなら、きらめが相手になってやるっ!」
『あーそう? 言っておくけど、キミがつまんないことしないでよ? ボクは楽しいデュエルがしたいだけなんだからね?』
「そこは心配せんでもろて! きらめ、強いから!」
『ふぅん……じゃあ見せてよ、キミの面白さ♪』
嗤う道化が手を翳せば、そこはもう戦場。それぞれ五つのモンスターゾーンと五つの魔法罠ゾーン、二つのエクストラモンスターゾーンを挟んで決闘者の視線が交叉する。
KIRAME LP:8000
ALUBER LP:8000
――デュエル!!
先行を取ったのはきらめ。一枚の魔法カードから、彼女のデッキは動き出す。
降り注ぐ流星群が描き出す竜輝巧の黄金展開。それが始まり……
「きらめのターン! 《
『ふぅん……』
「リンク召喚、《リンクリボー》! そして墓地のアルζの効果発動! 手札の《バン
『ダメだよ~♪ 効果を発動したそのモンスターを対象に、手札の《
「なっ、きらめのターンなんだけど!?」
『キミの墓地の光属性を除外して、手札から特殊召喚できる! 相手フィールドにモンスターがいれば相手ターンでも発動できる効果だよ!』
……止まってしまった。きらめのフィールドにホールが開き、星の竜の輝きを鎖に囚われた赤い竜が喰らう。
苦しい顔を隠せないきらめだがリカバリー能力も十分持つデッキだ、まだまだ手札を捌いていく。
『さあおいでマグナムート! この子が特殊召喚されたエンドフェイズに、ボクはデッキ・墓地からドラゴン族を手札に加えることができる!』
「つっよ……! でもまだだ、墓地の《バンα》の効果で手札の《ルタ
『もうその儀式モンスターを持ってたんだねぇ?』
「バンαとルタδでエクシーズ召喚! 守備表示で現れろ、《竜輝巧-ファフ
『今度はその儀式魔法……うんうん、それで?』
「《エマージェンシー・サイバー》発動! デッキからドライトロンモンスター……仕方ない、ここは《ラス
『あはは! ようやくお目見えだね、キミのエースモンスター!』
「攻撃力合計4000! フィールドのラスβ、ファフμβ’内部のバンαをリリース!」
「進行方向、敵はなし! 発進しろっ! 《竜儀巧-メテオニス=DRA》!!」
ようやく現れた、彼女が誇る極限兵器。《メテオニス=DRA》、いつもと同じように、いつだって同じように、彼女と共に突き進もうとしていていた。
しかしこの展開で手札は枯渇気味。それでも展開しなければ一方的にやられるだけとわかっているから、自分の盤面に託すこととした。
「……カードを一枚伏せて、ターン終了!」
『なるほどなるほど……エンドフェイズ、マグナムートの効果で《深淵の獣ルベリオン》を手札に加えよう』
KIRAME LP:8000
HAND:0
FIELD
《リンクリボー》A300
《竜儀巧-メテオニス=DRA》A4000
《竜輝巧-ファフμβ’》D0
(素材:《竜輝巧-ルタδ》)
〈SET〉
『さて、空星きらめちゃん……でよかったかな? キミのプレイしっかり見させてもらったよ! 一手止められてもすぐにリカバリーを意識した動きにして……ボク好みの
「そりゃどうも……?」
『アカネちゃんもそう思うよね……あれ、どっか行っちゃったの?』
「ふふん、きらめがなんも考えてないと思ったか~? あーちんには今、崩されたデッキを組みなおしてもらってる! すぐに戻ってくるよ!」
『へぇなるほど! でも~、それってキミがこのターンを凌げたらの話だよね?』
「えっ……? マジか、なんかヤバそうだぞ……!」
『プレリュードは終わりだ。ここからはボクらの舞台。深淵の使徒の力、その身でとくと堪能せよ――ボクのターン!』
デュエルが進む中、アカネは離れデッキを広げていた。目線は上向き、表情は明るく、キトカロスと隣り合って座り、ここではない虚空に喋りかける。
「こんにちは~! 世怜音女学院高等部一年、朝日南アカネです~!」
『これがライブ配信ですか……みなさん聞こえておりますでしょうか、ティアラメンツ・キトカロスと申します……』
「ゲストにキトカちゃんに来てもらいました!」
――あーこも配信始まった!
