ジンとの再会(してない)。
勧められた煙草に、一瞬迷ったが首を横に振った。警戒は必要だが、これが肺を汚さなければならないほどの案件だとは思えない。
事件はとっくに終わっている。俺がすべきことはすべて成し遂げ、守るべきものも守り抜いた。滅多に取り出す必要のない記憶として脳の奥深くに追いやっていたというのに、こうも要請を重ねられれば俺も折れざるを得ない。わざわざ貴重な有給を消費し、仕方なく海を越えた。
俺を迎えた相変わらず全身真っ黒の悪人面は、以前よりは幾分か健康的な顔色をしているように見える。突き刺さる視線に堪えながらその後ろに続き、示された助手席に座れば、渡されたのは無機質なタブレット。映っているのは現在の「対象」の姿だ。
その姿を見ても特に感慨はない。思い入れもない。こんな顔してたな、くらいだ。
「で、手筈は?」
「きみさえよければいつでも面会可能だ」
「じゃあとっとと済ませてしまいましょう」
俺は別に話すことはない。だから準備も必要ない。向こうが俺にどんな用があるのかは知らないが、聞くだけでいいというなら椅子に座るくらいは妥協してやろうと思う。
見慣れない景色が流れていくのを目で追いながら、赤井さん、とハンドルを握る彼に口を開く。
「……意外と安全運転なんですね?」
「降谷くんと一緒にしないでくれ」
そんな気の抜けた会話に、喉の奥を揺らす。それはよかった。
俺がここにいるのは、あくまでも休暇だ。一応降谷たちに報告だけはしてきたが、あいつらも微妙な顔をしていた。「気を付けて」と言うほどの何があるとも思えなければ、「ゆっくりしてこいよ」と言えるほど気楽な相手でもないからだろう。まったく、嫌なボランティアだ。
対象が投獄されている
「向こうは俺が来ることを?」
「知っている。ただし、名前やその他の情報は一切与えていない」
「へえ」
「俺は同席しないが、会話はすべてモニタリングしている」
「そうですか」
ここだ、と示されたひときわ重そうな扉。案内どうもと前に出れば、クッと赤井さんが肩を揺らす。
「少しも緊張していなさそうだな」
「……いや、何を緊張すればいいんですか」
赤井さんにとっては愛しい
まあ有給とらされた文句くらいは言ってもいいかな、と頬に触れて自分の笑顔を確かめる。この会話が「雑談」になるにしろ「交渉」になるにしろ、絶対に主導権は取らせない。
重いドアを押し開ける。足を進める。厚い透明な壁の向こうに、銀の糸が枝垂れている。
「──初めまして、」
いくらアルコールに弱い俺といえど、
どんな会話をするんでしょうね。何も浮かんでないです。