六花、欠けることなく   作:ふみどり

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何年か前に書いたやつ再掲。


大晦日

 自他ともに認める情緒に欠ける人間性故か、別に年を越すからと言って大した感慨があるわけではなかった。強いて言うなら今年は何があったっけとか、そんなことを炬燵でぬくぬくと考えるくらいである。

 現場に出るわけでもない俺なので、有難くも年末年始はきちんと休みをもらえる。口に出したら殺されてしまいそうだが、別に休みをもらっても本を読むくらいしかすることがないのでいっそ書類のひとつでも片付けたいものだと思っている。

 

『貴方も立派なワーカホリックなのね』

 

 飛んできたメッセージに、即座に返した。

 

『きみの旦那ほどじゃないよ』

 

 すると一分とかからずに涙を流すキャラクターのスタンプが返ってくる。気の毒だと思いつつ、ちょっと笑ってしまった。仕事に理解のある彼女だから本気で泣いたり落ち込んだりしているわけではないだろうが、こうも返事が早いということは本当に暇なのだろう。

 ナタリーさんとは、こうして時折メッセージをかわす程度の間柄になっていた。世間一般で言う女友達というものなのだろうと思う。俺に女友達とか感慨深くて泣けてくる。

 年末の挨拶ついでに、特に意味のない雑談を続けていた。

 

『知っていたつもりだったけれど、警察官って本当に忙しいのね』

『部署にもよるけどね。特に伊達たちは花形の捜査一課だから』

『身体壊さないのが不思議だわ』

『そんな柔なやつは捜査一課とか配属されないよ』

 

 事件とあれば東奔西走、時も場合も選ばない犯罪事件に立ち向かう警察官は、どうしてもプライベートを犠牲にしなければならないときがある。たとえ新婚であろうと年末年始だろうと、なかなか家でゆっくりなど許されないのだ。残念なことに肩代わりしてやれる立場ではない俺は、大人しく炬燵に籠るしかない。

 

『せっかくお節作ったのに、食べてもらえるのは先になりそうね。仕方ないけど残念』

 

 実を言うと、少し前にナタリーさんからお節やお雑煮の作り方についてアドバイスを求められていた。

 と言っても俺も毎年真面目に作っていたわけではないので、とりあえず欠食児童どもがリクエストしてきたときに作ったもののレシピを渡した程度なのだが、それなりに気合いをいれて作ったという話は聞いている。日持ちがするものとは言え、出来ることなら元日に食べてもらいたいという気持ちはわからなくもない。

 それなら、とスマホの画面に指を滑らせた。

 

『届けに行こうか』

『え?』

『車出すよ。どうせろくなもの食ってないだろうし、着替えと一緒に渡してやったら。手が離せないようだったら俺が捜査一課に置いてくるよ』

 

 ついでに俺も差し入れを適当に置いてこよう。捜査一課と、特命係と、あと公安は……どうだろう。先に連絡してお伺いを立てておけばいい。

 

『でも、いいの?』

 

 いいも何も、どうせ俺も暇なのだ。休みの俺が顔を出したら嫌味かと言われそうだが、まあそこはそれ。俺が渡すやつらは文句言いつつも差し入れを残さず平らげるだろうし、それ以外のやつにどう思われようが今さら特に気になどしない。

 

『俺も適当に差し入れの準備するから、一時間後でいい?』

『もちろん大丈夫! ありがとう旭くん!』

 

 じゃあ後で、と返信して、もぞもぞと炬燵から脱出する。

 さすがにスウェットで本庁に行ったら卒倒される気がするので適当に着替えるとして、あとは差し入れを何にするか。彼女のように真面目にお節など用意していない。

 面倒なのでもうおにぎりくらいにしておこう。塩気を強めにしておかずを少しはつけておけば腹にも溜まる。

 俺の仕事は職務を怠る警察官を締め上げることだが、まあ真面目に働く警察官相手なら応援をすることがあってもいいだろう。年の瀬でも関係なく汗を流しているだろう悪友たちの顔を思い浮かべ、キッチンに立った。

 さて、おにぎりの具は何にしようか。

 




ちなみにナタリーさんと柊木さんの会話の内容は伊達さん関連オンリーです。
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