――公式チャンネルから
――キトカロス!?
悩んだアカネはアルベルの相手をきらめに任せ、デッキ構築に専念することとした。“決闘精霊”キトカロスの存在を出していいものかと考えたものの、アルベルが公式配信を乗っ取っている以上どんなに隠しても集合知の前には無意味。……というよりは、アカネに考えている余裕がなかったとも。
リスナーもある程度公式チャンネルのアルベルの放送を見ている者がいたために順応するまでは早かった。“アルベルとアカネが戦うらしい”と理解した面々が空気を作っていく。実際はもう少し複雑な事情なのだが。
『ええと、アルベルが勝手なことをしてくれたので戦う力を求めています……!』
「キトカちゃん意外と物騒だよね……? とにかく、デッキを組みなおしたいのでみんなの力を貸してください!」
『ここに今のデッキレシピがあります。……先ほどヤツにカードを奪われたせいでめちゃくちゃなことにっ』
「特にエクストラデッキと、攻撃できるモンスターを増やしたいなって感じかな?」
『現状アタッカーは《ルルカロス》《カレイドハート》《神・スライム》が候補……戦えはするでしょうが、やはり不安ですね』
――ひとまず刺して強いモンスターって感じか
――とりまイシズやろ
――デスピアの代わりになりそうなやつかぁ……
――芝刈り残すならシャドールとか?
「なんか見えたよ今! シャドール、ってどんな感じ?」
『検索してみましょう……ほう、カード効果で墓地に送られて強いモンスターたちですか。私や《シェイレーン》などを有効に扱えそうです』
「融合モンスターもいる! おお、なかなか強いのでは?」
『エクストラデッキを補強するのはこれらで十分でしょう』
「ん? 今の……」
有効なコメントにひとまず枠は足りた。そこで、アカネの目に一つのコメントが入る。記されたカード名は、なんとなく目にしたことがあったけれど今まで注目していなかった存在。専用サポートが存在することは知っている、強いらしい存在。
「……そういえば、あーこ
『どうしました?』
「えっと、これなんだけど……元々この子を入れてて……」
『これは……!?』
――お! シナジーだ!
――まさかこれ使うのか
――クエリティスが怖いけどどうにかなりそう
「よし、この子も入れてみよう!」
『これを“この子”と呼ぶのは私にははばかられますが……』
かくしてデッキ作成は進む。サポートカードを探し、テーマを決め、来たるべき決戦に備える。心の中の焦りをエネルギーに変えて。
――あっちやばそう
――アルベル、めちゃくちゃ強い……
「そらむー……がんばれ……!」
『こちらがサーチで、さらに……』
「おお、なんかたくさんある!」
ターンを始めたアルベルは、たちまち猛攻を繰り出していく。白くぼやけていた空間は次第に赤黒く、彼の舞台へ染まっていく。
ALUBER LP:8000
『まずはセッティングから! 永続魔法《失烙印》《復烙印》を発動! ……そのエクシーズモンスターの効果は使うのかな?』
「ここで使うのはなんかもったいない気がする……両方通すよ!」
『ふふ~ん……♪ 続いて、キミの場の方がモンスターが多い時この子を特殊召喚できる! 現れろ《白の聖女エクレシア》! 聖女サマをリリースすることで、デッキからボクのトモダチ《アルバスの落胤》を特殊召喚! コイツが現れたとき手札の《烙印凶鳴》を捨てて、キミの場のモンスターと融合することができるよ!』
「っ……DRAの効果発動! 墓地のモンスターを除外して攻撃力2000につき一枚相手のカードを墓地に送る!」
『おお、除去までできちゃうの! でもキミの墓地のドライトロンはもう少ないよね、ここで除外しすぎるとキミに次のターンできることがなくなっちゃうよ~♪』
