▼剣盾で沼ったためガラルに連れてきました。剣盾キャラ出ます
▼六花の手持ちは出てきません(ブラッキー以外)お好きにご想像ください
▼捏造設定「ブルーガラル」
ガラル地方の警察組織のなかでもワイルドエリアを管轄する精鋭部隊。イングランドの騎士団勲章、ガーター勲章がそのリボンの色にちなんで「ブルーリボン」と呼ばれていることからもじって捏造しました。(キルクス担当はホワイトガラル、ルミナスメイズ担当はピンクガラルとかだと面白いかなという妄想)
▼六花はブルーガラルに所属しています
▼まああんまり深く考えなくて大丈夫です
▼考えるな 感じろ
ぱち、ぱちと焚火がゆっくり燃える音は、ひどく心を落ち着かせた。
木陰で柔らかな太陽を受けながら、手元の文字を読み進める。隣では相棒が時折大きな口を開けて欠伸をする。そのたびに腕を伸ばして首元をくすぐってやれば、また気持ちよさそうに目を閉じた。この静けさのなかの穏やかな時間もまた、キャンプの醍醐味というものだろう。
ぱらり、とまた一枚ページをめくった時、ブラッキーがざっと立ち上がる。
「どうした?」
声をかけると、その鼻先は上空を示した。見上げると、そこには晴天に美しく輝く緑の竜。その背には、いつの間にか長い付き合いになっている年下の友人がいる。
「おっいたいた!」
騒がしくなりそうな気配に、栞を手に取った。持っていた本に挟み込み、鞄の中にしまう。相棒はやれやれと言わんばかりに黒い尻尾を振った。
「よーアサヒさん久しぶり! ブラッキーも元気そうだな」
「久しぶりってほどでもないだろ」
キバナ、と彼の名前を呼ぶと、褐色肌の青年は嬉し気にまなじりを下げた。青年というよりは少年というほうがよく似合うその笑い方に、昔から変わらないな、と年寄りじみたことを思う。
俺は彼が少年と呼べるころ、ジムリーダーでもなくチャレンジャーとして旅を続けていたころから彼を知っている。仕事上の成り行きといえる出会いだったが、キバナは妙に俺たちを慕い、こうしてたまに会いに来てくれた。
「フライゴンも元気そうで何より。で、わざわざ俺を探しに来たのか? 用があるなら連絡くれれば良かったのに」
「探しに来たっていうか、最近この辺でよく超絶イケメンがキャンプしてるってSNSに流れてたからさ、アサヒさんかなと思って確かめに来た」
「まじかよ」
ここはワイルドエリアの中でもレベルの高いポケモンの多い、あまりひとが来ないエリアだ。こんな場所にいてなお、噂になってしまうとは。こういうとき、情報社会というものは恨めしい。うんざりしたようにため息をつくと、キバナは楽しそうに笑った。
「そうやってこそこそしてるから噂になるんだって。アサヒさんもSNSデビューしたら?」
「写真嫌いなんだよ。ロトム、カメラ向けるな」
「ひどいロト~」
くるくるとキバナのまわりとまわるスマホロトムまで楽し気だ。まったく、こっちは死活問題だというのに。慰めるように、ブラッキーの鼻先が俺の手のひらにすり寄る。そのまま緩くなでてやると、もっと撫でろというように耳を倒す。そして再び鼻先を上げて、俺の手のひらをちょん、とつつく。ああ、わかってるよブラッキー、俺だって気づいてる。
「……ところでキバナ、お前ここに来るまでに不審な集団を見かけなかったか?」
「不審な集団?」
そう繰り返して、ようやくキバナははっとした顔で俺を見る。
「……あー……オレさまひょっとして、仕事の邪魔してる感じ……?」
にっこりと笑顔を作ってやると、実は「仕事」というものに対して非常に真面目な彼はぱんっと景気のいい音を立てて両手を合わせた。
「ごめん! やっぱ帰るわ、次はちゃんと連絡してから来るから!」
「うん、次はそうしてくれ。けど今回は大丈夫、むしろお前が派手に来てくれたおかげで早く片付きそうだ」
遙か遠くから飛んできた高レベルのフライゴン、そしてその背に乗るガラルでも有数のポケモントレーナー。徹底して身を隠してきたやつらも、その姿を見てさすがに驚いたのだろう。キバナに気付かれバトルにでもなれば敵うわけはないし、そうでなくてもキバナという存在はいるだけで目立つ。そんな彼の来襲を見て、後ろ暗い事情のある奴らはどうするか?
