六花、欠けることなく   作:ふみどり

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発掘品。何で書いたのか全然覚えてないけど間違いなく悪ふざけの産物。
なぜか柊木さんが「いばら姫」だし警察学校組は「王子」だし、とにかくメタい。
細かいことは気にしない人だけどうぞ。
いや何を思って書いたのか全然覚えてないんだってば。


いばら姫パロ

 むかしむかしあるところに、それはそれは美しいお姫様がいました。

 

「まず《姫》の性別を変更した時点でせめて《王子》に書き換えるべきだと思うんだが、どうかなナレーション」

 

 メタい発言は慎みなさい「お姫様」。

 美貌の王子にストーリーを書き換えると、もれなく貴方は肉食獣のごとき令嬢たちに囲まれ、命からがらの日々を過ごすことになりますがよろしいのですね?

 

「有難い気遣いに心から感謝する。そのまま続けてくれ」

 

 お姫様は生まれたばかりのとき、生誕を祝う宴に呼ばれなかった魔女によって呪いに掛けられました。15歳になると紡ぎ車の針が指に刺さって死んでしまうという呪いです。しかし、別の心優しい魔女のおかげで呪いは弱められ、紡ぎ車の針が刺さっても死なないかわりに、100年の眠りにつくことになりました。

 けれど、100年の眠りとて呪いにかわりはありません。王様は国中の紡ぎ車を処分するよう触れを出しました。紡ぎ車の針さえなければ、お姫様は眠りにつくことはないと考えたのです。

 月日は流れ、お姫様は15歳になりました。お姫様はとても美しく、頭が良く、そして非常に、それはもう非常に好奇心旺盛に育ちました。

 

「あれ、含みを感じる」

 

 この国に、もう紡ぎ車はありません。お姫様は紡ぎ車という道具の存在すら知らずに育ちました。それがいけなかったのでしょう、お姫様は気づかなかったのです。城の頂上の小部屋で見知らぬ老人がからりからりと糸を紡いでいる道具、それこそが紡ぎ車だったなんて!

 

「知らない道具を使ってるひとがいたら気になるだろ? 気になったら聞きに行くだろ? 何だよ俺が悪いってのか? というかそんな呪いがかかってんなら親父もせめて絵でいいから紡ぎ車の存在を俺に教えておけと思わないか?」

 

 王様は知らない人に迂闊に近寄るなと教えませんでしたか?

 

「……どうだったかな」

 

 嗚呼、可哀想なお姫様! 王様の言いつけを守らなかったばかりにその指を針に刺され、100年の眠りについてしまいました。

 そればかりか呪いは城中に降り注ぎ、王をはじめ城にいる全員が眠りについてしまったのです。そして城のまわりは茨で覆われるようになり、この城には誰も入れなくなってしまいました。

 これが、今までのお話です。

 

「せんせー、質問いいですか」

 

 はいどうぞ、お姫様。

 

「何でその状況で俺だけ先に起きてんの? 100年たったから起きたんじゃねえの?」

 

 良い質問ですお姫様。

 実は、お姫様ひとり受けるはずだった呪いが城全体にかかったことで、呪いの効果も分散されてしまったようです。「今」は貴方が眠りについてからちょうど50年目。おそらく他の皆さまも、100年目を待つことなく目を覚ますでしょう。

 

「それは何より。で、いつ頃?」

 

 わかりません。

 

「……なんて?」

 

 わかりません。分散されたことで弱まったとは言っても、それぞれへの呪いがどれだけ続くのかなど誰にもわからないのです。明日かもしれないし、それこそあと49年必要かもしれません。

 

「その間の俺の生活は!? 城の食料全部腐ってるし外壁茨だらけで外出るのも一苦労だぞ!?」

 

 自業自得なんだから自分で何とかしなさいお姫様。

 

「元はと言えば俺の生誕の宴にひとりだけ魔女を招待しなかった親父のせいだろちくしょう!」

 

 カトラリーが足りなかったんです仕方ないでしょう!