「わかってる……! 墓地のバンα一体を除外! アルバスの落胤を墓地へ送る!」
『そうだよね、そうしないといけないよねぇ! ボクは《
――煽るな……
――誰かのRPだろうとは思うけどだいぶ解釈一致
『まだほんの序の口! 手札の《
「デッキ融合カード! 《ファフμβ’》の効果発動! 魔法罠の発動を無効にして破壊する!」
『ああっ、烙印融合が……なんてね? 《失烙印》がある限り、融合召喚は無効にならない! 残念でした~♪』
「うわっこいつ、やられた……!」
『アルバスと……光属性モンスター《
「精霊法……? っ、いてっ!?」
きらめを巧みに挑発し、赤熱するドラゴンを融合召喚するアルベル。それが咆えると共に彼が指を鳴らせば、足元に現れた烙印の鎖がきらめを縛り付ける。それからわずかに感じるのは
KIRAME LP:8000-300=7700
ALUBER LP:8000+300=8300
『プレイヤーが融合召喚を行うたびに、相手プレイヤーのライフを300奪う! イベント戦ならこういうのも面白いでしょ?』
「これきらめが不利になるだけじゃない!? ずるいぞ!?」
『ずるいくらいが楽しいんだよ! ただのデュエリストが精霊を相手にするんだから、そのくらいは覚悟してよね♪』
「くぅっ……!」
掟破り、プレイヤーのライフポイントに直接影響する特殊ルール。決闘者同士の闘いでは考えられない予期せぬライフダメージに、きらめの不安は掻き立てられる。
『《失烙印》の効果、デッキから《
「また融合召喚っ!」
『神炎竜ルベリオンの効果を、カルテシアを捨てて発動! さらにアルビオンがモンスターを除外したから墓地の《軒轅の相剣師》の効果、そして二回目の精霊法も発動!』
「くっ……!」
KIRAME LP:7700-300=7400
ALUBER LP:8300+300=8600
『軒轅の相剣師はモンスターが除外されると自分も除外されて、手札墓地の聖女を特殊召喚できる。手札から捨てたカルテシアを特殊召喚! さらに神炎竜ルベリオンによって、フィールド墓地除外モンスターをデッキに戻してまたまた融合召喚する! さっき除外してたアルバスと攻撃力2500の深淵の獣マグナムートを戻して融合! 天底の使徒、閉ざされし地にその爪を突き立てん! 《
「三連続融合……っ!」
『いいや四連続だよ! 《赫の聖女カルテシア》はお互いのメインフェイズに手札場のモンスターを融合させることができる! フィールドから《
「クエリティス、そいつはっ!?」
『ご存じの通り、レベル8以上の融合モンスターを除く全モンスターの攻撃力をゼロにできるモンスター! キミのフィールドじゃあ太刀打ちできないねぇ~?』
「マジで、やばいっ……!」
KIRAME LP:7400-300-300=6800
ALUBER LP:8600+300+300=9200
《リンクリボー》A300→0
《竜儀巧-メテオニス=DRA》A4000→0
《竜輝巧-ファフμβ’》A2000→0(守備表示)
《深淵の獣ドルイドヴルム》A2500→0
ライフも、フィールドも、次々に追い詰められていく。クエリティスのオーラできらめのフィールドのモンスターから光が奪われていく。
そしてこれでまだ終わっていない。赤い目が輝き、額から二本の鋭い竜角が伸びていく。それは彼の
『ボクは、墓地に存在する《
「変身した!?」
『我が姿は分かたれし深淵へ回帰する! 光を嘲り、闇をも欺かん!《
「リンクリボー! ファフμβ’!」
『バトルフェイズ! ボクの場には攻撃力2500のクエリティスと深淵の獣ルベリオン、さらに攻撃力が3500になった灰塵竜バスタードがいる。対してキミのフィールドには攻撃力0の
――やばいか
――どれか防げばライフは残る……!