決まっている。安全な巣を捨てて、逃亡を図るのだ。
いつの間にか、辺りが霧に包まれる。ワイルドエリアで霧が出ること自体は珍しくもないが、これは自然に発生した霧ではない。異変に気付いたキバナが周囲を見渡す。フライゴンも臨戦態勢に入った。
「キバナ、フライゴン、大丈夫」
「アサヒさん、」
「俺たちだけで十分だ。ブラッキー、位置はわかるか?」
当然、と言わんばかりにブラッキーはきゅう、と鳴いた。その赤い瞳は、揺らぐことなくある一点を見つめている。好戦的な口もとから、ちらりと犬歯が覗いた。
ブラッキーに見えているなら、逃すことはない。結果を期待していなかった仕事半分オフ半分の張り込みだったが、思わぬ収穫だった。知らず、自分の口角が上がっていることに気付く。
相棒の名前をもう一度呼んで、続けた。
「
しろいきりが徐々に晴れていく。
*
「……で、あいつら結局何だったわけ?」
「詳細は言えないが、まあ密猟団だ。行動パターンを分析した限り、この辺にアジトがあると踏んだんだが正確な位置まで掴めなくてな。キャンプついでに張ってみたんだよ」
連行されていく黒服の集団を見送る。逮捕と同時に呼んだ仲間に、後の処理を任せていた。得ずして仕事をしてしまったわけだが休みは休みなので、面倒ごとは任せておこう。
「まさか洞窟掘って隠れてるとは思わなかったな。しかも移動するときには抜かりなく《しろいきり》をつかって徹底的に姿を隠していたらしい。道理でなかなか見つからないわけだ」
「……ひょっとしてむしろオレさまお手柄?」
「調子にのんな。普段のバトルとは勝手が違うんだ、首突っ込んじまったことを反省しろ」
「……へーい」
トップジムリーダーを務めるキバナは強い。強いが、正々堂々ルールの中で行われる公式バトルとこういうものは話が違う。迂闊に首を突っ込めば、彼自身にだって危険が及ぶかもしれないのだ。犯罪なんてものには、関わらないに越したことはない。
「アサヒさん、お疲れ様です!」
「ああ、お疲れ様」
ガラルの警察組織の中でも特殊な部署、この広大なワイルドエリアを取り仕切るWA警備隊。その証である青い勲章から、俺たちは《ブルーガラル》と呼ばれる。まだ真新しい青いリボンを胸に飾った彼は、畏まった態度で俺に敬礼を向けた。
「小隊長より伝言を承っております! 仔細の報告は次回出勤時に書面にて提出、それから、……その……」
「はは、どうせ嫌味でも言ってたんだろ。言いにくいなら明日にでも本人から聞いとくけど」
「……『休めと言っても休まない馬鹿につける薬があればいいのにな』とのことです……」
「ん、伝言確かに受け取った。言いにくいこと言わせて悪かったな」
いえ、と恐縮した態度を見せる肩をひとつ叩くと、彼はそのままそそくさと仕事に戻っていった。全く、あいつも少しは伝達する部下のことを考えてやればいいのに。
「……小隊長ってレイさんだよな?」
「ああ。我が身棚に上げてよく言うよなあいつ」
「いや絶対どっちもどっちだって」
「少なくとも俺はあいつより休み多いぞ」
ただ、休みの日にいろいろ遭遇することが多いだけで。
それが働きすぎだと言ってるんだ、と大きくため息をつく《小隊長》殿の顔が脳裏に浮かんだが、知らぬふりをしてかき消した。休みの日まで制服持ち歩いて出動に備えてるお前に言われたくねえんだよ。
「……そういや初めてアサヒさんに会ったときも、アサヒさんだけ私服だったような」
「よく覚えてるな。あのときはお前らのおかげでせっかくのオフにワイルドエリア大捜索に駆り出されたんだよな」
「お前らってまとめないでもらえます~? あれはダンデのせいだろ」
「泣きべそかきながら通報してきたやつがよく言うよ」
そう言ってやると、かつて泣きべそをかいていたガキは表情筋の全部を使って遺憾の意を表明する。二十歳を超えたとは到底思えない表情に、思わず吹き出した。
もう十年ほど前になるだろうか、あれはまだ俺もブルーガラルに配属されて間もなかったころ、数少ないオフの日にワイルドエリアの地理を覚えようと散歩をしていたときのことだった。急なスマホの着信に出てみれば、同じくブルーガラルに配属された同期が切羽詰まった声で言う。
『アサヒちゃん今どこ!? ……ハシノマ? オッケー近いね! 緊急招集、まだルーキーのジムチャレンジャーが高レベル地域に迷い込んじゃったらしいんだけど、今日に限って案件重なっちゃってて捜索の人員が全っ然足りない! そういうわけで大至急巨人の鏡池集合でヨロシク!』
そして向かってみれば、そこには涙ながらに友人の捜索を訴えるキバナがいたというわけだ。度を過ぎる方向音痴のライバルが、どうやら今の自分たちの手には負えないようなレベルのポケモンたちが生息するエリアに迷い込んでしまったらしい、と。助けに行こうとも思ったが、今の自分では一緒に遭難してしまいかねない、と。