 おや、お姫様が地団駄を踏んでいるその間に、茨にも負けず誰かが城に近づいています。その足音は5つ、どうやらお姫様を助けに来たようです。

 

「5つ?」

 

 世間では絶世の美女が眠る城だと評判になっているのです。哀しいかな、助平は茨ごときでは諦めないようですね。

 

「誰が助平だ!!」

「男はみんな助平でしょ!?」

 

 正反対のことを言いながらドアを蹴りあけた金髪の王子Aと垂れ目の王子B、その後ろに猫目の王子C、ひときわ背の高い王子D、天パの王子Eが続きます。

 

「名もなき王子にしてもあんまりな扱いじゃないか?」

「いや、まあ、名前で呼ばれても微妙ではあるんだがな……」

「まあ男のくせに姫扱いされてるやつよりいいんじゃ、っぶねーな何しやがる!!」

「悪い、手が滑った」

 

 お姫様が手を滑らせた燭台が王子Eの顔すれすれをかすり、大きな音を立てて床に落ちます。

 ちなみにお姫様、それ王様のお気に入りです。

 

「未だ寝こけてる親父なんぞ知ったことか」

「絶世の美女ちゃん詐欺にも程がない?」

「俺は絶世の美女を自称したことは一度たりともねえよ。無駄足悪かったな、まあお陰で助かったよ。これで外に出れる」

 

 お姫様は王子様のキスで呪いを完全に解かないと外に出られません。

 

「……いや俺もう起きてるし、呪い解けてるだろ?」

 

 お姫様は王子様のキスで呪いを完全に解かないと外に出られません。

 

「いきなりバグるなナレーション! おい嘘だろ、って痛っ!!」

「わあ、お姫様がドアを飛び出して外に出ようとした途端、すごい早さで茨が繁ったぞう」

「すげえ説明口調だなもろふ……王子D」

「違うぞ王子E、王子Dは俺だ」

「あれ、俺って王子何だっけれーくん」

「れーくんって呼ぶな俺は王子Aでお前は王子Bだ」

 

 王子様たちがコントを始めようとも、お姫様は王子様のキスで完全に呪いを解かないと外に出られません。

 

「うわ、頑なだな」

「えー俺いくら美人でもヤローはノーセンキュー」

 

 ついでにこの城に入ったことで王子様たちも呪いにかかりましたので、キスをしないと外に出られません。

 

「……今なんつったナレーションこらァ!!」

「何このガラの悪さ、王子……えーと、Eか。元ヤンなの?」

「当たらずも遠からずでな」

「誰が元ヤンだ! ゴリラAに言われたくねえよ!」

「誰がゴリラだ」

「待て待て、とりあえず今は脱出方法だろ?」

 

 出られませんよ。ほら、こっそりひとりで外に出ようとした王子Cの足元にも茨の若木が顔を出しました。

 

「……提案。ナレーションとっ捕まえて《呪いは解けました。めでたしめでたし》って言わせてみないか?」

「なるほど、逆転の発想か」

「ナレーションは物語の語り手だもんな、ナレーションが言うことは絶対ってわけだ。頭いいなお姫様」

 

 王子C、そう言いながら笑顔でライフルを持つんじゃありません。世界観考えなさい、というかどこから出したんですか。王子Dも指をばきばき鳴らさない。キャラを守りなさい王子たち!

 

「お前がひとこと言えば指なんか鳴らさなくても物語は平和に終わるんだぜ」

「そうそう、ここで終わらせればナレーションという名のボスを倒す冒険譚にならずに済むよ」

「ロマンスに出てくる王子なんぞよりよっぽど性に合うってもんだ」

 

 ――キスひとつでハッピーエンドをさしあげると言ってるんですよ? 安いものでしょう?

 

「絶世の美女かつお姫様らしいからあえて言うわ。俺のキスはそんな安くねえよ」

「ひゅー! お姫様かっこいー!」

「いやほんとこいつ姫にしたの誰?」

「ミスキャストにも程があるだろ」

「絶対助けなんかいらなかったよなぁ」

「ははっ心強いじゃねえか!」

 

 諦めるつもりは、……ないようですね。よろしい、ならばストーリーを書き換えましょう。語り手に逆らうとどうなるか、思い知らせて差し上げます。

 

「上等、……って、おい、あそこに誰かいないか?」

「! ま、まさか、あいつは……!」 

 




誰だよ。知らんよ。続きはないよ。
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