『
「……まだだぁ! トラップ発動、《
《竜儀巧-メテオニス=DRA》A0→2500
それは最後の抵抗。残されたセットカードで攻撃を凌ぎ、失われた蒼機竜の光を蘇らせる。だがそれでも本来の力には届かない。これできらめに残されたものはもうない。手札もフィールドもゼロ。火炎のブレスが迫りくる。
『っ、ははっ! 名前の通り
「ぐっ……!」
KIRAME LP:6800-1000=5800
『デスピアンクエリティスでキミにダイレクトアタック!』
「っ、うわぁあっ!!」
悪魔の槍が振り下ろされる。地を割る残虐な一撃に、きらめの体が吹き飛ばされ宙を舞った。
しかし、それでも
「ま、間に合った……!」
『手札から《ガーディアン・スライム》の効果! ダメージを受けたとき、このカードは手札から特殊召喚されます!』
「あーちん、待ってた……!」
流動体のスライムモンスターが落下したきらめを受け止める。そのコントローラーは当然朝日南アカネ。
デッキを完成させた彼女は、今戦場へと駆け付けた。きらめからライフと盤面を受け継ぎ、アルベルと向き合う。
それを見た彼は、ようやくかと満足げな笑みを浮かべ。
『時間をかけすぎちゃったかな? まあいいか……キミがモンスターを特殊召喚したことで《復烙印》の効果が発動。墓地のドルイドヴルムを特殊召喚して、そのスライムに攻撃!』
「スライムさんの効果! 攻撃してきたモンスターと同じ守備力になる!」
『防がれちゃったか……ならバトルは終わり! フィールド魔法《烙印劇城デスピア》を発動! フィールドからデスピアンクエリティス、深淵の獣ドルイドヴルム、神炎竜ルベリオンを融合! 偉大なる神の依り代よ、我らの聖女を呼び戻せ!《デスピアン・プロスケニオン》! アカネちゃんにも、精霊法の力を受けてもらおう!』
「このくらいへっちゃらだよ! でもアル太郎のライフが大変だ……!」
『ちなみに、ボクの精霊法はキミが融合召喚しても発動される! ティアラメンツの力の使い過ぎに注意だよ♪』
『なっ、私たちにまでその力が及ぶのですか……!?』
現れたるは、きらめとのデュエルを終わりに導いた凄絶なアイアンメイデン。そのオーラがアカネを蝕みアルベルを輝かせる。ライフの差はこれで三倍以上。さらにアカネが融合召喚してもアカネのライフが減ることを告げられ、否が応でも考えたプレイングを強制される。
AKANE LP:3300-300=3000
ALUBER LP:9200+300=9500
――容赦ねぇな
――物理ダメージ発生してる?
――何が起きてるかわかる人いますか?
フィールドに余力を残しながら墓地に潜む幾多の妨害、これぞ今の彼の作り上げた舞台か。烙印の翼を広げ天から挑戦者を見下ろす。今ここが決戦の死線。
『エンドフェイズ、墓地の《烙印竜アルビオン》の効果で《赫の烙印》をセット。アルバスの効果で墓地に送った《烙印凶鳴》もセット。二人の聖女サマも手札に戻る。これでボクのターンは終了、魅せてよキミの面白さ!』
「いくよ……ドローっ!」
信頼と希望を抱き、アカネのターンが始まる。
ALUBER LP:9500
HAND:2
(《白の聖女エクレシア》《赫の聖女カルテシア》)
FIELD
《烙印劇城デスピア》
《デスピアン・プロスケニオン》A3200
《灰塵竜バスタード》A3500
《深淵の獣ルベリオン》A2500
《烙印の獣》
《復烙印》
《失烙印》
〈赫の烙印〉
〈烙印凶鳴〉
精霊法【烙印の業火】
お互いのプレイヤーが融合召喚するたびに発動する。
相手プレイヤーに300ダメージを与え、自分は300LP回復する。
次回予告!
果敢に挑んできたきらめちゃん、でもボクの精霊法でライフが大きく削られちゃってる!
残りライフはほんとに少ししかない! どうにか凌いでアカネちゃんにバトンタッチしたけど、ここから逆転できるのかな~?
……どうやらこのちょっとの時間でデッキをいじってたみたいだね。見せてもらうよ?