随分と取り乱しているくせに、自ら助けに行くという無謀を選ばなかったキバナ。なるほど、ピンチでも最善を選択できるというのはトレーナーとして有望だ、と同期とともに感心したのを覚えている。
『だから、ダンデを……っ』
『とりあえず君、落ち付こうな』
『、』
猫目の同期が、ライバルの救助を訴え続けるその肩をぽん、と叩いた。まっすぐに、そのターコイズの瞳をじっと覗き込む。視線に射すくめられて怯んだキバナににこりと笑って、続けた。
『よく焦って友だちを追いかけなかったな。いい判断だよ』
『ああ、心配だったろうによく堪えたもんだ。偉いぞ坊主』
同期の中でも一番体格に恵まれた彼が、オレンジのバンダナごとキバナの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。何すんだ、と抵抗されてもものともせず、豪快に笑った。
『心配すんな。すぐ見つけてやるよ』
『そうそう、おにーさんたちこれでもすごいから! 青いリボンは伊達じゃないよ~?』
癖の強い髪の同期がニヒルに笑い、その肩に腕をのせた垂れ目の同期が安心させるように茶々を入れる。
そして、いつも自信満々の態度を崩さない、金の髪に褐色の肌をもつ同期がモンスターボールを手に取り、笑った。
『大丈夫だ。絶対、助ける』
だからここで、待っていてくれと。その言葉を噛みしめたキバナは、涙を拭って、勢いよく頭を下げた。
『よろしくお願いします……!』
そしてまあ、その後すぐに超絶方向音痴ことダンデは無事救助されたわけなのだが。何せダンデはダンデなものだから、遭難していた自覚すらなかったうえに相棒が道中で進化したことを嬉々として話し、キバナの逆鱗に触れることになる。片やキレて飛び掛かろうするキバナを押さえ込んで宥め、片や呑気が過ぎるダンデに説教をするというよくわからない事態になった。正直なところ捜索よりもこちらの方が大変だったような気がする。
それからもちょくちょくとワイルドエリアで顔を合わせ、個人的な交流をもつようになった。そんな縁で出会った少年たちが、今やトップジムリーダーとガラルのチャンピオン。全く世の中わからないものだ。
未だ拗ねた顔のキバナに、また笑って今日は時間あるのかと尋ねる。今日はオフ、と聞いて、それならばと袖をまくった。
「カレー作るけど、キバナ、食ってくか?」
「食う! アサヒさん俺辛口がいい!」
「はいはい、向こうにマトマがなってたからいくつか採ってきて。……ん、ブラッキー? ああ、お前相変わらずモーモーチーズ好きな。わかったよ、トッピングはチーズにしよう」
カレーと言った瞬間にモーモーチーズを探り出して俺に押し付けてくる相棒に苦笑しながら、鍋を用意する。同時に、スマホロトムがくるくるとまわりながらメッセージを告げた。
「メッセージきたロトよ~。『カレー五人分追加』ロト!」
「何あいつら俺の監視でもしてんの? 真面目に仕事しろよって返事しといて」
「ロト! 即レスロト~『昼休憩! 腹が減っては戦は出来ぬ!』」
「くっそ、きのみ献上しなきゃ食わせねえって返信!」
そうロトムに叫んだところでキバナが帰ってきた。が、おかしなことに足音がふたつに増えている。
「アサヒさんごめん、ダンデ拾った~」
「お久しぶりです! アサヒさんのカレーが食べられると聞いて!」
「お前方向音痴のくせに何でこういうときだけ鼻が利くんだよ! キバナ、ダンデ、そのまま回れ右して追加のきのみ収穫してこい! クラボとオッカを探し出せ! 出来ればモモンとザロクも追加!」
了解、と昔のように無邪気に笑ったふたりはまた走り出し、俺は大きくため息をついて鍋に水を追加した。軽い昼飯にするつもりが、こうなったら彼ら全員の腹を満足させるまで終われない。足りない分の材料くらいは同期が調達してくるだろうが、少しは俺の労力というものを考えてほしいものだ。というかオフは休めっつったの誰だあの野郎。
「……密猟団捕まえるより骨が折れるよな、ブラッキー」
思わず傍らの相棒に愚痴を落とすと、ブラッキーは少し首を傾げて考え、そしてまた荷物のところに戻って鞄を漁り、また上機嫌で俺の元にすり寄る。その口には、かぼそいホネのたくさん入った大袋。
「……チーズの次は、ボーンカレーをご所望かな……?」
きゅう、とそれはそれは可愛らしい声を出して、満面の笑みを見せるブラッキー。欲しいものをねだるときだけは日頃のプライドをかなぐり捨てて全力で甘えてみせるこの相棒は、こういうときにあくタイプなのだと思い知る。
「作ればいいんだろ作れば……!」
「きゅう♡」
身内に甘い自分の性質を心底恨みつつ、俺はホネの袋を咥えたままのブラッキーの両頬を柔らかくひっぱった。